第5章 パジルーンという村での出来事 003 〜守り神ワイトスネイカ①〜
< ラピ視点 >
私は舞を踊り終え、疲れから夜空を見上げました。目を閉じて息をはき、舞を無事に舞い終えたことにホッとします。
衣裳が恥ずかしいのを我慢して、守り神様に捧げる舞を一生懸命に踊ったのですが、雪音ちゃんやクゥーちゃんにも喜んでもらえたのでしょうか? 楽しんでもらえたのなら、とても嬉しいのですが。
私は、雪音ちゃんとクゥーちゃんのいる方の席を見ました。最後に仲良くなれた お友達の顔を一目見たかったのですが、そのお願いは叶いそうになかったのですー。食べ過ぎてお腹でも痛くなってしまったのですかねー? クゥーちゃんのあの がっつき具合を思い出すと あり得そうで、つい笑みがこぼれてしまいますー。
さて、もう会えないなら仕方がない。祭壇へと向かうことにしましょう。私は控えていた顔を布で隠した女性から、宴の時、舞を踊った者にだけ振る舞われる飲み物を受け取って村の外へ出て、祭壇がある近くの林を抜けた先の洞窟へと向かいました。
祭壇へ向かう途中、昔のことを思い出しましたー。
そう、あれは5年前のこと、黒山羊の群れに村が襲われ、お父さんとお母さんが私を逃がすために死んでしまったこと。
それから、村のみんなが逃げた先で作った村に、守り神様が現れたこと。
守り神様が黒山羊などの魔物を殺して村を守ることと引き換えに私たち村のみんなに生け贄を差し出せと要求したこと。
黒山羊の群れに村が襲われた時、大勢の村人が殺されてしまったことを考えれば年に数人の生け贄を差し出すことによって村の大勢が助かるのなら、それも致し方がないと村のみんなで決めたこと。
あの時は揉めましたねー。村から出て行った人もいましたねー。当たり前だと思います。それが普通だと思いますー。
でも、お父さんとお母さん、それに村のお友達を殺した黒山羊達が私は憎かった。だから村に残った。たとえ、それがいつか自分の身を守り神様に差し出すことになったとしても、守り神様が黒山羊達を殺してくれるならそれでも構わないと決意した あの日のこと。いろんなことを思い出しましたー。
はー、せっかく新しいお友達ができたのに、もう会えなくなるのは寂しいのですが、天国では、きっとお父さんとお母さん、それにお友達が私のことを待ってくれていると思いますー。そう思うことで心を慰めることに致しましょう。
そんなことを考えてる間に洞窟内の祭壇に着きました。でも、おかしいです。祭壇の上に既に人が寝かされていますー!
私は走って祭壇に近づきました。
「な、なんで!? どうして! どうして、ここに雪音ちゃんがいるのですかー!?」
私は手に持っていた 生け贄に捧げられる者を苦しまず死ねるように眠らせる液体の入った容器を落として割ってしまいました。
大きな音を立てたせいか、守り神様がやって来てしまいました。私はぶるぶる震えながら、必死になって守り神様にお願いします。
「我が村の守り神であらせられるワイトスネイカ様、その祭壇上の者は村の者ではございません。私、ラピこそが今回あなた様に選ばれた供物でございます。どうか、どうか、その子だけはお見逃しくださいませ」
「ならん。その者は我が村長に命じて連れて来させた。この者の持つ魔力は、すさまじいものだ。この者を食べれば我の力は大幅に増大する。さすれば、お前の村を守るのも、よりたやすくなるのだぞ? 何が不満だ? フシューーー、シュルル」
なんてことでしょう! まさか、村長様が村人以外の人間を生け贄に差し出すなんて!
私は守り神様と祭壇の間に両手を広げて立ちふさがり、
「どうか、お願いします。この子だけは、雪音ちゃんだけはお見逃しくだ」
「くどいっ!」
守り神がラピを尻尾で弾き飛ばす!
バシン!「がはっ」
ドガーン!!「うっ」
ドスン!
ラピは洞窟の壁まで弾き飛ばされ地面に落ちて倒れ伏した。
「うぅー……ゆ、雪音ちゃ」
ラピは頑張って上半身を起こし、なんとか祭壇を見る。すると、白い大蛇が今まさに雪音をその大きな口で飲み込もうとしているところだった。
「いやぁあーーーーーーーーー!!!」
ラピの絶叫が洞窟内をこだまする。だが、ラピの叫びも虚しく、雪音は白い大蛇に飲み込まれてしまった。ラピの瞳から大粒の涙がポロポロ流れ落ちる。
「雪音ちゃん、ごめんなさい。私が、私が雪音ちゃんを村に連れて来てしまったせいで……うぅー」
ラピの嗚咽が洞窟内で響き渡る……




