表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/133

第2章 新世界の幕開け 001 〜○○○になってたのです〜

「⋯んっ、ふぁ〜ぁ」


 私は体をもぞもぞ動かし起き上がる。


「さっきのは夢だったのかな? 夢にしてはやけにリア、ル......」


 私は目の前の光景に唖然とする。


「えっ、洞窟、の中?」


 私は今ベッドの上。白いワンピースを着ている。周りをキョロキョロと見渡すと一方向を除いて岩壁で囲まれている。上を見れば、あちこちから光が差し込んでいる。


 私のいる空間はなんて言うかこう狭い洞窟の中って感じなのです。そして、目の前にテーブルがポツンと置いてあります。


「洞窟の中にベッドとテーブルって...。って言うか、あれって夢じゃなかったんだ」


 テーブルの上に手紙がある。私はベッドからテーブルの上に手を伸ばし手紙を手に取る。


雪音(ゆきね)ちゃんへ

 今これを読んでいるということは、あんたが無事に転生されたということさ。喜ぶと良い。ただ、雪音ちゃんの生成する魔力が膨大だから、人間の体を可能な限り強化してみたんだけど、それでも後々許容しきれなくなるっぽいから、人間の体は無理だった。だから、魔族の体になっちゃったけど、そこは許してほしい』


 ホワッツ!? なんですと!? 私、人間辞めちゃってたです!? 慌てて自分の両手や両足を見てみる。特に変わりはないみたい。ハー。焦らせないで欲しい...…。手紙の続きを読んでみる。


『魔族の体だけど見た目はちゃんと人間だから、そこは安心して欲しい。角も生えていない。 あと、あんたは血が足りないって言ってたから、体のベースは吸血鬼にしてみた。飲む血は人間のに限らず、魔族のでも魔物のでも動物のでもオッケーさ! 色んな生き物の血に味付けを設定してみたから、是非テイスティングを楽しんでくれたまえ!』


 頭がクラクラしてきたのです。何考えてるんです、あの人!? 貧血って、血を飲めば治るんですか!? そうなんですか? そんな訳ないですよね!? それと、人間の血以外を飲む吸血鬼って居るんですか? ってゆーか飲むの? 吸うんじゃなくて? 私は口を開けて指で上の歯をひとなでしてみる。牙とかは生えてない。口を開けたところを誰かに見られても、吸血鬼ってバレることはなさそうです。ハー。ちょっと一安心なのです。続きを読みたくないけど続きを読もう。


『あと血を飲むとその生き物の遺伝子情報がゲットできて、その生き物の固有技、つまり技とか魔法を修得できるようになるから、狩りの楽しみが倍増さ! やったね雪音ちゃん!』


 やったね雪音ちゃんじゃないのです! あの人、私にどんだけ狩りさせたいんですか!? 狩りをして倒した生き物の血を飲む私を想像してみる。口から血を垂らし、味付けされた血を美味しく感じてニンマリする私。うん、人間から見たら危ない人だよね。ベッドの上でorzのポーズを取る。


 うん。きっと神様は、臆病な私がやる気を出して狩りに取り組めるようにと、狩りをした後のご褒美を用意してくれたに違いない。そう思うことにしておこう。きっと私が男の子だったらガッツポーズとか取るところなんだろうけど、あいにく私はか弱い女の子なのです。素直に喜べません。はー、気を取り直して手紙の続きを読むのです。


『ちなみに吸血鬼をベースにしたけど、太陽の光に当たっても灰になるようなことはないぞ。きちんと太陽の光の下で大空を自由に飛べるようにしてあるから安心して欲しい』


 そうだった。吸血鬼は太陽の光に弱かったのです。神様ありがとう。本物の吸血鬼だったら、お日様の下で生活できなくなるところだったよ。あと、空を飛べるって書いてあるけど、羽とか生えてるのかな? 両手で背中を探ってみるけど、羽はない。手紙の続きを読んでみる。


『羽は飛ぶことを強く意識すれば背中から生えて来る。後は羽を動かして飛ぶだけさ。まあ羽がうまく動かせなくても、ぶっちゃけ飛行魔法を使えば羽なんてなくても飛べるから、無理に羽で飛ぼうとしなくてもいいぞ』


 ……。身も蓋もないのです。とりあえず、ここは天井が低いから、後で洞窟出たらチャレンジなのです。羽を出したらいきなり急上昇して、天井に頭ゴッツんこは嫌なので。


『あと、大魔力持ちな雪音ちゃんには、神様から杖をプレゼントしてあげよう。人間と行動するのに魔法の無詠唱とかしてたら、悪目立ちするからね。とりあえず見た目いかにもそれっぽい杖があれば、行使される大魔法も、雪音ちゃんの見た目から本人の能力によるものではなく、杖の効果と思ってもらえるだろうからね』


 すると、テーブルの上で淡く青い光が出現し大きく光ったと思ったら、そこに青い珠をくわえた龍をかたどった(みじか)めの杖が出現した。龍の杖を手に取り眺めてみる。


 青い珠はとても綺麗で吸い込まれそうです。宝石とか持ってなかったから、これはとっても嬉しいです。この青い綺麗な珠を見てると頬がほころんできちゃいます。杖を掲げてみちゃったりします。はっ。我を取り戻して周りをキョロキョロしてみる。良し、誰も見ていない。セーフなのです。人前でなくて良かったです。さあ手紙の続きを読もうと紙をめくる。


『ふっふっふ〜。気に入って頂けたようで神様は嬉しいね〜。にやにや』


 ピキッ。私の笑顔が凍りつく。そうだよね。さっき手紙を読んでる途中で、タイミングよく龍の杖出てきたもんね。神様きっと見てるんだよね。セーフじゃなかったよ。恥ずかしい...。


『その杖は見た目豪華で、いかにも凄い効果がありそうに見える。っが、本当に見た目だけの杖で増幅効果なんてないから、他人に貸したりしないようにすること。あんたの能力がバレるからね。まあ強いて効果を挙げるなら、雪音ちゃんが大魔力をその杖に通しても壊れないように作ってあることぐらいかな。っで、魔力を通すと龍がくわえてる青い珠が光るようになってる。まあ、それなりに周りを騙せると思うよ。あー、あと他の杖を雪音ちゃんが使うと、よっぽどの物でない限り壊れちゃうから気をつけてねー』


 はい、神様どうもありがとうございます。私って、とことん人外の存在になっちゃったんですね。どんな血も飲めます(しかも味付き)。血を飲むとその生き物の固有技(技や魔法)を覚えます。羽が生えて空も飛べます。自分で魔法を作れます。魔法は無詠唱で使えます。普通の杖を使うと壊しちゃいます。


 うん、問題だらけなのです。なんかあっという間に、一般人じゃないってバレそうです。もうここは開き直って、死なないことを第一目標にしよう。そうしよう。私は手紙の続きに目をやる。


『最後に、メニューオープンと口に出すか念じるかすれば、地球のゲームのメニュー画面みたいなものが目の前に出てくる。指でそれぞれの項目にタッチすれば、自分の習得した魔法や固有技が確認できたり、魔法の袋にしまったドロップアイテムなどを一覧できる。その他にも何か思いついたら機能を付け足すから、時々チェックしておくと良いだろう』


 魔法の袋って何ですか、神様。と思ったら、テーブルの上がまた青く光ってる。今度は袋が出現した。これが、きっと魔法の袋なんだよね。手紙の続きはっと。


『今そっちに送ったのが魔法の袋さ。生きているもの以外なら何でも出し入れできる。中に入れておけば、入れた物の時間は停止する。食べ物とか狩りで倒した魔物の死体とか入れておけば腐らないから、旅で役立つこと間違いなしさ。では、幸運を祈る。貴女(あなた)に良き狩りがあらんことを。by 神様 』



 いやー狩りとか、できれば遠慮したいのです。でも、魔法の袋とか龍の杖とか健康な身体とか(吸血鬼?だけど)、神様、色々どうもありがとうございます。雪音はこれからこの世界で頑張って生きて行きたいと思います。私は両手を組んで神様に感謝の祈りを捧げた。


 さあ、ベッドを降りて洞窟の外に出てみよう。まだ見ぬ新世界へと出発なのです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ