第10章 雪音ちゃんと村娘達 102〜 ダンジョンから宝剣を持ち帰った冒険者達、村を追い出される!〜
村の周りを囲んでいた亡者達の群れの第1陣を片付け、透明化の魔法を使ってから空を飛んで村にある宿屋の裏庭に舞い降り、周りに誰もいないことを確認してから雪狼のクゥー以外の透明化を解除して私達は宿屋の入り口の扉の前に戻って来た! 扉を開けて中に入ると村人達の怒号が聞こえて来る。
「えっと修羅場だったりするのかな?」
「雪音ちゃんが解読した古代文字のメモの内容のせいじゃないですかー?」
「血気盛んな人間を見ると血が吸いたくなって来ますわぁ〜ん」
「ちょっとラスィヴィア、迂闊なこと言って余計な火種を増やさないでよね?」
「がぅがぅ」うんうんと頷くクゥー。
「も、申し訳ありません、雪音様」
「まーまー、雪音ちゃん、村人さん達の意識はあちらの冒険者の方々に集中していますから問題ないと思いますよー?」
「ラ、ラピ様が私を庇ってくださるなんて!? 感激ですわぁ〜ん」じーん。
「さっき私のために頑張ってくれましたから、そのお返しなのですよー♪」
ラピ、よっぽどゾンビ達がイヤだったんだね〜? 骸骨系がいればまだ違ったんだろうけど、今回ゾンビばっかりだったもんネー。
「あたしゃあ、さっき聞いたんだよ! 金髪のお嬢ちゃんが、あんた達の持ってるその柄にでっかいエメラルドの魔石がいくつも埋め込まれた宝剣が魔物達を引き寄せてるって!」
「ま、待ってくれ! あの金髪の嬢ちゃんが言ったことが本当かどうか分からないだろ!? あんなに若いのに古代文字が解読できるっておかしいと思わないのか!?」
「そ、そうだよ! 適当なこと言って俺達がダンジョンで苦労して手に入れた宝剣を奪い取ろうとしたに違いないんだって! 亡者の群れが村にやって来たのは偶然なんだよ! あんな貧乳のガキの言うことなんか信じないでくれよ!?」
あ、あんな貧乳のガキ……。ガァーーン、ガーーン、ガーン……。
「ゆ、雪音ちゃん、気を落とさないでくださいねー?」
「う、うん」私のお胸、前より少し大きくなったのになぁ……。揉み揉み。しくしく。
「おっ、雪音の姐御とラピの姐御じゃあねえですか? 亡者退治お疲れ様です!」
「お疲れ様でやんす」
「んだんだ」
「アイツらのこと大目に見てやってくれよ、雪音の姐御。村人達に責められて暴言吐いちまってるけど、そんなに悪い奴らじゃねえんだ」
「俺らみたいな札付きの悪と違ってな」
「ちげえねえ」
「んだんだ」
私の社会奉仕活動中の下僕である罪人達5名が中継地点のこの村までの移動中に助けた4人の冒険者達のフォローをして来た!
「あー、あなた達、あの冒険者達から慕われてたもんネー。まぁ、確かにあなた達に比べたらよっぽどマシだろうけどね?」
「ひでえ」
「事実だから何も言い返せないぜ」
「んだんだ」
「でも、注意書きがあったにも関わらず宝剣をダンジョンから持ち出しちゃったんですから、村人さん達から責められるのも致し方ないのではありませんかー?」
「古代文字なんて普通の冒険者に解読できる訳ないんだから仕方ないじゃんかよぉ!?」
「第一、そっちの金髪の嬢ちゃんの話が本当だって証拠はないだろうが!!」
「えっとー、この中に古代文字が読める方はいらっしゃらないのですかー?」
「私読めますけど雪音様に属する側ですから、そちらの男どもは信じないと思いますわぁ〜ん」
「ラスィヴィアにそんな意外な特技があったんだ!? びっくりだよ!」
「雪音様、酷いのですわぁ〜ん」
「読める奴がいたら、今こんなことになってねーよ!!」
「それで、村人さん達はこの冒険者達にどうして欲しい訳? 誰か怪我人とか出たの? もし、怪我人がいるなら私達が魔法で治してあげるけど?」
「そこの柄の悪い冒険者さん達が村の入り口で奮闘してくれたから怪我人は幸いなことに出ていないさね」
「元凶と思われるそっちの冒険者達も一応戦ってくれたしな」
「だから、俺達のせいじゃないって言ってるだろう!?」
「なら、村人さん達はこの冒険者達に何を望むの?」
「コイツらの自慢していたその宝剣がこの村にある限り、また亡者どもがやって来ちまうんだろ? なら、今すぐにこの村から出て行って欲しい」
「そうだそうだ! このままじゃ安心して眠れないぜ!」
「眠ってる時に襲われたら、たまったものじゃないからねぇ?」
「そうよ、そうよ!」
「お、俺達は宿屋の代金を前払いしてるんだぞ!?」
「すまんな、兄ちゃん達。代金は返すから村から出て行ってくれないか?」
「そんな!? ま、待ってください!!」
「こんな夜中に俺達に村を出て行けって言うのかよ!?」
「夜だからこそよ! もし深夜に襲われでもしたら、どうしてくれるのよ!?」
「そ、その時は俺達がさっきみたいにまた戦って」
「ピートの坊主、俺達も一緒について行ってやるよ」
「バーゲルの兄貴、良いんですか!?」
「本当ですか!?」
「バーゲルやデッバーの兄貴達が一緒なら安心だな!」
「ああ!」
「おい、バーゲル、そういうこと言うのは雪音の姐御に許可取ってからにしろよ?」
「デッバーの言う通りだぜ」
「んだんだ」
「まったくでやんす」
「デッバー、雪音の姐御の言葉を覚えているか? 困ってるヤツら助けろって言ってたじゃねえか? コイツら今、困ってるよなあ?」
「まぁ、そうだな?」
「ってことは問題ないのか?」
「そうっぽいでやんす」
「んだんだ」
「問題あるに決まってるでしょ!? この冒険者達が “亡者を引き寄せる宝剣” を手放さない限り、亡者達がずぅーーーっと宝剣に引き寄せられて襲って来ちゃうんだよ? あなた達はいつまでこの冒険者達のお守りをするつもり?」
「あなた達には雪音ちゃんから大事な任務を託されているのですよー? その任務って言うのはあなた達が深く傷付けてしまった女性達のためでもあるのですー。それを放棄することは許されないって分かっていますかー?」
「そ、それはそうだけどよお? なら、雪音の姐御達はピート達を見捨てろって言うんですかい?」
「誰もそんなこと言ってないでしょ? 私達がこの冒険者達と一緒に村を出て行くわよ。あなた達は私の命令通り明日朝起きて朝食食べたらすぐに次の村に出発するの! 良いわね!」
「そういうことでしたら、ピート達のこと、頼んます」
「お願いするでやんす」
「んだんだ」
「良かったな、お前ら! 雪音の姐御達が一緒なら怖い物なしだぞ?」
「雪音の姐御もラピの姐御も、とんでもねえ魔法使いだからな! 後ろのツインテールの姉ちゃんのことは知らねえが」
「それほど凄い魔法使い達には見えないのですが……」
「だよなぁ? 俺らより魔力量が多いからって強い魔法が使えるとは限らない訳じゃん?」
「まったくだぜ。バーゲルの兄貴達がついて来てくれるならともかく、こんなの小娘達が……。不安しか残らないぜ」
「で、でも、こんなにも綺麗で可憐なお嬢さんとそのお連れさん達が一緒について来てくれるって言うなら良いじゃないですか! バーゲルの兄貴達のお墨付きですし!」
「お前はそっちの金髪の嬢ちゃんがついて来てくれるのが嬉しいだけだろうが!!」
「言っておきますけどー、野宿する際に寝込みを襲おうとして来たら、亡者さん達が襲って来ても助けてあげませんからねー?」
「そ、そんなことしないですよ!? ちょこっと寝顔を見るぐらいはするかもしれませんが!?」
「それもアウトでしょ? 乙女の寝顔を勝手に見ようとするなんて許さないよ? まぁ、メモには一定時間毎に魔物が襲って来るって書いてあったんだから寝てる暇なんてないと思うけどね? さっ、早く移動しましょ? 村にまた迷惑が掛かっちゃう前にね?」
「金髪の嬢ちゃんの言ってることが本当だったらの話だけどな!」
「村から離れて1箇所にとどまっていれば、嘘か本当か分かると思いますよー?」
「それもそうだな。嘘だったら承知しねえからな!?」
「そうだそうだ! 嘘だったら、この村の人間達にボロクソに言われたことの償いをしてもらうかんな!」
「この馬鹿どもは先程から雪音様に大変無礼な態度を取りまくりだと私思うのですけど、ラピ様はどうして我慢していられるのかしらぁ〜ん?」
「うふふふふー♪ 今は村人さん達の目がありますからねー♪ 村から離れたら、えぇ、村から離れたら遠慮なく、ふふ、うふふふふー♪」
「がぉー」クゥーはいつものびょーき、始まったー!って思っている!
「なんか今、犬の鳴き声が聞こえなかったか?」
「どこに犬がいるんだよ? お前の気のせいだろ?」
「外で吠えてるんじゃねえか?」
◇◆◇
私は下僕である罪人達5名に「さっきの戦いはあなた達が助けた冒険者達が原因だから、村から謝礼金を貰ったりしないように!」って告げると、マジかよ!?って顔されたけど、
「さっきあの冒険者達のために夜通し無料で戦おうとしてあげてたんだから別に良いでしょ? でも、村の人達があなた達にご馳走を振る舞ってくれるって向こうから言って来る分には歓待受けても構わないから」って言ったら、ちょっと喜んでた!
その時、ちょうど罪人達の向こう側にいた宿屋の女将さんと目があって、女将さんが私に向かって笑顔で親指をグッと立てて来たから、多分ご馳走してもらえるんじゃないかな? 周りにいた他の村人さん達も笑顔で「支払いは俺らに任せな!」って言ってくれたし!
私は女将さんや村人さん達に「ありがとうございます♪ 良かったらコレ使ってみんなで食べてください♪」って笑顔で言って厨房に以前輪切りにしておいた黒山羊のお肉をドッサリと天上界の倉庫から召喚して置いて来た! なんかご馳走をねだった形になっちゃったから、せめてもの罪滅ぼしって感じかな?
ちなみに、親指を立てるのはギリシャ、イタリア、中東、南米あたりでは相手を侮辱するジェスチャーだったりするらしいよ? 国によって意味が変わっちゃうジェスチャーって怖いよね!
えっ、宿屋に転移して来た時、ご馳走は貰っちゃダメ! 謝礼金を貰うように!って下僕に言ってなかったかって? その話は部屋にいた1人にしかまだ話してないし、今日ぐらいは頑張って村を守ったご褒美として村人達から歓待を受けるのを見逃してあげても良いんじゃないかな?
雪音ちゃんは気分屋さんなのであった!




