幕間 〜 一方、神様達は①〜
「あーーーはっはっはっはーー! ねえ、リル。見てみたまえ。凄いことになっているよ?」
神様はそう言って、机の上の小さな映像プレートを空中へと移動させた後、映像プレートを拡大させ、雪音の戦闘シーンをちびっ子天使リルに見せようとする。
「ティア様〜、仕事してたんじゃなかったんですか、もー。こっそり見ていたんですね、ダメじゃない…で……。えっ、あれが、あの子なんですか?なんか目の色が赤く怪しく光っていますし、ちょっ!? あの子、手に腕を持っているんですけど!?」
「あ〜、あれは氷の精霊グレイシャの腕だね〜」
「はっ!? えっ!? どどど、どうして、あの2人がそんなことになっているんですか!? グレイシャ様はティア様の眷属じゃないですか!」
神様は映像を一時停止させ、
「おぉ〜慌ててる慌ててる。リルは可愛いね〜」
「そんなことはどうでも良いのです!!」
「いや〜グレイシャの氷の槍がさ、さっき雪音ちゃんにグサグサッ!と刺さって、雪音ちゃん串刺しにされちゃったのさ。それで雪音ちゃん、自分の血が大量に流れているの見て、自分の死を強く意識しちゃったのだろうね。死に抗うために自己の持てる力を、彼女の場合は想像を現実化する魔法の力を、最大限に発揮した結果だろう。地面に流れ出た大量の血を鎌へと変換。さらにその鎌に炎の属性を付与。グレイシャの攻撃を華麗に回避しての鎌での攻撃で、グレイシャの腕を切り取ったのさ。いや〜、あの子は見ていて本当に面白い」
と饒舌に語る神様にリルはこめかみをピクピクさせながら、
「ど・う・し・て! 2人が戦うことになったのですか!! 雪音だって、ある意味ティア様の眷属ですよね! そもそもですね、グレイシャ様は魔族嫌いじゃないですか!? 魔族の体のあの子をどうしてグレイシャ様の住処があるエリアの近くで転生させたのですか!」
「リル〜、怒ると可愛い顔が台無しなのさ。」
「怒らせているのは神様です!!」
「わかった、わかった。雪音がいじめられていた雪狼を可哀相に思って群れから引き離そうとしたのが、2人が戦うことになった理由さ」
「あぁ、グレイシャ様は雪狼達を自分の子供のように思っておりますからね。雪狼を連れて行こうとする者がいれば、しかも、それが魔族だったら、戦うことになっても仕方ないかもしれませんね。それは分かりました。では、雪音をあのエリアに配置した理由は、どういったもので?」
「雪狼のボスがこないだ古傷が元で死んでしまっただろう? その子供が2匹いて、兄の方はそこそこ強くなってきてはいるが、雪狼母には遠く及ばない。弟の方は、うん、論外だ。グレイシャは雪狼母が死んでしまったことで意気消沈し、雪狼の群れも弱体化している」
「だから、奮起を促すため、あえて魔族嫌いのグレイシャ様のエリア付近に魔族の体を持つ雪音を配置した、ということなのですね?」
「うむ、良い刺激になると思ったのさ。」
「ティア様、刺激があり過ぎでございます。リルは頭がとても痛いです。」
「そうかい? 2人とも不死だから安心して続きを見ようじゃないか!」




