第10章 雪音ちゃんと村娘達 103〜 雪音ちゃん、変態魔剣とお話する!①〜
私の社会奉仕活動中の下僕である罪人達5名と会話を終えた私達が宿屋を出ると、亡者達を引き寄せる魔剣と知らずにダンジョンから持って来てしまった4人の冒険者達も渋々と私達のあとについて宿屋を出て来た。とりあえず村の外まで移動してから私は冒険者達に声を掛けた!
「えっと、あなた達は明日どこに行く予定だったの?」
「あぁ〜ん!? ダンジョンで手に入れたお宝を換金するためにアヴァリードの町へ向かうつもりだったんだよ!! くそっ、なんだってこんなことに!?」
私の質問に答えてくれた冒険者その1が地面に落ちてる大きめの石を蹴っぽった! すると、茶髪のチャラい感じの冒険者が機嫌の悪いつり目の冒険者に近付いてその肩に腕を回し、落ち着かせようと語り掛ける!
「マッド、まぁ、そんなにイライラすんなって! 気持ち切り替えて行こうぜ! 女日照りの俺らのパーティーにあんなにも胸がデカくて素晴らしい子達が2人も今一緒にいるんだからさ、もっと楽しそうに会話を」
どーせ私はラピやラスィヴィアみたいにお胸おっきくないですよーだ! ふんっ!
「はあ!? こんな状況になった原因を作ったヤツらと楽しそうに会話なんてできるかよ!? お前ひとりで相手してろよ!!」
「あっ、マジッ!? お前が抜けてくれるって言うなら助かるわ! ライトはどーせ金髪のおチビちゃん狙いだから良いとして、そーすると俺ら3人で残った2人の巨乳ちゃん達の取り合いになっちまうかな〜って思ってたからさ! んじゃ、そーゆーことで!」
「はっ、はぁあああああああ!? マイケル、おま、何言ってんだ!?」
チャラ男の言葉に絶叫する短気つり目男! そして、チャラ男は目にハートマークを浮かべながらこっちに向かって走って来た!
「ねぇねぇ、そこのゴスロリちっくな服着てるナイスバディーのおっ姉さぁ〜〜ん! お名前なんて言うの〜? 俺、マイケルって言うんだけどさぁ〜?」
宿屋で、そして今しがた再びチャラ男に貧乳扱いされた私はチャラ男が爆乳のラスィヴィアにアプローチ掛け始めた様子をプルプルと握り拳を震わせながら眺めていると、いつの間にか私に近寄って来ていたロリコン剣士さんが横から話し掛けて来た!
「あっ、雪音ちゃん、俺の名前はライトって言います! さっきの雪音ちゃんの話が本当だとするとこの宝剣、どうしたら良いと思いますか?」
ロリコン剣士さん、いきなりちゃん付け呼びですか? 宿屋ではお嬢さんって呼んでくれてたのに……。
———— 見捨てられたのじゃ。妾は望まれた通りに黒い炎を出したと言うのに見捨てられたのじゃ。あやつは鬼なのじゃ。極上の魔力を妾の身体に勝手に注ぎ込んで妾を悦ばせるだけ悦ばせておきながら捨てたのじゃ。鬼なのじゃ。鬼なのじゃ ————
のわぁ〜!? ロリコン剣士さんが持ってる変態魔剣から怨嗟の声がダダ漏れだぁああ!? なんか悪い男に引っ掛かって捨てられた女の人の恨み節を聞いてるみたいで物凄ぉ〜く心苦しいよぉおおお!!
この、黄金造りの柄には大きなエメラルドの魔石が5つも埋め込まれ、剣身が黒水晶のように黒い魔剣を “亡者達を引き寄せちゃう魔剣” だからこれからダンジョンの元あった場所に戻しに行こうと思ってるだけに、魔剣のこのセリフを聞くのは非常に心苦しいものがあった!
———— むむむ、この魔力の匂いは!? おぉおおおお!? ————
ヤバい、ついに気付かれちゃった! ま、至近距離にいるんだから当たり前なんだけどね! ば、罵声が飛んで来ちゃったりするのかな? ドキドキ! ドキドキ!
———— お主ぃいい! 妾のために戻って来てくれたのじゃな!? 妾はきっと戻って来ると信じておったのじゃ!!————
ポカーン。
いや、貴女、ついさっきまで恨み言いっぱい言ってたじゃん!? 変わり身早過ぎぃいい! ってゆーか、なんかドラマで見た騙されても騙されても泣きながら自分の所に男が戻って来るのを待ってて、男が気紛れに戻って来た瞬間の女の人を見てるみたいで、なんとも言えない気持ちになって来るよ!!
はぁー、仕方ない。延々と思念波送られて来ても困るから魔剣さんとお話しするか……。
「あの、ライトさん? ちょっとの間、その宝剣をまた借りても良いかな?」
「も、もちろんです! どうぞ手を切らないよう気をつけて手に取ってくださいね!」にこにこ。
「ありがと♪」
「( あぁ〜可愛いなぁ、この笑顔! さっき剣をジッと見つめて難しい顔していたのは、また触りたかったのを我慢でもしていたのかな? 遠慮なんてしないですぐに言ってくれれば良いのに! でも、そのおかげで視線がずっと宝剣に向いていたから、こっちは雪音ちゃんの可愛くて綺麗なお顔をじっくりと観察できて幸せだったけど! )」などとロリコン剣士に思われてるとは露ほども思っていない雪音ちゃんであった!
私はロリコン剣士さんから変態魔剣を受け取り、金色の柄を両手で握って、そこに埋め込まれている大きなエメラルドの魔石に向かって魔力を少し流し込んでみた!
べ、別に可哀想に思ったからじゃないからね!? 聞きたいことがあったから、そのついでになんだから勘違いしないでよね!?
———— くぅう、妾の身体に熱い魔力が入って来たのじゃ♡ 妾との約束、忘れていた訳ではなかったのじゃな!? ————
ここで魔力を流すのをストップする私!
———— どうして魔力を注ぐのをすぐに止めてしまうのじゃ!? わ、妾がお主のことを信じていなかったのを怒っておるのか!? そうなのじゃな!? 妾が悪かったのじゃ! なんでも言うことを聞くから妾を赦して欲しいのじゃ! ————
この子、ちょっとチョロ過ぎじゃないかなぁ? と思いながらも、聞きたいことがあるから利用させてもらうことにした!
私は目を閉じてテレパシーの魔法を使い、変態魔剣に話し掛けてみた!
『私、貴女に聞きたいことがあるんだけど、それに答えてくれたら、もう少しだけ魔力を流し込んであげても良いよ?』
———— 妾に聞きたいこととな? お安い御用なのじゃ! 何を聞きたいのじゃ? 妾に答えられることならば、なんでも答えるのじゃ! ————
『貴女って試練の宝剣なんだよね? 貴女が自分の意思で亡者達を呼び寄せてるのかな? それとも、貴女の意思とは関係なく亡者達は貴女に引き寄せられてるのかな?』
———— 前者でもあり、後者でもあるのじゃ! それと妾の名はオーディーアルなのじゃ! ディーちゃんとか、ディーアと呼んでくれると嬉しいのじゃ♪ そうなのじゃ! お主には妾の姿を特別に見せてあげようぞ♪ ————
『えっ? それって、ど』うゆーことなんて思ってる間もなく、私は真っ暗な、だけど青い光の粒子達があちこちで漂ってるから人の姿は普通に見られる不思議空間の中にいて ( 宇宙みたいな所って感じかな? )、目の前にはおっきなお胸を惜しげもなく外気に晒し、地面に突き刺さった魔剣の柄頭に両手を置いて偉そうに立っているナイスバディのすっぽんぽんの女性がいた! すっぽんぽんと言っても身体はスライムみたいに半透明 ( 色は真っ黒! ) なのでエロくは感じない! 色のついたガラス細工の女性像みたいですっごく綺麗〜♪
じゃなくて!! そんなことより私、あの冒険者達の目の前で転移しちゃった!? でも、手に魔剣を握ってる感触があるのに、今のこの身体は手に魔剣を持ってない……。んー、意識だけ ( 魂だけ? ) この不思議空間に召喚されたのかな? ちなみに、意識体だからか私まですっぽんぽんだったりする……。神様に呼ばれた時はちゃんと服着てたのに……。
———— どうじゃ、妾の身体は? 美しいであろう? ————
自分の身体をチェックしてたら声を掛けられたので、すっぽんぽんの巨乳スライム娘に顔を向け、自慢して来るその身体をしげしげと眺めてみた!
その身体にはスライム娘みたいにドロドロ〜っと垂れてる部分が見当たらず、まるで水晶で出来ているかのように綺麗なお肌のラインしてるから、巨乳スライム娘って言うより巨乳水晶娘って言った方が良いのかな? スリーナイ◯のガラスのクレ◯さんを真っ黒にしたような感じ? あっ、でも、お口はちゃんとあるし、色も黒1色じゃなくてお目目だけエメラルドの宝石みたいな色してるんだね! 魔剣の色が意識体に反映されてる感じなのかな?
『うん、なんか黒くキラキラ光ってて、うっとり見惚れちゃうくらい綺麗だよ? お目目のエメラルドの色も良いアクセントになってるし♪』
———— そうじゃろう♪ そうじゃろう♪ 気に入ってもらえたようで嬉しいのじゃ♪ ————
あっ、クルン♪ってターンした! な、なんかはしゃいでる!? う〜ん、このあとダンジョンに捨てに行くのがバレたら、この女泣いちゃうかなぁ? 泣く所は見たくないなぁ……。
もし、この意識体のディーアが現実の世界でも人化できるなら綺麗だから館のお風呂場に置物として飾っておきたいかもとは思うけど、でも、亡者さん達引き寄せちゃう魔剣は残念だけど連れて帰ることはできないよネー。
.
< 雪音ちゃんとラピの本編裏話 >
ラピ「雪音ちゃん、最後のセリフ、ちょっと酷くないですかー? 置物扱いは可哀想だと思うのですー」
雪音「えっ!? だってダンジョンで地面に何十年もずっと突き刺さってたんだから、お風呂場にモニュメントとして置いておいても問題なくない!? ディーアって宝石みたいに綺麗な身体してるから、お風呂場に飾っておけば村のお姉さん達が『綺麗〜♪』って褒めてくれると思うし!」
魔剣ディーア「うむ♪ 妾は妾の身体を褒められるのが大好きなのじゃ♪ 妾は動くのは好きでないゆえ、それで問題ないのじゃ♪」
雪音「だ、そうだよ?」
ラピ「動くのがキライだなんてナマケモノさんみたいな方なのですー」
魔剣ディーア「妾は試練の宝剣なのじゃ! 妾は舞を踊るが如く自ら華麗に動くこともできるのじゃが、それでは妾を扱う者の技量が上がらなくなってしまうのじゃ! ゆえに、妾は基本動かぬことを良しとするのじゃ♪」
ラピ「なるほどー、そう言った事情があったんですねー。納得なのですー」
雪音「もっともそうな理由言ってるっぽいけど本音はどうなの?」
魔剣ディーア「単に動くのがキライなだけなのじゃ〜♪」
ラピ「…………。可哀想と思ったのに、なんかすっごく損した気分なのですー」ラピは盛大にため息をついた!
魔剣ディーア「妾とはほんの少しの時間しか話ししてないと言うのに主様は妾のことをよく分かってくれておるのじゃ♪ 流石は妾の主様なのじゃ♪」
雪音「えっ、私、貴女のご主人様になった覚えはないよ? 貴女のご主人様はロリコン剣士さんじゃん?」
魔剣ディーア「妾の身体は主様の魔力で染められてしまったのじゃ! 主様のような極上の魔力を味わってしまった今、他の味気ない魔力を注ぎ込まれたいとは思わないのじゃ!」
ラピ「上がってしまった生活レベルを貧乏になっても下げることができなくなっちゃった人みたいなセリフですねー」
雪音「ちょっと違うような気もするけど、まぁ似たようなものか……」
魔剣ディーア「主様や〜、妾の身体でいくらでも突いたり振ったりしてくれて構わぬから、なんなら妾自ら動いても構わぬから妾を主様の側に置いて欲しいのじゃ〜」私の腰にすがりつき懇願するディーア!
ラピ「か、身体をいくらでも突いて!? み、自ら腰を振る!? ふふ、ディーアさんと言いましたか、少々あなたにはお仕置きが必要なようですねー? ふふ、ふふふふふー♪」
雪音「ちょ、ちょっとラピ、『身体を』じゃなくて『身体で』!! あと、『腰を振る』なんてディーア言ってないでしょう!?」
ラピ「あらあら、そうでしたかー? でも、もう遅いのですよー?」
雪音「知ってる。だって、私もディーアの巻き添えで身体半分氷漬けにされてるし……」
魔剣ディーア「…………」カチンコチン。
ラピ「このままダンジョンに持って行って捨てて来ちゃいましょー♪」
雪音「ねぇ、ラピ。あなた、最初ディーアが可哀想とか言ってなかったっけ?」
ラピ「雪音ちゃんにまとわりつこうとするお邪魔虫に同情は要らないのですー♪」
雪音「( ジェラシーラピちゃん復活! ) 最近は落ち着いて来たと思ったんだけどなぁ? はぁ〜」
パリィーーン!
魔剣ディーア「妾に氷漬けの魔法は効かぬのじゃ! 黒い炎を使えばこのような氷魔法、抜け出すことなど簡単なのじゃ♪ 主様〜、妾の身体を自由に使ってくれて構わぬから側に置いて欲しいのじゃ〜」
ラピ「そ、そんな、氷が!? ゆ、雪音ちゃんから離れるのですー!」
魔剣ディーア「イヤなのじゃ!! 妾は離れないのじゃ〜!」
雪音「ディ、ディーアの身体、めっちゃ硬いからギュッと抱きしめられると、く、苦しいんだけど……」万力で締め付けられてる気分だよぉ〜。ぐぇ、ヤ、ヤバい、なんか出ちゃうかも……。
ラピ「ほら、雪音ちゃんが苦しがっているのですー! 早くその手を離すのですー!」
魔剣ディーア「イヤなのじゃ〜。死んでも離さないのじゃ〜」
ぎゃーぎゃー、ぎゃーぎゃー。
私が泡を吹いて気絶するまでラピと魔剣ディーアのやり取りは続くのであった……。
おしまい♪




