第4章 村を目指して 004 〜今度こそ、お風呂です①〜
私の悲鳴を聞いたクゥーが一体何事か?と思ったらしく私の側にやって来る。
「くぅ〜ん?」どうしたの?って感じで首をかしげてる。
「あ、あのね。私が着てた服、あ、穴だらけなんだよーーー!? こんなの着て、ずーっと歩いてたんだよ! もし、この村に人がいたら、私、すっごく恥ずかしい思いしたんだよ!?」
とクゥーに穴だらけの服を見せる。クゥーは何をいまさら?みたいな感じで首をかしげたままである。
私は穴の空いた服を凝視した。そうだっ!クールビューティーに串刺しにされたせいで、服に大きな穴がいっぱい空いてるんだ!あれ、でも背中のこの部分は……。ひょっとして羽?羽が服を破って突き出てた、の?
うぅー、これから羽を気楽に使うことができなくなったよーーー。むぅー、なんてことだ……。まー、人間の町に行ったら、羽なんて出せないんだから良いんだけどさ、良いんだけどさ! 一度、空飛ぶ楽しさと移動の楽さを味わっちゃうと、また使いたくなっちゃうのもしょーがないよね?
それにしても、こんなに穴が空いてるのに、どうして寒く感じなかったの? 寒く感じてれば、すぐに気づいたのに……。あれだっ! 私が魔族の体だから寒く感じないんだ。あれっ? じゃあ、さっき私がお風呂のお湯が少し熱いって感じたのは、かなり熱いってこと!? まずいっ!!
「クゥー、おてて見せて!」
私はお湯につけた方のクゥーの前足を手にとって、
「クゥーの前足を癒せ、ハイヒール!!」
と唱えた。オレンジ色の暖かい光がクゥーの右前足を癒す。そして、
「クゥー、さっきはごめんなさい。すっごく熱かったんだよね。本当にごめんね」
そう言ってクゥーの右前足を優しくさする。
「く〜ん」と鳴いてクゥーは私の顔をぺろぺろなめてくれる。
「クゥーは優しいね。ホントにごめんね。次から気をつけるから許してね」
そう言って、クゥーの背中を何度か優しく撫でる。
「ハー、それにしても、厄介だなー。熱い寒いの感覚がまるで違うよーー」
私は今、服を脱いでいる。下着姿なのに一向に寒くならない。だって、ここ雪国なのにだよ!?
「ハー、4本の氷の槍に串刺しにされても死なない体になったんだから、熱いのや寒いのが分からなくなるぐらいしょうがないか……。死なない? 体になったのと引き換えだと思えば……。ハー」
私は下着を脱いで戸を閉じ、クゥーと一緒にお風呂場に入る。
「とりあえず、ぬるくなるまでシャワー(水)!」と言って浴槽に雨を降らせる。
しばらくこうしておけば、ぬるくなるよね。じゃあ次はクゥーを洗って乾いた血の汚れを落としてあげないとね。
「クゥーにも優しいぬるま湯で! シャワー!!」
小さな小さな雲が現れ、ぬるま湯の雨を降らす。雨の強さは私の思いのままだ。私は桶にぬるま湯の雨を降らす。少したまったら、それをクゥーの前に置く。
「クゥー、しっぽからシャワー掛けてくよ〜。もし、熱かったら、すぐに私に教えるか逃げちゃってね? 我慢はしないでね?」
私はクゥーのしっぽからシャワーを掛けていく。クゥーを見ると前足を桶に突っ込んだり、引っ込めたりして遊んでいる。とりあえず熱いってことはなさそうだね。ちょっと一安心。しっぽを持ち上げて、お尻にシャワーを掛ける。クゥーがもぞもぞ動いてるけど逃げようとはしない。次に耳にお湯が入らないように気をつけながら、背中にもシャワーを掛け、手で優しく撫でるように洗う。
横殴りの雨をイメージして雲に斜めにぬるま湯の雨を降らせる。それを後ろ脚の側へ移動させ、後ろ足を交互に手で念入りに優しく洗う。
「クゥー、後ろの足を片っぽ持ち上げて〜」
「くぅ〜ん」と鳴いてクゥーの後ろ足が上がる。
「ありがと〜」と返事して足の裏も洗う。今度は反対の後ろ足を持ち上げて〜とお願いして反対側も洗う。
「クゥー、今度は前足を片っぽ持ち上げて〜」
「くぅ〜ん」と鳴いてクゥーの前足が上がる。
「どうも〜」と返事して足の裏を洗う。今度は反対の前足を持ち上げて〜とお願いして反対側も洗う。
私は床に強めのシャワーを雲から出させ、床を綺麗にする。
「クゥー、ゴロンと転がってお腹出して」
そして、お腹にシャワーを当てながら手で優しく洗う。
「どうかな、クゥー? 気持ちい〜い?」
「くぅ〜ん♪」と明るい返事が来た。
ホントは石鹸とかあったら、もう少し洗いやすいんじゃないかなあって思うんだけど、ないものは仕方ない。
「よし。最後は頭だね。クゥー、ちょっと顔を上に向けて目を閉じててね〜。あっ、あと耳をペタンと倒せるかな? 水が入っちゃわないように」
こうだよ、こう、と私は両手を頭の上に持っていって、まるでそこに耳があるように耳を倒すジェスチャーをする。するとクゥーは「くぅ〜ん」と鳴いて耳を倒した。そして、私はクゥーの頭に弱めのぬるま湯のシャワーを掛け、指で優しく洗った。あと、顔や顎の下とかも指で優しく洗った。
クゥーの顔は満足気だ。頑張った甲斐があった。