第10章 雪音ちゃんと村娘達 117 〜 雪音ちゃんと冒険者達、逃げて来た女冒険者に翻弄される!②〜
逃げて来た女性冒険者の前でカッコつけようと余所見してゾンビ牙棘背生竜から不意打ちタックル喰らって地面に尻もちついたチャラ男を見て私は「ダメだこりゃ」と思った!
もう、なんで目の前にいる敵から視線逸らすかなぁ? 私が倒してあげても良いんだけど、チャラ男に掛けてあげた蜂の巣型魔法の盾の破損状況はまだ大したことないし、女性冒険者にカッコつけたかったみたいだから1匹ぐらいは自分の手で倒させてあげないとダメだよね?
私は氷の斬撃でいつでもゾンビ牙棘背生竜の頭や両前脚を斬り飛ばせるように神経を尖らせつつチャラ男の戦いの行方を見守った!
「マイケル、早く魔剣を拾って首を斬り落とせ!!」
リーダーさんの言葉を受けたチャラ男が手を伸ばして魔剣ディーアを掴み、ゾンビ牙棘背生竜の首に一太刀入れた!
これで最低限の面目は立ったよね? じゃあ、他のはサクサクッと倒しちゃおうかな!
ドッドッドッドッ!!
私に向かって大口開けて突進して来ていたゾンビ牙棘背生竜に向かって私は龍の杖を振って極太の氷の槍をお見舞いしてあげた!
ホントは手の平の先で魔力を収束してカッコ良く氷の槍を作って飛ばしたかったりするんだけど、人前だと古代の武器使ってるフリしないと騒がれちゃうからネー。はぁ、気兼ねすることなく魔法使いたいなぁ〜。
私の放った極太の氷の槍は後ろに水色の冷気をたなびかせながらゾンビ牙棘背生竜の開いた口へと吸い込まれ、背骨を破壊しながら尻尾の先まで貫通した!
「はい、1匹終了! お次は足止めだよ!」
続けて私はマッド達が交戦中のゾンビ牙棘背生竜の四肢や尻尾の上に氷の槍をいくつも落として地面に縫い付けてあげた!
身動きの取れなくなったゾンビ牙棘背生竜に向かってマッド達が剣を次々と振り下ろしトドメを刺した!
さてと、チャラ男はどうなったかな〜? えっ? 助けた女の人に抱きつかれてるよ!? うっわ、あの紫水晶みたいな髪の色の女の人、大胆だね〜。チャラ男カッコ悪かったのにピンチに駆けつけてくれたことが、やっぱポイント高かったのかなぁ?
あっ、女の人が一旦チャラ男から離れてなんかモジモジしてるよ!? 頬を赤らめて蒼玉のような青い瞳をウルウルさせてる!? あっ! 女の人が片手をチャラ男の首の後ろに回したよ!?こ、これはひょっとしてキスシーンでは!?
チャラ男良かったね!と思った次の瞬間、チャラ男の背中から赤い刀が生えていた!
は? えっ!? 背中から刀!? えぇえええええええ!?
「なっ!? マ、マイケルの背中から刀が!?」
動揺してる私の耳にリーダーさんの驚愕した声が聞こえて来る!
そうだよね!? 私の見間違いじゃなくて、アレ、刀だよね!?
「あ、あの女いきなり何してくれちゃってんのよぉおおおお!?」
私の盾を1撃で貫いちゃった!? いや、でも、そんな簡単に壊れるものじゃないから、さっきのゾンビ牙棘背生竜の攻撃で小さい六角形の盾を蜂の巣みたいに何個も横に並べた魔法の盾のうちお腹の1枚が壊されちゃってて、その穴が空いた所を狙われちゃったの!?
ドサッ!
女性冒険者がチャラ男の身体から赤い刀を引き抜き自身の身体をズラして半身になると、女性冒険者の支えを失ったチャラ男は前のめりになって地面に崩れていった!
私はいきなりの出来事に混乱しながらも、すぐさまチャラ男に回復魔法を掛けてあげた! この世界の回復魔法は神様のせいで戦闘中における効果は低いけど、瀕死の重傷を死なない程度にまでは回復できる! ただ、即座に動けるようになるものじゃないから、チャラ男はすぐに動けないけどね!
「やっぱりゾンビなんかより生きてる人間の方が刺し応えあるわよね〜♪ 弾力が違うのよ〜、弾力が♪」
女性冒険者は頬を上気させながら赤い刀に舌を這わせて刀身に付いたチャラ男の血を舐めとっている! 血に染まった赤い刀の様相は女性冒険者がゾンビ牙棘背生竜達から逃げていた時と違っていて、今は赤いオーラが赤い刀身から漂っていた!
ひょっとしてアレって妖刀!? 斬った生き物の血を吸ってパワーアップとかしちゃったのかな!? あっ、でも、マイケルの腕とか足見ても血を吸われて干からびちゃったりしてないし、血を吸い取り続けるなら刀を身体に突き刺したまんまの方が吸血できるから血を吸う妖刀じゃないのかも?
雪音ちゃんは変なところで少し冷静だった!
「マ、マイケル、大丈夫ですか、マイケルぅううーー!?」
「てめえ!? 一体どういうつもりだぁあああ!!」
「マイケルの持っていた魔剣が狙いか!?」
「どういうつもりか、ですって? うふ♪ そんなの決まってるじゃな〜い? もちろん、人を斬る感触を楽しむつもりよ♪ 私ね、人を刺したり斬ったりするのが、だぁ〜い好きなの♪ ここが濡れて来ちゃうぐらいにね♪ だ・か・ら〜、あ〜んな魔物を1撃で消しちゃう魔剣には興味なんてないのよね〜」
へ、変態だ変態だ変態だぁああああ!?
「なんだと!? ふざけんな、てめえ!! 助けてやった恩を仇で返し、やがっ、て……」 (//∇//)
「くっ、お前が最近このダンジョン内で噂になっていたダンジョン賊だったのか!? 手口も聞いていた通りだったと、言う、のに……」 (//∇//)
ちょっとリーダーさん!? そんな噂があったのなら前もって教えておいてよ!? その淫乱斬り裂き魔の露出過多な格好とか登場シーンとか、めっちゃ分かりやすいハニートラップだったってことじゃん!? なんで引っ掛かってんの!? いや、引っ掛かったのはチャラ男だけどね!?
「あなたが噂のダンジョン賊なのでしたら捕まえてギルドに突き出せば、今回出した損失の多少の埋め合わせができます! マッド、ピート! あの年増をって、どうして2人とも前屈みになっているのですか!?」
ロリコンの言葉を聞いて私は視線を淫乱斬り裂き魔から再びマッドとリーダーさんに向けて頭を抱えたくなった!
チャラ男がヤられちゃってるって言うのに2人はどうしてもっこりさせちゃってるのよ!? 信じられない! この緊急時にまともなのがロリコンだけってこのパーティー終わってるでしょ!?
「あはは♪ 童貞さん達には刺激が強過ぎちゃったみたいでごめんなさ〜い♪ でもね、こ〜んな格好して胸を揺らしながら腐った牙棘背生竜引き連れて逃げて来ると、男達ってみーんな張り切って私のために戦ってくれるのよね〜♪ それで相手の力量を測ることが出来るし、戦闘で疲れた男達は好きなだけ美味しく切り刻めるしで、一石二鳥なのよね〜♪ 魅力的なこの身体に感謝だわ〜♪」
淫乱斬り裂き魔は赤い刀を地面に突き刺し、自分のおっきなお胸を両手で持ち上げては落とし、持ち上げては落としを繰り返しながらマッド達を挑発して笑ってる! 地味にお胸の小さい私に対する精神攻撃にもなってたりするから私を挑発していると言っても良い! あとで絶対泣かすと私は心に誓った!
「な、なんて性格が悪いんですか!?」
「クソッ、色仕掛けとか卑怯な真似しやがってぇええ!!」
「こちらにはまだ4人もいる! この人数差で勝てると思うのか!?」
マッドもリーダーも前屈みで怒鳴ってるから威圧感全然ないよ!?
ちなみに、リーダーの言った通り今この場に立ってるのは私、短気のマッド、リーダーのピート、ロリコンのライトの4人しかいない。地面で倒れてるチャラ男のマイケルは現状戦力外だし。ラピやクゥー、ラスィヴィアの3人は、後方から亡者達に襲われないように来た道を戻ってスルーして来た脇道にいる牙棘背生竜やガーゴイルなどのゾンビとスケルトンの混成部隊を倒しに行ってて、今ここにいないからね。
リーダーが4人って言い方をしたのは、ラピ達が戻って来た時に不意打ちできるようにって考えてのことかな? 前屈みになっていても、そういったことを考える理性は少し残ってるみたいで私はちょっと安心した!
「さっきの戦いを見ていた感じ、そこの女の子の魔法はまぁ凄いみたいだけど、大技の魔法は連発できないみたいだし〜」
淫乱斬り裂き魔は私の魔法の腕を当て推量で評しながらさっき地面に突き刺した赤い刀を引き抜き、クルクル回して遊び出した!
大技の魔法は連発できない? さっき私が極太の氷の槍でゾンビ牙棘背生竜の身体をくり抜いて倒した後、別のゾンビ牙棘背生竜には普通の氷の槍を落として身動きを封じるだけにとどめたからそう思っちゃったのかな?
でも、残念! それはチャラ男達があなたにカッコ良い所を見せられるように手を抜いてただけで、本当は極太の氷の槍だって連発できるんだよ? もちろん、そんなこと教えてあげないけどね!
「あなた達は私にお腹を貫かれちゃったこの男と同程度の力量しか持っていない感じだったし〜、4人いても余裕って感じ〜?」
淫乱斬り裂き魔はそんなことを言いながら刀身から血のように赤いオーラをユラユラ漂わせている妖刀を流れるような動きで地面に倒れているチャラ男の防具で覆われていない太ももの裏側に突き立てた!
「がぁああああ!?」
気絶から目覚め、悲鳴を上げるチャラ男!
妖刀の刀身から立ち昇る赤いオーラが一段と濃くなった!
あ〜!? もう、そんなにプスプス簡単に人を刺さないでよ!? ってか、あの刀、やっぱり血ぃ吸ってるよね!?
私はチャラ男に回復魔法を掛け、さらにプスプス刺されちゃうことのないように半球状の蜂の巣型魔法の盾を展開、他の3人にも同様の魔法の盾を展開しておいた! ついでに剣の斬れ味を良くする魔法も掛けておく!
「なっ!? 動けないマイケルになんてことを!?」
「てめえ、ぶっ殺してやる!! 女だからって容赦しねえぞ!?」
「あなたが幼女でしたら1対1で戦ってあげても良かったのですが、あなたは幼女ではありませんので4対1で戦わせてもらいます! 覚悟してください!」
ロリコン達に各種魔法を掛けた私は続けて龍の杖を振って円錐型の氷の槍を5本、淫乱斬り裂き魔の脛、太もも、お腹、みぞおち、顔目掛けて飛ばしてあげた!
けれど、その不意打ち攻撃は淫乱斬り裂き魔の振るった赤い刀の一閃によってあっさりと防がれてしまった!
「なっ!?」驚く私!
えっ!? 結構なスピードで飛んでいったと思うんだけど、アレ斬っちゃうのぉおおおお!?
淫乱斬り裂き魔は私の攻撃を意にも介さず、会話を続けていく!
「うふふ♪ そ〜んな見え見えの単調な攻撃、私には通用しないわよ〜? 私、たった1人で腐った牙棘背生竜や腐ったガーゴイル達がうようよ徘徊している階層で亡者達を撫で斬りして遊んでいたのよ? もっと手数を増やさないと私に攻撃を当てることなんてできないわ〜。まっ、がなるだけで一向に攻撃して来ない腰抜けの童貞さん達よりはマシかしら?」
そう言って鼻でマッド達のことを笑う淫乱斬り裂き魔!
「んだと、てめえ!! 裸にひん剥いて縄で縛ってそこら辺に転がして亡者どもの餌にしてやるから覚悟しろやぁあああ!!」
「マッド、縄で縛るとか変態入っていませんか!?」
マッド、ドン引きな発言してないであなたも戦闘に加わりなさいよ!?
私は心の中でボヤきながら淫乱斬り裂き魔の前後左右斜めの8方向から同時に氷の槍を放った!
けれど、その攻撃は淫乱斬り裂き魔の回転斬りによってあっさりと壊されてしまった!
「嘘!?」
なんで後ろからの攻撃も防げるのよ!? 危険察知能力でも持ってるの!?
◇◆◇
「幼女趣味のお前に変態呼ばわりされたくねえよ!? 大体、手足縛って身動き封じるって意味だかんな!?」
「マッド、ライト、馬鹿なこと言い合ってるんじゃない!! 前を見ろ、前を!」
「あっはっは!! あなた、面白いこと言うのね? 4対1だからって私に勝てるとでも思っているのかし、ら!!!」
淫乱斬り裂き魔が左手を左下から右上へと振り上げると、どこに隠し持っていたのか赤いナイフを4本、マッドに向かって斜め1列に投擲して来た!
しかし、淫乱斬り裂き魔の攻撃はそれで終わらない! 立て続けに右手を右から左へと動かし赤いナイフを4本、横1列で投擲して来る!
「なっ!? くっ!?」
マッドは雪音ちゃんの魔法で強化された剣を慌てて斜めに一閃、横に一閃して、飛んで来た赤いナイフ達を全て斬り裂いて粉砕した!
「はぁはぁ。ど、どうだ! そんな飛び道具、俺には効かないぜ! って、どこ行きやがった!?」
ドヤ顔して自分の余裕っぷりを見せつけようとしたのに、その相手が目前から消えていることに慌てるマッド!
ガガガガガン! ガガガガガン!
「うぉっ!? う、上からもナイフだと!? いつ投げやがったんだ!?」
そして、上から落ちて来て雪音ちゃんの掛けた蜂の巣型魔法の盾に弾かれる10本の赤いナイフの音を聞いてビビるマッド!
「ぐぁあああああ!?」
「ピート!? 大丈夫か、ピートぉおおお!?」
「そっちか!? なっ!?」
リーダーの絶叫が聞こえたマッドはリーダーの方に顔を向けて絶句した!
リーダーがいるであろう場所に数え切れないほど大量の黒い蝶達が、雪音ちゃんの掛けた半球状の魔法の盾の内部で蠢いている姿を目にしたからであった!
◇◆◇




