第5章 パジルーンという村での出来事 016 〜ラピは雪音ちゃんの眷属になりたい③〜
「えっと、えーっと……。そ、そうだ! この世界ってハーフっているの? ハーフって?」
「ハーフですかー?」
「がぅ?」
「例えば、魔族と人間の間に赤ちゃんって生まれるのかな? もし生まれないんだったらラピ、困るでしょ?」
「どうしてですー?」
「ほら、私の血を飲んで私の眷属になったら、ラピは魔族の体に近づくよね? それでラピに好きな人ができて、それが人間で、人間の男の人と、あの、その、ゴニョゴニョして赤ちゃんできなかったら、悲しいでしょ?」
「雪音ちゃんは私のことをそんなに大切に思ってくれているのですねー。私、とっても嬉しいですー♪」
そう言ってラピは抱きついて来た。
「でも、大丈夫ですー。もし私の体が魔族に近づいて人間の殿方との子供がもうけられなかったとしても雪音ちゃんを恨むようなことはありません。私にとって大事なのは雪音ちゃんと一緒にいることなのですー。一緒にいるためには力がないと一緒にいられません。それに雪音ちゃんて寿命はどのくらいなのですかー?」
「寿命は分からないよ。神様に聞かなかったし、特にお願いもしてないし」
「この世界の吸血鬼は不老不死って言われていますー。本当かどうかは分かりませんが、もしそうなら雪音ちゃんはこの先、長い、長ーい時間を生きていくと思いますー」
「そう……かもしれないわね」
「がぅ!」クゥーが自分がいるから大丈夫!みたいに吠えてくれる。よしよし。
「それでですね、そんな長ーい時間を生きる人間は普通はいないのですー。エルフや魔族に出会えてお友達になれば、気が遠くなるような長ーい時を一緒に過ごせるようになるかもしれませんが、魔族は荒くれ者が多いと噂で聞いたことがありますー。エルフに至っては、そもそも出会えるかどうか怪しいですー。エルフは人間に隠れるようにして暮らしているという話ですのでー」
ラピは、私のことをかなり考えてくれていた。とっても嬉しい。私は病気で、ずーっと入院していたから友達なんてできなかった。だから、この世界に来て、ラピとお友達になることができて凄く嬉しかった。今も私の心を温めてくれている。今、ラピは人間をやめて魔族になって長い時を私と一緒に過ごしてくれると言っているんだ。
「私、ラピに甘えても良いのかな?」
「はい♪ 私は雪音ちゃんと一緒に」
「がぅがぅ!」ぼくもぼくも!みたいに吠えるクゥー。
「そうですねー、クゥーちゃんもですねー♪ 私はみんなで一緒に悠久の時を過ごしても良いと思っているのですよー♪」
そう言って優しく私に微笑みかけるラピ。私の顔が熱くなる。
「じゃ、じゃあ本当に良いのね? 後戻りはできないんだよ?」
「はい、私を雪音ちゃんの眷属にしてくださいませー♪」
私は風の魔法を使って右手の人差し指に深く切り傷をいれた。血がだらだらと流れ出る。
「えっと今、氷のコップに血をためるから、ちょっと待っててね?」
「雪音ちゃん、コップなんていりませんよー。こうすれば良いのですー。」
そう言って、ラピは手を伸ばし、私の手を取って私の指をラピの口へと持っていく。
パクり。
えっ、ちょ、なっ!?
x%#¥&%#@ーーーー!!
声にならない悲鳴をあげそうになる私。
そう! ラピは私の指を口に含んでチュパチュパ舐め始めたのだ!
私は顔を茹でダコのようにしながら、身動きが取れなくなってしまった。
「雪音ちゃん、どうしちゃったのです? お顔が真っ赤ですよー?」
金縛りから解けた私は「ラ、ラ、ラ」
「お歌の練習でも始めるのですかー?」
「ちっがーーう! なんで私の指をく、口に入れるのよ!」
「えー、だってお料理で指を切ったらパクって指をくわえるじゃないですかー? それと一緒ですよー? あっ、また血が出てきましたねー」
と言って、私の指をまた舐め始める。私は魂が抜けた状態になってしまった。
しばらくして、にっこにこ顔で上機嫌のラピと真っ白になった私、そして、僕も僕も! って感じで2本足で立って私の足に2本の前足でしがみついてるクゥーがいた。
「くぅーん、くぅーん、くぅーん、くぅーん」と鳴き続けるので、
「はいはい。クゥーもやりたいんだよね? 仲間外れはヤダもんねー」
そう言って私は、風の魔法を使って今度は左手の人差し指に深く傷をいれた。血がだらだらと流れ出す。しゃがんでクゥーの口に血が流れ出している指を近づける。
すると、クゥーが「くぅ〜ん♪」と嬉しそうに鳴いて私の指をぺろぺろ舐め始めた。
「クゥーちゃん、良かったですねー♪ これでクゥーちゃんも私も雪音ちゃんの眷属になりましたねー♪ ふふふ。うふふふふ♪ あはははっはははは!!」
「な、ど、どうしたのラピ!? 私の血で、おかしくなっちゃったの!?」
「私を吸血鬼にしてくれて、どうもありがとうございますー、雪音様〜♪ 貴女様は本当にお人好しでございますねー。ふふ。ふふふふふ♪」
「も、もしかして、ラピ。あ、あなた、私を騙したの!?」
「そうですよーって言ったら、貴女様はどうなされるおつもりですかー?」




