第4章 村を目指して 013 〜クゥーを強化しよう②〜
しばらくして、私はクゥーに謝った。
「ごめんね、クゥー。私、盛大に取り乱しちゃったよ」
「クゥーン」とクゥーはちょっと怯え気味に答えた。
むむむ、さっき我を忘れ過ぎたせいで、クゥーを怖がらせちゃったようだ。
「ほら、私お昼寝する前に言ったよね。クゥーのパワーアップをしたいって」
「がぅ?」そんなことできるの?って感じで首をかしげるクゥー。
「我と契約して我の使い魔になるのだ〜。さすれば、お主に新たな力をさずけよ〜って感じ?」と私は芝居がかった感じで言ってみる。
「がぅー」なんか胡散臭そうな感じで私を見るクゥー。とりあえず怯えるのはやめてくれたみたい。
「どうするかって言うと、空間を無視して私からクゥーへ魔力を与えられるようにする契約魔法を私とクゥーで結ぶの! そうすれば、クゥーもいっぱい つららの魔法を使えるようになるんじゃないかな?」
「がぅー」と鳴いて、魔族と契約するのに何を取られるんだろう?みたいな感じでクゥーがちょっと後ずさる。
「むー、クゥー、それはないんじゃないかな〜? 雪音ちゃん、寿命とったり、死んだら魂を貰っていくみたいなことしないよ?」
「がぅ?」じゃあ代償は、な〜に?みたいに首をかしげるクゥー。
「雪音ちゃんが もふりたい時に、クゥーを自由に もふもふできる権利です。拒否権は基本的に認めないのです! こんなふーに、うりゃーーーー!」と言って、クゥーをもふり始める。
私はクゥーの顎の下とか耳の後ろとか、背中とか お腹とか、いろいろと もふもふしてあげた。クゥーはとっても気持ち良さそうな表情をしていた。
「どう? これを私がしたい時に、クゥーは大人しく私に もふられることが、契約の代償です。雪音ちゃんと契約しますか? 魔力が足りなかったら、私がクゥーに魔力を送ってあげるよ? 私の魔力が欲しかったら、私の右手にクゥーの右前足を置いて『くぅ〜ん♪』と鳴いて」と言って私はクゥーの前にしゃがみ、右手を差し出す。
クゥーは私の右手に、自分の右前足を置いて「くぅ〜ん♪」と元気よく鳴いた。
私とクゥーの周りをコバルトブルーの光がグルグル飛び回り、最後に私達をその光で包み込んだ。
「契約はなされた! これで、お主は我の使い魔となり、お主の使いたい時に我から魔力を引き出せよーぞーー、ってね? あはははは。うまくいったみたいだね♪」
「がぅ?」とクゥーは首をかしげている。ピンッと来ないみたいだ。
「とりあえず、つらら出してみたら? こんな風に」と言って私は3本の つららを出してみた。
「がぅ!」と言ってクゥーも つららを出した。その数なんと5本!
「おぉ〜すごい、すご〜い♪ 私より多いね〜。じゃあ、もっと出せるかな?」と言って私は8本つららを出した。
すると、クゥーは「がぅ♪」と言って10本の つららを出した!!
私はクゥーに抱きつき「良かったね、クゥー♪ つらら いっぱい出せて!これでさっきの黒山羊がまた出てきたとしても怖がらず戦っていけそうだね?」と聞いたら、クゥーが元気よく「くぅ〜ん♪」と鳴いた。私はクゥーをいっぱい もふもふしてあげた。
さて、クゥーのパワーアップは無事に完了した。後は私の番!って言っても別に威力をあげるとかでなく飛行魔法の問題で、さっき空を飛んだ時、なんかしっくり来なかったんだよネー。翼をパタパタとかバッサバッサ動かすのが気に入ってたというか……。なので、魔法で翼を作るのです!! どんな翼を作るかと言うとーーー、
「天使の翼よ! 私の背中に服を破らず出現せよ!!」
天使の翼が生えたので、私は翼を動かし空を飛ぶ!
「そうそう! こんな感じ、こんな感じ! ふん、ふん、ふ〜ん、ふふふふ〜ん♪」と鼻歌を歌いながら私は空を飛ぶ。下からクゥーが私を見上げてる。
「クゥーも来るぅーーーーー?」と上空から大声で聞いてみた。冗談のつもりで言ったんだけど、なんとクゥーが上がって来た!
空中にいるクゥーの足元には氷の足場が作られている。上空へと駆け上がるたびに、その足元には氷の足場が生まれている。
私はあまりにもびっくりして口を開けたまま何もできなかった。今、そんな私の周りをクゥーが「くぅ〜ん♪ くぅ〜ん♪ くぅ〜〜ん♪」と楽しそうな鳴き声を発しながら空中を駆け回っている。はっと我を取り戻した私は、
「クゥー、すっごいじゃん!! なんで空飛べるってゆーか、空駆けることができるの!? まるで天馬だね!!」
クゥーを見ると、それはそれは楽しそうに空を縦横無尽に駆けている。クゥーが群れで いじめられていたのは、きっと魔力が弱かったせいだ。だから気も弱くなってしまった。でも、今は違う。私からの空間を無視した魔力供給によって自由に魔法を使うことができる。魔法をたくさん使えることが嬉しくて嬉しくて仕方がないんだろうね……。クゥー、良かったね♪ グスッ。目元を拭って、
「うん、私も空を自由に飛べて嬉しいし楽しいから、クゥーもそうなんだよね♪」
そう言って私はクゥーに近づき、しばらく上機嫌のクゥーと一緒に、お空のお散歩を楽しんだ。




