第10章 雪音ちゃんと村娘達 107 〜 ゾンビ黒山羊との戦いが終わって①〜
一方、死に物狂いで電撃タイプのゾンビ黒山羊達を倒した4人の冒険者達はと言うと……。
「お、終わったのか?」
「みたいですね?」
「し、死ぬかと思ったぜ」
「な、なぁ、やっぱりライトの持ってる宝剣のせいなんじゃないか!? 今までこの辺りでこんな数の亡者の群れに襲われることなんてなかったじゃんか!?」
「よ、夜中だからじゃねえか? いつも通ってるのは日中だしよお?」
「マッド、お前だってもう分かっているんだろう? マイケルの言う通り、きっとダンジョンで手に入れた宝剣のせいだったんだ。村から出てまだそんなに離れていないって言うのに、あの数の亡者の群れと遭遇するなんて異常過ぎる。今が夜中だってことを考慮に入れてもな?」
「ふっ、雪音ちゃんの言っていたことは正しかったってことですよ!」
ロリコン剣士ライトは右手で前髪をファサッとかき上げ、仲間に向かってドヤ顔をした! そして、夜空に浮かぶ2つの月に向かって両手を大きく広げながら、
「あぁ〜 、小さくてすっごく可愛いってことだけでも俺のお嫁さんにしたいって言うのに、魔法も使えて古代文字にも精通しているのですから、これはもう俺のお嫁さんにするしかありませんよね!?」
などと語り出した! 最後のセリフを振り返りながら仲間の冒険者達に言って同意を得ようとするもスルーされてしまった! ただでさえキザでウザいと思われていたライトであったが、幼女趣味がバレたこともあって、仲間達の反応は冷たかった!
「ライトの言った大半の内容はどうでも良いんだけどさ、あの金髪のおチビちゃんが言ってたことって、やっぱ本当のことだったんだよな……。俺、宿であんなガキとか暴言吐いちまったんだけど、俺ってヤバいんじゃね?」
「マイケル、謝ればきっと許してくれるさ。さっきだって俺達がヤバい時にあの金髪の魔法使いさん達は助けてくれただろう?」
「クソッ! 俺なんか酷いことしか言ってねえぞ!? なんて言って謝りゃあ良いんだ!?」
「マッド、裸で土下座しましょう! 俺も一緒に裸になって謝ってあげますから!」
◇◆◇
ロリコン剣士さんとそのお仲間さん達のやり取りを聞いて私は思った!
裸土下座……。それは、自分の情けない姿を晒しながら謝るとゆー、普通なら絶対にやりたくない謝罪方法だ! それを一緒にやってあげようだなんてロリコン剣士さんは仲間想いなんだね!
でも、私は男性のそんな姿見たくないから、お断りをしよう! そう思って声を掛けようと思ったそのとき、多分、冒険者達のリーダー?のピーなんとかさんがロリコン剣士さんにこう言った!
「ライト、お前は自分の裸を見せたいだけなんじゃないのか?」
「なな、何を言い出すのさ、ピート!? そそ、そんな訳あるはずないじゃないですか!? 俺の無駄な脂肪がついていないこの引き締まった身体を見せて顔を赤らめて恥ずかしがる雪音ちゃんが見たいだなんて、そんなこと思ってもいませんよ!?」
仲間想いなんかじゃなかったよ!? 単に自分の露出趣味を満たすためだったなんてロリコン最低だよ!!
「さてさて、冒険者のみなさーん、 ここで質問なのですよー? しばらくすればまた亡者の団体さんがやって来ると思うんですけどー、アヴァリードの町に向けて移動しながら戦いますかー? それともダンジョンの元あった場所に試練の宝剣を捨てに行きますかー?」
「おい、どうすんだよ!?」
「アヴァリードの冒険者ギルドで宝剣を換金して大金を手に入れるはずが、こんなことになるとはな……」
「黄金造りの柄に埋め込まれてる宝石の部分だけでも外して持って帰れば良いんじゃね?」
「マイケル、良いこと言うじゃねえか? でけえエメラルドの宝石が5つと、その周りに小さいダイヤモンドの宝石が結構嵌まってるから、そこそこの値段になりそうだよな?」
———— き、貴様ら、妾を解剖すると申すのか!? そのようなことさせぬのじゃ!! 妾の主様が!! ————
ディーア、そこは自分の力でなんとかしようとするところじゃ……。
「でもこれ、外せるんですかね?」
ロリコン剣士が試しに小さいダイヤモンドの宝石をつまんだり引っ掻いたりして外そうと試みた!
———— あっ、こら!? くぅ♪ そ、そこは敏感な所なのじゃ!? はぅ♪ つ、爪を立ててグイグイとしちゃダメなのじゃ〜〜!? ————
ダイヤモンドの部分って魔剣ディーアの弱点なんだ……。今度言うこと素直に聞かなかったらダイヤモンド弄って大人しくさせれば良いのかな? 魔法の袋に閉じ込めちゃうぞって脅しよりもマシだよね?
じゃなくて! 話を戻そう!
ディーアが自力でなんとかしようとして、この冒険者達を全滅させようと大量に亡者召喚し始めたら困るから宝石外そうとするのを止めさせなきゃ! そう思って声を掛けようとしたらラスィヴィアが先に口を出してくれた!
「外せても、その宝石こそが魔物を引き寄せている場合だってありますわぁ〜ん。短慮な行動は身を滅ぼすだけなのですわぁ〜ん」
「マジかよ!?」
「こ、これもダメなのですか!?」
———— はぁ、はぁ、た、助かったのじゃ〜。妾とタメを張る豊かな胸を持った魔族よ、感謝するのじゃ! ————
良かったね、ディーア? でも、ディーアの感謝の声はラスィヴィアには聞こえてないと思うから、あとでお礼を言っておいてあげるね!
「おい、金髪の嬢ちゃん! この胸のでけー姉ちゃんの言うことは本当なのか!?」
「もし、そうなら今回の探索は俺達のパーティーにとって大赤字になってしまうんだが、今の話は本当なのだろうか?」
「魔剣の意識体 ( であるディーア ) も、魔剣に込められた魔力が残ってる限り亡者達が引き寄せられるって言ってたし、その魔力が込められてる所って柄に埋め込まれてる5つのおっきなエメラルドの魔石だからラスィヴィアの言う通りなんじゃないかな?」
「じゃ、じゃあ何か!? 宝石の部分すら持ち帰れないって言うなら俺達がここ数日ダンジョンに潜ってた苦労は全部パァーってことじゃんかよ!?」
「そう言うことになるんだろうな。非常に残念な話だが……」
「雪音ちゃん、エメラルドの魔石に魔力が込められているんですよね? それなら、その周りに埋め込まれてる小粒のダイヤモンドを外して持ち帰る分には」
少しでも利益を出そうとロリコン剣士が抵抗を試みるも、ラピがすかさず容赦のない突っ込みを入れる!
「魔剣さんに意識があるのでしたら、そのような行為は魔剣さんを怒らせる結果になるのではー?って私思うんですけどー、止めておいた方が良くないですかー?」
「がぅがぅ」ラピの言葉にうんうんと頷くクゥー!
———— その通りなのじゃ! もうすでにプンスカプンなのじゃ!! 段階をすっ飛ばして上位個体の亡者どもをここに呼んでくれるのじゃ!! ————
あ〜もう、ディーア怒っちゃったじゃん!?
『ディーア、あとでまた魔力流してあげるから、それは絶対に止めてね!』
私はテレパシーの魔法を使って魔剣ディーアに強めに呼び掛けた!
———— むぅ、主様がそう妾に命じるのであれば大人しく従うのじゃ。じゃが、今度魔力を流す時はもう少し優しく注ぎ込んで欲しいのじゃ ————
『はいはい、ダイヤモンド優しく撫でながら注ぎ込んであげるね』
———— そ、それはダメなのじゃ!? 主様!? 主様ぁ〜!? ————
「おい、金髪の嬢ちゃん」
「なにかな、マッドさん?」
この人の名前は流石に覚えたよ! だって、「おい、マッド!」とか「止めないか、マッド!」って何度もこのパーティーのリーダーっぽい人に名前呼ばれてたし!
「さっき、魔剣に込められた魔力が残ってる限り亡者どもが引き寄せられるって言ってたよなあ?」
「うん、言ったけど、それがどうしたの?」
「つーことはだ! さっき大量の亡者どもと俺らが戦う羽目になったのはお前のせいだってことで良いんだよな!? お前、知ってて魔力を込めたんだろう!?」
「おいマッド!? よさないか!?」
「待ったピート! その点はマッドの言う通りなんじゃね?」
「そうだよ? だってああでもしないと、その試練の宝剣を所持してることがどれだけ危険か分からなかったでしょ?」
「ゆ、雪音ちゃんが俺達を騙していただなんて、そんなの嘘ですよね!?」
「お、お前は知ってて俺達を危険に晒したんだぞ!? なのにどうして、そんなさも当然のことをしたまでって面あしてんだ!? あぁああん!?」
だって私の言うこと信じてもらうにはコレが1番手っ取り早いと思ったんだもん。仕方ないじゃん? だから、そんなにメンチ切って怒らないで欲しいな? 死なないようにちゃんと気を配ってたし、防御魔法だって掛けてあげてたんだよ? 身の危険を感じてもらおうと透明な盾にしておいたから気付かなかったと思うけど……。
「おーーーーほっほっほっほっ! ちゃんちゃらおかしいのですわぁ〜ん♪」
「何がおかしいってんだ!?」
「おかしいに決まっておりますわぁ〜ん。お前達 ( のような下等生物 ) が今生きていられるのは雪音様がお前達に向かうあの臭くて醜い亡者どもを魔法でさり気なく倒して数を調整していたからだと言うのに」
「ラスィヴィアさん、それ言っちゃったら可哀想ですよー。彼らだって力がないなりに一生懸命頑張って亡者さん達を倒していたんですからー!」
ラピ、それフォローになってないよ!?
「もー、ラスィヴィアもラピも火に油注いでどうするのよ!? でもまぁ、ラスィヴィアの言った通りよ。あなた達を死なせないように魔法で支援はしてたから死ぬ危険性はコレっぽっちもなかったわ。仮に大怪我しちゃっても回復魔法で癒せるし!」
「俺達はこれでもC級なんだぞ!? なのに『力がないなりに』とか馬鹿にするにも程ってもんがあるだろ!?」
「つまり、そういう発言がポロッと出てしまうぐらいお前達と私達との間に力の差があるということなのですわぁ〜ん。雪音様やラピ様はたったお1人で黒山羊を倒せますけど、お前達は倒せるのかしらぁ〜ん?」
どうしてラスィヴィアはさらに煽るようなこと言っちゃうかなぁ? 2人ともひょっとして怒ってるの?
「なん、だと!?」
「べ、黒山羊をたった1人で、ですか!?」
「し、信じられん!?」
「マジかよ!? あんなの1人で倒すだなんて無理じゃね!?」
「ラスィヴィア、どーどー! 私達は古代の武器持ってて遠距離から魔法で攻撃できるんだから、私達と違って普通の剣を使って接近戦で戦わなくちゃいけない彼らと比べちゃうのは可哀想じゃないかな?」
「やはり古代の武器持ちだったか!!」
「無詠唱で魔法を放っていましたからね! 納得です!」
「しかも今、私達って言ったよな!? ってことは少なくとも2本は古代の武器持ってるってことじゃん!?」
「クソッ! 古代の武器の力で勝てるってだけの話じゃねえか! 俺らだって古代の武器持ってたら黒山羊にだって遅れは取らないぜ!」
「でしたら、私達も黒山羊なんかに遅れを取ることはないってことでー、あなた達に命の危険はなかったってことになりますよねー? 問題解決ですねー♪」
ラピがパチンと両手を合わせ、ニッコリと微笑みながらそう言い放った!
「うっ、そ、それは!?」
「マッド、お前の負けじゃね?」
「マッド、俺達が腐った黒山羊どもから電撃攻撃を受けずに攻撃できたのは彼女達が吸雷の杭を地面に大量に撃ち込んでくれたからだ。的確に魔物の攻撃を封じる知識がきちんとある。単に古代の武器の力だけに頼っている冒険者達ではないと思うぞ?」
「吸雷の杭ってアレだろ? ビリビリスパイダーの糸を巻き付けた奴だよな?」
「ビリビリスパイダーってこの辺だと最近滅多に拝めなくなった魔物ですから、吸雷の杭は今かなりの高額になっている魔道具のはず! それを惜しみもせず大量に使ってくれていたと言うことは雪音ちゃんは俺達のことを騙していた訳じゃなかったのですね!」
「ちっ、それって結局財力に物を言わせてるだけじゃねえか……」
「とりあえず、私達があなた達を騙してそれを奪おうとか思ってないし、あなた達を死なせるつもりもなかったって分かってもらえたかな? 私はただそれを持ってると亡者達が集まって来て危険だってことをあなた達に身をもって知って欲しかっただけだよ」
「アヴァリードの町でその魔剣が売られちゃいますと亡者さん達の集団が魔剣に引き寄せられてアヴァリードの町にやって来て困ったことになっちゃいますからねー」
「がぅがぅ」
「それに雪音様が魔剣を奪おうと思っていらしたら先ほどお前達を助けたりなんかせず、亡者どもにお前達が殺られるのを待って魔剣だけ回収しておりますわぁ〜ん」
「「「「っ!?」」」」
ラスィヴィアの言葉を聞いて驚愕し、汗をかきながら後ろに1歩後ずさるロリコン剣士とその仲間達!
「ちょっとラスィヴィア、そーゆー変なこと言わないでよね? 誤解されちゃうでしょ? あなた達も緊張しないで欲しいな? 私、そんなことしないし!」
「雪音様ぁ? そもそも、どうして私達がコイツらの尻拭いをしないといけないのかしらぁ〜ん? 雪音様が宿で魔力をその魔剣に込める前からコイツらは亡者どもに何度も襲われていたのでしょう? その時にダンジョンで手に入れた宝剣が呪われた魔剣だった可能性を考えたりしなかったのかしらぁ〜ん?」
———— おい、そこの魔族! 妾を呪われた魔剣扱いするでない! 妾は亡者どもを滅する神聖な剣なのじゃぞ!? おい、聞いておるのか!? ————
ディーア、亡者を引き寄せちゃう時点で神聖な剣って言い張るのは詐欺だと思うよ?
「そうですよねー? それに石碑を発見した時に石碑に刻まれた古代文字が読めていれば、その魔剣をダンジョンから外へと持ち出すような愚かな行為はしなかったはずですからねー。無知は罪なのですー」
「う、うるさい! そもそも古代文字を解読できる冒険者なんて滅多にいないんだ! 仕方ないだろうが!?」
「私が古代文字で書かれてた内容教えてあげたのに信じてもらえなかったけどね?」
「あんな内容じゃあ、お前達が俺達がダンジョンで苦労して手に入れた宝剣を手放させて横からかすめ取ろうと企んでると思っても仕方ねえだろ!?」
「そうね。そう思ったからこそ、私は魔剣に魔力を注ぎ込んで現実を知ってもらったんだよ?」
「ああ、十分思い知らされたよ!! 死ぬかと思ったがな!」
「流石にあれだけの亡者どもに襲われれば、あなたの話を信じるしかないのだろうな」
「亡者どもばっかりとダンジョンの外で出くわすなんて普通ありえないもんな!」
「前もって言ってくれれば雪音ちゃんを疑わないで済んだのに……。でも、幼女の可愛いドッキリのイタズラだと思えば悪くありませんね! しかも、幼女からさり気なく守られていたとか、もー最高です! 雪音ちゃんからの愛を感じます!」
両手を大きく広げて語り出したロリコン剣士にみんなはドン引きだ! もちろん私もドン引きだ!
別にあなただけ守ってあげてた訳じゃないから、熱い視線をこっちに向けて来るの止めて欲しいなぁ? マッドみたいに『ふざけんな!! お前のせいで襲われたんだぞ!?』って怒って来るのは理解できるけど、ロリコン剣士の考えは理解できないよ……。
もし、魔剣ディーアの意識体が幼女だったら ( 幼女じゃなくてナイスバディーのメンヘラ黒水晶娘だけど…… ) 、魔剣に、はぁはぁ興奮しちゃったりするのかなぁ? するんだろうなぁ……。ディーア、良かったね、幼女の身体じゃなくて!
さて、そんなことどーでも良いからとりあえずロリコン剣士はスルーして、魔剣をどうするつもりなのか冒険者達に聞かないとね!
「それで亡者達を引き寄せちゃうその魔剣はどうするの? まだアヴァリードの町でお金に変えようと思ってるのかな?」
「チッ、捨てに行けば良いんだろう? 捨てに行けばよお! クソッ!」
私に1番噛み付いて来たマッドが地面に落ちてる石を蹴っぽってブーたれながらも、とうとう折れてくれた! やったね!
「ダンジョンに捨てに行くしかないのだろうな」
冒険者のリーダーさんは残念そうな顔して肩を落とした!
「あ〜ぁ、大金手に入れて町で巨乳の可愛い娘ちゃん達とウハウハだと思ったのに……」
チャラい容姿に考えてることもチャラいマイケルは天を仰いだ!
「やっぱり手放すしかないんですね……。大金を手に入れて幼女専門の孤児院を開く夢が遠のいてしまいました……」
ロリコン剣士は手に持った魔剣の黒水晶のような剣身を眺めながらボソりと呟いた!
よ、幼女専門の孤児院!? ダ、ダメだ、あの人、ヤバ過ぎる!
「お、おま、そんなこと考えてたのかよ!?」
「引くわー、マジ、引くわー」
「ライト、お前って奴は…… ( ライトのお宝に対する嗅覚の鋭さはもったいないが、今回の件が片付いたらライトにはパーティーから抜けてもらうことにしよう!)」
「えっ、どうしたんですか、みなさん? 微妙な顔をして?」
いや、パーティーメンバーの1人 ( しかも、ロリコン! ) が幼女専門の孤児院開くとか危ないこと考えてたら微妙な顔もするよね!? 世間様に同類と見られちゃいそうだもん!
「はっ!? ま、待ってください! みなさん、もしかして変なこと考えていませんか!? 俺はただ純粋に孤独になってしまった可哀想な幼女達の心を癒してあげようと思ってですね!? なぜ、みんな後ろにさがるんですか!?」
今、多分『変なこと考えてるのはお前だろ!?』って突っ込みを全員が心の中でしたと思う!
ロリコン剣士が女の人だったら、まだ許されたと思うけど男の人が幼女専門の孤児院開いたら、ねー? 怪しまれること間違いなしだよね、うん! だって通報案件だもん!




