第10章 雪音ちゃんと村娘達 099 〜 雪音ちゃん一行、亡者達と戦う!①〜
宿屋の入り口の扉を勢いよく開けて入って来た男が、大声で亡者の群れの襲来を私達に告げた!
「なんだとぉ!?」
「嘘だろ!?」
「亡者の群れだって!?」
「あ、あんた達、冒険者なんだろ!? なんとかして来ておくれよ!!」
「マジかよ!?」
「こ、この宝剣のせいなのですか!? まさか、そんな!?」
「あらあらー、大変なことになっちゃいましたねー」
「ラピの姐御、まったく大変そうに見えないんですが?」
「んだんだ」
「あなた達、私の命令覚えてるわよね? 困ってる人達がいたら?」
「助けるでやんす」
「助けるんだろ? 分かってるぜ」
「分かってるなら早く動く!」
「「「「「はい!」」」」」
私の命令を受け、私の強化魔法が掛かってる武器や防具を装備した社会奉仕活動中の罪人5名が宿屋の入り口の扉を開けて出て行った!
さっき私が変態魔剣に大量に魔力を注ぎ込んだことは関係ないよね? だってメモに魔剣は一定時間毎に魔物を呼び寄せるって書いてあったし! うん、私はきっと関係ない! ちょっと動揺しつつも私はダンジョンから持ち出し禁止の魔剣を持って来てしまった冒険者達に声を掛けた!
「あなた達は行かないの? 石碑に書いてあった内容が本当なら、あなた達が持って来た宝剣のせいで亡者達が村にまで来ちゃったんだよ?」
「た、たまたまだ! たまたま亡者どもが村を襲って来たんだ! 俺達のせいじゃねえ!」
「そ、そうだよ! 偶然に決まってんじゃん!」
「だが、ダンジョン出てから何かおかしかったのは否定できないぞ?」
「何度も亡者どもに襲われましたからね……」
「み、みなさーん、今はそんなお話ししてないで冒険者ならするべきことがあるんじゃないですかー? ゆ、雪音ちゃんはどうしますー?」ガクガク、ブルブル。
「もちろん、私も行くわよ! ラピは足が震えてるけど大丈夫なの?」
「だだ、大丈夫ですよー? 近寄らなければ良いんです、近寄らなければー」ガクガク、ブルブル。
「無理はしないで良いからね? じゃあ、行くわよ!」
「は、はいなのですー」ガクガク、ブルブル。
私は2階の部屋に残して来た雪狼のクゥーと爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアに窓から外へ出るようにテレパシーを送ってからラピと一緒に宿屋の外へ出た。
「がぅ!」とクゥーが上から飛び降りて来て私の横に着地する。
「ラピ様ぁ〜、寂しかったのですわぁ〜ん」と言ってラスィヴィアが空から舞い降りて来てラピの背中に抱きついた!
別れてから、まだ大して時間経ってないのに……。っと、そんなことよりも今は魔物のこと考えないとね! 私は魔力波を周囲に放って敵の位置をサーチし、それをメニュー画面の地図に反映させてみた!
うげっ!? 村の周りが敵を表す赤い丸でビッシリと囲まれてるじゃん!? えっ、さっきの冒険者達って前回襲われた時もこんな数の亡者の魔物に襲われたの? それとも前回の試練をクリアしたから亡者の数が増えた?
「かなり多いですわねぇ〜?」
「み、みんな亡者さん達なんですよねー? うぅ、日中ならまだしも、こんな暗い時間に亡者さん達と戦う羽目になるなんてー」ガクガク、ブルブル。
「村の入り口から入って来た亡者達は罪人達5人で多分倒せるよね? 昼間、ロリコン剣士さんとそのお仲間さん達を亡者達から助けてる訳だし? 私は地図の上の亡者達をやっつけて来るからラピは右側を、クゥーは左側をお願いね?」
「がぅ!」と元気良く鳴くクゥー!
「ゆ、雪音ちゃん、一緒に倒しに行ってくれませんかー? 1人だとちょっと心細いのですー」ブルブル。
「ラピ様、この私がおりますから心配ご無用なのですわぁ〜ん」
ラスィヴィアが胸元に片手を当て超良い笑顔を浮かべながらラピを守るナイト役を買って出た!
「私は雪音ちゃんについて来て欲しいのであってー、ラスィヴィアさんについて来て欲しい訳ではないのですよー?」
「がーん!? ラピ様が『ラスィヴィアさん、怖いのですー! 助けてくださいなのですよー!』と言って私に抱きついて来てくださる絶好の機会が訪れたと思いましたのに、それはないのですわぁ〜ん」しくしく。
「それこそ私が雪音ちゃんにしたいことですのでー、ラスィヴィアさんに用はないのですよー?」
「ラピ様のその冷たい仕打ち、私なんだかゾクゾクして来ましたわぁ〜ん」
「はいはい、くだらない言い合いしてないで早く倒しに行こうね?」
「はーい。では、ラスィヴィアさん、行きますよー? 腐った系の魔物の相手はお願いしますねー?」
「お任せくださいまし! ラピ様はこの私が腐った肉どもからお守り致しますわぁ〜ん!」
「クゥーはひとりでも大丈夫?」
「がぅ!」だいじょうぶー!
「じゃあ、行動開始!」
私達は三手に分かれて亡者達の討伐に向かった!
◇◆◇
「うぅ、やっぱり話に聞いてた通り亡者さん達は気持ち悪いのですー。お目目はデローンと飛び出してますし、穴の空いたお腹からは腸がビローンと飛び出して垂れてますし、あ、あっちには腕が千切れかけの亡者さんが!? うぅ、気持ち悪いのですー。臭いも酷いですし、お鼻が曲がっちゃうのですー」
ラピはラスィヴィアの背後に隠れるようにしてラスィヴィアの両肩にしがみつきながら半泣き状態で亡者達をチラ見している!
「( ラピ様が私の背で震えていらっしゃいますわぁ〜ん! こう、もっとギュッと抱きしめてくださっても構いませんのよぉおおお! もっと、ギュッと!! はぁはぁ♡ )」
「ラスィヴィアさん、来てます、来てますよー! 早く攻撃しちゃってくださいなのですー!!」
「お任せください、ラピ様! このラスィヴィア、愛するラピ様のために腐った肉どもを片付けて差し上げますわぁ〜ん!」
ラスィヴィアが吸血鬼の羽を背中に生やして普通の人型ゾンビやロトンソルジャー、ロトンストレイドッグの群れに向かって滑空していった!
「斬り裂く爪!!」
ラスィヴィアが指先の10本の爪を長く伸ばして亡者どもの攻撃を避けながら亡者どもの身体を華麗に斬り刻んで行く!
「ラスィヴィアさん、なかなか格好良いのですよー♪ その調子でどんどん亡者さん達をやっつけちゃってくださいなのですー♪」
「ラ、ラピ様が私を応援して!? もっと褒めていただくために、私本気を出させてもらいますわぁ〜ん!! 燃える爪!!」
ラスィヴィアが長く伸ばした10本の爪に炎を纏わせた!
「ラスィヴィアさん、変態の癖になんか格好良い魔法を使って、ひぃっ!?」
ラスィヴィアが炎の魔法を使ったせいで周りが明るくなってしまい、亡者どもの腐った身体をくっきりはっきりと目にしてしまったラピは気分が悪くなってしまった!
「ラ、ラピ様の応援の声が聞こえなくなってしまいましたわぁ〜ん!? どど、どうして!? はっ!? もしや炎の魔法を使ったせいで、コイツらの姿がラピ様のご気分を害して!? なんてことですの!? よくもラピ様をぉおおお!!!」
ラスィヴィアはこれ以上ラピの気分を害してはいけないと思い、速攻で戦いを終わらせるべく奮闘した! その様子をラピが見ていればきっとラスィヴィアのことを見直したと思われるが、残念ながらラピはその戦いを直視することができなかった! めげるなラスィヴィア! いつか報われる時が来るその日まで!
◇◆◇
「がぅ!」もうじゃ、はっけーん!
雪狼のクゥーは発見したロトンソルジャーやロトンストレイドッグ、ロトングレイトボアの群れに向かって三日月状の炎属性の斬撃をいくつも飛ばし、亡者達の身体を八つ裂きにしながら燃やして浄化していった!
「あぉ〜ん♪」燃やせば骨のこるー♪
クゥーが辺りにいる亡者の魔物を倒していると、遠くでご主人様お気に入りの動物ヘアー数匹がロトンストレイドッグの群れに追いかけられている様子が目に映った!
「がぅ!?」たいへんだー!?
クゥーはロトンストレイドッグの群れとヘアー達の間に氷の槍を大量に上空から落としてロトンストレイドッグの足止めをした! そして、注意を引くよう大きな声で吠えながら亡者の群れに向かって突進していった!
「がぅがぅ!! がぅがぅ!!」
「「「「「ぐるるぅうう!」」」」」
クゥーが突進して来るのに気付いたロトンストレイドッグ達は標的をクゥーに切り替え、クゥーに向かって突進して来た!
「がぅ! がぉ〜ん!」 ちゅーい、ひけたー! 燃えちゃえー!
クゥーはロトンストレイドッグ達の注意がヘアー達から自分に向いたことに安堵し、三日月状の炎の斬撃を飛ばして向かって来る魔物達を一掃した!
「あぉ〜ん♪」たおしたー♪
とクゥーが喜んでいると、先程助けた3匹のヘアー達がクゥーの側に近寄って来た!
「がぅがぅ♪」もうだいじょうぶー♪
「ぷーぷー♪」「ぷぅぷぅ♪」「プープー♪」
「がぅがぅ!」あっちなら、まものいないよー!
「ぷー♪」「ぷぅ♪」「プー♪」
ヘアー達は嬉しそうに鳴いてクゥーの身体に自分の頭を甘えるようにして擦りつけた後、クゥーの教えてくれた方向に向かってぴょんぴょんと跳んで逃げて行った!
クゥーはそんなヘアー達の後ろ姿に向かって「あぉ〜ん」と鳴いてヘアー達の身体の周囲に球状の盾の魔法を展開させた後、残りの亡者の魔物達を倒しに行くのであった!




