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第10章 雪音ちゃんと村娘達 090〜 雪音ちゃん、魔法の盾の弱体化を宣告される!③〜

 次の日の朝、起きて顔を洗って歯を磨き、着替えてから髪の毛を(くし)()いていると、テーブルの上に(ろう)で封をした私宛の手紙が置いてあるのに気が付いた! よく見れば、なんか黄色く光ってるし! なんて自己主張の強い手紙なんだろうね?


 私は封を開けて中の手紙を取り出し、出だしの文面に目を通してみる。


『拝啓、(わたくし)の愛する雪音ちゃんへ

 昨日(さくじつ)はいきなり抱きつくという暴挙をしでかしてしまい』


 私は手紙を封筒に戻し見なかったことにした!


「がぅ?」クゥーは首を(かし)げてる!

「雪音ちゃん、お手紙ですかー? ちょっと見せてくださいねー♪」

「あっ、ちょっとラピ!? 私宛の手紙、勝手に読もうとしないでよ!?」


 私はラピから手紙を取り返しホッと胸をなでおろした! ラピがこれ読んで天使にキレちゃうとマズイからね!


「雪音ちゃん、人からいただいたお手紙は最後まできちんと読んであげましょうねー? そんな上質な紙を用いてまで寄越してくださったのですからー」

「がぅがぅ」うんうんと(うなず)くクゥー!

「うぅ、分かったわよ」


 もう、人の気も知らないで……。私は封筒から再度手紙を取り出し手紙を読んでみた。


『拝啓、(わたくし)の愛する雪音ちゃんへ

 昨日(さくじつ)はいきなり抱きつくという暴挙をしでかしてしまい大変申し訳ありませんでした。(わたくし)、この世界の創造神ティア様の従者のシャルと申します。雪音ちゃんのことはティア様がよく執務室でご覧になっているので』


 昨日も思ったけど、神様、仕事部屋で何してるのよ? 仕事しなよ? って思いながら続きを読んでいく。


(わたくし)も一緒に見させてもらっているのですが、初めて雪音ちゃんを見た時の(わたくし)の受けた衝撃と言ったら、それはもう言葉に言い表すことのできない破壊力のあるものでしたわ! 白いワンピースを着た可愛い女の子が頭に(つの)を生やして「うにゃーーー!」と叫んでる』


「がぅ?」

「雪音ちゃん、お手紙を持ってるお手手がぷるぷると(ふる)えていますけど、どうかしたんですかー?」

「な、なんでもないよ。ウン、ナンデモ……」


 黒山羊(ベーゼゴウト)のお肉食べて黒山羊(ベーゼゴウト)(つの)が頭に生えて私がキレちゃった時のアレ、見られてたんだ……。は、恥ずかしい……。手紙の続き、もう読みたくなくなって来たんだけど、コレ最後まで読まなきゃダメなの?


『白いワンピースを着た可愛い女の子が頭に角を生やして「うにゃーーー!」と叫んでる姿がとても愛らしくて愛らしくて、その時、(わたくし)の心は雪音ちゃんに奪われてしまいましたの!! それ以来、(わたくし)、本物の雪音ちゃんに会いたくて会いたくて、けれど下界へ降りる許可が得られないから会えなくて、仕方ないから雪音ちゃんの新しい映像と引き換えにティア様のお仕事を何度も肩代わりして目に(くま)ができることも』


 えっ、なに、神様って私の映像を(えさ)にして部下に自分の仕事やらせてるの? うわ、ひっどー。シャルさんって実はすっごく不憫(ふびん)な人なんじゃ……。昨日は、うっわぁ〜とか思っちゃってごめんなさい。全部、あの神様が悪いんだよね? ブラックな職場の中で私がきっと癒し的な存在になってたんだよね? 次に会うことがあったら邪険(じゃけん)にしないで優しく接してあげるようにしようっと。


 手紙の続きを読んでいくと私がいかに可愛いかが延々と書かれてた。な、なんか照れるなぁ〜、えへへ♪ そんでもって、私がクゥーの血を飲んだことで金色の狼の耳や尻尾なんかが生えちゃった姿も見られてたってことも分かって私は精神に大ダメージを受け、テーブルの上に突っ伏した! うぅ、まさか、あの姿も見られてたなんて……。


「くぅ〜ん? くぅ〜ん?」クゥーが不思議そうな顔してペロペロと私の顔を横から()めて来る。


 もうね、きっと私の全ての行動が録画されて見られてるに違いないね。私は確信したよ! ん、待って、でもそれってラピとのイチャイチャも録画されて見られちゃってるってことですか……?


「にょわぁあああああ!?」

「がぅっ!?」ビクッ!?

「ゆ、雪音ちゃん、いきなり奇声を上げてどうしたんですかー!?」


 は、恥ずかし過ぎるぅううう!!!


 にゅおぉおおおおおおおお!?


 私は床の上でゴロンゴロンと転がりまくった!


 くぅううう、おのれ、神様めぇええええ!!! プライバシーの侵害し過ぎでしょおおおお!?


「一体このお手紙に何が書いて……。ふんふん、なるほど、なるほどー、そういうことだったんですねー♪」

「ちょ、ラピ、読んじゃったの!?」


「はい、読んじゃいましたー♪ 雪音ちゃんはこのお手紙を書いた天使様にすっごく愛されているんですねー♪ 流石(さすが)は私の雪音ちゃんなのですー♪」

「お、怒ったりしないの?」

「がぅがぅ」うんうんと(うなず)くクゥー!


「天使様に愛されることは良いことじゃないですかー? それに最後の方には雷の加護を授けておきましたってことも書いてありましたよー?」

「がぉー」クゥーはラピが怒らないなんて珍しいと思った!

「えっ、そんなこと書いてあったんだ?」


「ここに書いてありますよー?」

「どれどれ? 恥ずかしくてまだ途中までしか読んでなかったからなぁ」


 私はラピの指先にある文章を読んでみた。


昨日(さくじつ)いきなり抱きつかれてご不快に思われているかもしれませんが、抱きついている際、(わたくし)に与えることができる雷の加護の力を雪音ちゃんに授けておきましたわ。(わたくし)と同程度の存在までの雷や電撃の攻撃であれば、(しび)れたり動けなくなるようなことはありませんわ!』


 あはは、単なる抱きつき魔じゃなかったんだネー。雷の加護かぁ〜? 天使の加護なんだから、きっと電気鰻(エレクトリックイール)やザルガーニ ( 双頭のキマイラ ) の血を飲んで得られた雷耐性 ( 電撃耐性 ) よりも効果は上だよね? ちょっとラッキーだったかも♪


『ですので、その、次に会う時にどうか(わたくし)のことを避けるようなことはしないでいただけると心に大きな傷を受けて数週間、いえ数ヶ月間寝込むようなことにならずに済みますので、どうか寛大なるお心でお(ゆる)しいただければと』


 なんてゆーか、こう、すっごく精神的に追い詰められてるような感じなんですけど……。大丈夫なのかなぁ、この人……。


「雪音ちゃん、眉間(みけん)にシワが寄っていますよー?」

「がぅがぅ」

「ここを読めば眉間(みけん)にシワも寄るでしょ?」


「えーっと、私も雪音ちゃんにそっぽを向かれてしまったら同じようなことになると思いますので別に普通のことだと思いますよー?」


 ソウダネー、ラピの場合もっと(ひど)いことになりそうだよネー。


「ところで、これを書いた天使様ってどんな方だったんですかー? 文面から見ると一途(いちず)で気弱な方のように思えるんですけどー?」

「いやー、最初見たときは雷をバチバチ〜ってさせてる格好良い槍持ってて、綺麗(きれい)な鎧を身に(まと)った凛々(りり)しい美人さんに見えたんだけどね〜?」


「じゃあ、戦乙女(ヴァルキリー)様だったんですねー♪ 私もお会いしてみたかったですー♪ それにしても雪音ちゃん、一体いつ戦乙女(ヴァルキリー)様とお会いしていたんですかー?」

「がぅがぅ」

「夢の中で会ったんだよ。あー、でも、夢じゃなくて(たましい)だけ天上界に召喚されたのかもしれないんだけどね?」


「それで、戦乙女(ヴァルキリー)様の要件はなんだったんですかー?」

戦乙女(ヴァルキリー)って言うか神様の要件だったんだけど、私の魔法の盾がね、強過ぎだってことで今日から弱くさせられちゃうって話だったのよ」


「えっ、えぇえええーーーー!?」

「がぅっ!?」


 ラピとクゥーがびっくりしてる。まぁ、当たり前だよね。私も聞いた時はびっくりしたし。


「もー、うるさいのですわぁ〜ん。(わたくし)、吸血鬼ですから朝は弱いので、もう少し静かにして欲しいの…です……わぁ………ん、くー」

「ご、ごめんね、ラスィヴィア、起こしちゃって? まだ朝早いからそのまま寝てて良いよ?」

「もう二度寝しちゃってますよ、雪音ちゃん。それよりも魔法の盾が弱くされてしまう件について詳しく説明をお願いしますー!」

「がぅがぅ!」


「説明も何も簡単に言えば、神様が、人間や魔族が魔物と命を賭けたギリギリの戦いをするのを見るのが好きだから、防御の魔法が強過ぎるとつまんなくてダメなんだって」

「がぉー」えー?とクゥーは思っている!

「攻撃魔法が強いのは問題にならないんですかー?」


「攻撃魔法が強い分には問題ないみたいだよ? なんて言えば良いのかな? 木の枝みたいな弱い武器を持って殴り合うのを見るより、お互い強い武器を持って戦った方が迫力があるし、緊張感みたいなものが感じられるようになるからとか多分そんな理由だと思うよ? 余計なこと聞いて攻撃魔法も弱くされたらイヤだから突っ込んで聞かなかったけどね?」

「がぉー」クゥーはとても残念そうな顔をしている!

「手に汗握る展開を神様はご所望と言うことですねー。それでどのように弱くさせられちゃったんですかー?」


「魔法の盾で攻撃を受け止めることができるのは3回まで! 炎のブレスや電撃みたいな攻撃は3秒受けると1回攻撃を受けた扱いになるんだって!」

「炎のブレスを1秒受けた場合はそれでもう1回と数えられちゃうんですかねー? 残り2秒分を受けて初めて1回の扱いだったら嬉しいですよねー?」

「がぅがぅ」


「3秒までは受け続けても1回扱いで、1秒しか受けてなくてもそれで1回になっちゃうと思うよ? 試しにやってみよっか? ラピ、魔法の盾出してくれる?」

「はーい♪ 雪音ちゃん、出しましたー♪」


「じゃあ、炎のブレス吐いてみるね? すぅー」


 私は竜人モードに移行し、大きく息を吸い込んで口から炎のブレスを1秒吐く、吐くのを止める、1秒吐くを繰り返してみた!


 そしたら案の定、ラピの展開した魔法の盾が1秒ブレスを3回受けた後にパリーンと音を立てて消滅しちゃった! もちろん魔法の盾の色も、炎の1秒ブレスを1回浴びるごとに青から黄色、黄色から赤へと変わってた! あちゃー。予想通りとは言え残念な結果になっちゃったね。


「くぅーん」クゥーは魔法の盾の弱体化を目の当たりにして、しょんぼりしてしまった。尻尾がぺたんと地面に垂れている!

「炎のブレスを1秒しか受けてなくても継続して受け続けていない場合は1回と数えられてしまうんですねー」

「みたいだね。炎のブレスを受け続ける分には3秒×3回分で9秒は耐えられる訳だけど、今みたいな感じで断続的に炎のブレス吐かれたらアウトかな? でも、炎のブレスって、プラーミャとかスカーレットちゃんが使ってるの見たことあるけど普通は吐きっぱなしみたいだから、そんなに気にしなくても良いと思うよ。むしろ問題なのは」


「魔物に炎の矢とか氷の矢の魔法を4本以上展開された時ですねー?」

「そうなんだよネー。そしたら、どうしよっか?」

「がぅ!」と鳴いてクゥーが4本の氷の矢を周囲に展開させた!


「あはは♪ そうだね、クゥー。同じ数だけこっちも魔法の矢なり槍なりを展開させて撃ち落としちゃえば良いんだよね♪ でも、念のため魔法の盾を展開させるのも忘れちゃダメだからね?」

「がぅ♪」


 私に頭を()()でされて嬉しそうに鳴くクゥー!


「むぅー、クゥーちゃん、ズルいですぅー!」

「がぉ?」ぼく、ズルしてないよーって感じでトボけるクゥー!

「怒らない怒らない。それより、ラピもクゥーもこれから魔物と戦う時は気をつけてね? 今までのように魔法の盾を使って様子見しながら戦うのは危険だから、魔物が(おそ)い掛かって来た瞬間に魔物を倒せるように攻撃魔法をいつでも放てるように心掛けておいてね?」


「はーい!」

「がぅ!」


 あ〜、そういえば、奴隷商人の館内で保護してるお姉ちゃん達にあげたイヤリングに私が込めておいた防御魔法も弱体化しちゃったことになるんだよね? でも、基本的にお姉ちゃん達は街の中で生活してるんだし、街中でなら特に問題起きないよね? ナンパ野郎とかが無理矢理お姉ちゃん達を連れ去ろうとしても自動発動する魔法の盾に(はじ)かれるだけで壊すことなんてできないだろうし……。


 あれ? 弱い攻撃でも3回受けたら魔法の盾って壊れちゃうのかな?


 私は天上界の倉庫から以前収納した薪を召喚、風魔法で斬り刻んで、木のボールを3つ作ってみた。


「雪音ちゃん、何やってるんですかー?」

「いや、弱い攻撃でも3回受けたら魔法の盾って壊れちゃうのかなと思って。ラピ、この3個の木のボールを私の魔法の盾に向かって投げてみてくれる?」


 私は作った木のボールをラピに渡して魔法の盾を正面に展開させた。


「はーい! それでは投げますよー? え〜ぃ♪ やぁ〜♪ とぉ〜♪」


 ガン、コロコロコロ〜。

 ガン、コロコロコロ〜。

 ガン、コロコロコロ〜。


「壊れないみたいですねー? 色も青から変わっていませんしー」

「がぅがぅ」

「そう、みたいだね? 一定以上の攻撃力を持ってないとカウントされないのかな? でも、じゃあその一定以上の攻撃力ってどれぐらいなのよ……」


「良いじゃないですか、雪音ちゃん。攻撃を受けたのに色が変わらなかったら “らっきー”って思っておけばー♪ それにですねー、例えばドッスンバード(落下鳥)が地面に落下した時の衝撃で飛んで来た小さい石っころとかが3個当たっただけで魔法の盾が消えちゃったら悲しいじゃないですかー?」

「確かにそんなので消されたら悲しいけどって、なに、ドッスンバードって?」


「頭から落下して地面にズドーンって激突した時に生じる衝撃と音で狙った獲物を気絶させる鳥の魔物さんの名前なのですー♪」

「そんな鳥いるんだ!? (くちばし)とか首とか折れちゃわないの!?」


「魔法でなんとかしちゃってるんじゃないですかねー? 私も話にしか聞いたことがないので、そのうち見てみたいんですよねー♪」

「がぅ♪」クゥーはよだれをダラーっと垂らしている!

「もう、クゥーは食いしん坊さんなんだから。鳥さんの話が出ただけでよだれ垂らさないで欲しいな? ほら、食堂に行って朝ご飯でも食べに行きましょ? 今日の朝ご飯は何かなぁ〜?」


 そんな会話をしながら私達は扉を開けて1階の食堂へと向かうのであった。


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