第4章 村を目指して 005 〜今度こそ、お風呂です②〜
ふー、なかなか大変だったよー。わんちゃん飼ってるお家って大変だねー。まー、もう他人事ではないのだけど。とか思ってたらクゥーが体をぶるぶる震わせ水しぶきを辺りにまき散らした。
「もう! クゥー、もう少し離れた所でやってよ〜」と注意する。
クゥーは何食わぬ顔でキョトンとしてる。
私は浴槽を見る。ちょっと深い。クゥーが入るのは無理っぽい。
「じゃあ、クゥー用の簡易お風呂を作っちゃおう! 岩よ、壁を作れ!」
私は、お風呂場の角の2つの壁にくっつくように地面から2枚の岩の壁を生じさせて、クゥー用の底の浅い簡易お風呂を作った。そして、クゥーを持ち上げ簡易お風呂に入れる。
「クゥーにお風呂って何かを教えてあげよう!」
私はクゥーの入った空の浴槽にシャワーの魔法でぬるま湯の雨を降らせる。
「クゥーはそこで大人しくしててね? ぬるま湯は、ちょこんと座ってたら頭までは来ないから」
そう言って、私はクゥーの入った簡易お風呂の横に岩の魔法を使って岩の壁を生み出し箱を作る。そこにもシャワーの魔法を使って、ぬるま湯を入れる。脱衣所へ向かい下着を取ってきて、今作った箱に下着を入れる。そして、ぬるま湯に命じた。
「ぬるま湯よ、渦巻いて下着を洗って! あと時々逆回転も!」
そう、私は即席の洗濯機を作ったのです! いや、だって汗かいたし、血とかついてたし洗わないと…ね?
クゥーが即席洗濯機を物珍しそうに眺めてる。
「クゥー、あんまり見てると目ぇ回しちゃうかもよ?」
渦によって回る下着を目で追っかけてるのか、クゥーの頭もぐるぐる回ってる。ちょっと面白いかも♪
「さてと、あとは自分を洗わないとね。ほんのちょっとだけ熱いかなと私が感じる温度でシャワー!」
そう言って私は雲からシャワーを出して体を隅々まで洗っていく。こうして見ると、人間の体っぽいんだけどねー見た目だけは! まあ胸は、前より、ちょーっと大きくなってるのは嬉しかったし? 手や足も少しふっくらして健康的になったし? 身長はなぜか据え置きだったけど。今日1日動いてて手足の長さに違和感がなかったのだから身長は前世と同じなんだと思う。顔は〜どうなんだろ? 鏡がないから未だに自分の顔がどうなってるのか分からない。美人さんになってるのかな? 身長が高くなってないから、美人とは言えないか。じゃあ美少女になってると良いな♪ 大きい町に行けば鏡売ってるかな〜。売ってると良いな〜。
しまった、髪を洗ってない。ボディーチェックに気を取られて、髪を洗うのをうっかり忘れちゃった。長い髪を手にとってみる。今更ながらに自分が金髪だったことに気づく。おぉ〜雪音ちゃんは外人になってしまったのか〜♪とちょっと感激。神様ありがとう〜!と神様に感謝しつつ髪を洗う。うぅー、シャンプーとリンスが欲しい……。ちょっと日本が恋しくなる。こっちの世界にシャンプーとかリンスってあるのかな〜とか考えながら髪を洗い終える。
それから、もう1度シャワーで体全体を隅々まで洗い直した。
「さて、私もお風呂にはーいろっと♪」
そう言って私は湯船に浸かる。うん、ちょうど良い温度だね。は〜、生き返るよ〜。なんだかんだで今日はすっごく大変だったからね。
「クゥー、湯加減どう? 熱くない? ちょうど良い?」
クゥーの方を見てみると、気持ち良さげに湯船に浸かってる。
「くぅ〜ん♪」とクゥーから明るい返事が返って来た。
「それは良かった。これがお風呂ってゆーんだよ?気に入ったら、また今度一緒に入ろうね〜」
「くぅ〜ん♪」とクゥーが鳴く。
うん、気に入ってくれたみたいで何よりなのです。熱いお湯に足入れさせちゃったから気掛かりだったけど、お風呂が嫌いにならなくて良かったよ、ホント。私は空を見上げる。それにつられてクゥーも空を見上げる。
「クゥー、夜空が綺麗だよね〜。この世界の夜空って、いつもこんな感じなのかな〜?」
「がぅ」と上を向いて鳴く。
「そうなんだ〜。綺麗な夜空だよね〜。世界は魔物で溢れてるらしいけど、その厳しさの代わりに夜空とか自然の景色が幻想的だったりするのかな〜? あの神様、狩りだけじゃなくて、幻想的なのも好きなのかもしれないよね〜。そういえば、木の魔物の魔石もすっごく不思議な色してて綺麗だったし」
「がぅ?」
クゥーには、よく分からなかったらしい。さて、そろそろ上がろうかな?