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第4章 村を目指して 017 〜クゥー、がんばる〜

 雪音が戦闘を終了した頃、クゥーは追い詰められていた。なぜなら、クゥーの背後には先ほど悲鳴をあげた女の子がいるからだ。女の子は恐怖でガチガチ震えて座り込んでいる。クゥー1匹なら逃げることは可能だったが、女の子を置いて逃げることはできなかった。


 クゥーは、「あぉーーーん!」と鳴いて10本の つららを相手に向けて連続で飛ばす!


 けれど、螺旋状の槍みたいな角を持つ黒山羊はピョンピョン飛んで華麗に避け「ヴひゃ、ゔぁヒャ、ヴびゃ!」とクゥーを嘲笑う。


「がぅー」クゥーは考える。連続でダメなら1度に全部飛ばしたら、どうかな?と。


 クゥーは「あぉーーーん!」と鳴いて今度は10本全部を横一列に並べて同時に飛ばした!


 これには流石の黒山羊も避けられなかったらしく、2本ほどの つららが命中した! だが致命傷には程遠い。


 そして、この攻撃に黒山羊は激怒した!「ヴォゔぉーーぶヴォーーーーー!」と鳴いて怒っている。そして、金眼を光らせた。すると、螺旋の隙間から緑色の風が吹き出し、まるでドリルが回転しているみたいに緑色の風が動き出す。


 クゥーはマズイと思った。あの角の威力はご主人様が見せてくれた。「くぅーん」思わず弱気の鳴き声が出てしまう。クゥーは、僕が頑張らないと後ろの女の子が大変なことになってしまうと思った。ご主人様に頼まれた。魔力の弱い僕に戦える力を、勇気を与えてくれた。安らぎを与えてくれた。とっても嬉しかった。ときどき怖いときもあるけれど、僕の大切なご主人様に頼まれたのだから、あの女の子を守りたい。クゥーはそう思った。


 クゥーは「あぉーーーーん!」と鳴いて大きな氷塊を「ヴォーーぶヴォーーーー!」と鳴きながら突進してくる黒山羊の目前に落とした。


 怒り狂っていた黒山羊は氷塊を避けようとせず、そのまま触れるものを切り刻む緑色の風をまとった角を氷塊にぶつける。氷塊に左右の角2つ分の穴が空くが、氷塊が大きかったためクゥーまで攻撃はかろうじて届かない。また、氷塊にひびが入るものの氷塊は崩れない。


 そして、クゥーは氷塊を1つ落としただけで満足していなかった。氷塊を落としたあと立て続けに 無数の つららの雨を黒山羊に浴びせた。


 その串刺し攻撃に堪らなかったのは黒山羊だ。地面に倒れて「ゔぇエぇーヴェえェー!」と苦しみの声をあげている。


 クゥーは、そんなこと気にせず容赦なく黒山羊に追撃を加える。黒山羊の体の上に縦に長く大きな氷塊を生み出した。しかも、氷塊の下部は逆円錐型だ。それを黒山羊に落下させる!


「ヴォゔぁ!?」っと最期の鳴き声を発し、黒山羊は絶命した。


「あぉーーーーん!」と勝利の雄叫びをあげ、クゥーは地面に横になった。


 勝てたのは嬉しかったけど、ご主人様がいなくて心細くて、しかも一度は軽くあしらわれてしまった相手と同じ種だ。勝てる気がしなかった。終わってホッとして気が抜けた。もうだめー。


 それがクゥーの今の気持ちだった。


 女の子が「白いわんちゃん、ありがとうございますー。本当にありがとうございますー。白いわんちゃんは命の恩人ですー」とクゥーに抱きついてワンワン泣いている。余程、黒山羊が怖かったのだろう。



 そんな時、背後の平屋の建物の屋根から音を立てて新たな黒山羊が現れた!!


 クゥーも女の子もギョッとして固まってしまう。


 巻き角の黒山羊が「ヴァーービャひゃぁーーー!」と鳴き声をあげ、金眼を光らせる!


 女の子は目を閉じて「お父さん、お母さん、今そっちに行くね」と口に出し死を覚悟した。

 クゥーは慌てて自分達の頭上を覆うように氷塊を出現させようとした。


 が、黒山羊は一向に攻撃に移ろうとしない。角が帯電さえしていない。


 どうして? あのタイミングなら氷塊を出しても間に合わなかったのに……とクゥーは思った。


 ふいに黒山羊は屋根から倒れるようにして地面に落ちた。地面に落ちた黒山羊をよく見ると、黒山羊の首の横に、螺旋状の槍のような角が突き刺さっていた。


 あぁ、ご主人様が助けてくれたんだとクゥーは思った。ご主人様はいつも僕をピンチから救ってくれる。僕も、もっとご主人様を助けたい。心から そう思った。


 遠くから「ぉ〜〜ぃ。クゥーーウーーー!」と自分を呼ぶ声が聞こえる。


 だから、僕は「くぅ〜ん♪」と鳴いて起き上がる。そして、この女の子と一緒にご主人様の所に戻るんだ。僕の大切な居場所へと。


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