幕間 〜 神様達は見ていた。シャル暴走?編①〜
神様の執務室でティア様は相変わらず仕事をサボりながら地上界にいる雪音ちゃんを見守っていました!
「ほぉ〜う、なかなか面白いことになっているではないか! 流石、私の雪音ちゃん。楽しませてくれる!」
「ティア様ぁ〜、まーたお仕事サボって雪音ちゃんを見てるんですかー? お仕事してくださいよぉー!」
「まー、そう言わずにリル達もこれを見てごらんよ。ふっふっふ。雪音ちゃんがこれから戦おうとする相手が実に興味深くてね!」
にんまりとした笑みを浮かべたティア様が、執務室の壁に特大映像プレートを出現させ、雪音ちゃんが深紅のドラゴン・プラーミャと戦闘に入ったシーンが再生された!
「ゆ、雪音ちゃんが災厄の魔物と戦っているってどういうことですのぉおお!?」
「シャ、シャル、落ち着いてって!」
「リル、これが落ち着いていられますか!? 雪音ちゃんの一大事なのですよ! こ、こうしてはいられませんわ!! 第1級神具を装備して降臨しなければ!!」
シャルが瞬時に第1級神具である戦乙女装備で身を包み、地上界へと舞い降りようと次元転移に入ろうとする!
けれど、次元転移はティア様の干渉によって不発に終わってしまう!
「シャル、戦乙女として地上界に降臨することは許可しないよ?」
「ティア様は雪音ちゃんがどうなっても構わないとおっしゃるの!? 信じられませんわ!!」
シャルがキッとティア様を睨みつけます。
「仮に雪音ちゃんが災厄の魔物の炎で身体を灰にされてもだね、時間が経てば再生するように私が作ってあるのだから問題はないのさ。安心して見ているが良い」
「そんなこと言われても安心なんてできませんわ!!」
「ふーむ、では、雪音ちゃんが絶体絶命のピンチになってからなら、降臨するのを許してあげよう。危機的状況から雪音ちゃんを助けてあげれば、雪音ちゃんがシャルに惚れてくれるかもしれないぞ? くっくっく」
「ティア様……」ちびっ子天使リルは、じと〜っとジト目で神様を見つめた。
「ゆ、雪音ちゃんが私に惚れ、惚れてくれるぅうう!? そそ、その話、本当ですの!!」
シャルがティア様の両肩を掴んでグラグラと揺らし始めた!
「あ゛〜、シャル。き、気持ち悪くなるから、そんなに激しく揺らすのはははは、止めてくれないかかかかか?」
「雪音ちゃんが私に惚れてくれるのですか! くれないのですか! はっきりお答え下さいまし!!!」
「シャルの雪音ちゃん狂いは末期ですね……。可哀想に……」
「う、うん、そーだね。雪音ちゃんが『もうダメ! こんなの無理だよぉお! 死んじゃうよぉお!』って思ったあたりで颯爽と助け出したら、シャルに惚れちゃうかもしれないな」
「で、では私は雪音ちゃんがピンチになるのを待ちますわ!!」
シャルが特大映像プレートの前で神槍を床に置き正座待機に入った! シャルの鼻息が、ムフー、ムフーととても荒かった!
「雪音ちゃんがピンチになるのを望んでたら本末転倒だとリルは思うのです……」
「さっきは雪音ちゃんがピンチになることを拒んでいたのにな! はっはっはー!」
「シャルをそういう風に仕向けたのはティア様ですけどね? ハァー。それで、ティア様、雪音ちゃんは災厄の魔物に勝てるんですか〜?」
「ふむ、どうだろうね? 災厄の魔物と戦える身体にはしてあるから、それなりに善戦はするんじゃないかな?」
「善戦はするけど勝てるかどうかは怪しいってことですかー?」
「災厄の魔物の周りに飛んでるちっこいドラゴンがいるだろう?」
「はい、可愛いのが飛んでますけど、それがどうかしたんですか〜?」
「あれは災厄の魔物の子供のようなのだよ」
「えっ!?」
「雪音ちゃんの持ち魔法で手加減せず攻撃すれば勝てるとは思うんだけどね、でも、雪音ちゃんはあのちっこいドラゴンが気に入ったようだから、その親ドラゴンが大怪我するような攻撃魔法は使えないんじゃないかなぁ〜と思うのだよ。リルもそう思わないかい?」
「そそ、それって、まずいじゃないですかー! ティア様、なんでそんなのほほんと見ていられるんですかー!?」
「まあ、ほら、戦闘領域が海上に変更になったし? あの災厄の魔物・プラーミャは割と温厚な方だから大丈夫だと思うのさ」
「本当に大丈夫なんですかぁ〜?」
「最悪、海の中に逃げれば、プラーミャも興味をなくすんじゃないかな? アレは弱いものには興味がなかったはずだし。まぁ、きっと大丈夫なのさ」
◇◆◇
深紅のドラゴン・プラーミャが100本以上の炎の槍を展開しているシーンを見たシャルが慌てふためいた!
「ゆ、雪音ちゃんが丸焼きにされてしまいますわぁああ!? 雪音ちゃん、今シャルが助けに」
シャルが雷神槍を手に取って地上界に降臨しようとしたので、ティア様が次元転移の邪魔をする。
「だーめ! 雪音ちゃんはまだ無傷だし、雪音ちゃんを丸焼きにしようと思うなら、もっと違う炎の魔法を使うはず。それに下には海がある。問題ないのさ!」
「雪音ちゃんがぁあ! 雪音ちゃんがぁああ!」
シャルの悲痛な声が神様の執務室に響きわたる!
「ほら、大丈夫ですよ、シャル! 雪音ちゃんが海の中に逃げました! これでもう安心ですね?」
「うぅ、私の出番はいつですのぉ?」
「生命の危機に助けてこそ、惚れるものなんじゃないかな? 今はまだその時じゃあないと思うのさ」
「あぁ、私の雪音ちゃん! 早く生命の危機になってくださいまし!」
「シャル、最低ですー」
「まったくだね」
「シャルを煽ったティア様が同意しないで欲しいですぅ」
「そうかい?」
◇◆◇
深紅のドラゴン・プラーミャの飛ばした100本以上の炎の槍が、雪音ちゃんが魔法で生み出した7つの水の大蛇の口から吐き出された荒れ狂う螺旋状の水によって消滅するところを見た神様達の反応はと言うと、
「ほう? あれは地球の八岐大蛇とかいう伝承の魔物を模した魔法か? 巨大な魔物同士の戦いとは、なかなか私を楽しませてくれるじゃないか!」
「はい、ドラゴンと魔法でできた大蛇の戦いとかワクワクするのですぅ!」
「雪音ちゃんのピンチはまだですの!? 私の活躍の機会はまだですの!?」
「シャルぅ、雪音ちゃんが頑張って戦っているんだから応援してあげましょうよぉ〜?」
「おっ、先ほどの火と水の魔法の激突で生じた白い蒸気を煙幕がわりにして、雪音ちゃんが隠しておいた氷の大蛇による氷の魔法がドラゴンの翼を貫いたのさ! これは雪音ちゃんの作戦勝ちだね?」
「わ、私の活躍する機会は!? これで終わりとかあんまりですわ!!」
「あのくらいで災厄の魔物が終わる訳ないのさ。むしろ、ダメージを与えてしまったがために、災厄の魔物プラーミャが少し本気になるんじゃあないかな? シャルの出番はきっとこれからなのさ!」
「雪音ちゃんのピンチ♪ 雪音ちゃんのピンチ♪ 私が雪音ちゃんを守って、ぐふ、ぐふふ」
「シャル……」
ドラゴンが前脚に炎を纏わせ、水の大蛇に飛びかかる! 7つの水の大蛇の口から吐き出された水の竜巻が、ドラゴンの前脚が纏った炎を消した! けれど、飛びかかって来た重量のあるドラゴンを押し戻すほどの威力は水の竜巻にはなく、ドラゴンの振り下ろした前脚によって1つの水の大蛇が崩されてしまった! そして、ドラゴンの猛攻によって水の大蛇達が次々と粉砕され、元の水となって海に還っていく!
「いや〜、なかなかの大迫力だよ! 人間や魔族がドラゴンと戦うのとは違った趣があって実に新鮮なのさ!」
「はい、迫力満点なのですぅ!」
「まだ降臨してはダメなんですの!? 早く雪音ちゃんを助けに行かせてくださいまし!!」
「シャル、雪音ちゃんはまだ怪我1つしていないのだよ? 雪音ちゃんがピンチになるのを待ち給え」
「うぅうう!!! 災厄の魔物! 何を遊んでいるのかしら!! もっと本気を出して早く雪音ちゃんをピンチに追い込んでくださいましぃいい!!」
シャルは床を両手でバンバン叩いて災厄の魔物を応援し始めた!
「えぇー」ちびっ子天使リルはシャルの発言にドン引きしている!




