第10章 雪音ちゃんと村娘達 098 〜 雪音ちゃん、ロリコンさんから宝剣を見せられる!②〜
「近くにダンジョンがあるんですよねー? 何て名前のダンジョンがあるんですかー?」
ラピが転移地点確保要員の罪人達に質問をすると、
「へい、スケルトンズ・ウエイルって言うダンジョンがあります」
「あー、だから村の近くで私の苦手な亡者さん達が出没するんですねー」
ラピは両腕で身体を抱きしめブルッと身震いをした! その際、ラピの豊満なお胸が強調されてしまったので、周りにいる冒険者達の鼻の下がデレッと伸びたのは言うまでもない!
「ラピの姐御は亡者が苦手なんで?」
「スケルトン系ならまだ良いですけどー、ロトン系は見た目が酷いって話ですしー、 臭いだって臭そうじゃないですかー! 苦手で何が悪いんですかー!?」ラピがちょっと涙目で抗議する!
「い、いえ、俺はただ確認しただけで悪いだなんて一言も!?」アセアセ。
「ただですねぇラピの姐御、ダンジョン内の魔物達がダンジョンから出て来ることは滅多にないんで、今日あんな数の亡者どもがダンジョンの外にいたのは奇妙なんでやんす。しかも、街道で亡者の群れに出くわしたのなんて初めてでやして」
「それって私を怖がらせようとしてたりするんですかー? ねー、そうなんですかー?」
「ま、まさか!? そんなこと考えてないでやんすよ!? 濡れ衣っす!」
◇◆◇
一方、雪音ちゃんの方では、ロリコンさんの演劇のような説明劇がまだ続いていた!
「そしてついに自分達は豪華な扉の前に辿り着いたのです! 扉を開けて中を見ると初めは真っ暗だったのですが、一歩足を踏み出すとなんと!」
「踏み出すと?」
「洞窟内の天井にいた無数のグローワーム達が一斉に青く光り出したのです! その光景は女性達が見ればうっとり見惚れてしまうくらい、それはそれは大変素晴らしいものでした!」
オーストラリアとかニュージーランドの洞窟で土ボタルが見せてくれる幻想的な光景みたいな感じなのかな? それ、私も見てみたいなぁ♪
「そんな時です! 地面の方から異質な光が大きく放たれたため、慌てて自分達は視線を下にずらしました! そしたらなんとそこにはですね!」
「うんうん」
お約束的な感じで剣が地面に突き刺さってたりするんでしょ?
「地面に突き刺さった一振りの剣があって、その剣身から黒い炎が凄い勢いで噴き出していたのです!!」
「やっぱり! って、えっ!? この宝剣、そんなことできるの!? 凄いじゃん!」
「はい、凄い宝剣なんです!! ただ、黒い炎が出たのはその時限りで、黒い炎が鎮まった宝剣を地面から抜いた後は、魔力を込めてみたり、黒い炎よ!と叫んでみたりしたのですが」
「黒い炎は出なかったんだ?」
「残念なことにその通りなのです」ロリコン剣士さんは肩を落としてがっかりしている!
「おい、兄ちゃん。その話はさっきも聞いてたけどよぉ、そこは話盛ってんじゃねーか? なぁ?」
「だよなー?」
「「「ぎゃははははは」」」
周りのテーブルでお酒を飲んでた他の冒険者達が絡んで来た!
「なっ!? 盛ってなんかいませんよ!?」
「そーだそーだ! 黒い炎が出たのはホントだぞ!?」
「嘘なんかじゃねーって!」
「俺達はこの目で黒い炎がその宝剣から噴き出してるのを確かに見たんだ! ケチつけてんじゃねえぞ!?」
んー、嘘言ってるようには見えないし、心外だって顔真っ赤にして怒ってる人もいるから、黒い炎が出たって話が本当なら宝剣に込める魔力量が足りなかったんじゃないかなぁ? 私の下僕が助けたこの冒険者の人達って、格好からしてみんな剣士っぽいし……。
とりあえず私は宝剣を両手で握って、以前、魔石に魔力を込めた時のように宝剣の柄に埋め込まれているおっきなエメラルドに魔力を流し込んでみた! すると……。
———— あぁ〜ん♡ 入って来るのじゃ〜♡ 熱い魔力が 妾の身体にドクドクと ————
「っ!?」
私はびっくりして魔力を流すのを中断した!
な、何、今の声!! ま、まさか!?
私は恐る恐る宝剣のエメラルドに魔力を流すのを再開してみた!
———— んぅ〜♡ もっとじゃ〜♡ もっと妾の身体に注ぎ込むのじゃ〜♡ ————
こ、これ、宝剣じゃなくて魔剣じゃん!? しかも、なんか悦んじゃってるし!?
私は魔力を注ぎ込むのをストップした! そしたら、
———— どうして止めてしまうのじゃ? 遠慮するでない。いくらでも妾の身体に注ぎ込んで良いのじゃぞ? 妾はまだまだ満たされぬ! お主の上質な魔力で妾の身体を満たすのじゃ! おい、お主、聞いて ————
お、お代わり要求とか、なんて図々しい魔剣なんだろうね? ってゆーか、さっきから言い方がなんか卑猥なんですけど、それ、どうにかならないの? 私は若干うんざりしながらテレパシーの魔法を使って魔剣に話し掛けた。
『剣から黒い炎を出してくれたら考えてあげても良いよ?』
———— おぉう! 黒い炎を出せば良いのじゃな!? あい、分かったのじゃ♪ ————
嬉しそうに魔剣がそう言うや否や、私の持つ魔剣の黒い剣身から黒い炎がブワッと噴き出した!
「あっ、出たね、黒い炎」
「なっ!?」
「マジかよ!?」
「法螺じゃなかったのか!?」
「どうだ! 俺達が嘘付きじゃねえってこれで分かっただろう!」
「お前ら、俺らに謝れよな!」
「どど、どうやったら黒い炎を出せたんですか!?」
「俺らが色々やってダメだったのに、あっさり出しやがった!?」
———— ほれ、約束なのじゃ♪ はよぅ、はよぅ、妾の身体にお主の魔力を注ぎ込んでおくれなのじゃ♪ ————
「黒い炎を発動するのに必要な魔力量が足りなかったんじゃないかなって思って、大量の魔力を柄に埋め込まれてるエメラルドの宝石、じゃなくて魔石になるのかな? エメラルドの魔石に注ぎ込んだだけだよ?」
「大量の魔力、ですか……。うーん、自分達4人が込めた魔力で足りなかったということは、剣士用の剣ではなく魔法使い用の剣だったと言う訳ですか……」
「うーん、そういうことなのかな? 前もって魔法使いの人に魔力を充填してもらえば剣士の人でも使えそうな気もするけど……」
———— 焦らすのは止めるのじゃ! 妾はきちんと黒い炎を出したのじゃ! 早くお主の魔力を妾に ————
私が変態魔剣に魔力を注がないでいたら変態魔剣からクレームが来た!
考えてあげても良いとは言ったけど、魔力を注ぐとは誰も言ってないよ? もし、この魔剣がダンジョンに封印されてた剣で危険な代物だったら、私が大量に魔力を注ぎ込んだことで本来の力を取り戻して暴れ出しちゃうかもしれないしね?
———— もう怒ったのじゃ! 黒い炎を消してしまっても良いのじゃな? ほれ、イヤなら、はよぅお主の魔力を妾に注ぎ込むのじゃ! どうしたのじゃ? はよぅせぬか! 本当に消してしまうのじゃぞ!? ………………。おねがいじゃ〜。妾にお主の魔力をもっと注いで欲しいのじゃ〜。妾の身体を好きに使ってくれて構わぬから〜 ————
態度変わるの早っ!? あっ、黒い炎の勢いがどんどん弱くなったかと思ったら消えちゃったよ……。私、さっき結構魔力注ぎ込んだんだけど燃費悪過ぎない? ちょっと可哀想な気もするけど、剣の持ち主は私じゃないから諦めてね?
◇◆◇
雪音ちゃんが魔剣の声に耳を傾けている間、ラピがロリコン剣士に慰めの言葉を掛けていた!
「自分で使うことができなくてもですねー、黒い炎を出せることは雪音ちゃんのおかげで実証されたのですから、それを売れば莫大なお金を手に入れることができると思いますのでー、そのお金で別の古代の武器を買ったりすれば良いんじゃないですかー?」
「そう、ですね。仲間と相談して、どうするかは決めたいと思います。いやぁ、それにしてもあなたのような、まだ小さなお嬢さんが自分達4人が込めた魔力を上回る魔力をお持ちだとは。ますます惚れ直してしまいました!」
ラピと話してたロリコン剣士が私の方に向き直って、そう言って来た!
近くではロリコン剣士のお仲間さんが「クソッ! 自分達が見つけたのに自分達で使えない古代の武器とか使えなさ過ぎんだろう!?」とボヤいてたり、それを別のお仲間さん達が「まぁまぁ、銀髪のボインちゃんが言ってた通りアレ売った金で良い装備品でも買えば良いじゃん?」とか「そうだな! 見た目だけの宝剣じゃないって分かったことだし、きっと高く売れるさ!」などと言って宥めていた!
そんな会話を小耳に挟みながら私は、今も恨みがましい声で
———— うぅ〜、妾の身体に無理矢理注ぎ込んでおいて酷いのじゃ〜。あのような美味しい魔力を味わってしまったら妾の身体は他の魔力を受け付けなくなってしまうのじゃ〜。責任を取って欲しいのじゃ〜 ————
などと私の頭の中に語り掛けて来る変態魔剣をロリコン剣士に返すことにした!
「悪いけど、あなたとお付き合いするつもりはないから私のことは諦めてね。はい、これお返しするね。貴重な魔剣を見せてくれて、どうもありがと♪」
———— な、なんじゃと!? 待て、待つのじゃあ!? 妾があんなにも切にお願いしたと言うのにそのような仕打ち、あんまりなのじゃあ〜!? ————
聞いちゃダメだ、聞いちゃダメだ、聞いちゃダメだ! うん、やっぱり飼い主じゃないのに余計な餌付けはしちゃダメだよね! 変態魔剣の絶叫が号泣にシフトしちゃったけど我慢、我慢っと!
「い、いえ、こちらこそ! 黒い炎を出していただいてありがとうございました! おかげで法螺吹き扱いされずに済みそうです! とは言ってもこの宝剣、黒い炎が出せなくてもそれなりの価値はあったと思うんですよ!」
「そうなの?」
「それはどうしてなんですかー?」
「先程この宝剣が地面に突き刺さっていた話はしましたよね? その側には金色の石碑のようなものが建ててありまして、そこには古代文字が彫り込んであったんです!」
「ダンジョンで手に入る古代の武器の側にはそういった石碑がよく建ててあるってえ話だし、あの時、剣から黒い炎が出てるのを目の当たりにした俺達はそりゃあ舞い上がったぜ!」
「古代文字が彫り込んである石碑が側にあるってことは、その宝剣が古代の武器である証じゃん? いやぁ〜、あの時の感動と言ったらもう!」ズビッ!
「俺達にもついに運が向いて来たって思ったよな!」
興奮したロリコン剣士のお仲間さん達が会話にいきなり飛び込んで来てびっくりだよ!
「そ、そうなんだ? ちなみに、その金色の石碑にはなんて書いてあったの?」
「古代文字自体は見たことがあるので、古代文字が書いてあることは分かったのですが、自分達、解読まではできないんで内容までは分からないんです」がっくし。
あ〜、英文の発音はできるけどそれぞれの単語の意味は知らないから、なんて書いてあるか分かんないって感じなのかな?
「石碑に書いてあった文字を何かに書き写してたりはしてないの?」
「それなら俺が書き写してあるぜ? 黒い炎の出し方とかが書いてあるんじゃないかと思ってな。今度ギルドで解読の依頼を出そうと思ってたんだが、お、あったあった! これなんだけどよ、金髪の嬢ちゃんは古代文字を解読できるのか?」
「んー、多分読めると思うよ? ( 私の魔法を使えばね! )」
私は冒険者からメモを受け取り、この古代文字が読めますようにって願いを込めながらメモに目を向けてみた!
「なになに? この宝剣は試練の宝剣なり。強さと忍耐を求める者よ。強くなりたければ、ひたすらに魔物を斬って斬って斬りまくるべし。技量を上げるための糧となる魔物はこの宝剣を所持していれば困ることはないであろう」
「おい、それってどういう……」
「待って。まだ続きが書いてある。追伸、この宝剣は一定時間毎に魔物を呼び寄せるのでダンジョンから外に持ち出すことを禁ず……。って、はあぁああああ!?」
なんてはた迷惑な魔剣なの!? ただの変態魔剣じゃなかったよ!!
「な、なんだってぇえええ!?」
「ほ、本当なのか今の話!? 嘘言って、その宝剣を俺達から騙し取ろうとか考えてるんじゃないだろうな!?」
「そんな訳ないじゃない!? これが本当だとすると」
その時、バーン!と宿屋の入り口の扉を勢いよく開けて顔面を蒼白にした男が中に入って来た!
「た、大変だあ!! 亡者の群れが村に入って来たぞぉおおお!!」




