第10章 雪音ちゃんと村娘達 116 〜 雪音ちゃんと冒険者達、逃げて来た女冒険者に翻弄される!①〜
断続的に襲って来る亡者の団体を倒しながら下層へ下層へと進んでいくと前方から地響きが聞こえて来た!
ドッドッドッドッドッドッ!!!
ドッドッドッドッドッドッ!!!
ドッドッドッドッドッドッ!!!
タッタッタッタッタッタッ!!
「た、助けてくださぁ〜い!!」
女性の冒険者が3匹のゾンビ牙棘背生竜に追っかけられてるよ!?
私は即座に龍の杖を振って女性冒険者の後方に蜂の巣型魔法の盾を展開してあげたんだけど、女性冒険者の格好を見て私は思考を乱された!
なんであの人、籠手と脛当しか防具装備してないの? 逃げるのに重いから他の防具は脱ぎ捨てて来ちゃったのかな?
よく見ればお胸の部分なんて、そこそこおっきなお胸が半分ずつ見えちゃうセクシー系レースアップクロックトップキャミみたいな服だから、走ってる時にお胸がユッサユッサ揺れてて、いつお胸のポッチがポロリしちゃうか、見てるこっちがハラハラして仕方ないんだけど!?
ちなみに下の方はマイクロミニデニムのダメージ付きショートパンツみたいなの履いてるから、白くて少しふっくらとした太ももが剥き出しだ! 亡者達を自慢のボディーで誘ってるんじゃないかって言うぐらい露出過多なのはなんでなんだろうね!?
攻撃魔法を唱えることも忘れてそんなアホなこと考えてたら、横からチャラ男の喚く声が聞こえて来た! そっちに顔を向けると、
「ライト、その魔剣、俺っちにちょっと貸すじゃん!? 魔剣の黒い炎でリザード野郎どもを瞬殺してバインバイン胸を揺らしながら逃げて来るあの娘に格好良いところ見せてお近付きになりたいんだよぉおおお!」
と叫びながらチャラ男がロリコンの腰に差さってる魔剣ディーアを奪い取ろうとしている光景が目に入った!
女性が必死になってこっちに逃げて来てるって言うのに揺れてるお胸に注目してるとかチャラ男最低だよ! あっ、チャラ男が魔剣の奪取に成功して女性冒険者に向かって走って行っちゃった!
「男って馬鹿ですわねぇ〜?」
「ホントですねー」
「がぅがぅ」
ラスィヴィアとラピとクゥーは特攻して行くチャラ男を冷めた目で見送った!
私はチャラ男が向かった先の女性冒険者に視線を戻し、援護射撃しようと龍の杖を振り上げたところであることに気付いた!
「ねえ、あの女の人ってゾンビ牙棘背生竜の後ろからの突進噛み付き攻撃とか結構余裕で躱してない?」
「言われてみるとそうですねー? 後ろを見ていないのに測ったかのようにギリギリで躱していて凄いですよねー?」
「まるで後ろに目でもついているかのような動きなのですわぁ〜ん」
「がぅがぅ!! がぅがぅ!!」うしろから、まものきたー!
クゥーが急に後ろを振り返って吠え始めた! 私も身体ごと振り返って額に手をかざし、遠くを眺めてみた!
「おっと、私達の後ろからもゾンビ牙棘背生竜達が現れちゃったみたいだね? クゥー、教えてくれてありがと♪」
「がぅ♪」えっへんと胸を張るクゥー!
「通って来た所にいた亡者さん達は全て倒して来てるのにどこから湧いて来るんですかねー?」
ラピが頬に手を当てながら不思議がっている!
「ラピ様、1本道ではありませんでしたから、きっと脇道にいた亡者どもが魔剣に引き寄せられてしまったのですわぁ〜ん」
ラスィヴィアがやれやれといった感じで両手を上げて肩をすくめた!
「じゃあ、距離はまだ結構離れてるけど後ろの亡者達の処理はラピ達に任せるね? 私はこっちに逃げて来る女性冒険者とチャラ男達の援護してるから」
「雪音様、援護ではなく倒してしまったらいかがかしらぁ〜ん?」
「チャラ男があの女性冒険者にカッコつけたいみたいだから援護するにとどめておくよ。上手く行けば、ラピもラスィヴィアもチャラ男から言い寄られることもなくなると思うよ?」
「それは良いですねー♪ かなりウザくなって来ていましたから、そろそろ氷漬けにしてあげようかなーって思っていたところだったのですー♪」
ラピが超良い笑顔で毒吐いてるよ!?
「ラ、ラピ、とりあえず声掛けて来るだけで氷漬けにしちゃうのは止めてあげてね? お胸とかお尻触って来たら問答無用で氷漬けにしちゃっても良いから」
「はーい♪ その時は遠慮なく氷漬けにしちゃいますねー♪ じゃー、ちょっとクゥーちゃんとラスィヴィアさん連れて後ろの亡者さん達をお掃除して来ちゃいますねー♪ クゥーちゃん、ラスィヴィアさん、行きますよー?」
「がぅ!」
「お任せくださいまし!」
「ゾンビ系だけじゃなくてスケルトン系の亡者も混じってるみたいだから、ノロマなゾンビ達の間からいきなり飛び出して来るスケルトン系の亡者の攻撃には気をつけてね〜!」
来た道を走って戻って行くラピ達に私は軽く注意を促しておいた!
「がぅがぅ!」だいじょうぶー!
「はーい!」
「問題ありませんわぁ〜ん」
クゥーとラピとラスィヴィアは、後ろから迫って来ていた牙棘背生竜やガーゴイルの亡者達 ( ゾンビ系とスケルトン系の混成部隊! ) を倒しに向かった!
◇◆◇
チャラ男が逃げて来る女冒険者と追いかけて来る腐った牙棘背生竜の間に割って入り、黒い炎を放つ黒い魔剣を横薙ぎして腐った牙棘背生竜達を威嚇した!
腐った牙棘背生竜達は黒い炎を見て一斉に急ブレーキを掛けたかのようにズザザザザと地面を少し滑ってから、その動きを止めた!
「( おぉ〜! コイツら超ビビってるじゃん! 魔剣様様じゃね!? これなら余裕っしょ! )」
チャラ男は腐った牙棘背生竜達の動きを見て調子に乗った!
「美しいお姉さん、ここは俺に任せて早く向こうに逃げるんだ! 君の命は俺が守ってみせる! ( 決まった! 絶対、この女、俺っちに惚れたっしょ!? )」
チャラ男は顔だけ後ろに向けて女冒険者にキメ顔を放った!
「ま、前を見て、前を!!」
女冒険者がわなわなと震えながら腐った牙棘背生竜達の方を指差している!
「マイケル、余所見なんかしてんじゃねぇえええ!!」
「魔剣を両手で構えるんです! 早く!!」
マッドとロリコンが切羽詰まったような声で叫んだ!
「へっ?」
「ガァアアアアアアアア!!」
「うわぁあああああああ!?」
チャラ男の持つ魔剣が放つ黒い炎に怯んでいたと思われる腐った牙棘背生竜のうち1匹が、チャラ男のお腹目掛けて飛び掛かった!
ガィーーン!!!
「ひ、ひぃいい!?」
ドスン! カランカラン!
雪音ちゃんの掛けた新型魔法の盾によって怪我することなく守られるも、思わず尻もちをついて両手を地面についてしまうチャラ男!
そこへすかさず腐った牙棘背生竜がチャラ男のお腹目掛けて強靭な顎に無数に生えている先端が鋭利な極太の牙で噛みつこうとした!
ガィーーン!!
けれど、その攻撃は雪音ちゃんの掛けた魔法の盾によって弾かれてしまう!
「ガァアアアア!!!」
ガィン! ガィン! ガィン!
お腹に噛みつくことが出来なかった腐った牙棘背生竜は怒ってチャラ男のお腹目掛けて右、左、右、左と左右の手を叩きつけた!
「マ、マイケーーール!? そんな!?」
「ありゃ、死んだな。戦いの最中、余所見なんかして女に格好つけようとするからだ……。馬鹿な奴だったぜ。嫌いじゃなかったがな……」
「感傷に浸ってる暇はないぞ、マッド! ライトも呆けてるんじゃない!」
本来であれば今頃チャラ男のお腹は腐った牙棘背生竜の長くぶっとい指に生えた極太の鉤爪によってズタズタに引き裂かれていたところだったのだが、雪音ちゃんの掛けた蜂の巣型の魔法の盾によってチャラ男のお腹は無事に守られていた!
但し、六角形の盾をいくつも並べて構成されている蜂の巣型魔法の盾の一部は破損してしまった!
「おお、俺、生きてる!?」
「ぶ、無事だったか!? マイケル、早く魔剣を拾って首を斬り落とせ!!」
「おい、他のリザード野郎どもがこっちに来たぞ!!」
「き、来ます!!」
チャラ男の無事を確認したリーダーのピート、マッド、ロリコンが他の腐った牙棘背生竜との戦闘に入った!
「クッソ、このリザード野郎! 俺っちをビビらせやがって!!」
チャラ男は倒れたまま黒い炎を纏った黒い魔剣を拾って即、右から左へと薙ぎ払って自分に覆い被さっていた腐った牙棘背生竜の首をサクッと輪切りにした!
すると、魔剣に斬られた部分が無数の白い光の粒子となり、その光は残った腐った牙棘背生竜の身体を侵食するかのようにドンドンと広がって行った! そして、光が全身にまで行き渡ると腐った牙棘背生竜の身体は全て光の粒子となって大きく弾け、その姿を消したのであった!
「おぉ〜!? この剣、マジパネェじゃん!?」
魔剣の威力に感動するチャラ男!
「腐った牙棘背生竜を1撃で倒してしまうなんて、凄い剣を持っているんですね♪」
赤い刀を構えて様子を見守っていた女冒険者がチャラ男を褒めた!
「ま、まぁね! さっきはちょっと油断して恥ずかしい姿見せちゃったけど、俺が本気を出せばこんな感じじゃん?」
「危ない所を助けてくれて、ありがとう♪ 助かったわ!」
そう言って女冒険者は持っていた赤い刀を腰に差し、起き上がったチャラ男に正面から近付いて背中に手を回し抱きついた!
「( あっ、2つの柔らかいナニかが俺っちの胸板にムニュッと押し付けられて!? 俺、もう死んでも良いっす! )」
チャラ男は女冒険者に抱きしめられてデレッデレになった! 鼻の下がこれでもかって言うぐらい伸びている!
「クソッ! 俺らだって活躍したってえのになんでアイツだけ!?」
「良いじゃないか、マッド? この後に抱擁してもらえる可能性だってまだあるだろう?」
「マイケルのあのデレッとした顔、なんかムカつきません?」
少し離れた所で、雪音ちゃんの放った氷魔法によって動きを封じられた腐った牙棘背生竜を倒したマッド、リーダーのピート、ロリコンがチャラ男の方を見ながら、そんな会話をしていた。
「い、いやぁ〜、まぁ、当然のことをしたまでなんで、気にしないで良いんじゃないかな? 俺、マイケル! お姉さん、村か町に戻ったら俺と一緒にご飯でも食べに行っちゃったりしない?」
「あら、素敵なお誘いありがと〜♪ で〜も〜、その前に目を閉じてくださらない? あなたにお礼をね、差し上げたいの♪」
抱きしめるのを止めて1歩下がった女冒険者がにっこりと妖艶な微笑みをチャラ男に向けた!
「おいおい、マジかよ、あの野郎!?」
「マイケルのナンパ、初成功だな?」
「いつも失敗していますからね」
「お、お礼!? マジで!? ( お礼で目を閉じてって言われたらやっぱりアレじゃね!? キスだよな!? 抱きしめてくれたのがお礼じゃないんだから、キスのお礼なら単なるキスじゃなくて、し、舌とかも入れて来てくれちゃったりするんじゃ!? )」ドキドキ、ドキドキ!
「は、恥ずかしいから早く目を閉じてくれないかしら?」
赤い刀を腰に携えた女冒険者は両手を後ろに回してそこそこ大きい胸を前に少し突き出しながら太ももを擦り合わせて頬を赤らめている!
「は、はいっす! ( 俺っちの初キッスじゃん!? い〜〜やっほー♪)」
目を瞑ってドキドキするチャラ男!
「( く、首の後ろに片手を添えられて引き寄せられて行くじゃん!! ついに初キッ )」
ドスッ!
「うぐっ!? な、なんかお腹が、熱い、じゃん……」
「んぅ〜、この刀が肉に突き刺さる感触♡ 良いわぁ〜♪ もう最っ高♪」




