第3章 雪狼 001 〜無詠唱?うん、忘れてました〜
「空から見る景色って新鮮だね〜。いろんな物がちっちゃく見えるよ。飛行機とか乗ったことないけど、こんな感じなのかな、やっぱり。自前で飛んでるから飛行機と違って落ちる心配しなくても良いし、雪景色も綺麗だし、最高なのです!ふんふ、ふっふふーん♪」
私は上機嫌で空を飛んで行く。途中、狐?さんの親子っぽいのを発見し、ちょっとスピード落として近づいてみる。
「なんかジャンプして雪に頭から突っ込んでるのです! 何してるんだろう? 遊んでるのかな? 食べもの探してるのかな? 雪に突き刺さってる狐さん、とっても可愛いのです!」
上空から狐の親子を和みながら眺めていると、雪から出てきた親狐の口にはネズミらしき小動物がくわえられていた。
「ほぇ〜、狐さん凄いのです! 雪の上からネズミさんの位置なんて見えないのに! きっと何度もああやってジャンプして雪に頭突っ込んで餌を探しているんですね〜。自然の世界は厳しいのです」
あっ、今度は子狐さんが挑戦してますっ! あ〜残念。出てきた時、子狐さんの口にネズミさんの姿はありませんでした。
「子狐さん、頑張ってなのです!」と私は子狐に声を掛けた後、上昇し湖へと向かうのだった。
しばらくして、
「うん、到着っと! 木いっぱい生えてるけど、さっきみたいな魔物は出てこないよね?」
キョロキョロ周りを見てみる。とりあえず大丈夫そう。
「もし出てきたら、雷の魔法連発すれば大丈夫かな? 雷が一番強かったっぽいし。でも、不意打ちされたら怖いから〜」
とりあえず、私は盾が体の周りをグルリと囲むようにイメージして
「盾よ、私の全方位を守るのです!」と叫んだ。
すると、私の周りを囲うように半透明の盾が現れる。盾って言うよりバリアーだね。それは良いとして、半透明だとちょっと見辛かったので、
「盾よ、もう少し透明に近づけて!」と叫ぶ。
盾は色を透明に近づけた。これでちゃんと景色が見える。魔法って万能だねと考えた時、ふと私は思った。毎回、叫ばなくても良いのではないかと。
「そうなのです! 私、無詠唱で魔法を使えるはずなんだから、毎回口に出さなくても念じるだけでいけるはずなのです!」
神様は言ってたのです。人間と行動をするとき、無詠唱で魔法を使ってたら悪目立ちする。だから、凄い効果を持ってるように見える杖をプレゼントするって。
うん、そう言えば、杖もらってたね。しまってあるけど。とりあえずメニュー画面を出して、魔法の袋って書いてある所をタッチ、袋の中身の一覧の龍の杖をタッチ、そして実物の袋から龍の杖を取り出す。
「この手順、めんどくさいのです。袋に手を突っ込んだら、欲しい物が取り出せると良いのに......。そうだ! 魔法でそうなるようにしちゃえば良いんだ!」
龍の杖を地面に置き、水袋1つと念じながら魔法の袋に手を突っ込んでみた。すると袋の中には水袋が1つきちんと入ってた。
「うん、成功なのです! 後は魔法の袋に入れて紐で縛ったら、中の物はメニュー画面の、魔法の袋の中身の一覧に自動で移動するようになれば完璧なのです!」
そして、そう念じながら、さっき取り出した水袋を魔法の袋に戻して紐で縛ってみる。それから、メニュー画面でチェックしてみると水袋の個数が増えていた。実物の袋の中を見ても何もない。
「うん、これも成功だね! 魔法って便利なのです!」
私は実験の結果に満足し、魔法の袋を肩に下げ、地面に置いた龍の杖を拾って湖を目指し歩き出した。