第5章 パジルーンという村での出来事 009 〜守り神ワイトスネイカ⑦〜
「えっとですねー。世界各地には魔物が跋扈するダンジョンがあるのですが、災厄の魔物はそこを住処としておりますー。そして、人間と魔族が戦争を始めると、災厄の魔物がダンジョンから出てきて暴れるという話なのですー」
「なんか、そこだけ聞くと、人間と魔族の戦争を止めるために出てきた良い魔物っぽい感じがするんだけど?」
「主よ、暴れる度合いが桁違いなのだ。フシュー。魔族には魔王が何人かいるのだが、災厄の魔物によって殺された魔王や滅ぼされた魔族の国があり、人間の国でも滅ぼされた国があるのだ。シュルルルーー」
あー、なんか分かったかも。災厄の魔物ってアレだ。人間と魔族の戦争を止めようと思って神様が作ったは良いけど、匙加減間違えて強くし過ぎちゃったに違いない。あの神様ならやりかねない……。oh〜。先が思いやられそうだと思っていたら、ラピが、
「それでですねー、雪音ちゃん。人間と魔族は災厄の魔物からの甚大な被害を防ぐために戦争不可侵の協定を結んでいるのですー」
「ふーん、それが、どうかしたの?」
「私、今思ったのですが、吸血鬼の雪音ちゃんって魔族なのですよねー? 今後、雪音ちゃんが人間の町で何か騒ぎを起こしてしまうと、災厄の魔物が出てきてしまったりするのかなーーと思ったのですー」
私は絶句した……。
「だ、大丈夫だよ、ラピ。人間の町に行ったらバレないように振る舞うから平気だよ! 人間と魔族の戦争を引き起こすようなことはしないって!」
「雪音ちゃんには無理だと思いますーー。私の見ている所でワイト様の血を飲んでいましたしー」
「我もそう思う。主は直情的だからな。すぐボロが出るであろう。シュルルル」
みんな、ひどいよ。私そんな感情的に行動してばっかじゃ……ないもん、多分。
「さあ、ラピ! 村へ帰ろっか? クゥーが私達を待ってるよ!」
「我が主よ。現実逃避は良くないぞ。フシュー、シュルルルーー」
「雪音ちゃんのダメな所は、私がフォローしますので、ご安心くださいですーー! おっせわ、おっせわ、雪音様のおっせわ〜♪」
くっ、コイツらはーーー! もー!
「はー、ホントに疲れたから村に帰るわよ? あっ、あと1つワイトに聞きたいんだけど、私とラピの衣裳の、このひらひらの部分って半透明で肌が透けて見えるでしょ? この肌の露出が多いのってワイトの趣味なの?」
「我の趣味ではないぞ。フシュー。人間が、そのほうが肉が見えて美味しそうじゃろう? とか布地が少ない方が消化が良いじゃろう? みたいなことを言っていたような覚えはあるが……。シュルルーーシュルン」
あっの くそじじー達の趣味かー!! あとで、ぜーったい氷漬けにしてやる!
「そう。ワイト、教えてくれてありがと! じゃあ約束よろしくね? 約束さえ守ってくれれば、後はあなたの好きにして良いからね。あー、もしも、ないとは思うけど、村の人間があなたを退治しに来たら、その時は村から離れちゃっても良いよ。村とは関係ない人間があなたを退治しにきたら、判断は任せるよ。あなたから仕掛けた結果でなければね。それじゃあ元気でね!」
「我が主の旅に、女神のご加護があらんことを。フシュー、シュルルル」
そう言って白い大蛇は頭を垂れた。私は手を振ってバイバイと言ったあと、洞窟の出口へと向かって歩き出した。
「ワイトスネイカ様、今までパジルーンの村を魔物から守ってくださり、どうもありがとうございましたー。これからも村のみんなをよろしくお願いしますー」
「お前は村を出て、主を追いかけていくのか?」
「はい! 雪音様についていきたいと思いますー」
「なら、我が主をよろしく頼む。シュルルーーシュルー。主はかなり抜けているようだからな。フシュー」
「ええ。ですので、しっかりお世話をしたいと思っておりますー♪」
「お前は矮小な存在のくせに、我に逆らって意見するぐらいだからな。主を好いておるのだろ? フシュー」
「はい。私にとって雪音ちゃんは命の恩人で、とーっても大切なお友達ですのでー♪」
「そうか、では心の強い娘ラピよ。我が主を頼んだぞ! シュルルル」
「はい! 頼まれたのですーー!」
ラピは、そう言って白い大蛇にお辞儀をし、雪音の後を追うのであった。
「ワイトと何の話してたの?」
「雪音ちゃんをよろしく頼まれましたので、任されましたー! って話ですー」
「ラピ、あなた、私の旅についてくるつもりなの? この世界って魔物がいっぱいいるんだよね? とっても危険なんだよ?」
「はい、ついて行きますよー。魔物がいっぱいいても、雪音ちゃんとクゥーちゃんが守ってくれますよね? えへへ〜♪」
なんで、そんなに嬉しそうに笑うんだろう? こんな笑顔見せられたら断れないじゃん!
「も、もちろんだよ! ついてくるなら、私とクゥーがラピを守ってあげるわ! だって私の初めてのお友達だもん。絶対に守ってあげるから!」
と多分、私は顔を真っ赤にしながらしゃべってる。
「えへへ〜、雪音様ありがとう〜♪」
「ちょ、ラピ!様はやめてって言ってるでしょ!」
「え〜、ちゃんと雪音ちゃん、ありがとう〜♪ って言いましたよー」
「嘘だぁーーー!」




