第10章 雪音ちゃんと村娘達 100 〜 雪音ちゃん一行、亡者達と戦う!②〜
「それにしても凄い数の亡者って言うかゾンビだよネー? これがあの試練の宝剣の力かぁ……。 きっと作ったのは、あの戦い好きの神様だよネー。なんてはた迷惑な……。確かにこんな数の魔物と戦ってたら人によっては強くなって忍耐力もつくと思うけど、今回、地面から宝剣引き抜いたあの冒険者達の強さだと、この数相手じゃあ強くなる前に殺られちゃうような気がするんだけどなぁ? 私の派遣した罪人達が運良く助太刀に入って助かってる訳だし……」
私はボヤきながら、とりあえず目の前で「アァ〜」とか「うぅ〜」とか言って両手を前に突き出して私に迫って来る人型ゾンビに向かって手をかざし「ファイヤー・ガイザー!」と呪文名を唱えた! 地面から熱湯や水蒸気が噴き出す間欠泉のように人型ゾンビの足元から炎の柱がボワッと噴き上がり、人型ゾンビの身体は一瞬で炎に飲み込まれた!
けれど、人型ゾンビは何食わぬ顔で燃え盛る炎の柱の中から姿を現し、自分の身体が燃えているにもかかわらず「アァ〜」とか「うぅ〜」とか言いながら私の方に向かってゆっくりと歩いて来る!
「あぁ〜、ゾンビだから火の熱さとか痛みとか感じないのかな? うーん、燃えてはいるんだから、そのまま放っておけば最後は燃え尽きると思うけど、火だるまゾンビに歩き回られても困るから手足を斬って動けないようにしちゃうしかないよね?」
えっ? 足だけ斬り飛ばせば良いんじゃないかって? 腕があったら匍匐前進するみたいに両腕使って這いずって迫って来そうでイヤだからだよ?
「火だるまになってるのに叫んだり痛がったりもしてないんだから手足を斬り落としてもゾンビ達の悲鳴とか聞かないで済むだろうし、サクサク倒していっちゃおうかな? 映画やVRゲームで耐性あるとは言っても、別に長時間グロいの見ていたい訳でもないしね!」
シャキン!
私は手元に赤黒く怪しく光る大鎌を召喚し、まずは私に掴み掛かろうとしたファイヤーゾンビの燃える両腕を横にステップして避けながら切断! 続けて両足も大鎌で切断してあげた! 両足がなくなったファイヤーゾンビは当然地面にドサッと落ち、身動きが取れないまま炎に焼かれている! ( ちなみに、私はかなりの炎耐性を持ってるから火傷とかしてないよ? )
「うんうん、やっぱりゾンビは斬っても悲鳴を上げないね! これならSAN値削られずに手足をバンバン斬っていけるよ♪」
私は聖剣を使ってゾンビ達相手に無双するVRゲームでもしているかのように、人型ゾンビとかゾンビ犬とかゾンビ猪の四肢を赤黒く怪しく光る大鎌でスパスパ斬り飛ばして次々と燃やしていった!
斬っただけでなんで燃えるのかって? 私が赤い武器は炎属性!ってイメージを強く持ってるから、赤い色が入ってる大鎌で敵を斬ると魔法が自動で発動して斬った所が燃えるようになってるんだよ! もちろん、最初から燃やさないって思ってれば、斬っても燃えないけどね?
ちなみに水色の武器だったら ( 私の中では ) 氷属性だから斬った部分から凍っていっちゃうし、黄色の武器は雷属性だから斬りつければ斬られた所がビリビリ痺れて動けなくなっちゃうんだよ! 凄いでしょ?
「さてと、こんなものかな?」
私は近くにいた各種ゾンビ達を一通り倒したあと、振り返って辺りを見回し、ふと思った。
「うーん、斬って燃やしたのは良いんだけど、あちこちで焚き火してるような感じになっちゃった……。火事とかになんないよね? 村に帰る前に水の魔法使って大雨降らせておいた方が良いかな? あはははは……」汗たら〜り。
しまった。以前作った浄化魔法使えば良かったかも……。でも、アレだと多分1発でアンデッド達を浄化しちゃうから神様がつまらんとか言い出して魔法の盾を弱体化されちゃった時みたいに浄化魔法も弱体化されちゃいそうだしなぁ? いざって時のために切り札はとっておきたいから、とりあえずアレはピンチの時になるまで使うのは封印しとこうっと!
それに、浄化魔法使って変に目立っちゃって村の人達から聖女様みたいに崇められても困るもんね! 私、吸血鬼をベースとした魔族だし! 聖なる魔法を使う教会とかが存在してて、そこの信者達が私を取り込もうと勧誘にやって来て、なんかの拍子に私が吸血鬼ってバレて崇拝の対象どころか逆に討伐対象にされちゃっても困るもんね!
そんなことを考えながら遠目に見えた別の場所にいる各種ゾンビ達の元へと移動し、段々めんどくさくなって来た私は大鎌を横薙ぎして、大鎌の刃先から大きな三日月状の炎の斬撃を飛ばして人型ゾンビの両足や、ゾンビ犬やゾンビ猪の四肢を切断! そして、足がなくなって倒れたゾンビ達の背中やお腹に向けて上空から魔法で作った実体のある槍を落として地面に縫い付け動けないようにした!
「炎よ、全てを燃やし尽くしちゃえ!」
私が倒れたゾンビ達に手の平を向けて左から右へと横薙ぎすると、炎の斬撃によって斬られた部分で燃えていた炎がブオッと大きく燃え上がり、ゾンビ達の身体は大きくなった炎によって包み込まれた!
「そういえば、温度って赤い色より青い色の方が温度高かったんだっけ? 早く燃え尽きて欲しいから火力上げとこうっと! えぃ♪」
私は指をパチンッと鳴らして燃えてる赤い炎を青い炎に変えてみた!
「うん、青い炎ってなんか浄化の炎って感じだよね♪ さてと、みんなはどんな感じかなぁ〜?」
私は魔力波を飛ばして辺りをサーチ、メニュー画面で地図を開いてみると、とりあえず、村を取り囲んでいた第一陣のお掃除はあらかた終わったみたいだった。
でも、第一陣よりさらに離れた所に敵を表す赤い丸がたくさん村を取り囲むように存在してて、それらが少しずつ輪の中心の村に向かって移動して来てるのが地図から読み取れる。
( ちなみに、赤い丸が移動してるのは、地図を開いていると自動的に一定時間毎に魔力波が周囲に飛ばされて魔物の位置が更新されてるからだよ? )
「うーん、私達が倒して来ちゃっても良いんだけど、これだけ離れた距離の魔物達を倒して来ても、あの冒険者達、私の言うこときっと信用しないと思うんだよネー」
『雪音ちゃん、雪音ちゃん、こっちはラスィヴィアさんが片付けてくれましたよー♪』
ラピからテレパシーの魔法が入ったから私もテレパシーの魔法でラピに応えた!
『今、地図で確認したから知ってるよ〜。ラピはやっぱり戦わなかったの?』
『あは、あははははー』
ちょっと、笑って誤魔化さないでよ? うーん、いざって言う時にラピが行動取れないとラピがピンチになっちゃうかもしれないから恐怖心をなくす魔法とか作ってラピに掛けておいた方が良いのかなぁ?
『うー、雪音ちゃん、ひょっとして呆れてたりしますかー? 次はラスィヴィアさんに任せっきりにしないで我慢して頑張って自分で戦いますから、私のこと見捨てないで欲しいのですよー。しくしく』
『ラピ様が戦う必要なんてありませんわぁ〜ん! 私がラピ様の分まで戦いますから、雪音様、ラピ様のことを見捨てたりなさらな……』ぴこーん!
『別にそんなことでラピのこと見捨てたりなんかしないよ?』
『もー! 雪音ちゃんがなんにも言ってくれないから少し不安になっちゃったじゃないですかー!』
『ご、ごめんって! 亡者を見て恐怖とか気持ち悪さを感じない魔法を作った方が良いのかなぁって考えてたんだよ。それよりラスィヴィアはどうしたの? なんか急に声が聞こえなくなったんだけど?』
『あー、そのー、ラスィヴィアさんは私が雪音ちゃんに見捨てられたら私を独り占めにできますわぁ〜んとか言って身体をクネクネさせているのですー』
『聞かなければ良かったよ。とりあえず私がラピのこと見捨てるようなことは絶対にないから安心して良いよ? ( ラピの血、すっごく美味しいし! 私の大切な人だし! )』
『雪音ちゃん! ( ジーン!) 私も雪音ちゃんを見捨てるなんてことは絶対にしないのですよー! 雪音ちゃんにどこまでもついて行くのですー! そこがトイレだろうとお風呂だろうと!』
『お風呂は良いけどトイレは止めてね?』
『もちろん、冗談ですよー?』
「がぅがぅ♪ がぅがぅ? がぅがぅ?」ご主人様ー! 3匹のヘアー、たすけてきたー! えらいー? えらいー?
背後の足元から鳴き声が聞こえたから振り返って下を見てみると雪狼のクゥーが褒めて褒めてーって顔してちょこんと座ってた!
「うん、偉い偉い♪ クゥーは良い子だねぇ〜♪」
私はしゃがんでクゥーを抱きしめ、いっぱいモフモフしてあげた!
「くぅ〜ん、くぅ〜ん♪」まんまるの盾のまほーもかけてきたー!
「おぉ〜! クゥーは気が利くね! 流石私のクゥーは賢くて優しい子だよぉ〜♪」
そう言って私はクゥーにチュッとキスして頬擦りしてあげたらクゥーはすっごく喜んだ! うんうん、可愛いやつめ♪ 私はラピとラスィヴィアがやって来るまでの間、クゥーをいっぱいモフってあげた♪




