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第4章 村を目指して 002 〜なぜか、廃村だった〜

 町に着いた。町って言うか村だった。なぜか人っ子1人いない。


「困った。クゥー、誰もいないよ」

「くぅーん」


 私は悲しかった。クゥーの鳴き声も元気がない。私に合わせてくれてるのかもしれない。


 私は辺りをキョロキョロ見渡してみる。家のあちこちが壊れて少し崩れている。明かりのついてる家は一軒もない。


 それにしても、この暗がりでよく見えるのは、この体のおかげなのかな?神様に感謝しておく。これで魔物と戦う羽目にならなければ万々歳なんだけどな〜。


「クゥー、誰かいそう?」


「くぅーん」と鳴き、クゥーはしゃがみ込んでしまう。疲れてしまったようだ。いじめられて怪我してたし、結構走ったり、歩いたりしたから疲れたよねー。私も疲れたよー。どこか屋根が壊れてなくて泊まれそうな所はっと。


 あっ、あそこの家が大きくて割としっかりしてそう!


「ほらっ、クゥー。あそこの大きい家に行ってみよう! 雨が降っても大丈夫かもしれないよ?」


 クゥーは、むくりと起き上がり私の後についてくる。


 私は辺りを見回し考えた。ひょっとして、ここは魔物に襲撃されて放棄されたのかもしれない。酷い壊れ方をしている家もあった。道に瓦礫(がれき)が結構落ちている。しばらく歩いて目的地に到着した。


「クゥー、やっと着いたね。お疲れ様。中でゆっくり休もうねー」


 壊れて風が入ってくる部屋もあったけど、この部屋なら天井もしっかりあるし、夜中に雨が降っても大丈夫だろう。


「クゥー、今日はこの部屋に泊まることにするよ」


 クゥーは、ぐったりしてる。お疲れのようだ。私は暖炉(だんろ)(まき)に魔法で火をつける。周りが少し明るくなった。


「クゥー、ご飯にするよ〜。と言ってもリンゴしかないんだけどね……」


 私は魔法の袋に手を突っ込んでリンゴ、リンゴ〜と念じてリンゴを取り出す。


 リンゴを上に向かって放り投げ、風の魔法を使う。無数の緑色の刃がリンゴを斬り刻み、リンゴの芯を除いて8等分にする。落ちて来たリンゴを両手で受け取り、クゥーの前に置いてあげる。


「クゥー食べて良いよ。これはクゥーの分」


 そして、私は魔法の袋に芯をしまいつつ、自分の分のリンゴを袋から取り出し、そのままリンゴを丸かじりする。それを見てから、クゥーは自分の目の前にある食べやすくなったリンゴを食べ始める。


「クゥーは本当に賢いね♪でも、次からは私が食べてからでなくても、食べちゃって良いんだからね」


「くぅ〜ん♪」とクゥーが鳴く。クゥーは美味しそうにリンゴを食べている。元気がなかったのは、どうやらお腹が空いてたからのようだ。


 私はリンゴをかじりながら部屋を見回す。


「何か水を入れるコップとか、お皿はないかな〜?んっ、あったあった」


 私は台所らしき所へ行き、流しに木の器を置く。蛇口はない。この世界の文明だと外の井戸とかから水を()んできて、ここで使うのかな。もしくは魔法で水を出すとかね。私は魔法を使うけど。


 私は流しの上に小さい小さい雲が現れ、その雲から水がシャワーのように出てくるのをイメージして、


「水よ、食器の汚れを洗い落として。シャワー(水)!」と唱えた。


 私はシャワーで木の器を軽く水洗いし、水を切ってクゥーのいる所へと戻る。


 クゥーの前に木の器を置き、水の魔法を使って器に水を注ぐ。それから、魔法の袋に手を突っ込んで水袋を取り出し、木の器の横に置いておく。


「クゥー、器の水、飲んでなくなっちゃったら、この袋の水を飲んで良いからね。」


 私は袋の口を縛ってる(ひも)(ゆる)めて、水袋から木の器に水を垂らすところをクゥーに見せる。


「くぅ〜ん♪」と鳴いてクゥーは器の水をぺろぺろ舐めている。


 多分、分かったよね?私は自分の分の水袋を魔法の袋から取り出し(のど)(うるお)す。


 クゥーが顔を上げ、私を不思議そうに見ている。


「なんで、わざわざ魔法の袋から取り出してるのかって?」


「がぅ」とクゥーは(うなず)いた。


「だって、人がいる所で、うっかり手元にリンゴや水袋を出現させちゃったら、怪しまれること請け合いだよ。だから、用心のため周りに人がいなくても、魔法の袋経由で物を出し入れしてるのです。分かったかな?」


 私は魔法の袋を持ち上げながら、クゥーにそう説明する。


「がぅ♪」とクゥーは明るい声で鳴く。まるで、分かったと言ってるかのように。それからクゥーは横になって体を丸めた。一休みするようだ。


 さて、(さび)しい夕ご飯も食べ終わったし、お風呂お風呂〜っと。んっ?


 この世界にお風呂は果たして存在するのだろうか?


「ないってことは、ないよね?」


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