第10章 雪音ちゃんと村娘達 097 〜 雪音ちゃん、ロリコンさんから宝剣を見せられる!①〜
私が派遣した転移地点確保要員の1人である罪人1号の案内について行くと、食堂から酒に酔って興奮した冒険者達の大きな声が聞こえて来た!
「そこでデッバーの兄貴が俺を助けてくれたんだよ!」
「あの馬鹿でかい斧で突進して来たロトングレイトボアの胴体を上下真っ二つに斬り裂いた時にはシビれちまったぜ!」
「そいつは凄いねぇ〜! あんた、やるじゃないか!」
「た、大したことはしてねえぞ? いつものように斧を振ったらああなっただけなんだ」
「かぁ〜! できる男は言うことが違うねぇ〜!」
「( いつもはあんな風に斬れねえんだよ!! 雪音の姐御が掛けた魔法、やべー斬れ味だって! なんなんだよ、あれはよお!? )」
「俺なんかロトンストレイドッグに飛びつかれて喉元を噛み切られるかと思った瞬間、何が起きたと思う!?」
「何があったんだい?」
「目の前にさっきまであったはずのくせー息を吐くロトンストレイドッグの頭がなくなってたんだよ!」
「へぇ〜、それはまたどうしてなんだい?」
「バーゲルの兄貴の片手剣が奴の首を綺麗に刈り取ったのさ! そのおかげで俺は今もこうして酒を飲んでいられるんだよ!」
私の派遣した転移地点確保要員の5人の罪人達は大活躍だったみたいだね? あとで罪人達が助けた冒険者さん達にお金を請求しなきゃ! あっ、でも、今回は冒険者さん達を助ける前に彼らと交渉とかしてない訳だし、彼らは罪人達にお夕食を豪勢に奢ってくれてるみたいだから、お金を請求するのはダメだよね? うん、間違いに気付いて良かった!
「おっ、可愛い金髪の嬢ちゃんと良い胸してる銀髪の嬢ちゃんじゃないか! 聞いてくれよ! デッバーの兄貴達の武勇伝をよお!」
ちょっと! 私のラピのお胸に向かって話し掛けるの止めてくれる!? イラッと来た私は男の発言をスルーして下僕である罪人達に顔を向けて「あなた達、随分とこの冒険者の人達から気に入られたみたいね?」と声を掛けた!
すると、デッバーの兄貴と呼ばれた男 ( 罪人の名前なんていちいち覚えてないし、そもそも聞いてもいないから知らなかっただけだよ! ) が即座に立ち上がり、こう言った!
「お、俺らはただ雪音の姐御から言われた通りに人助けをしただけであります!」
「デッバーの兄貴、なんでそんな金髪の嬢ちゃんにペコペコしてるんです?」
「馬鹿! このお方は俺らのボスなんだよ! 俺らより強くておっかねえんだ!」
「あらあらー、雪音ちゃんに向かっておっかないとか随分なことを言う悪いお口は凍らせちゃいますよー?」
ラピが青い宝玉を口に咥えた龍の杖を両手で持ってニコニコしてる! 但し、手に持ってる杖からは水色の冷気がちょびっと噴出していたりする!
「ち、違いやす! デッバーはおっかないほど強いって言いたかったんでやんす! そうでやんすよね、デッバー!」
「そ、そうだぜ! じゃなくて、そうです、ラピの姐御!」
「なら、そういうことにしておいてあげるのですよー。次は言い間違えないでくださいねー? 氷漬けにしちゃいますよー?」
「はい、すみませんでしたー!」
「デッバー、口に気をつけろよ? また寿命が縮むかと思ったじゃねえか?」
「まったくでやんす」
「ああ、まったくだ」
「んだんだ」
自分達を格好良く助けてくれた人間達のそんな姿を見た冒険者達4名に動揺が走った!
「滅茶苦茶強いデッバーやバーゲルの兄貴達が恐れるなんて、あの嬢ちゃん達、一体何者だよ!?」
「ボスって言ってたけど、どう見ても10代前半の年齢じゃん!? ひょっとしてエルフだから、あんな見た目でも俺達より歳上だったりするのか!?」
「バーカ、あの耳を見てみろ? 普通の耳だろう? 大体エルフがこの近辺にいる訳ないって!」
「長い耳を幻影魔法で短く見せてる可能性だってあるじゃん!?」
「その場合、合法ロリババアだから仮に彼女と一夜を共にしたとしても捕まらないよね? 俺、ちょっと口説きに行って来ても良い?」
「お前、幼女趣味だったのかよ!?」
「引くわー、マジ、引くわー」
「妖精のように可愛いのは確かだけど、それはないだろ、お前?」
「雪音ちゃん、あそこの冒険者さん氷漬けにしても良いですかー?」
「何言ってるの、ダメに決まってるでしょ?」
ってラピに注意してたら、その男がホントに私の所に口説きに来た!
「あのー、つかぬ事をお聞きしますけど、金髪の可愛らしいお嬢さんは隠しているけど実はエルフだったりしませんか?」
向こうのテーブルから「アイツ、本当に行きやがった!?」とか「ないわー」とか「信じられねー」とか言ってる声が聞こえて来た。とりあえず私は丁寧な口調に変わったロリコンさんの質問に答えてあげた。
「残念だけど、私、エルフじゃないからね? もし私がエルフでロリババアだったとしても、あなたと一夜を共に過ごすことなんてないから口説くなら他の人にしてくれる?」
ロリコンさん、絶句して固まる!
「ブホーーッ!? さっきの話、聞かれてたのかよ!?」
「おい、マッド! こっち向いて吹き出すなよ!? 俺に少し掛かったじゃんか!?」
向こうのテーブルでロリコンさんのお仲間の冒険者さんがお酒を口から吹き出した! うわぁ、吹き出したお酒で汚れちゃったテーブルを拭く羽目になる店員さん、可哀想だなぁ〜。
「アイツと同類って思われたくないんだが」
「それは俺もだけどよぉ? でも、今回のお宝を入手できたのはアイツのおかげじゃん?」
「だよなぁ〜。お宝への嗅覚だけは鋭いからパーティーから外したくても外せないんだよなぁ〜」
自業自得とは言え、お仲間さん達からボロクソに言われているロリコンさんがちょっと可哀想に思えて来た。
「って、お宝?」
私がボソッと呟いた言葉にフリーズしてたロリコンさんが再起動した!
「はい! お宝持ってます! これをご覧ください! どうです、この宝剣! 握る所に大きなエメラルドがいくつも埋め込まれていて実に美しいと思いませんか? あっ、もちろん、あなたの方が美しくて可愛いらしいですよ?」
「お褒めの言葉、ありがと。それにしても、ほんと綺麗な剣だね〜♪ ラピもそう思わない?」
「はい、エメラルドの宝石も綺麗ですが、その周りに散りばめられた小粒のダイヤモンド達もキラキラ光ってて綺麗ですし、柄の金色と剣身のモーリオンのような黒色の組み合わせもまた良い感じですよねー♪」
ロリコンさんが私とラピに見せてくれたのは西洋剣なんだけど、その握る所には大きなエメラルドがなんと5つも埋め込まれていた! 黄金造りの握りの部分はトルコの至宝トプカプの短剣みたいな感じだね! ちなみに、トプカプの短剣の柄頭( ここにもエメラルドが埋め込まれてるよ!) をパカッと外すとその下から時計が出て来るんだけど、この宝剣にも似たようなギミックがあったりするのかなぁ? それにしても大小様々な宝石がキラキラと輝いていて本当に綺麗だなぁ〜♪
———— ふっふっふ、そうじゃろう、そうじゃろう♪ もっと妾を褒めるのじゃ♪ ————
ん? 今、なんか変な声が聞こえたような……? キョロキョロ。あっちの席で手の甲を口に当てて嬉しそうに笑ってるお胸のおっきな踊り子さんの声だったのかな? にしても露出高いなぁ、あの人……。
「お宝って言ってましたけどー、こちらの素敵な宝剣はどちらで入手されたんですかー?」
「近くのダンジョンで最近新しく発見された下層がありまして、そこを探索中に俺が発見したんです!」
「素晴らしい成果じゃないですかー♪」
「いや〜、それほどでも〜。どうです? 手に取って見てみますか?」
「良いんですかー? ありがとうございますー♪ 雪音ちゃん、手に取って見ても良いそうですよー♪」
「えっ、ラピから見れば良いじゃん?」
「雪音ちゃんが先で良いですよー?」
「そ、そう? じゃあ、遠慮なく♪」
「白くて美しい手を切らないよう気をつけてお持ちください、金髪の可愛いらしいお嬢さん。では、こちらを」
そう言ってロリコンさんはいきなり片膝付いて頭を下げ、まるで高貴な人に献上しようとするかのごとく両手の手の平の上に乗せた宝剣を私に向かって差し出して来た!
「えっ!? えっ!?」
こ、この人、酔っ払ってない? それとも自分に酔ってるの? は、恥ずかしくないのかなぁ? ってか、私は周りから注目を浴びててすっごく恥ずかしい……。でも、苦労して手に入れた価値のある宝剣を手に取って見ても良いって言うんだから、恥ずかしいのは我慢してありがたく見せてもらおうかな?
「う、うん、じゃあ、ちょっと触らせてもらうね?」
私は手を切らないように気をつけながら宝剣を手に取ってみた! 私が宝剣を手に取ると一瞬だけ宝剣の黒い剣身が微かに黒い光を放った気がするんだけど気のせいだよね? なんか色もさっきより艶が出てるような気がしないでもないんだけど……。宝剣を握る所に埋め込まれたエメラルドのおっきな宝石から私の魔力とか生命力を吸収してたりしないよね?
ちょっと不安に思いながらも、私は宝剣を持ち上げて顔を近付け、じっくりと眺めてみた!
黒い剣身なのにホント綺麗だなぁ♪ まるで黒水晶みたいだよ。あっ、よく見ると少し透き通ってるからケアンゴームかな? モーリオンは不透明だし。でも、ケアンゴームって光当てると色が変わって茶色く見えるからケアンゴームでもないのかも。まっ、異世界なんだし、光を透過する黒い水晶があってもおかしくないよね!
とか思ってたら、目の前のロリコンさんが片膝ついたまま、劇を演じる劇団の人みたいに両手を大きく広げたり片手を自分の胸に当てたりしながらダンジョンでいかにして自分が宝剣を見つけ出したのか熱く語り始めちゃったよぉおお!? 貴重な宝剣を触らせてもらってるから無下にするのは可哀想だし、あぁああああ、これ、聞くしかないの!?




