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第10章 雪音ちゃんと村娘達 109 〜 雪音ちゃん、熊さんと遭遇する!〜

 私達は断続的に(おそ)って来る亡者達の集団を倒しながらスケルトンズ(骸骨の)ウエイル(嘆き)のダンジョン目指してみんなで歩いていた。すると、


「がぅがぅ!」


 雪狼(フェンリル)のクゥーが何かを見つけたのか、ある方向に向かって走り出した!


「クゥーちゃん、どうしたんですかー? あっ!? あそこの滝が流れ落ちているところでグリズリー(灰色熊)さん達が亡者さん達に(おそ)われているのですー!!」

「助けなきゃ!」私はビューンと空高く舞い上がった!

「おい! グリズリー(灰色熊)なんて放っておいて早くダンジョンに行こうぜって、おいおい、あの金髪の嬢ちゃん、空飛びやがったぞ!?」


 絶叫するマッドに向かって背後を警戒しながら歩いていたチャラ男(マイケル)は顔を前に向けて笑いながらマッドに話し掛けた!


「はっはっは、マッド、何寝ぼけたこと言ってるんだよ? 人間が空飛ぶ訳ないじゃんって、うえぇえええええ!? マ、マジかよ!? 本当に空飛んでるじゃん!?」


 マッドが上空を見上げていたからチャラ男(マイケル)も上空を見上げてみると、白いパンツをはいた金髪の少女が宙に浮いている姿が見えてチャラ男(マイケル)も絶叫した!


「あっ、でもスカートの中が見えないじゃん!? なんで下はいてるんだよ!?」


 そして、雪音ちゃんが白いパンツをはいていることにひどく憤りを感じ先ほどより大きな声でチャラ男(マイケル)は絶叫したのであった!


  ( 注 : この異世界ではノーブラ・ノーパンが主流です! )


「ひ、飛行魔法だと!? そんな魔法まであの金髪の魔法使いは使えるのか!? し、信じられん!? それとも、空を飛ぶことができる古代の(エインシェント)遺物(レリック)を所持して!?」


 チャラ男のマイケルと同じく背後を警戒していた冒険者達のリーダーのピートも振り返って空を仰ぎ、宙に浮かぶ雪音ちゃんの姿を見て絶叫するのであった!


(すご)い! (すご)いですよ、雪音ちゃん! まさか空まで飛べるなんて幼女魔法使い最高だよぉおおお!! ふぉおおおおおお!!!」


 ロリコン(ライト)が黒い魔剣をブンブン振り回しながら興奮して絶叫している!


「キモいですわぁ〜ん」

「ツインテールの爆乳ちゃんに同感じゃん」

「ああ、まったくだぜ」

「なあ、今回の件が終わったら、ちょっと話し合いたいことがあるんだが?」


「奇遇だな、ピート? 俺も今そう思ってたところだぜ?」

「多分考えてることって、みんな同じじゃね?」


「多分な?」

「だな」


 3人の冒険者達は大きく(うなず)き合うのであった!


 ◇◆◇


 クゥーが「がぅがぅ!」と大きな声で吠えながら近付いて行くと熊さん達を(おそ)っていた人型ゾンビの何人かがクゥーの鳴き声に反応し「うぅううう」とか「あぁあああ」などと奇声を発しながらクゥーの方へと移動を開始した!


「がぅ! がぅがぅ!」 わーい、こっちきたー! あのおっきなどーぶつさん、らくになったー!


「あぉ〜ん!」


 クゥーは仔熊さん達を守ろうと仔熊さん達の前で亡者達と戦っている身体のおっきな熊さんにご主人様から使えるようにしてもらった蜂の巣(ハニカム)型魔法の盾を掛けてあげた!


「グワッ!?」


 突然目の前に青半透明色の壁ができてビックリする熊さん!


「「「「「あぁ〜! うぅ〜!」」」」」


 人型ゾンビ達は目の前に青半透明色の壁が出現しようと特に気にした様子もなく、その壁の向こうに透けて見える熊さんに向かって腐って骨が少し見えてる両手で攻撃を再開した!


 ガィーーン! ガィーーン!


「「「「「あ゛あ゛〜〜?」」」」」

「グワァ?」「クマー♪」「ッマー♪」


 青半透明色の壁に(はば)まれ、熊さんにまで攻撃が届かないことを不思議に思う人型ゾンビ達!


 そして、熊さんもまた、どうして今自分の身体が攻撃を受けなかったのか不思議でならなかった!


 けれど、その仔熊さん達は人型ゾンビの攻撃が母熊に届かなかったので、母熊が痛い思いをしなくて済んだことを喜んだ!


「がぅがぅ!」


 シュン、ザシュ! シュン、ザシュ! シュン、ザシュ!


 クゥーは自分の方へと向かって来た人型ゾンビ達の足元を流れるような動きで駆け抜け、すれ違いざまに攻撃をする瞬間、前足の爪に氷を(まと)わせ、長く鋭利な凶器へと変貌させた氷の爪で人型ゾンビ達の足を斬り飛ばしていった!


 ドサッ! ドサッ! ドサッ!


 片足をなくしてバランスを崩し、地面へと倒れて行く人型ゾンビ達!


「あぉ〜ん!!」


 クゥーがひと鳴きすると倒れた人型ゾンビ達の真上に巨大な氷の(かたまり)がゾンビの数だけ出現し、地面に落下して人型ゾンビ達を押し潰した!


 ◇◆◇


 ラピの言葉を聞いてすぐさま上空へと飛び上がった私は眼下にいる人型ゾンビ達を全員視界に入れてロックオンし、両手で握った青い宝珠を口に(くわ)えた龍の杖を振り下ろしながら叫んだ!


「青の(いかづち)よ! 熊さんイジメるゾンビ達をみーんな凍らせちゃえ!!!」


 ドガーン! ドドーン! ガシャーン!


 轟音(ごうおん)と共に天から落ちたいくつもの青い雷が人型ゾンビ達の身体を貫いた! そして、人型ゾンビ達はバチバチバチバチ!と激しく感電した直後、全員氷の彫像と化した!


「うんうん、これでもう大丈夫だよね♪ 熊さん達、ちょっと ( いやかなりかな? ) びっくりしちゃってるけど、緊急時だったから驚かしちゃったこと(ゆる)してね?」


 私は魔力波を飛ばして熊さん達の周辺に他の亡者達がいないかサーチしてみた!


「うん、この辺にいた亡者達はさっきのでみんな氷漬けになったみたいだね♪」


 私は熊さん達の側へと舞い降りると仔熊さん達がおっきな熊さんが傷ついて血が出てる所を『ママ、だいじょうぶ? いたくなーい?』って感じでペロペロ()めているのに気がついた!


「ハイ・ヒール!」


 私は急いでおっきな熊さんに向かって両手を掲げ、治癒魔法を掛けてあげた!


 オレンジ色の淡く優しい光がおっきな熊さんの身体を包み込むと、おっきな熊さんの傷口はみるみる綺麗(きれい)(ふさ)がった!


「グワッ? グワッ?」


 おっきな熊さんは不思議そうに首を(かし)げている!


「クマー♪」

「ッマー♪」


 仔熊さん達はママさん?熊の傷口がなくなったことに大喜びでママさん熊の周りを走り出した! もふもふ仔熊さん、激プリチー♪


「がぅがぅ♪」


 クゥーが足元で「よかったねー!」って鳴いたから私はしゃがんでクゥーの身体を抱きしめ頭を()()でしてあげた!


「クゥー、よく(おそ)われてる熊さん達を見つけてくれたね♪ ありがと♪」

「あぉ〜ん♪ くぅ〜ん、くぅ〜ん♪」


 クゥーが顔をスリスリと私の顔に擦りつけて来る!


「それにしても、魔剣を持ってる人とそのお仲間さん達が攻撃の対象(ターゲット)って訳じゃないんだね。ちょっと失敗しちゃったかも……」

「クマー♪」

「ウマー♪」

「グワ♪」


 私がちょっと(へこ)んでたら、いつの間にか私の背後に来てたおっきな熊さんが私の服の後ろ(えり)をパクッと(くわ)えて私を持ち上げた!


「ちょ!? なになに!?」

「がぅ!?」


 ちなみに、私が抱きしめていたクゥーも道連れになってるよ!


「やぁ〜ん、熊さん、何するのぉ〜!?」

「が、がぉ〜ん!?」


 それから、私はおっきな熊さんに身体を大きく左右に振られたと思ったらポーンと背中に向かって放り投げられた!


 ヒューーーン、ポスッ!


 私とクゥーは緑色の風に運ばれながら円を描くように宙を舞った後、無事におっきな熊さんの背中の上に(また)がるような感じで着地した!


「い、今の緑色の風って、風の魔法!? ただの熊さんじゃなかったんだ!?」

「が、がぅがぅ!」私の腕の中でうんうんと(うなず)くクゥー!


 魔力持ちの熊さん達だから人型ゾンビに狙われちゃったのかな?


「グワッ♪」

「クマー♪」

「ウマー♪」


 あっ、なんか誇らしげな感じの鳴き声が熊さん達から聞こえて来た!


 そして、熊さん達が移動を開始し、滝の裏側にある洞窟の中に入って行こうとする!


「く、熊さん、待って待って〜! えっとね、私達これからやらなきゃいけないことがあるから熊さん達のお礼を受けてる時間がないの!」

「グマッ!?」

「クマッ!?」

「ッマー!?」


 熊さん達のショックを受けたような声が聞こえて来た!


「ご、ごめんね? 私達、この近くにある亡者がいっぱい出て来るダンジョンに大事な用があるんだよ」

「グワッ! グマグマ、グマッ♪」

「クマー♪」

「ウマー♪」


「えっ、ダンジョンまで乗せてってくれるの?」

「グマ♪」

「クマー♪」

「ッマー♪」


「熊さんの背中に乗って移動とか貴重な体験が出来るから私はすっごく嬉しいけど、危なくないかな?」

「グッマー! グマグマ、グンマー!」

「クマクマ! クッマー!」

「ウマウマ! ウッマー!」


「えっ、私とクゥーがいるから行きは問題ないし、帰りは私とクゥーが亡者達を蹴散らした後だから安全だって? いや、確かにそうなるとは思うけど、うーん、まぁ、熊さん達が良いならそれでいっか? じゃあ、亡者達がいっぱいいるダンジョンに連れて行ってくれるかな?」


「グワッ♪」

「クマー♪」

「ッマー♪」


 って熊さん達が嬉しそうに鳴くから、私もそれに釣られて「じゃあ、レッツゴー!」と熊さんの背中の上で拳をお空に向かって突き出した!


 それを合図に熊さん達がダンジョンの方に向かってゆっくりと走り出した!


 ◇◆◇


「おいおい、あの金髪の嬢ちゃん、グリズリー(灰色熊)に乗って行っちまったぞ!?」

「グ、グリズリー(灰色熊)をテイムとかマジぱねぇじゃん!?」

「し、信じられん!? あの気性の荒いグリズリー(灰色熊)が人間を背中に乗せるだなんて!?」

流石(さすが)、俺の雪音ちゃんですね! 雷を落として敵を氷漬けにしてしまう見たことも聞いたこともない大魔法を使えるだけでなく、まさかグリズリー(灰色熊)までテイムしてしまうなんて(すご)過ぎます!!!」

「ラピ様ぁ? 我慢せずひと思いに凍らせてしまえばよろしいのではないかしらぁ〜ん?」

「い、いえ、大丈夫なのですよー? まだこれぐらいのことで怒ったりはー」お手手プルプル!


「我慢は身体に毒だと思いますのに……」

「さ、さー、早く雪音ちゃん達のあとを追いましょー!」

「お、おう、そうだな。俺達も行くか?」

「ああ」

「あのグリズリー(灰色熊)が進行方向にいる亡者どもを蹴散らしてくれると助かるんだけどなぁ〜」

グリズリー(灰色熊)には無理だと思いますよ? あの巨体でも数の暴力には抗えなかったみたいですし。ですが、きっと俺の雪音ちゃんが(すご)い魔法を使って道を切り開いてくれますよ!」


「また俺のって!? うぅー、雪音ちゃんは私の雪音ちゃんなのにー……。ブツブツ。や、やっぱり氷漬けにしちゃって1度()らしめておいたほうがー……。でも、そんなことしたら、あとで雪音ちゃんに怒られちゃいますしー……。ブツブツ。あっ! 亡者さん達が(おそ)って来た時にうっかり事故ってことで氷の槍をぶつけて亡き者にしちゃえばー……」

「( ラ、ラピ様が苦悩されておりますわぁ〜ん!? ここは(わたくし)の出番なのですわぁ〜ん! ) ちょっと、そこの幼女好きの人間!!」


「は、はい!? 俺ですか!?」

「なんでライトがラスィヴィアさんから声掛けてもらってんの!? ズルくね!?」


「雪音様の名を言う時に『俺の』をつけるのをお止めなさい! 非常に不愉快ですわ!! 次言ったらその首()ね飛ばしますわよ!」

「そうだぞ、ライト! 俺もそれは良くないと思っていたところだ!」

「そんな!?」

「『そんな!?』じゃねえよ、ライト。彼氏でもねえのに彼氏(づら)すんなって、それだけの話だろうが?」

「ラスィヴィアさん、ライトの奴は俺っちが後でよーくシメておくから、そんな怖い顔すんなって! 綺麗(きれい)なお顔が台無しだぜ? ( ふっ、俺、決まったんじゃね? ) ぶべらっ!?」


 ラスィヴィアの渾身(こんしん)の一撃がチャラ男(マイケル)の顔面に炸裂した!


「わわ、(わたくし)の肩に腕を回しただけに飽き足らず、わた、(わたくし)の胸をさわ、触りましたわねぇ〜〜!! 殺す!!!」ワナワナワナ!

「ちょ待っ!? 手が、手がちょっと当たっちゃっただけじゃん!? ワ、ワザとじゃないんだ!? だから、そんなに怒らなくても!?」ガクガク、ブルブル!

「普通、恋人でもねえのに肩ぁ抱くかあ? 馬鹿だろ、あいつ(マイケル)

「馬鹿だな」

「馬鹿ですねー。ですが狙ってやっていたと思いますよ? 前にも同じ光景を見たことありますし」


「ライトぉおおお!? それ今言わなくても良いんじゃね!?」

「おーーーーほっほっほっほ!!! 死ぬ覚悟はできたかしらぁ〜ん?」ギロリ!!

「ラスィヴィアさん、ラスィヴィアさん、良い子ですから落ち着いてくださいねー?」


 ラピが後ろからラスィヴィアを優しく抱き締めた! その効果は絶大だった!


「は、はい〜♡ ラピ様がそうおっしゃるのでしたら! ( ラピ様からの抱擁ハ・グ!!! 下等な人間に胸を触られたのは不覚でしたが、怪我の功名なのですわぁ〜ん♡ )」

「ラスィヴィアさん、私の代わりに注意してくれてありがとうなのですよー♪ それと、イヤな思いさせちゃってごめんなさいなのですー」


 本日、ラピのラスィヴィアに対する信頼度がうなぎ登りにアップしたのであった!


「と、当然のことをしたまでなのですわぁ〜ん!」


 そう言ってラスィヴィアは体勢を入れ替え、ラピにここぞとばかりに抱きついた!


 そんな光景を目にした4人の冒険者達は……。


「良いな……」

「ああ、なんか目覚めちまいそうだぜ……」

「俺、あの間に挟まれたいじゃん……」

「まぁ、悪くはないですが俺は幼女同士がキャッキャしてる方が良いですね」


「「「お前(ロリコン)には聞いてねーよ!!!」」」


 ラピとラスィヴィアの仲が深まっていく一方で、リーダーのピート、短気のマッド、チャラ男のマイケルの3人とロリコン剣士ライトの仲は亀裂が入っていく一方であった!


 ◇◆◇

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