第10章 雪音ちゃんと村娘達 092〜 マロンの奮闘記!②〜
今日も仲間のために縄張り内に生えているお気に入りの草を食みながら見回りをする垂れ耳ヘアーのマロンの耳に仲間の悲鳴が聞こえて来ました!
「ぷぅ!」
マロンが急いで駆け付けると、サーベルタイガーの牙のような角を頭に2本生やした黒山羊がいました! 凶悪で意地の悪い魔物です!
そして、黒山羊が「ヴェひゃヒャヒャ、ゔぇヒャ!」と気味の悪い笑い声を上げながら、その頭に生えてる2本の角で足元に転がっている血塗れのヘアーをつついて弄んでいます!
「ぷぅ!? ぷぅうう!!!」
マロンはまず地面で倒れているヘアーがこれ以上攻撃されないように魔法の盾を展開してあげました!
ガイィーーーン!!
「ゔぇヒャッ!?」
黒山羊は自分の攻撃が弾かれたことに一瞬驚きます!
マロンはその隙に倒れてる仲間に回復魔法を掛けてあげました! オレンジ色の淡く優しい光が倒れて傷ついている仲間の身体を包み込みます! けれど、戦闘中の回復魔法の効果は微々たるものです。瀕死の状態であれば瀕死ではなくなる程度のものでしかないため、倒れた仲間はすぐにその場から逃げ出すことができません。
なので、マロンはいつものように敵を挑発して自分の方に引きつけようと思ったのですが、さっき仲間を守るために展開した魔法の盾の色がいつもの青半透明でなくなっていることに気付き首を傾げます!
「ぷぅ?」
一方、黒山羊は自分の攻撃が弾かれたことに驚きはしたものの、再度攻撃を試みます! 連続攻撃です!
ガイィーーーン! ガイィーーーン! パリィーーーン!
「ゔぇヒャひゃヒャヒャひゃ!!!」
「ぷぅっ!?」
いつもならまだこれぐらいの攻撃回数では壊れないはずの魔法の盾が、黒山羊の攻撃を受けて黄色半透明から赤半透明へと色が変わり、3回目の攻撃を受けたら赤半透明色の盾が消えてしまったのです!
マロンは慌てて仲間と黒山羊の間に魔法の盾を再展開します!
「ゔぇヒャ!?」
黒山羊は今度こそ獲物を甚振れると思ったのに、自分と地面で転がっている獲物との間にまたもや青半透明色の壁が出現したことに怒りを露わにします!
「ヴェひゃ、ゔぇヒャ、ゔぁヒャあアァアア〜〜〜!!」
そして、地面に2度ほど足を打ち付けた後、ギロリと怒りが込められた金眼をマロンの方に向けて来ます!
「ぷぅっ!?」
マロンは一瞬ビビりましたが、これからやることに基本変わりはありません! 挑発した後は仲間が逃げる時間を頑張って稼ぐだけです! たとえ、魔法の盾が弱くなってしまっていても、です!
「ブゥブゥ!! ブゥブゥ!!」
マロンは黒山羊を馬鹿にするように大きな声で鳴いて挑発しながら逃げていきます!
「ゔぁヒャあアァアア〜〜〜!!」
馬鹿にされたと思った黒山羊は怒り狂い、マロンの後を追い掛けます!
マロンは自分の後方に通常の魔法の盾を展開しました!
ガイィーーーン!
「ぷぅっ!!」
マロンは後ろに展開した魔法の盾が黒山羊に攻撃されても気にせず逃げ続けます!
ガイィーーーン! ガイィーーーン! パリィーーーン!
「ゔぇヒャひゃヒャヒャひゃ!!!」
黒山羊が高笑いをしています! どうやら3回攻撃をすれば魔法の盾を壊せることに気付いてしまったようです! マロン、ピンチです! あぁ、私はただ見ていることしかできません。見ることはできても下界の食物連鎖の仕組みに手出しをすることは許されていないのです!
まったく誰ですか、あんな下劣で下卑た笑いをする魔物を創造した神は! 私の創造したもふもふヘアーが毎日どこかで可哀想な目に遭ってる私の気持ちにもなってもらいたいものです!! はっ!? 私としたことが……。
こほん。
マロン、あなたは雪音ちゃんという不思議な魔法を使う少女から魔法を使えるようにしてもらった特別なヘアーなのです! こんな所で負けないでください!
あぁ、でも、さっきから逃げて同じことばかり繰り返しています! ほら、また魔法の盾の色が赤くなって、ぁああああ、また黒山羊に壊されてしまったではありませんか!! マロン、どうして、あの新しい攻撃型の魔法の盾を使わないのですか!?
私がヤキモキしているとマロンがまた普通の魔法の盾を後方に展開させました! 黒山羊は「ゔぇヒャひゃひゃ」と高笑いしながら自慢の角を大体同じ間隔で魔法の盾にぶつけて行きます! え、同じ、間隔?
私がそう思った時です! 赤くなった魔法の盾に黒山羊が嬉々として攻撃しようとした瞬間、防御型の魔法の盾が攻撃型の、あの鋭く尖った魔法の盾に切り替わったのです!
グサッ!!
「ヴェびゃ!?」
黒山羊は自分から攻撃型魔法の盾の鋭く尖った槍のような部分に頭を突っ込み、自滅してしまいました!
「ぷぅ♪」
マロンはぐるーっと大きく弧を描きながら走り続け、後ろにいた黒山羊が地面に倒れ伏しているのを確認してから走るのを止めました!
す、凄いです、マロン!! なんということでしょう! 私の創造したもふもふヘアーが、あの気持ち悪い魔物ベスト10には入る格上の黒山羊を倒してしまいました! 快挙なのです! 下剋上なのです!
さっきは同じことばっかり繰り返して何やってるのとか言ってしまってごめんなさい! マロンは黒山羊を油断させるため、攻撃のタイミングを計るため、あえて同じ行為を繰り返していたのですね! なんて頭の良いヘアーなのでしょう! 私、感動してしまいました!
「ぷぅぷぅ? ぷぅぷぅ?」
あっ、マロンが先程傷ついて倒れていたヘアーに『大丈夫ぷぅ?』って声を掛け、回復魔法を掛けてあげていますね♪
「プープー♪ ププップ〜♪」
「ぷ、ぷぅ〜♪」
うふふ、マロンったら、またスリスリされていますね? 女の子にモテモテで嬉しそうです♪ こないだのねずみ色のヘアーは結局正妻の白ヘアーに認められたみたいですし、今回も多分そうなるんでしょうね♪ 大家族になっちゃいそうですね、雪音ちゃんの希望通りに♪
「あーーー!! あんな所に黒山羊倒れてるーー!? マロ〜ン、大丈夫だったぁ!?」
噂をすれば雪音ちゃんの登場ですね? 来るのが遅いです! 来るならどうしてもっと早く来てくれなかったのでしょう? あっ、でも、もしもっと早く来ていたらマロンの活躍がなかったことになってしまうのですよね? むむむ、腹立たしくはありますがマロンが無事だったことで不問にしてあげましょう!
「ぷぅぷぅ♪ ぷぅぷぅ♪」
「えっ、あの黒山羊倒したのマロンなの!?」
「それは凄いですねー♪ 一体どうやって倒したのですかー?」
「がぅがぅ、がぅがぅ」うんうんと凄い勢いで頷くクゥー!
「確かに気になりますわねぇ〜? どうしたら、ヘアーなどという下等生物が黒山羊に勝てるの、か、し……」
なっ!? あのデカチチ女、今、私の創造した可愛いヘアーを下等生物だなんて言いませんでしたか!? ゆ、許せません!!
「ちょっとラスィヴィアぁ? 私がこよなく愛するうささんに今なんて言ったのかなぁ? ねぇ、ラスィヴィアぁ? 横向いてないで、私の目を」
「ぷぅ? ぷぅぷぅ♪」
「がぅ!? がぅがぅ? がぅがぅ?」
「ぷぅぷぅ♪」
「がぅ!?」
「あらあらー、あなた、血で綺麗な毛が汚れちゃっていますねー? 今、水の魔法を使って綺麗にしてあげるのですよー♪」
「プープー♪ ププップ〜♪」
「ゆ、雪音様、お、お許しくださいましぃ〜! ちょっと口が滑ってしまっただけなのですわぁ〜」
「待ちなさぁ〜い!! 罰として私がここら辺一帯の黒山羊狩ってる間、トップレスの刑にしてあげるんだからぁ!!!」
ふっ、あのデカチチ女、裸にひん剥かれて良い気味なのです! 私の可愛いヘアーを下等生物呼ばわりした罰が当たったのです!
それにしても、雪音ちゃんの “うささん” って言い方のほうが可愛い気がしますね? 私も今度からヘアーのことは “うささん” と呼ぶことにしましょう♪
下界の生き物の内、うささんの創造を担当した神様は上機嫌になってお気に入りのカップで紅茶を優雅に飲みながら下界の様子を心ゆくまで眺め続けるのでした♪
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《 雪音ちゃんとラピの雑学コーナー 》
ラピ「今日は地球の陸の上で住んでる4本足の動物さんの足の速さについてのお話なのですー♪」
雪音「なんとノウサギさんって最高で時速80kmものスピードで走ることができるんだって! すっごく速くてびっくりだよね!」
ラピ「ちなみに地面に穴を掘って暮らしてるアナウサギさんの足の速さは時速40kmだそうですー♪」
雪音「ほぇ〜、ノウサギかアナウサギかで全然違うんだねー。あ! あと、他の動物さん達もネットで調べてみたから、ちょっと下に載せてみるね〜」
猫、時速48km
柴犬、時速33km。犬で最速なグレイハウンド、時速70km
狼、時速70km
ラピ「クゥーちゃんと似てる狼さんはなかなか速いみたいですねー♪」
クゥー「がぅがぅ♪」
雪音「狼は時速70kmの速さなら20分間、時速30kmなら7時間以上も獲物を追い続けることができるって書いてあったよ! すごい持久力だよね!」
クゥー「がぅ!」えっへんと胸を張るクゥー!
山羊、時速40km
ラピ「地球のアナウサギさんと山羊さんはおんなじぐらいの速さなんですねー」
雪音「んー、他の動物さんもそうなんだけど、短距離走るか長距離走るかで維持できる速度とか変わって来るみたいだし、数値も見るサイトによって違ってたりするから、まっ、目安程度に考えておいた方が良さそうだけどね?」
イノシシ、時速50km
カピバラ、時速50km
雪音「えっ、カピバラってこんなに速く走れるの!? 温泉でのほほんと浸かってる姿からは想像できないんだけど……。ほぇ〜」
熊、時速40〜60km
虎、時速49〜65km
競走馬、時速54〜72km
ヘラジカ、時速72km
ラピ「…………」
雪音「うっわ、すっごい角! あんなのが刺さったら身体にいっぱい穴があいちゃうね!」
クゥー「キューン、キューン」クゥーは尻尾をお尻に挟んでブルブルふるえている!
ライオン、時速58〜80km
クォーターホース、時速75〜88km
ヌー、時速80km
ブラックバック、時速80km、角生えてます、オスの角は螺旋状です
トムソンガゼル、時速80〜86km、角生えてます
プロングホーン、時速90〜100km、角生えてます、800mぐらいなら時速90km、6000mだったら時速56kmで走れます
スプリングボック、時速88〜100km、角生えてます
雪音「へぇ〜、スプリングボックって3m以上の高さのジャンプができるんだ! 凄〜い!」
クゥー「がぅがぅ♪」
雪音「あっ、この映像だと、よく、ぴょーんぴょーんってジャンプして移動してるね? ジャンプするのが好きなのかなぁ?」
ラピ「敵が近くに来てもなぜか走って逃げずにジャンプし続けちゃう子が結構いるみたいですし、お馬鹿さんが多いんじゃないですかー?」
雪音「ラピ、スプリングボックになんか恨みでもあるの? ブラックバックあたりの映像からなんか不機嫌だよね?」
クゥー「がぅがぅ」
ラピ「雪音ちゃん、先程から黒山羊の頭に生えてる色んなタイプの角とよく似てる角をした動物さん多くないですかー?」
雪音「( あ〜、ラピってば黒山羊大っ嫌いだから、それに似た角を頭に生やしてる動物がいっぱい出て来て不機嫌だったんだ…… ) 多分、それらの動物達の角を作者が気に入って各種黒山羊の角に採用したからなんじゃないかな? でも、この子達が似てるのは角だけで黒山羊みたいに毛むくじゃらじゃないんだから、黒山羊なんかと一緒にしないであげようよ? ねっ? あっ、ほら見てラピ! あれが地球で陸上最速の4本足の動物、チーターだよ!」
ラピ「そんな露骨に話を変えなくても良いじゃないですかー? まぁ、見ないで済むから良いんですけど……。えっと、チーターさんは足は速いみたいですけど持久力がないから500mも走るとみるみる走るスピードが落ちちゃうって書いてありますねー」
雪音「あっ、そうなんだ?」
ラピ「あと、狩りの成功率は40〜50%と低いそうですよー?」
雪音「えっ、なんでそんなに低いの?」
ラピ「ある1匹の獲物に目を付けたら、その獲物だけを追い続けてしまうからって言うのが理由みたいですねー」
クゥー「がぉー」クゥーは無理そうなら近くにいる別の獲物を狙えば良いのにーと思って呆れている!
雪音「チーターって負けず嫌いの頑固者なのかな?」
ラピ「お馬鹿さんなだけじゃないですかー? あっ、リカオンって言うイヌ科の動物は狩りの成功率80%だそうですよー? なんでも集団で狩りをするサバンナ最強のハンターで時速60kmの速さで30分近くも獲物を追い続けることができるとか書いてありますねー。本気出すと時速71kmの速さで走ることもできるみたいですー♪」
雪音「イヌ科なの? なんか足が異様に細長くて違和感が……」
私が微妙な顔してるとラピが両手を可愛いくブンブン振って抗議して来た!
ラピ「えー、丸くておっきなお耳がとっても可愛いじゃないですかー!」
雪音「えっと、ラピはリカオン気に入ったの?」
ラピ「はい♪ それに、ここに弱肉強食のサバンナの世界で、弱ってる仲間に貴重な食べ物を分け与えることができる仲間想いの動物さんって書いてありましたしー♪」
クゥー「がぅがぅ♪」仲間想いって所にクゥーも反応している!
雪音「へ〜、そうなんだぁ? 優しい動物さんなんだね♪」
ラピ「はい♪ 下品な笑い方をして弱い動物や人間の命を弄ぶ黒山羊なんかとは違うのですー♪」
雪音「( うんうん、ラピの機嫌が直って良かったよぉ〜。でも、ここにリカオンの捕食の仕方は残酷だーとか書いてあるの見つけちゃったんだけど、ラピはまだ読んでないのかな? )」
私はせっかく機嫌の良くなったラピに読まれる前にサイトのページをソッと閉じ、角の生えてないモフモフの可愛い動物動画を検索して再生、ラピやクゥーと一緒に動画を見て癒されることにしたのでした♪
おしまい。




