幕間 〜神様は見ていた。雪音ちゃんに角が生えた瞬間を〜
「ブハッ! ふっふふふふ、ぶっ、あは! あーーーーはっはっはっはー!!」
「もーーー! ティア様!! 仕事中いきなり笑い出さないで下さい! びっくりするじゃないですか!!」
机をバンッと叩いて振り向いたちびっ子天使のリルが神様を窘める。
「ヒー、ヒー、いや、だってさー、こ、これ! これを見てくれたまえ!」
神様は仕事机の上の本の山で隠していた小さな映像プレートを空中へと移動させ、動画を静止させた映像を拡大する。それを見たちびっ子天使は、
「ぷっ! な、なんですか、あれ!とっても可愛いじゃないですか! なんで、あの子、あ、頭に角が生えてるんですかーーー!」
「しかも、巻き角だからな! し、白いワンピース来た可愛い女の子なのに、あ、頭に悪魔 ( じゃないけど ) の巻き角みたいなのを付けてるなんて、お、面白過ぎなのさ! ぷっ! ぷっひゃひゃひゃひゃひゃ」
神様は腹を抱えて机の上に突っ伏して笑っている。
「いや、た、たしかに面白いですけど、ティア様、そこまで笑っちゃうのはどうかと思いますよ、リルは。そ、それに、あれって神様の所為ですよね?」
自分も笑いをこらえるのに必死になりながら、リルは神様を窘めようとする。それに対して神様は、
「いやー、その通りなのだが、うん、これは実に傑作だった! あの子の毎日は面白過ぎる! まだ、こっちの世界に来て数日なのにだ! これは録画映像を編集し、面白い部分を切り分けて映像データとして天使達に売ろう! これは売れる!! キリッ」
パシーーーン!と小気味良い音を立てて、ちびっ子天使のリルがハリセンで神様の頭を叩く!
「これは売れる!! じゃないですよーー! 売っちゃダメじゃないですかーーー!! それは雪音が可哀相じゃないですか! 何考えてるんですかーー!」
そう言って再度、ちびっ子天使は神様の頭をハリセンでパシーーーン!と叩く!
「リル、神様の頭をハリセンで叩くのはどうかと思うのさ」
「それはリルの手でティア様の頭をポカポカ叩いても良いということですか?」
「う、うむ。し、仕方がないな。ハリセンを使うことを許可しようじゃあないか!」
リルは、ハーと溜め息をついてから、
「それで、あの子はどうして頭に巻き角が生えちゃったんですか?」
「前に、あの子が血を飲むと、飲んだ相手の能力をコピー出来るって言ったのを覚えているかい?」
「ええ、覚えていますよ。つまり、角の生えている魔物や魔族の血を飲むと角が生えちゃうと言うことでよろしいですか?」
「その通り。巻き角の黒山羊の血を体内に摂取したことで角が生えたのさ! そして角から電撃を放つことが出来るようになる! 格好良いだろう?」
「格好良いかは別として、えっと、角が生えなくても、本当は電撃を放てるのでは?」
「ふむ、リルは鋭いね! その通りだよ」
「それじゃあ、ティア様はどうして雪音の頭に角なんかを生やすようにしたんです?」
「私のことをよく知っているリルなら分かるだろう?」
「そうですね。あんまり分かりたくないんですけど、分かります。だって、面白いだろう? と神様は言いたいんですよね?」
「そうさ! やっぱりリルは私のことが大好きなんだね!」
パシーーン!と小気味良い音がまた生み出される。
「ティア様と一緒に仕事をしてる天使なら誰でも分かりますよ! 変なこと言うとまた叩きますからね!」
「もう叩いたじゃないか?」
リルはハリセンを机の上に置く。
「ポカポカの方ですよ、次は? まー、確かにあの姿は面白いんですけどね。悪魔が付けてたら怖いですけど、あの子が頭に付けてると可愛いですし。ギャップ萌えとゆーやつですか?」
「そうだろう、そうだろう! 今度あのギャップ萌えの可愛い姿のベストショットを探しておくので、良い1枚が撮れたらリルにもあげようじゃないか!」
「えっ!? ホントですか! それはリルも嬉し、ゴッホン。資料として1枚頂きますので高画質でお願いします。ところでティア様、他にも、こー、なんかあるのですか? 角が生える以外に」
「そうだね。猫耳が生えたり、うさ耳が生えたり、犬耳が生えたり、狐耳が生えたり、尻尾が生えたり、牙が生えたり、鉤爪が生えたりと、まー、色々さ。甲羅なんかもあったな、うん」
「ティア様って獣耳フェチだったんですか? リル知りませんでした。あとでみんなに教えておきますね?」
「なっ、待たないかリル! べ、別に私は獣耳フェチでは!」
バタン! と部屋の扉が勢いよく開くと同時に1人の天使が入って来た!
「ティア様! リル! 貴女達は今、一体何をなさっているの! まだ、休憩の時間ではございませんわ! この忙しい時期に御二方はどうして遊んでいらっしゃるのかしら!!」
「シャ、シャル、こ、これはですね。」
「お黙りなさい! ティア様のお目付役が一緒になって騒いでてどうするのです!」
「まーまー、シャル。少し落ち着きたまえ」
「落ち着けるはずありませんわ! 大体ティア様はですねー!」
神様はパチンと指を鳴らして動画を再生した。今回は音量付きである。
「うがぁあーーー!!」とか「うにゃーーーー!!」と言う雪音のプッツンしちゃった声が室内に響き渡る。
「な、な、ななな、なんですのぉーー! この可愛い生き物は!!」
シャルはそう言って映像プレートを自分の所へ移動させ、プレートをつかんでガン見である。シャルはプルプル震えている。
「ふっ、嵐は去ったのさ」
「ティア様、シャルがお仕事できなくなっちゃうんですけど」
「リルはシャルのお小言を小一時間近く受けたかったのかい?」
「それはちょっとパスしたいですね」
「なら、問題ないだろう?これで平和が訪れた」
「はー、そうですね。シャルがこうなったら、しばらくの間、使い物にならなくなりますからネー」
「ティア様、リル!」
「な、なにさ?」
「はい!」
「私は用事を思い出しましたので、これで失礼させて頂きますわ!」
そう言ってシャルは部屋から去って行った。神様の映像プレートを脇に抱えて。
「なっ、シャルのヤツ、私の映像プレートを持って行ってしまったぞ!」
「ティア様、良かったじゃないですか? シャルの長時間に渡るお小言もありませんでしたし、映像プレートも手元になくなりました。これで真面目にお仕事が出来ますね!」
「いやだ、ちょっと取り戻してくるのさ」
「えっ!? ティア様何言って、って。もういないし。もー、そんなことで転移しないで下さいよーーー!」
神様を追いかける為、リルは部屋を出てシャルの部屋へと向かうのだった。
to be continued?
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