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第8章 アヴァリードの町を目指して 006 〜 雪音ちゃんとビリビリスパイダー③〜

 私はビリビリスパイダーさん親子とポムの木と、その根っこの周りにある地面ごと村の入り口に転移した。


「とうちゃーく!」

「ギギ!?」

「キキ!?」

「あぁ! 雪音お姉ちゃんだぁ♪」

「クギャ♪」

「グギャ♪」

「あわわわわ!? ススス、スパイダー!?」


「あっ、ティム君、びっくりさせちゃって、ごめんね? ミアちゃんはメズとオズと遊んでくれてたの?」

「だだだ、大丈夫です!」ガクガクぶるぶる。

「そうだよぉ♪ お肉投げると、パクって食べる姿がとぉっても可愛いのぉ♪」


「へぇ〜。私も今度、やってみようかな?」

「雪音お姉ちゃん、そこのスパイダーさん達は雪音お姉ちゃんの新しいお友達なのぉ?」とミアちゃんが指を(くちびる)に当て小首を(かし)げて可愛く聞いてくる。


「そうだよ。ビリビリスパイダーって種類のスパイダーさんなんだって。名前はまだ決めてないんだけど、森でグレイトマンティスって魔物にイジメられてたから連れて来てあげたんだよ」

「ギギ」

「キキ♪」と鳴いて、ちっちゃいビリビリスパイダーさんが、おっきいビリビリスパイダーさんの頭の上から私の頭の上に向かってジャンプして飛び乗った。


綺麗(きれい)な色のお目目なのぉ♪」

「はい、とっても綺麗(きれい)な目ですね。ちょっと怖いけど」

「じゃあ、私はちょっとポムの木を植えて来るから離れててね?」


 そう言って、私は宙に浮かしてるポムの木 ( 根っこにくっついてる土もセットだよ? )と一緒に村の入り口から少し離れた所に移動し、地面に手をついて土や石などを天上界の倉庫にしまった。


「うわっ!?」


 足元にぽっかりと大きな穴が空いて落下しそうになったので、私は慌てて飛行魔法を使って宙に浮かぶ。


「あー、びっくりした。さて、ポムの木を植える穴も出来たから、ここに移動させてっと! うん、あとはこの上にさっきしまった土などを被せておけば倒れたりしないよね? でも、おっきいビリビリスパイダーさんが飛びかかったら倒れちゃうかな? うーん。私の血をあげれば根っこを太く長くできるかなぁ?」


 とりあえず私は手首を風の魔法で切って、流れ出る血をポムの木の根元に垂らしながら、木が倒れないように根っこよ太く長くなーれ♪って強く願った。しばらく血を垂らした後、傷口の処理は、いつものように腕輪に擬態(ぎたい)しているスライムのピーちゃんに任せた。


 ポムの木を眺めて私は思った。1本じゃ足りないよね? 私は森と村の間を何度も転移して、村の外周の地面にポムの木を10本と、なんの木かは知らないけど幹や枝が太くて背が高い木11本を交互に植えておいた。


「これだけあれば、大丈夫だよね? ふぅー、ちょっと疲れたかも」

「うわぁ、ポムの木がいっぱいなのぉ♪」

「す、(すご)い……」ティム君、絶句。

「ギギ♪」

「キキ♪」

「クギャ♪」

「グギャ♪」


「えっと、メズ、オズ。木になってるポムは食べちゃダメだよ? ポムに寄り付く虫さんをビリビリスパイダーさん親子が食べるんだからね?」

「クギャ!」

「グギャ!」


 と巨大エリマキトカゲのメズとオズが首を大きく縦に振って(うなず)いた。


「うん、お利口さんだね。喧嘩しないで仲良くしてあげてね?」

「クギャ!」

「グギャ!」


 メズとオズが元気に返事をし、頭を私の前に差し出して来る。私はメズとオズの頭を()()でしたあと、ビリビリスパイダーさん親子に話し掛けた。


「ここには、そこにいるメズとオズがいるから、グレイトマンティスみたいな他の魔物に襲われないと思うから安心して暮らしてね?」

「ギギ♪」

「キキ♪」


 ビリビリスパイダーさん達は両前脚をあげて歓喜のダンスを踊っている。


「あと、村の人間や村にやって来る人間、それに人間の飼っている生き物を(おそ)っちゃダメだからね? もちろん攻撃してくる冒険者なんかがいたらやり返しても良いけど、出来れば殺さないで糸でグルグル巻きにして、そこの背の高い木の枝に()るしておいてくれるかな?」

「ギギ!」

「キキ!」


 2匹は器用に前脚を使って敬礼してきた。うーん。なんで蜘蛛(くも)さんが敬礼を知ってるんだろう? まぁ、いっか。あとは……。


「ミアちゃん、ティム君、ちょーっと後ろ向いて耳を(ふさ)いでてくれるかなぁ?」

「はぁ〜いなのぉ!」

「わ、分かりました!」


「うん、ありがと♪」


 2人が私に背を向けて耳を(ふさ)いでくれる。私は念のため、2人の意識を凍結しておいた。ごめんね? 私はビリビリスパイダーさん親子に向かって話を続ける。


「えっとね。あなた達に私の下僕(げぼく)になって欲しいんだけど、下僕(げぼく)になってくれるかな? 下僕(げぼく)って言っても、して欲しいことは、あなた達に時々、糸を出してもらいたいぐらいなんだけど……。こき使うようなことはしないし、村を(おそ)って来るような魔物はメズやオズ、村の人間が倒してくれるから、あなた達は別に魔物退治はしなくて大丈夫だし。あっ、そうそう、下僕(げぼく)になってくれるんだったら、私の血を飲ませてあげる! 私の血を飲むと再生能力が高まるから怪我しても前より早く治るし、なんか困ったことがあったら遠く離れていても私を呼べるようになるんだけど、ど、どうかな?」

「ギギ♪」

「キキ♪」


 おっきいビリビリスパイダーさんが両前脚で大きく丸を作った! それを見たちっちゃいビリビリスパイダーさんも真似をして両前脚で丸を作る! 実に微笑ましい♪


「ありがと♪」


 私は氷の器を2つ作って地面に置き、手首を風の魔法で切って血を注いでいく。しばらくして、満タンになった大小の器をビリビリスパイダーさん親子の前に置いた。


「ギギ♪」

「キキ♪」


 と鳴いて2匹は嬉しそうに私の血を飲んでいく。


「私の名前は大神(おおがみ)雪音(ゆきね)だよ。とりあえず、雪音だけ覚えてくれれば良いからね?」

「ギギ!」

「キキ!」


 と鳴きながら2匹はまたもや敬礼して来た。


「これから、よろしくね♪」


 2匹が血を飲み終わるのをのんびりと待ち、スライムのピーちゃんにお願いして氷の器を飲み込んでもらった。器には2匹が上手く飲み込めなかった私の血が少し残っていたのでピーちゃんは「ぴー♪」と嬉しそうに鳴きながら体内に取り込んでくれた。その後、私は指を鳴らしてミアちゃんとティム君に掛けた意識の凍結を解除し、20秒ほど経ってから2人の前へと移動して、にこっと微笑みながらテレパシーの魔法を使って2人の頭の中に声を掛けた。


『2人とも、もう耳を(ふさ)がなくても大丈夫だよ。内緒話は終わったからね』

「わわわ、びっくりなのぉ!」

「あ、頭の中に声が!?」


「テレパシーの魔法だよ。耳が聞こえない状態でも相手に言いたいことを伝えられる魔法なの」

「す、(すご)いです! この魔法があれば耳の遠いお爺ちゃんやお婆ちゃん、耳の聞こえない人に伝えたいことをハッキリと伝えることができますね!」


「あっ、そういう使い方もできるね!」

「ティム君、あったま良いのぉ〜♪」

「そ、そんなことないですよ!? (すご)いのは雪音様の魔法です!」


「えっと、ティム君」

「は、はい、なんでしょう?」


「様づけはなんかこそばゆいから、ミアちゃんみたいに雪音お姉ちゃんって呼んでくれないかな?」

「わ、分かりました、雪音お姉ちゃん!」


 ティム君が上目遣いでお姉ちゃんって呼んでくれました!


「きゃー♪ なに、この子!? すっごく可愛いんだけどぉ〜♪」


 と思わずティム君に抱きついちゃいました! そしたら、ミアちゃんがティム君の後ろから抱きついて、


「ティム君はミアのティム君なのぉ〜! 雪音お姉ちゃんにはあげないのぉ〜!」


 とミアちゃんに泣きそうな声で叫ばれちゃったので、私は慌ててティム君を解放してミアちゃんに土下座しました!


「うぅ〜〜!!」

「ミ、ミアちゃん、落ち着いて!」

「ミアちゃん、ごめんなさい! ほんっとぉーーにごめんなさい!!」


「うぅ〜〜!!」

「ミアちゃんのティム君を取ったりなんかしないから! ホントだから!」


「雪音お姉ちゃんなんか知らないのぉおお!!」


 あわゎ!? ミアちゃん、激おこ状態だよぉ〜!? どどど、どうしよう!?


「ごめんなさい、ごめんなさい! ミ、ミアちゃんが魔法を使えるようにしてあげるから、そ、それで許してくれないかな? かな?」


 そう言って私は恐る恐る顔を上げながらミアちゃんの顔色を(うかが)った。ミアちゃんの顔はすっごく嬉しそうだった! 魔法で生やしてあげた猫耳が前を向いてピンッと立ってるし、魔法で生やしてあげたミアちゃんの尻尾も、ふりふりだよぉ!


「ミ、ミアちゃんはどんな魔法が使えたら喜んでくれるのかな?」

「雷落として魔物を凍らせる魔法が良いのぉ!」


「ま、任せて! じゅ、準備するから、ちょっと待っててね?」


 私はミアちゃん達に背を向けて考える!


「わぁ〜いなのぉ♪ ティム君、ティム君! ミアも魔法が使えるようになるんだって!」

「ミアちゃん、良かったね! ( はぁ〜、ミアちゃんの機嫌が直って良かったよ〜 )」


 どど、どうしたら良いかな? 私の血を飲ませちゃうと吸血鬼になっちゃうでしょ? もし、それで成長が止まっちゃったら、あとで絶対に嫌われちゃうから、血を飲ませるのはナシ! なら、武器に付与する? でも、普段からミアちゃんに武器なんて持たせたらフィーナさんやロッジさん、ニアに怒られちゃう!


「雪音お姉ちゃん、まだなのぉ?」


 ひぃいい!? 私はミアちゃんとティム君の意識を凍結した! 早く、早くなんとかしないと!


 よし! 私の血で腕輪を作ろう! 私の血で作るなら魔力供給は問題ないはずだし! 私は手首をバッサリと切って大量の血を地面に垂らすと、あっという間に血の水たまりが出来上がった! それに向かって手をかざし、腕輪になるように命じた!


「できた! 腕輪の丸い宝石の色はどうしよう? さっき、ビリビリスパイダーさんの目を見て綺麗(きれい)って言ってたから青色で良いかな? 腕輪の部分は金色で良いかな? 腕輪の部分には模様も入れてっと。うん、これなら、アクセサリーとしても喜んでくれるよね? あとはこれに青の(いかづち)と狙った魔物に自動でロックオンの魔法が使えるように魔法を付与してっと。できたぁ! これでミアちゃんの機嫌が直りますように!」


 私は指を鳴らしてミアちゃんとティム君の意識の凍結を解除した!


「お、お待たせ! この腕輪を付ければミアちゃんも雷落として魔物を凍らせることができるようになるよ!」

「わぁ〜いなのぉ♪ でも、雪音お姉ちゃん、腕輪、私の腕よりおっきいよぉ?」


「だ、大丈夫だよ!」


 私はミアちゃんの手に腕輪を通した。


「ほらね? 腕輪に手を突っ込めば自動で大きさを変えてくれるから! あと、外す時はこうやって引っ張れば大きくなるから外すのも簡単だよ!」

「雪音お姉ちゃん、ありがとうなのぉ♪」


 ミアちゃんに笑顔が戻った! 超にっこにこである! 良かった、助かったぁ〜。


 私は力が抜けて、へなへなぁ〜っと地面に座り込んだ。


「んぅ? 雪音お姉ちゃん、大丈夫ぅ?」

「うん、大丈夫だよ! さっき転移魔法をいっぱい使った疲れが出ちゃったのかな? あは、あはははは」


 の、乗り切ったよぉおお!!


「雪音お姉ちゃん、魔法を使いたい時はどうすれば良いの?」

「倒したい魔物を見つめます!」


「うんうん」

「倒したい魔物に向かって腕輪をした方の手の平を突き出し、青の(いかづち)よ!って叫ぶか念じれば、魔物に向かって雷が落ちます!」


「分かったのぉ!」

「でも、1日に何度も使えるかは分からないから、魔物がいっぱいいるような所に行っちゃダメだからね? ニアやフィーナさん、ロッジさんに心配かけちゃダメだよ?」


「だ、大丈夫だよ?」ミアちゃん、目が泳いでるよ……。

「ミアちゃん、危険な所に1人で行ったりしないよね? 僕、ミアちゃんのこと信じてるから大丈夫だよね? 雪音様との約束、きちんと守れるよね?」


 とティム君がミアちゃんの手を両手で(つか)んで、ミアちゃんの目を見つめながら質問をした。


「も、もちろんだよぉ! ミア、ティム君に(うそ)つかないもん!」

「良かった!」


 ティム君、なかなかの役者さんだね。これなら、ミアちゃんが魔法を使えるようになったことで暴走することもないかな?


「じゃ、じゃあ、私はそろそろ森に戻るから! ミアちゃん、さっきは本当にごめんね?」

「ミア、もう怒ってないよぉ? でも、ティム君にはもう抱きつかないで欲しいのぉ……。雪音お姉ちゃん、ティム君を誘惑しないでね?」


「うん、もう抱きつかないから! ミアちゃんに嫌われるようなことしないから安心して! ティム君、ミアちゃんをよろしくね?」

「はい!」


「雪音お姉ちゃん、またあとでなのぉ〜♪」

「うん、またあとでね?」


 私は2人に挨拶をした後、メズやオズ、ビリビリスパイダーさんの親子に挨拶をし、木を植えた所の両端近くに魔法で地面から大きな岩を作り出して風の魔法で文字を刻んでおいた。


 “ ここに植えられたポムの木と背の高い木は、雪音ちゃんが植えた木です。勝手に伐採したりポムを採取したら天罰を与えます! あと、身体が白くて青い目をしたスパイダーさん親子は雪音ちゃんの大切な使い魔です。怪我させたり捕獲しようとしたり討伐しようとする者がいたら地獄に落とします! 村に花火の魔法を伝授した魔法使い雪音より ”


「こうやって2箇所にメッセージを彫っておけば大丈夫だよね? この村で使われている文字で彫ってあるし!」


 やることをやった私は魔法を使ってラピ達の待っている森に転移した!



 ◇◆◇



 雪音ちゃんが転移した後、残された雪音ちゃんの下僕(げぼく)達は思いました!


 ご主人様を土下座させたあの幼女に逆らってはいけないと!


 ゆえに、雪音ちゃんの下僕(げぼく)達は、ミアちゃんの機嫌を損ねないよう最善の注意を払うことを決意しました!


 そして、新参者だと自覚しているおっきいビリビリスパイダーさんは、ミアちゃんのためにポムの木と背の高い木の間に強靭(きょうじん)で伸縮性と柔軟性がある白い糸でハンモックを作ってあげました。


「わぁ〜い♪ おっきいスパイダーさん、どうもありがとうなのぉ♪ リザードさん、ミアをあそこに乗せて欲しいのぉ!」

「クギャ♪」


 メズが2本足で立ってミアちゃんを両手で持ち上げ、ハンモックに乗せてあげました。


「リザードさん、ありがとうなのぉ! ティム君、ティム君、びよんびよんだよぉ〜! びよんびよ〜ん♪」

「ミ、ミアちゃん、そんなに揺らしたら危ないよぉ!」


「あっ」


 ミアちゃんがハンモックをあまりにも勢いよく揺らしたため、スリングショットで飛ばされるパチンコ玉のように空中にポ〜ンと飛ばされてしまいます!


「ミアちゃーーん!?」

「ギギッ!?」

「キキ!?」

「クギャ!?」

「グギャ!?」


 空高く投げ出されたミアちゃんを見て、みんなは大慌てです!


 おっきなビリビリスパイダーさんが口から白い糸を吐き出して、宙に投げ出されたミアちゃんを捕まえます! その間に、ちっちゃなビリビリスパイダーさんがポムの木と背の高い木の間に蜘蛛(くも)の巣を張り巡らせました!


「キキ!」

「ギギ!」


 おっきいビリビリスパイダーさんが口から飛ばした糸を振り回して、ちっちゃいビリビリスパイダーさんが作った蜘蛛(くも)の巣にミアちゃんを投入しました! 2匹の蜘蛛(くも)さんの見事なコンビプレーによって、ミアちゃんは蜘蛛(くも)の巣にベチョッと張り付き九死に一生を得たのです!


「はぁ〜、良かったぁ〜」

「クギャ〜」

「グギャ〜」

「ギ〜」

「キ〜」


 みんなは安堵のため息をつくのですが、1人だけ違った反応をする子がいました!


「面白かったのぉ〜! もう1回やりたいから、ここから降ろして欲しいのぉ〜♪」


「えっ!? えぇええ〜〜!?」

「クギャ!?」

「グギャ!?」

「ギギッ!?」

「キキ!?」


 こうして、この日からティム君と雪音ちゃんの下僕(げぼく)達の苦悩の日々が始まるのでした。ちゃんちゃん♪


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