第2章 新世界の幕開け 003 〜戦闘開始なのです〜
「ま、魔物!? 嘘っ!? 心の準備が出来てないのですーーー!!」
逃げようとして、こけてしまう私。ついでに魔法の袋を地面に落っことす。
「あわわわわ。ヤバイのですヤバイのです。ま、魔法を使わないと!」
木の魔物は私から15mくらいのところ。
「きっと大丈夫きっと大丈夫。魔法は使えるは、ず、わぁっ!?」
木の魔物が木の鞭を振ろうとするのが見えた。慌てて横に飛ぶ。私がさっき居た所の地面がえぐれる。真っ青になって泣きながら叫ぶ。
「炎よ! 目の前の敵の足元から天高く燃え上がれ! 」お願い!燃えてーーー!!
そう言った瞬間、木の魔物の足元から炎が燃え上がり木の魔物を包み込んだ。木の魔物は悲鳴をあげながら燃えている。それにもかかわらず、木の魔物は燃えてる枝を振り上げようとした。
「嘘っ!?た、盾よ私を守って!!」
私は両手を前に突き出し、攻撃を防ぐイメージをする。
「ガキーン!」
炎をまとった木の鞭のような攻撃は、私の両手の前に現れた半透明の大きな盾によって弾かれた。
「ガキーン!ガキーン!」
さらなる炎の木の鞭の追撃を弾く。弾く度に盾が青く光る。
怖い怖い怖い! ここから逃げなきゃ。羽で飛んで逃げる、羽で飛んで逃げる!と強く念じる。背中から羽が生えた気がした。
「飛んでーーー!!」
私は羽を強くはばたかせ後方上空へと逃げた。
「も、もう大丈夫だよね。こんだけ高く飛んでるんだか、らーーーー!?」
慌てて横に避ける。なんか飛んで来た!? 横を見ると木の枝が魔物の所に戻って行こうとするところだった。
「あんな所から、ここまで伸びるの!?盾よ!」
私は急いで斜め下へと半透明な盾をさっきより大きめに展開した。その瞬間、盾が何度も青白く光って、いくつもの木の枝の刺突攻撃を防ぐ。
「あわわわっ!?」
びっくりして思わず目を閉じ、盾から顔をそむける。けれど、盾はしっかり枝の攻撃を防いでくれているからか、こちらに影響はない。
「と、とりあえず、あの攻撃はこっちの盾を破れないみたい。頑丈な盾で助かったのです。」
一安心した私は息を整え、眼下の木の魔物を注視する。やっぱりまだ燃えてる……。
「まさか燃えてるのに動き続けるなんて。魔物ってやっぱり怖いのです。それに、火の魔法じゃ勝てないみたいだから他に何か考えないと......。んーっと、んーっと、うんっ! 風の刃で斬り刻んで、枝を切り落とすのです!」
考えてる間も木の枝の刺突攻撃は続いている。大体3本ぐらいの枝の連続攻撃の後、枝は木の元へ時間をかけて戻り、その間に別の3本の枝が攻撃をしてくる。その繰り返しみたいだ。
「じゃあ、次に攻撃が来たら今度はこっちの番なのです! 壊れない盾で防ぎながら目にもの見せてあげるです!」
タイミングをはかる私。フー、ハー、フー、今なのです! 私は枝の攻撃を回避するため大きく横に移動し、魔物に向かって盾を出しながら頭から急降下した。その横を3本の枝が通り過ぎて行く。それらに向かって両手を突き出し、枝を斬り刻むイメージを強く持ちながら叫ぶ。
「風よ、枝を斬り刻め!」
私がそう叫ぶと、無数の緑色の刃が四方八方から3本の枝に向かって飛び交い、斬り刻む。3本の枝は細切れにされ落下して行く。
「次っ!」
そう言って私は、また次の枝の攻撃を回避するため大きく横に移動し、魔物に向けて頭から急降下する。そして、さっきと同様に私の横を通り過ぎてく3本の枝を風の刃で斬り刻む。
それから、大きく横に移動して更なる枝の攻撃を回避し枝を斬り刻むこと都合5回。枝の攻撃が止んだので、少し上昇して様子を見る。
「攻撃してこなくなったのです。でも、怖いから盾は出したままにしておこう。とりあえず枝は風の魔法でなんとかなったけど、幹はぶっといのです。切れるのかなぁ? そういえば、木に雷が落ちると縦に割れることがあるって聞いたことが……」
木の魔物に向かってビシーっと指を指し、
「ふっふっふー。木の魔物さん、あなたの命もここまでなのです!」
私は木が縦にバッキバキに割れるイメージを強く、強く念じて叫んだ。
「雷よ、眼下の敵を貫け、サンダーボルト! サンダーボルト! サンダーボーーールト!!」
雷が天から木の魔物へと3回連続で落ちた。落ちる度に木は縦に割れ、見るも無残な形となった。
「うん、絶対倒したよね! いい気味なのです。雪音ちゃんをびっくりさせた罰なのです」
背中の羽を動かし、木の魔物の残骸へと飛んでいく。
うん、そう言えば私、今更だけど空飛んでるね。さっきは無我夢中だったけど、きちんと空飛べて良かったのです。あのとき飛べてなかったらアウトだったよね、絶対。ブルブル。思い出しただけでも恐ろしいとか考えてるうちに到着っと。
「魔物を倒したらドロップアイテムとかあるんだよね、確か。でも、木の残骸ぐらいしかなさそう、んっ、なんか光った。えっと、これが魔石ってゆーのかな?」
手の平サイズのキラキラした石を発見した。
「おっきくて、とっても綺麗なのです! 地球のボルダーオパール、だっけ? あれとよく似てるかな? 魔物ってみんなこんなの落とすのかな? だったら頑張って魔物を倒すのも有りかも!」
私はにこにこしながら綺麗な魔石をしばらく眺めた。
「不思議な色合いなのです。いつまでも眺めていられそうなのです。はぅ〜。もっと欲しいけど、さっきみたいな思いしないといけないんだよねー。すっごく大変で死んじゃうかと思ったよ。でも、苦労した甲斐があったのです。えへへ〜♪」
気の済むまで魔石を眺めた後、私は魔石を魔法の袋にしまおうとして袋がないことに気づく。こけたとき袋を地面に落としたのを思い出し、辺りを探してみる。
「あっ、あった、あった!」
そして、私は魔法の袋を拾って魔石を袋にしまう。ついでに、袋から水袋を取り出そうと思い、
「メニューオープンなのです!」
メニュー画面を出して魔法の袋って書いてある所をタッチ、次に魔法の袋の中身の一覧の水袋をタッチし、個数を1個に選んで、実物の魔法の袋から水袋を取り出し水分を補給する。
「ふー。一息ついたし、そろそろ移動しようかな。とりあえず人がいる所に行きたいな〜。近くに町がないか空高く飛んで辺りを見回して見ようっと。」
私は羽をパタパタ動かし、空高く舞い上がって辺りを見回す。
「あっちの方に村っぽいのが見えるのです。結構距離ありそうだから、このまま空飛んで行きたいけど、飛んでったらマズイよねー、やっぱり……。あっ、あそこの林に囲まれてる湖の手前あたりまで飛んで行って、そこから歩いて行けば大丈夫かな? 大丈夫だよね。よしっ!」
私は湖のほうに飛んで行くことにした。ちょっとスピードを出して、さっさと飛んでっちゃおう! 私は羽を一生懸命ばたつかせて湖を目指した。