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第4章 村を目指して 018 〜廃村にいた女の子〜

 私は黒山羊にえぐられた右脇腹を治療した後、赤黒い鎌を地面に大量にこぼれてる自分の血にかざし、鎌に地面の血を吸い込ませた。吸い込む時に鎌が大きく赤く光った。なんとなく私は鎌が強化されたような気がした。


 血を吸い込ませている時、私は考えた。クゥーには私の魔力が流れていってる。だから、その魔力の流れを私が意識すればクゥー達の居場所が分かるはず!


 私は目を閉じて意識を集中する。そうすると目に見えないはずなのに、コバルトブルーの青い光が左のほうへと流れて行ってるビジョンが見えた。


 目を開ける。魔力の流れを意識したからか、目を開けてもコバルトブルーの光がまだ見える。


 さあ、早くクゥーと あの女の子を追いかけよう! 私は飛行魔法を使って弾丸のようにクゥー達の元へと飛んでいく!


「クゥーと女の子! 今すぐ行くから待っててね!!」


 私はコバルトブルーの光の筋を追いかけて行く!


「見えた! なっ!? 建物の上にアイツがいる!?」


 私は大急ぎで両手を前に突き出し、


「アイツの首をロックオン! 風の槍、お願い!!」


 そう叫んだ瞬間、触れたものを切り刻む緑色の風をまとわせた螺旋状の槍が、光の矢のように凄まじいスピードで黒山羊の首まで飛んで行く。そして、黒山羊は悲鳴をあげることもできず、首を風の槍で貫かれ絶命した。そして倒れて地面に落ちていった。


「ふーー、セーーーーフなのです!! ぃやーーアイツの金眼が光った時は焦ったよ、もー! 電撃飛ばされる前に風の槍が届いて良かったよ、ホントに」


 私は空中で両手を挙げ、うがぁーって感じでジタバタする。


 さてっと、このまま飛行魔法でクゥー達の所へ行くのはまずいから、ここからは降りて行くかな? さすがにもう黒山羊はいないよね? 私は地面に降りてクゥー達の方に向かって走って行った。


「ぉ〜〜ぃ。クゥーーウーーー!」と遠くから呼びかけると、「くぅ〜ん♪」と嬉しそうなクゥーの鳴き声が聞こえた。うん、無事でなによりだね♪


 走って行くとクゥーと女の子がこちらに向かって歩いて来てた。私達は合流して、


「クゥー、お疲れ様! 女の子を頑張って守ってくれて、ありがとね♪」と言って、頭をなでなでしてあげる。


「くぅ〜ん、くぅ〜ん♪」


 とクゥーが甘えてくる。きっと大変だったに違いない。あんなに敵がいなければ、分断されることもなかったのに。アイツら、次、見かけたら容赦なく叩っ斬ってあげないとね♪


「あ、あのー、命を助けて頂いて、ありがとうございますー。私、ラピって言いますー。本当にもうダメかと思ったところにあなた方が来てくれてー」


 グスッ、グスッと女の子は泣いて座り込んでしまった。クゥーが女の子の顔をぺろぺろ舐めて慰めている。


 私も しゃがんで女の子に話しかける。


「あなたはラピって言うのね。私とクゥーが側にいるから、もう大丈夫だよ。安心して良いから」


 そう言って私は、泣きじゃくる女の子の頭をよしよしと撫で、女の子を観察する。長い髪は銀色に薄い紫の色が混じってる。きれい〜。見とれちゃうね〜。外人さんだよ、外人さん! ってゆーか初異世界人だね♪ 言葉も普通に通じるし、神様が、なんかしてくれたのかな? 神様に感謝しとこー♪ 魔物以外は! それにしても、この子の胸、私よりおっきーですね。何を食べたら、そんなに大きくなるんですか? 後で教えてもらわないと!とかアホなこと考えていたら、ラピと目があった。ラピの目はエメラルドグリーンで髪同様きれいな瞳だった。私はラピに、にっこりと微笑んでみる。そしたら、


「きゃ〜、あなた可愛いのですーー♪」


 と言って私に抱きついて来た。そのおっきーおっぱいを私の顔に押しつけないで! うらやましくなるじゃない!


「なんなんです、なんなんですー、この可愛さはー! お持ち帰りしたいですーー♪」


 とさっき泣きじゃくってたのと大違いだ。


 それにしても、どうやら私はこの世界の人に可愛いと思われるぐらいの美少女みたい。やったね♪ まーそれはさておき、とりあえずこの子に離してもらおう。


「く、苦しいので離してもらえないかな?」とお願いしてみる。すると、


「はわわゎ、すみません、すみませんー。命の恩人に私、なんてことをーー!」


 とラピがあゎあゎしだした。うん、あなたもとっても可愛いよ?


「気にしないで良いよ。離してくれれば問題ないから。はじめましてラピ! 私は雪音、こっちの子がクゥー。やっと村人に出会えて嬉しいよ! よろしくね♪」

「がぅ♪」


「クゥーもよろしくだって!」


 そう言って私は手を差し出す。すると彼女は私の手を両手で握りしめ、


「本当に本当にどうもありがとうございましたー。私にはお役目があるのでー、ここで魔物に殺される訳にはいかなかったんですー」


 お役目?って、そんなことよりもまずは!


「この村って、ラピしかいないの? 魔物って黒山羊? 黒山羊が村を廃村にしたのかな?」と聞いてみる。

「黒山羊?」


「さっきラピを襲おうとしてた魔物を私がそう呼んでるだけ。名前を知らなかったから、とりあえず?」


 と言って私は人差し指を唇に当て首をかしげた。そのポーズがダメだったらしい。


「雪音ちゃん、可愛いですーー♪」


 と言われてラピに抱きつかれてしまった。勘弁してほしい。話が進まないよー。


「くるしー」

「あわゎ、私ってば、また!ごめんなさいですー」とラピがシュンとしてしまった。


「だ、大丈夫。離してくれれば良いだけだから。怒ってないよ?」と声をかける。クゥーが大丈夫?って感じで「くぅ〜ん」と鳴く。平気だよって感じでクゥーの頭を撫でる。


「それで、あの魔物って、どんな名前なの?」

「あの魔物は、この辺りの村ではベーゼゴウトって呼ばれていますー。あの魔物達のせいで、この村は廃村になりましたー」


「ラピはどうして1人でこの村にいたの?まさか1人で住んでいるの?だったら」

「いえ、1人で住んでいる訳ではありません。1人で住んでいたらベーゼゴウトに食べられてしまいますー」


「なら、どうして1人で?」

「クゥーン?」とクゥーが私の代わりに首をかしげる。


「ここには、私のお父さんとお母さんのお墓があるのですー。今日は挨拶に……」


 ラピはそう言って遠くを見つめた。


「そう、お墓参りだったんだね……。私のパパとママも死んじゃってるから……。ラピと私は一緒だね。でも、1人で来ると危ないんだから、誰かに護衛を頼んで一緒に来てもらえば良かったのに」

「誰かに頼むと村の者に外へ出してもらえなくなりますので、1人でこっそりと……。えへへ」


 ばつが悪そうにラピは笑った。その姿はどこか儚げだった。


「やー、それはちょっと無謀すぎると雪音ちゃんは思います! 私がいたから良かったようなものの」


 私は指をビシッとラピに突きつける。ふざけたことをして、ちょっと空気を変えたかったのです。


「そうですねー。雪音ちゃんのおかげで助かりましたー。白い服を来た少女がやって来て天から雷をベーゼゴウト達に落としてくれたのでー、天使様が私を助けに来てくれたのかと思いましたー」


 と言って私の背後に回り、「羽〜、羽〜。あれ〜、羽ないですねー」とか言ってる。


 それを聞いた私は、ごめんネー、雪音ちゃんは天使じゃなくて魔族の吸血鬼だから、聖なるものとは真逆の存在なんだよー、と心の中で謝った。


 ちなみに、あの時は村に来るんだから羽を出してなかったし、さっきは飛行魔法で飛んでたから当然、今も羽は生えてない。魔法で天使の翼を出したら、天使様扱いされちゃうんだろうか? 魔族が天使の格好してるのがバレたら、聖騎士団みたいな所から討伐隊とかが派遣されちゃったりするんだろうか? ブルブル。天使の翼を人前で使うのはやめておこう!


「くぅーん」とクゥーが近寄って来た。頭をよしよしと撫でてあげる。


「ラピ、お墓への挨拶が終わってるなら、あなたの村に移動しない? ここにずっといると、黒山羊、じゃなくてベーゼゴウトがまた集まって来ちゃうかもしれないし」


「がぅがぅ!」クゥーも、そうだよそうだよと言っている。


「そう……ですね。危険ですので名残惜しくはありますがー、雪音ちゃんの言う通り村へ移動することにしますー」


 彼女はそう言って村をぐるりと見回す。まるで見納めをするかのように。



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