幕間 〜 一方、神様達は②〜
神様は映像の続きを再生させる。雪音がグレイシャの腕から氷のコップに血を注ぎ、青い血を飲み干す映像が流れた。
「ちょっ、ティア様、雪音が、雪音がグレイシャ様の血を飲んでいますーーー!?」
「んっ? あ〜、雪音は吸血鬼をベースにした魔族だから、血ぐらい飲んでもおかしくないだろう?」
「あー、そうだったんですネー (可哀相な雪音……。人間からドンドン遠ざかって……)。ところで、吸血鬼って首元に噛みついて血を吸うものでは?」
「こっちの世界でもそうさ。でも、ほら、人間の血をワイングラスに入れて飲んでいる吸血鬼だっているじゃないか。地球のマンガとかで!」
「ティア様って、ホント地球かぶれですよネー」
「褒め言葉と受け取っておこう。おっ、グレイシャがブリザードの魔法を使ったね。さっきはそれで視界を見えなくし雪音ちゃんを追い込んだけど、今度はどうかな?」
「それって、どういう……」
「見ていれば分かるさ」
雪音が急上昇し、ブリザードを抜け下方に盾を生み出した。
「さっき雪音ちゃんは、この展開で串刺しにされたんだ。でも、今回は」
リルはゴクリと息をのみ、画面を凝視する。
雪音が下方から迫り来る、普通であれば見えないであろう6本の氷の槍を赤い雷で迎撃した。砕けて落ちていく氷の槍の欠片は赤く燃えて途中で消えた。
「なっ、何で真っ白な所から突然出てきた氷の槍を即座に迎撃できるんですか!? しかも、6本全部っ! あと、何ですか、あの赤い雷はっ!?」
驚愕しているリルに神様はドヤ顔で解説する。
「グレイシャの血を飲んだことで、雪音ちゃんはグレイシャの使える技や魔法を使えるようになったのさ。グレイシャが自分の魔法で視界を閉ざされないように、雪音ちゃんも彼女のブリザードで視界を閉ざされることはなくなった」
神様は、映像を雪音が氷の槍を迎撃する前に戻し、一時停止させる。そして、学校の先生が黒板を指示棒でペシペシ叩くように、なぜか伊達メガネを掛けながら画面を棒でペシペシと叩き解説を続ける。
「この真っ白な状態は、雪音にとっては真っ白でないのさ。普通にグレイシャの姿がはっきり見えている。だから、グレイシャが氷の槍を発生させた段階で、雪音には氷の槍の位置が分かっていたのさ。そして、余裕を持って迎撃できたという訳さ」
「ティア様、吸血鬼に、相手の血を飲むと相手の能力をコピーできる能力なんてありましたっけ?」
ちびっ子天使は呆れている。
「作ったのさ! 面白いだろう? これはだね、地球の「地球のゲームか何かを参考にしたんですよね? 地球バカここに極まれりですね。でも、自分がブリザードを習得していても、敵がブリザードを使ったら、普通、視界は真っ白ですよね。おかしくないですか?」
「普通はね。グレイシャの血を飲んだ雪音は違う。グレイシャの血から、グレイシャの遺伝子情報が雪音の中に取り込まれた。グレイシャの行使する魔法は、グレイシャに従う。けれど、雪音には取り込んだグレイシャの遺伝子情報があるから、グレイシャの魔法は、雪音をグレイシャと誤認する。そういう能力を作ったんだ。彼女にだけ特別にね」
ちびっ子天使リルは非常に呆れている。そして、
「それで、クリアな視界で、余裕を持って迎撃できたんですねー。じゃあ、あの赤い雷の方は何なんですか? あれもティア様が作ったんですか?」
「あれは、私が作ってあげた想像を現実化する魔法を使って、雪音ちゃんが生み出したオリジナル魔法さ。雷が当たったものを燃やす魔法だろうね。ただ、普通の雷だって木に当たれば、木を燃やすこともあるのだから、そんなに変わったものじゃないだろう? 色が赤いだけで。あっ、でもそのうち雷が当たったら凍ってしまう魔法とかも作り出しそうだ。いやー面白い面白い」
楽しそうな神様に対して、リルは何とも言えないような顔をしている。
「ティア様〜、氷の槍の欠片燃えていたじゃないですか〜。氷を燃やすのは十分変わった魔法だと思いますよー、リルは。ハー。あの子って、人間希望だったんですよね? どんどん人間から、かけ離れて行ってるような気がします」
「大丈夫、大丈夫。羽しまって、魔法を使わなければ人間に見えるから」
「そう言う問題ではないと思うのですが」
「さあ、続きを見てみよう。リルも結末が気になるだろう?」
「そうですネ。気になって仕事に手がつかなそうですネー」
リルはもう疲れてしまった。今日はもうあがらせて貰いたいと心底思っている。
「では、再生するぞ」




