第4章 村を目指して 001 〜もふもふが仲間になりました〜
「もふもふ〜、待ってよ〜」
雪狼が走った方向へと私は飛んで行った。随分飛んだ後、林の出口辺りで座り込んでいる雪狼を発見した。
「見ぃ〜つっけた! えいっ♪」
私は、荷物をほっぽって、もふもふに抱きついた。
「あなた、群れから出ちゃって良かったの?」
そう声を掛けながら、もふもふの頭を撫でる。もふもふは悲しげに「くぅ〜ん」と鳴く。
「もし、帰りたいなら一緒について行ってあげるけど、あなたはどうしたいのかな?」
私は、もと来た方向を指差してみる。
もふもふは起き上がって、私が指した方向とは逆方向へと数歩歩いて止まり、こちらを振り返って「くぅ〜ん」と鳴いた。
「そっか、群れを出るんだね。じゃあ、私と一緒に旅しよっか? それで、あちこちいろんな所を冒険しよう!」
「くぅ〜ん♪」
と少し嬉しそうな声で鳴いてくれた。私は、もふもふに抱きついた。
「よろしくね♪ あなたのことは何て呼ぼう?」
「くぅ〜?」
「クゥー? うん、じゃあクゥーにしよう!」
私はクゥーを指差して、「クゥー」
次に私を指差して、「ユ、キ、ネ」
またクゥーを指差して、「クゥー」
次に私を指差して、「ユ、キ、ネ」
とやってみた。通じたかな? 私はクゥーが進もうとしていた方へ1人飛んで行く。10mほど進んだ所で振り返って、
「クーーゥーーー!」と叫んでみた。
クゥーがこっちに向かって走って来た。私はしゃがんで頭をなでなでしてあげる。
「クゥーは賢いね〜。そう言えば、さっきも龍の杖と魔法の袋を頼んでもいないのに持って来てくれたもんね。偉い偉い♪」
私はクゥーに抱きつく。もふもふして、とても気持ちが良い。背中とかも撫でてみる。ふさふさしてて気持ちが良い。クゥーも撫でられて気持ち良さそうだ。
「さてとっ」
私は立ち上がる。空は夕焼けで赤く綺麗に染まっている。前に見た町に日が暮れる前に向かわなくては!
「クゥー、町を目指して出発するよ〜」
「くぅ〜ん♪」
「あっ、羽はしまっておかないと不味いよね」
羽をしまい、荷物を……。あり?
「荷物がない。さっき、ほっぽり投げちゃったんだ!」
私は羽を出してピューンと飛んで荷物を拾い、パタパタと飛んでクゥーのいる所まで戻った。地面に降りて羽をしまう。
さあ、今度こそ出発だ! 鎌を持った右手を空に掲げ、私は思った。鎌……。
「ねえ、クゥー。鎌持って町に行くのも不味いよね?」
「くぅーん」と鳴いて下を向いてしまう。
「これは魔法の袋にしまっちゃおう! でも、こんなでかいの入らないよね。どうしよう? それに、戦いになった時、いちいち袋から出すのも大変だし……。そうだっ♪」
メニュー画面の魔法の袋の中身の一覧の所に、鎌が移動するよう私は念じる。
持ってる鎌が消えた。メニュー画面を出して確認してみる。魔法の袋の中身の一覧に【雪音の鎌】というアイテム名が載っていた。タッチしてみると説明欄にこう書いてある。
【雪音の鎌】
雪音の血で作られた鎌。雪音の想いで無限に形を変える。切ったからといって相手に即死効果はないby神様。
むむむむむっ。死神の鎌のつもりで作ったのに即死効果はないらしい。やっぱり、あの神様は私に楽をさせてくれないようだ。
まあ、あんなに血が流れたのに今も無事に生きてるんだから、不死っぽい体にしてくれた神様に感謝はしてるけどね!
それにしても私の想いで形が変わるってことは、鎌から剣に形を変えることもできるのかな? 他の人間といる時に使う羽目になったら鎌でなく剣の形で使うようにしよう!
後はっと。私は上空に手の平を差し出し、
「鎌よ!」
と叫ぶ。手に鎌が出現する。叫ばなくても出るんだろうけど。まあ気分で何となく?
「うん。大成功だね、あはっ♪」
「くぅーん。くぅーん」
とクゥーが私の足元でクルクル私の周りを回ってる。
「あー、ごめんね。クゥー。暇だったよね?」
私はクゥーの頭を軽くぽんぽんと優しく叩く。私は鎌を消して、代わりに龍の杖を手に出現させた。
「人間の町に行くんだから、とりあえず魔法使いっぽく杖を持っておかないとね。何も持たずに無詠唱とかしてたら、村人に怪しまれちゃうもんね」
「がぅ♪」とクゥーが返事する。おぉー、くぅ〜ん以外の鳴き声を始めて聞いたよ!
「じゃあ行こっか?」
1人と1匹は移動を始めた。




