第4章 村を目指して 007 〜朝の一幕〜
翌日、ソファーで目覚めた私は、むくりと起き上がり「んーーー」と大きく伸びをする。そしたら、ソファーのそばにクゥーが、ちょこんと座って「くぅ〜ん」と鳴いた。
「おはよ、クゥー! 今日も1日がんばろうね?」と声を掛けたら、「がぅ!」と元気な返事が返って来た。
よしよしとクゥーの頭を撫でてたら、私は昨日の夜に魔法使いの服を簡易洗濯機に突っ込んだままだったのをふと思い出す。お風呂場へ行こうとするとクゥーがついて来た。
「すぐ戻るから待ってても良いんだよ?」
と言ったけど、クゥーはついて来る。ま、いっかと思い一緒にお風呂場へ向かう。
「おー、まだ回ってたよー。すごいね、私の魔法!」
とりあえず渦を止め、魔法使いの服をつかみ水を絞る。
「どうしよ、これ? 魔法の袋に入れておけば良いかな? 別に濡れてても大丈夫だよね、袋の中の時間は止まってるって話だったし」
私は手元の服を消し、メニュー画面のアイテム欄へと移動させた。
それを見たクゥーが首をかしげてる。あぁ、きっと昨日、私が魔法の袋経由で出し入れしないと!みたいな話をしたからだ。
「クゥー、人間ってね、矛盾をはらんだこと、いっぱいするんだよ? 覚えておこうね?」と言ったら、
「がぅー」とクゥーは返事した。微妙に納得がいってないらしい。
「人間って、すぐに楽な方へ走ろうとするんだよ。誘惑に抗えないこともあるから、許してね?」
「がぅー」とクゥーから返事が返って来た。
むー、小さな監視人が生まれてしまった。この子の前で、やたらな決め事を軽口で言ってはいけないらしい。気をつけよう。
「さあ、部屋に戻ってご飯にしようね〜」と言って誤魔化した。
部屋に戻って私は魔法の袋からリンゴ2個と水袋1個取り出す。そして昨日と同じように魔法でリンゴを食べやすく切ってクゥーの前に置き、魔法で水を木の器に入れてあげた。クゥーは、むしゃむしゃリンゴを美味しそうに食べる。私もリンゴを丸かじりし、水を飲む。
食事が終わったら、空になった水袋と木の器を流しで魔法を使って軽く洗った。そして、それらとリンゴの芯を魔法の袋にしまって口を紐で縛る。
リンゴの種って蒔けば木になってリンゴがなるのかな〜? 桃栗3年、柿8年だっけ?リンゴは何年だろう? まあ、あれだね。芽が出ても数年待たないと食べられないのは確かだね。
リンゴ……。リンゴの数も残り半分になっちゃった。大事に取って置きたいけど、そうすると今日のお昼と夜のご飯がなくなってしまう……。………。早く人里につかないと、まずくないですか……?
「のぉおーーーーーー!?」
私の突然の叫び声にクゥーはビクッとする。
「クゥー! 今日は人里目指しながら狩りをするよ? クゥーもお肉食べたいよね?」
「がぅがぅ♪」
クゥーはお肉を食べたいようだ。しっぽをぶんぶん振ってる。やっぱりリンゴよりお肉が良いんだね、そりゃそうか、狼だもんね?
「でも、クゥーも狩りをするんだよ?」
と言ったらクゥーが固まった。えっ? なんで?
< 解説コーナー >
Q. 雪音ちゃんが使う盾って弱くない?
A.
どんな攻撃も防ぐ魔法の盾を作ることは可能ですが、全魔力を消費します。そうすると他の魔法が使えなくなってしまいます。
雪音ちゃんのイメージで作った盾の防御力を仮に500とします。(とりあえず耐久力は考えないこととします。)
エルダートレントの攻撃力を仮に100として、トレントが盾を攻撃した場合、盾の防御力を超えていないので盾は壊れません。
クールビューティーこと氷の精霊グレイシャの氷の槍の攻撃力を仮に800とすると、盾の防御力を上回っているので、盾で何回か防御してると盾が壊れてしまいます。
雪音ちゃんの魔法は、雪音ちゃんのイメージによって左右されます。雪音ちゃんのイメージした強い盾は、エルダートレントに対しては強かったのですが、その盾はクールビューティーの氷の槍に対しては弱かっただけです。
なので、今作ったのより遥かに強い盾とか、氷の槍に壊されない強い盾!みたいな感じで念じて作れば、防御力が1000とか2000の盾を作ることができ、氷の槍の攻撃を何度受けても破壊されなくなります。
クールビューティーとの戦いで、雪音にはそう言った考えをあの時点では思いつかず、ただ同じ防御力の盾を2重に展開した形となるので、もし、あの時、盾に何度も何度も氷の槍が当たっていれば、盾は1つずつ壊されていました。
盾が壊されるかどうかは雪音ちゃんの思いつき次第です。思いつかなければ雪音ちゃんは防御力500の盾を使い続けることでしょう。盾を2重、3重に展開したりして……。
注 : 数値は今適当にパッと考えたものなので、この数値なら○回の攻撃で盾は壊れるはずだみたいな検証?考察?は勘弁してくださいませ。




