第10章 雪音ちゃんと村娘達 088〜 雪音ちゃん、魔法の盾の弱体化を宣告される!①〜
「ん……。あれ? ここは確か……」
目が覚めた私は柔らかなベッドの上にいたんだけど、でも今、私がいるのは宿屋のお部屋の中じゃなくて、暗いけどあちこちに青くて綺麗な淡い光が漂っている、異世界のお胸のおっきな神様と出会ったあの不思議空間の中だった!
「はっ!? えっ、なに、どう言うこと!? 私、また死んじゃった!?」
慌てる私の前に大きな青い光が出現して明滅しだした! 何かが転移してくる兆候だ!
明滅する青い光が大きく弾けると、そこには綺麗な鎧を着た金髪縦ロールの美人さんが雷がバチバチと帯電してる槍を携えて凛々しく立っていた! 転移魔法の名残りである弾けた大量の小さな青い光の粒子達が金髪縦ロールの美人さんの周りを舞っていたので、そのあまりにも幻想的で格好良い姿に私は思わず見惚れてしまった! けれど、その時間も長くは続かなかった!
「やぁ〜ん、生の雪音ちゃんですわぁ〜♡ 可愛い過ぎますぅ〜♡」
そう言って目の前の美人さん ( 異世界の神様と違って胸はそれほど大きくなかった! ) が手に持ってる槍をほっぽり投げ、背中に天使の翼を生やして私に向かって飛んで来た!
「なっ!?」
呆気に取られて身動きの取れない私! その間に金髪縦ロールの美人さんが私に抱きついて頬擦りし始めた!
「ちょ、いきなり何するんですか!?」
「映像じゃない雪音ちゃん、柔らかいですわ〜♡ ぐへへ〜♡」スリスリ♡
「あちゃー、やっぱりこうなっちゃいましたねー、ティア様ぁ?」
「うむ、どうしてもと言うからシャルに任せてみたのだが、やはりダメであったな」
聞き覚えのある声がする方に顔を向けて見れば、私に創造魔法を授けてくれたボインボインで妖艶な感じのオーラを纏ってる神様と、背の小さい ( 胸も小さい ) 可愛らしい女の子が転移魔法の青い光とともに現れた!
「ちょ、神様、何なんです、この人!? 映像じゃない私とか生の私とか言ってましたけど、どういうことなの!?」
最後、丁寧語がとれて素が出ちゃったけど、そんなこと気にしてる場合じゃない! 映像って何!? 私って神様だけじゃなくて他の人 ( って言うか天使? ) 達にも見られてるってこと!?
「やぁ、雪音ちゃん、久し振りだね〜? 毎日、君の活躍を楽しく見させてもらっているよ! 」
「毎日見てるんですか!? そんなことしてないでご自分の仕事してくださいよ!?」
異世界の神様にプライバシーの概念はないんですか!? や、まぁ、神様だから下界の生き物が死んじゃった時に天国行きか地獄行きかを決めるのに観察する必要があるのかもしんないけどさ!!
「そうですよぉ〜、ティア様ぁ? お仕事サボって雪音ちゃん観察ばっかりしないでくださいよぉ〜」
仕事サボってまで私の観察してるの!? なにそれ怖っ!?
「リル、実際の雪音ちゃんの喜怒哀楽の表情や身振り手振りを反映させないと雪音ちゃんの姿を借りただけのバーチャルアイドルになってしまうじゃないか? それではダメなのさ。パターンを増やすためにも観察は必要なことなのだよ!」
「ティア様、それ本人の前で言っちゃって良かったんですかぁ〜? 本人に許可取ってないんですよねぇ〜?」
「は、反映!? バ、バーチャルアイドル!? 本人に許可ってどうゆー!?」
なな、何を言ってるの、この神様!? 意味分かんないんだけど!?
「あー、コホン! そんなことよりもだ! 私は雪音ちゃんに伝えなければいけないことがあるのさ! シャルが雪音ちゃんに抱きついて与えた任務を放棄しているからね!」
「そんなことよりもじゃないです!! バーチャルアイドルについての説明をですね!!」
「実はだね、雪音ちゃんの魔法の盾を明日から弱体化させることに決定したのだよ。というか既に実行済みなのさ」
「っ!?」
えっ、今、なんて言いました? 私の魔法の盾を……弱体化?
「はいぃいいいい!?」
つ、ついに来ちゃったよ、弱体化! いつかは来るとは思ってたけど、まさかこんなに早いだなんて……。
「魔法の盾が強過ぎると見ていて面白くないからね! こう手に汗握る戦いが私は見たいのだよ! 戦っている者同士が命の危険を感じるようなギリギリの戦いがね!」
「私が自分に使う分には魔法の盾を弱体化されても構わないんですけど、仲間を守るために使う魔法の盾の弱体化は止めてもらえませんか?」
「攻撃魔法の威力やスピードは落とさないから攻撃魔法で仲間がやられる前に対処したまえ! 魔法の盾の防御力にあぐらをかいていたら、仲間のために張った魔法の盾をあっさりと壊されてしまった時、雪音ちゃんは即座に適切な行動が取れないと私は思うのだよ。仲間が突然危険に晒されてしまったら雪音ちゃんはきっと慌ててパニックになってしまうと私は思うのだがね? 違うかな? ならば、普段からそれに近い状況に身を置いて神経を常に尖らせて行動した方が良いというものさ!」
いや、神様の言ってることにも一理あるとは思うけど、この人の場合、単に魔物と人間or魔族の命のやり取りが見たいだけだからなぁ? でも、だからって、ここで神様の決定に逆らって他の魔法まで弱体化されたら堪らないから、私はこう答えるしかなかった。
「分かりました。今後、仲間に魔法の盾を使う時は、使った後も危険な目に遭わせないように常に目を光らせるようにします」と。
「うむ、素直でよろしい! いつぞやの泣きわめいて私を困らせたあの時とは別人のようなのさ!」
うぅ〜、そんな恥ずかしいこと思い出させないでください……。あの時は凶暴な魔物がいる世界に放り込まれるって聞いて本当に怖くて怖くて仕方なかったんだから……。大体、長期入院してた女の子が魔物がいっぱいいる異世界で生きて行けるなんて思えるはずないじゃないですか?
「それでどのように弱体化させたかと言うとだね、敵の攻撃を3回受けたら魔法の盾が消滅するように私が雪音ちゃんの魔法に干渉しておいたのだよ! 敵の攻撃を何回受けたかは数えなくても良いぞ? 攻撃を受ける度に盾の色が青から黄色、黄色から赤へと変わるようにしておいたからね。覚えるのが面倒なら、赤い盾の時に攻撃を受けたら盾が消えると覚えておけば良いのさ」
「赤い盾の時に攻撃を受けたら魔法の盾が消えるんですね? 分かり易くて助かります」
「そうだろう、そうだろう! 私が思いついたのさ。感謝すると良い! はっはっはっ!」
神様、両手を腰に当てて、そのボインボインなお胸を前に突き出しながら高笑い始めないでください! イラッと来ます! あと、魔法の盾を弱体化させられちゃったのに感謝なんてしませんよ? 創造魔法を授けてくれたことにはすっごく感謝してるけど……。
私がなんとも言えない気持ちでいると、神様の隣にいた可愛いちびっ子天使がニコニコしながら私に話し掛けて来た!
「あっ、炎のブレスとか電撃のような攻撃は3秒までは1回の攻撃扱いなので安心してくださいね〜♪ リルがティア様に進言しておきましたから当初よりは長続きする仕様になっていますぅ〜♪」
「あ、ありがとうございます?」
「いえいえ、どういたしましてですぅ〜♪」
うーん、神様の性格だと電撃とか長時間受けて攻撃1回のカウントはあり得ないし、かといってビリビリビリのビリで1回とかカウントされてたら、すぐに魔法の盾なんてなくなっちゃうもんね。だから3秒で1回のカウントかぁ〜。できればもう少し長かったら良かったんだけど、3秒まで1回の攻撃扱いってことは、9秒は電撃や炎のブレスに耐えられるってことだもんね。うん、ちびっ子天使、グッジョブだよ! 私はちびっ子天使に向かって、にっこりと微笑んでおいた!
「あっ、そうそう、こちらにサインしてもらっても良いですかぁ〜?」
「えっ、あ、はい、名前を書けば良いんですね?」
「はい♪ お願いしますぅ〜♪」
私は目の前の可愛いちびっ子天使から渡されたペンと紙を見て固まった。だって、魔法の盾の仕様変更承諾書か何かかなって思ったらさ?
「あ、あの、これ、私の写真……」
自分で言うのもなんだけど、超良い笑顔で超絶可愛い金髪碧眼の私の上半身が写ってる写真だったんだよ! こんなのいつ撮ったの? ってか盗撮だよね? 私の肖像権どうなってるのよ……。異世界、怖っ!!
「はい♪ 1番良い笑顔のものを持って来ましたぁ〜♪」
ちっがーう! そうゆーことが聞きたかったんじゃないんだよぉ!
「大神雪音ってフルネームで書いてくださいね〜♪」
「リル、あとでそれを借りても良いかね? 雪音ちゃんの直筆サイン入り生写真を魔法で大量に複製しておきたいのだが?」
ちょっと神様、私のサイン入り写真を大量にコピーして一体何に使うんですか? 誰かに売るんですか? 売るんだったら私にも分け前を……と思ったけど、もし、これらのことが『創造魔法を授けた代償だ』とか言われたら甘んじて受け入れるしかないんじゃ……? 藪蛇つついて創造魔法を取り上げられたり、神様の機嫌損ねて他の魔法も弱体化されちゃったらマズイよね? 私は泣き寝入りすることに決めたのであった!
そんな私そっちのけで、神様とちびっ子天使が私の写真を巡って取引してる!
「ティア様がお仕事をしっかりしてくれたら考えてあげますねー?」
「あ、あの」
「雪音ちゃん、どうかしたんですかぁ〜?」
「私に引っ付いてるこの人が邪魔でサイン書き辛いんですけど……」
実はあの登場した時だけ私が思わず見惚れちゃった残念金髪縦ロールの美人さんは今も私に抱きついたままなんだよ!
「あー、それもそうですねー。ちょっと待っててくださいねぇ〜? シャルー? 雪音ちゃんから離れてくれませんかぁ〜? もう十分抱きついたでしょう? シャルー? もうシャル! リルの言葉聞こえてないんですか!?」
「雪音ちゃ〜ん♡ でへへ〜、もう離しませんわぁ〜♡ おうちにお持ち帰り〜なのですわぁ〜♡ 持ち帰って、持ち帰って、ぐふ♡ あ〜んなことや、こ〜んなことを < ドガッ! > がはっ!?」
「っ!?」
ちびっ子天使がいつの間にか手に召喚した、どでかいハンマーを私に抱きついてる美人さんの頭に躊躇なく振り下ろしちゃったよ!?
「きゅ〜〜」
残念金髪縦ロールの美人さんの頭の上にはピヨピヨとヒヨコさんが数羽飛んでいる!
「はーい、これで書き易くなったと思いますので〜、サイン、お願いしますね〜♪」にっこり。
「は、はい。ありがとうございます……」
ちびっ子天使、怖っ!?
それにしても、どでかいハンマーを金髪の美人さんの頭に叩きつけた衝撃が私にまで、これっぽっちも来なかったんだけど、神様が魔法か何か使ってくれたのかな?
「書き終わりましたかぁ〜?」
「あ、はい、どうぞです」
大神雪音とサインを書いた私の写真をちびっ子天使に返すと、
「ありがとうございまぁ〜す♪」
とそれはそれは嬉しそうに写真を受け取ってくれた。私の心境は実に複雑だけどね?
ちびっ子天使は私の写真を懐にしまい、地面で気絶している残念金髪縦ロールの美人さんをズルズルと引きずって神様の側へと戻っていった!
あのちっちゃい身体のどこにあんな力があるんだろう? さっきはどでかいハンマーを軽々と振り回してたし……。天使だから、なのかなぁ?
「では、仕事もあることだし私達は帰るとしよう! 雪音ちゃん、これからも私達を楽しませてくれたまえ! 災厄のドラゴンとの戦いは実に良かった! あのような戦いをまた頼むぞ?」
イヤです! 遠慮します! あんなのはもうこりごりです!
そういった思いを胸の奥に隠して私は無理やり笑顔を作ってニコニコしておいた!
神様達が転移魔法の青い光に包まれていく!
「あ、リルはリルって言いますぅ〜♪ 覚えておいてくださいね〜♪」
可愛いちびっ子天使が私に手を振りながら名前を教えてくれた。それって、また夢の中?で神様達が私に会いに来るってこと? 遠慮したいんですけど……。
「はっ!? 私の雪音ちゃんは一体どこに!?」
あっ、残念金髪縦ロールが気絶から復活した!
「シャル、雪音ちゃんならあそこにいますよー?」
「今、そちらに行」
ゴンッ!
「痛っ!? なんですの、この青い壁は!? 青い、壁!?」青ざめるシャル!
「転移魔法の際に生じる障壁なのさ。シャルも知っているだろう?」
「そんな!? 私、まだ雪音ちゃんに伝えるべきことを伝えておりませんわ!?」
「それならリル達が伝えておいたよ?」
「どうしてですの!? それは私に任されたお仕事ではないですか!?」
「シャル、雪音ちゃんに別れを告げなくて良いのかね? 転移魔法の発動を遅延させておくのも、そろそろ限界なのだよ?」
「いぃやぁああああ!!!」
ガンガンガン!!!
うわぁ〜、残念金髪縦ロールの美人さんが転移魔法の際に生じる青い障壁をガンガン両手で叩いて泣きわめいてるよ……。あっ、地面に崩れ落ちた……。
私と会ったの今日が初めてなのに、どうしてあの人にあんなに好かれてるんだろう? 神様と一緒に私のことを毎日見てるから? テレビに出て来る女優さんとかアイドルを好きになっちゃう感じなのかな?
ん、アイ、ドル? そうだよ、バーチャルアイドル! さっき私の姿を借りたバーチャルアイドルが〜とか、なんか言ってたよね!? 私の写真を魔法で大量コピーするのってバーチャルアイドルのグッズ販売の商品の1つだったり!?
「ちょっ、その転移待ったぁああああ!!!」
私が神様達の所へ猛ダッシュしようとしたら既に神様達の姿はなく、私がベッドの上で目覚めた時と同じように暗い空間の中に淡く青い光が無数に漂っているだけだった……。
「に、逃げられたぁあああああ!?」
魔法の盾の弱体化の話持ち出されて、すっかり忘れてたけど、天上界で私の姿使ったバーチャルアイドルが放映されてたりするの? 歌ったり踊ったりしちゃってるの? 胸の前で両手使ってハート作ったりして「萌え萌えきゅー○」とか言っちゃってたり? は、恥ずかし過ぎる……。
地上界にいる私には神様の暴挙を止めることはできないため、私は今しがたの会話の中の私のバーチャルアイドルに関する記憶を魔法で消去し、ベッドで丸くなって眠ることにするのであった……。




