第4章 村を目指して 003 〜お風呂の時間です〜
「クゥー、私ちょっと、お風呂探しに行って来るね。クゥーは疲れてるだろうから、そこで休んでて。お風呂の準備ができたら呼びに来るから、そしたら一緒にお風呂に入ろうね〜」
クゥーに声をかけてから、私はお風呂を探しに家を探索していく。そして、どうも、それらしい部屋は見つけたのだが、破壊されてて天井がない。エメラルドグリーンのオーロラが空を色鮮やかに染めている。
「うっわ〜!すごーいすごーい!!とーっても幻想的だね。地球にいた時こんなの生で見たことなかったよ〜♪」
天井はないけど、綺麗な星空が見える。しかもオーロラ付き! さっきはオーロラなんて出てなかったのにね!壁自体はあるから覗かれることもない。そもそも廃村だから気にしなくても良さそうだけどね。
さて、浴槽はあったけど蛇口が見当たらない。と思ったら、こっちに手押しポンプっぽいものを発見!
「oh〜、この世界の人はお風呂入るのも大変なんだねー。なんてこった」
もちろん私は手押しポンプを使って水を入れようなんて思ってない。お風呂に入るのに、わざわざ汗をかくようなことなんてしたくないよ。
「っとゆー訳で、楽してお風呂にお湯を張るのでーす」
私は浴槽の上に小さな雲が現れ、雲からお湯がザーザー土砂降りのように降ってくるのをイメージし、
「シャワー(お湯バージョン)!」と唱えて浴槽にお湯を降らせた。
あとはお湯が冷めないようにしたいんだけど、この世界の人はどうやって保温してるのかな? お風呂場を見渡しても浴槽と手押しポンプと桶ぐらいしかない。外から浴槽の下に薪をくべて加熱とか保温するタイプなのかな?
私は家の外を目指す。家の中を歩いてて思ったけど暗がりでもホント良く見える。吸血鬼って蝙蝠になれたりするよね? でも、蝙蝠って目悪いんじゃなかったっけ? 吸血鬼と蝙蝠は別なのかな? それとも、魔族の体ってことで視力が良いのかな? ま、いっかー。暗がりでも良く見えるんだから!
あっ、でも、そう言えば蝙蝠って超音波だして物や獲物の位置とか大きさとかが分かるんだったよね。それで洞窟の中を自由に飛び回れるんだよね? 私も超音波使えば、目が見えなくても自由に動き回れるようになるのかな〜?
私は立ち止まり目を閉じて、口から超音波を出すつもりで「アーーーーー」と声を出し続ける。私は念じる。目を閉じていても、声(超音波)を出せば周りの様子がわかる〜目を閉じていても声(超音波)を出せば周りの様子が分かる〜と念じる。色は流石に無理だと思うから白黒で!とか考えたら、目を閉じてるのに周りの様子が白黒で分かるようになった。
「おぉ〜! なんか変な感じだけど面白いね〜これ! あと、アーーーーーって言ってないのに、まだ見えるんだけど、なんでかな? 声を出していればオッケーってことで良いのかな?」
声を出すのをやめてみる。しばらくすると真っ黒になった。目を開けて、
「うん、声(超音波)を出してた時のデータか何かを元にして、声(超音波)を出さなくなっても、しばらく白黒の世界が維持できるんだね! すごい、すごーい♪」
私は、ぴょんぴょん飛び跳ねる。
「でも、戦闘のとき、ずっと声を出し続けるのはちょっと困るよネー。………。鼻歌!鼻歌で声の代用とかできないかな? できるよね? 雪音ちゃんの魔法は、想像を現実化する魔法! きっと何でもできるのでーす!!」
ということで、目を閉じて実験開始!鼻歌でも超音波が出る〜鼻歌でも超音波が出る〜と念じながら私は鼻歌を歌う。
「ふん、ふん、ふ〜ん、ふふふふ〜ん♪」
うん! ちゃんと白黒で周りの様子が分かる! これで目を閉じて鼻歌を歌ってれば、視界の悪いときや完全に真っ暗な場所でも問題ないのです。たとえ、魔物に液体掛けられて目潰しとかされても怖くない。んっ? いや、なんで魔物?
「ってゆーか何で私、超音波とか出してるのぉーーーー!?」
人間の町に行こうと思ってるのに、なんで私、超音波出すとか人間離れしたことをやらかしてるんだろう……。
私はがっくりと膝をつき、地面でうなだれる。魔物と戦うことを無意識に念頭に置いてる自分がいることに気づいた。神様の狩猟民族症候群に感染しちゃったのかもしれない……。早く何とかしないと……。
「ハー、早くお風呂に入って気分を切り替えることにしよーっと。そのためにも、まずは薪に火をつけないとね」
私は家を出てお風呂場の外側に向かう。空を見上げると、お風呂場で見た景色よりも雄大で美しかった。思わず足を止め魅入ってしまう。そして、つくづく異世界にやってきたんだな〜と実感する。ここが雪国だからオーロラが見えるだけの話なのかもしれないけど、日本では見られなかったのだから細かいことは気にしない。もふもふ要員のクゥーもいるし、異世界最高〜♪ ルン、ルン、ルーン♪
さて、お風呂場の裏手はっと。あ、あそこかな? とうちゃーく!
「うん、この薪に火をつければ良いんだよね。えいっ!」
私は薪に火をつけ、辺りを見回す。薪が積んであったので、薪をいくつか拾って火にくべた。
「これで準備よしっと! 早く戻ってお風呂に入ろう!」
私はクゥーのいる部屋に移動する。部屋に入ったらクゥーが顔を上げて、こっちを見た。
「クゥー、お風呂の準備ができたから、こっちおいで〜」とクゥーに向かって手を振る。
クゥーが起き上がって、こっちにくる。そして一緒にお風呂場へ向かう。
「クゥー、お風呂って知ってる? あったかい水で体を洗って汚れを落とした後に、熱いお水に入るんだよ?」
「がぅ?」とクゥーは首をかしげる。
「雪山に温泉とか湧いたりしてないのかな〜? 熱い水に入って体を温めるんだよ? 気持ち良いんだよ?」
「がぅ」とクゥーの反応は微妙だ。温泉に入ったことはどうもないようだ。
とりあえずお風呂場についた。桶で浴槽からお湯をすくって地面に置いてみる。すこーし熱いかな?
「クゥーおいで〜。ちょっと、これに軽く触ってみよっか?」と私はそーっと自分の手の平をお湯につける仕草をする。
クゥーが側にやって来て、右前足をちょこんと持ち上げ、恐る恐る桶のお湯にちょこっとだけ前足をつける。
「っ!? クゥーン、クゥーン」と鳴いて桶から遠ざかってしまった。クゥーはつららを使って足を冷やしてる。
「あちゃー。クゥーには熱過ぎだったみたいだね? ごめんね」私はクゥーの側に行って背中を撫で撫でしてあげる。
「じゃあ、もっともっと、ぬるめのお湯にしてあげるからね〜。ちょっと、ここで待っててね。すぐ戻るから」
そう言って私は急いで家の外へ行き、薪を燃やしている火を水の魔法を使って消した。すぐさまお風呂場に戻り、
「クゥー、お待たせ。火を消して来たから、お風呂はこれ以上熱くならないよ。あと、服脱ぐから、ちょっと待っててね?」
そう言って私は脱衣所で服を脱いだ。そして、脱いだ服をたたもうとして気づいてはいけないことに気づいてしまった。
そう! 服には大きな穴が10ヶ所ほど空いているのである!!
「うっ!? にゃぁあああーーーー!!!」




