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第5章 パジルーンという村での出来事 015 〜ラピは雪音ちゃんの眷属になりたい②〜

「さっき、クゥーが他の狼達に いじめられてたって話したじゃない?」

「はい。クゥーちゃん可哀相ですー。あれっ? クゥーちゃん、すっごい氷の魔法を使えるのに、なんで いじめられてたのですかー?」


「クゥーは魔力が少なくて魔法があんまり使えなかったんだよ」

「それが、どうしてあんなにすごい魔法を……。あっ、雪音ちゃんの魔法のおかげなのですねー?」


「そう。私が契約魔法を使って、空間を無視して魔力をクゥーに供給してるんだよ。それと同じことをすれば、ラピも魔法が使えるようになるんじゃないかな?」

「わ〜♪ それはすごいのですー! 雪音ちゃん、ありがとうございますー♪」


「ただ心配なのは人間の体が魔力に耐えられるかってことなの」

「どういう意味なのですー?」


「実は私って元々はこの世界の人間ではないのです!」

「がぅ!?」そうだったのっ? みたいにクゥーが反応する。

「雪音ちゃんは魔族の吸血鬼だから、この世界でも人間じゃないと思いますー」


「ちっがーう! そうなんだけど、ちっがうのーーー!」

「雪音ちゃん、そんなにムキにならなくても。冗談ですよ?」

「がぉー」とクゥーも(あき)れてる。


「私は地球っていう、こことは全く違う世界に住んでて、原因不明の病気のせいで12歳で死んじゃったんだよ」

「くぅーん」かわいそーって感じでクゥーが鳴く。

「こことは全く違う世界ですかー? しかも12歳。私より2歳年下だったのですねー」


「ラピは14歳だったんだ! 実はお姉ちゃんだったんだね。じゃー、私のこと様付けで呼ぶのはやめてくれるよね?」

「それとこれとは話が別なのですー」


「なんでよ!?」

「雪音様は天使様ですからー」


「でも、私、魔族の吸血鬼だよ? 天使じゃないよ?」

「だって雪音ちゃんは神様から、いろいろな能力を授かってますよねー?」


「そうね。おかげで、どんな魔物と出会っても今のところ何とかなってるよ」

「神様から そんなにも沢山の贈り物を授かっている人は御伽噺(おとぎばなし)とかでも私は聞いたことがないのですー。ですから、雪音ちゃんは神様に愛されし者、神の(いと)し子なのです! よって、私が雪音ちゃんを様付けしても全くおかしくないのでーす。むしろ、様を付けないことの方が不敬なのですー。えっへん♪」


 そんな、どうだ参ったか〜みたいなドヤ顔して、胸を張らないでください。おっきいおっぱい見せつけないで下さい。その衣裳いつまで着てるの? まー昨日は疲れてたから私も同じなんだけど。ハー。いろんな意味で雪音ちゃんは参っちゃうよ。雪音ちゃんの残存精神力がゼロに近づきつつあるよー。


「くぅーん?」大丈夫?って感じでクゥーが鳴く。クゥーの頭をなでなでしつつ、


「は、話を戻すよ。12歳で私が死んじゃった理由は神様に聞いて知ったんだけど、私の魂が作り出す魔力に問題があったみたいなの」

「魔力に問題ですかー?」


「作り出す魔力の量があまりにも膨大すぎて、地球って世界の人間の体では耐えきれなかったみたいなの。そもそも、地球って魔法なんて存在しない世界だし、不具合があったんだろうね。毎日体が痛くて大変だったんだよ」


 私はちょっと遠い目をして窓(ガラスは入ってないけど)の外の空を眺める。


「大変な思いをしてたのですねー」

「くぅーん」

「ええ、ホントにねー。ふー。っで、それとこっちの世界に来る時、私、人間の体を希望したんだけど…」


「でも、雪音ちゃんは魔族の体なんですよね?」

「ええ。こっちの世界の人間の体を可能な限り強化しても、私の魂が生み出す魔力に耐えきれないからって、魔族の体にされちゃったんだよ」


「それはまた、なんかすごい話ですよねー」

「がぅがぅ」クゥーも、そうだそうだと鳴いている。

「それで、私の魔力をラピに流してあげたいんだけど、そーゆー理由があるから魔力を無尽蔵に流すとラピの体にどんな影響が出るか分からないから怖いんだよね」


「でしたら、私に雪音ちゃんの血を飲ませて欲しいですー。雪音ちゃんの眷属(けんぞく)になってワイト様みたいに再生能力が向上すれば問題ないですよねー」


 と言って目を瞑って口をあーんと開けるラピ。ラピは、私が手首を軽く切ってワイトの口に突っ込んだのを覚えていたのかもしれない。とりあえず私はラピのおデコに軽めのデコピンをしてあげる。


「痛いですー、雪音ちゃ〜ん! どうしてデコピンするんですかー!」

「昨日も言ったけど、人間やめちゃうことになるんだよ? そうすると困ることもあるんだよ? 例えば、寒いとか、部屋が暑いの暑いとか、火やお湯に触って熱いといった感覚が分かり辛くなっちゃうんだよ?」


「雪音ちゃん、それって困るようなことなのですかー? 寒くならないのは厚着しないで済みますしー、部屋が暑いと思わなくなるのなら快適に暮らせますー。火に触って熱いと感じなくても体が強化されて熱く感じないのであれば火傷もしないでしょうしー」

「がぅがぅ♪」クゥーも、うんうん(うなず)いている。

「な、なんですとー!?」


 お、おかしい……。反論できないよ。


「ま、待って! 他にも困ることあるから!」

「他にはどのような困ることがあるのですー?」

「がぅ?」


 クゥー、そっちの味方なの!? くっ、困ったことー、困ったことー……。あった!


「あるわよ? しかも、困るだけでなく恥ずかしい思いをするわ!」

「どんなのですー?」


「魔族の体だと暑い寒いが分かり辛いから、パンツをはいてない時、お股がスースーしないのです! スカートでお出かけする時に、うっかりノーパンであっても、スースーしないからノーパンであることに気づかないのです! 出掛けてる時に、そのことに気づいちゃったら恥ずかしさで大変なことになります! いきなりの風でスカートがめくれちゃったら、もう目も当てられません!」


 これならラピだって困るはず! これで諦めてくれるでしょ?


「雪音ちゃん、質問でーす!」

「なにかな?」


 私は勝ち誇る。


「ノーパンって何ですかー?」


 私はずっこけた。


「パンツをはいてないってことよ」

「パンツって何ですかー?」


「今、私とあなたがはいている()(にえ)巫女(みこ)の衣装のコレのことよ」


 と言って私はラピの半透明なパレオをめくって、パレオの下の紫色のパンツを指差した。


「雪音ちゃんのえっち……ポッ」


 両手を頬に当てて顔を赤らめないで。それと、ポッってなに、ポッて!


 そして自分のパンツをちょびっと引っ張ってパチンッと音を立て、


「これをスカートの下に、はき忘れて出掛けちゃったら困るし恥ずかしいでしょ? スースーすればパンツはいてないって気づけるけど、スースーしなければパンツはいてないって気づけないでしょ? っで、はいてないときに風が吹いてスカートがめくれちゃったら恥ずかしいことになるよね!」


 これならどうだ! と両手を腰に当てて小ぶりな胸をぷるんとふるわせ、えっへんポーズをとる私。しかし、ラピはなんか微妙な顔をしている。おかしい。私の説明は完璧だったはず……


「あのーですね、雪音ちゃん。昨日も言ったと思うのですが、今、私達が着ている()(にえ)巫女(みこ)の衣裳のコレとコレは、」


 ラピはそう言ってブラとパンツを指差して、


「普段着る服の下には着ないのですー。」


 はい? ラピさんや、今なんて言ったのかな? 着ない? ブラつけないんですか? パンツはかないんですか? この世界では、ノーブラノーパンが標準なんですか!?


 私は(ひざ)から崩れ落ち四つん這いになる。そう言えば、たしかに昨日そんな話をしたような気がする。さっきまで忘れてたけど……。


「がぉ」と言ってクゥーが私の肩に前足を置き、2回ほど軽くポンポンしてくれた。慰めてくれてありがとー。


「普段、パンツなんてはきませんので、恥ずかしくもなんともないのですー。という訳ですので、雪音ちゃんが拒む理由はなくなりましたよねー?」


 さあ! さあ! 私にあなたの血をちょうだいみたいな顔で にこにこしているラピがそこにいた。


 そんな、ぐいぐい迫って来ないで欲しいよー



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