第3章 雪狼 007 〜どうして、こうなった?〜
私はクールビューティーの自爆に巻き込まれて凍ってる。目の前のクールビューティーも凍ってるのが見える。ちなみに私は、クールビューティーの後ろから彼女の両肩をガッチリつかんで凍ってる。全身凍ってるのに、なんで私、意識があるの? まあ体は動かせないんだけども……。
あっ、そっかぁ! これも固有技なんだ。封印って言ってたし、自分で封印の解除も可能ってことなんだろうね。焦って損しちゃったよ。
ふっふっふー、折角の大技も、あなたの血を飲んで、あなたの固有技を手に入れた私には無意味だったね。
私は封印を解除することにし、氷の柩アイスコフィン解除!!と私は強く念じた。
その瞬間、
ピキピキッ、ピキピキッ、パリーン!
と音を立てて氷の柩アイスコフィンが砕け、私達は解放された。あっけなく。意識があるまま解除できなかったら、どうしよー?と、ちょっとは思ったけど、無事、氷の牢獄から出ることができましたっと!
私は動けるようになったので「んっ、んっ。」と上半身を左右にひねったり、「ん〜♪」と背伸びをするなどストレッチをする。うん、ちゃんと動く。ほっとするね♪
その間クールビューティーは何をしているかと言うと、打ちひしがれていた。
「な、なぜじゃ? なぜ、氷の柩アイスコフィンが解除されたのじゃ?」
わなわなと震えているクールビューティー。
あっ、ガクッと膝をついて四つん這いになってしまった。
「命を懸けて皆を魔族から守ろうとしたのに、な、なんということじゃ……。わらわは、わらわは……」
クールビューティーの目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。
「皆のもの、済まぬのじゃ。わらわが、わらわが不甲斐ないばっかりに……」
クールビューティーは、おーいおぃおぃと泣いている。
困った。非常に困った。私が悪いの、これって? どうしよう? 先に攻撃してきたのは、そっちなのに。勝手に悲劇のヒロインにならないで欲しい。
私が途方にくれていると、白や茶色の狼達が集まって来た。落ちてる鎌を拾って私は後方へと引き下がる。
狼達はクールビューティーの周りを囲んで、ちょこんと座り込んだ。そして、「アォーン、アォーン」と鳴き始めた。すりすり自分の顔をクールビューティーにこすりつけたり、クールビューティーの顔をぺろぺろなめてるのもいる。みんなして彼女を慰めているようだ。
ひっじょーーーに、痛い。私の心が痛い。
そう思った時、足元に何か感触があったので見てみると、乾いた血で所々汚れてる白い狼がいた。口に龍の杖をくわえ、地面には魔法の袋が落ちている。
「もふもふ、これ持って来てくれたの? どうもありがとね♪」
私はしゃがんで龍の杖と魔法の袋を受け取り、雪狼の頭を撫でながら御礼を言う。
「くぅーん」と鳴いた後、雪狼はクールビューティーの方を眺めている。
どこか、その姿は切なげだ。きっと、この子はあの中に加わりたいんだろうけど、仲間に入れて貰えないんだろう。自然界って厳しいね。気に入らない。
狼達の群れの向こうから、他の大きい狼達と比べても大きい、そして、白い狼が出てきて、こちらを睨んで威嚇する。
「グルルルル」
こちらも、赤黒く怪しく光る鎌を右手で地面にドンッ!と置いて威嚇仕返す。魔力を込めたので鎌の赤いオーラが増し増しだ!
多分、この威嚇してる白いのが、足元の子の兄なのだろう。なんで仲良くできないんだろうね。折角の兄弟なのに。雪狼母は死んじゃったって話だから、この子はアイツにとって唯一の肉親のはずなのに。あっ!
足元の雪狼弟が「くぅ〜ん」とひと鳴きして後ろを向き、走って行ってしまった。
「ちょっ!? あ〜もう、ちょっと待って〜」
私は雪狼弟を追いかけようとしたが、
「その前にっと」
私はクールビューティーの方に振り返って叫ぶ。
「あの子は私が! 大神雪音が、しっかり面倒見るからーーー!! 大切に育てるから安心して下さーーーーい!!!」
さあ、あの子を追いかけよう! 龍の杖は魔法の袋にしまって、袋を肩に掛け、雪狼弟の走って行った方角へと空を飛んで追いかけた。すると後ろから、
「ワォオオーーーーーーーン!!」
とひときわ大きい鳴き声が聞こえた。その鳴き声がどこか寂しげに聞こえたのは私の気のせいだろうか………




