第10章 雪音ちゃんと村娘達 154 〜 雪音ちゃん、お店の下見に幽霊物件に行く!⑧〜
雪音ちゃんの強制転移魔法によってダンジョンにバラバラに飛ばされた4組のパーティーがダンジョンの大空洞に期せずして集結した!
そして、大空洞の5つの出入り口の、真上から見ればちょうど五芒星の各頂点の位置にある出入り口の下側4つから入って来て大空洞の中央へと集まったピッグマン達を出迎えるように、五芒星の頂点の上側に当たる場所がライトアップされた!
「よくここまで辿り着けたわね! と言ってあげたいところなんだけど、地獄が始まるのはここからよ!」
「ひいっ!? ドド、ドラゴンぅううううう!?」
「こ、この声はアンラキの家の窓から顔を出していたあの小娘の!? 貴様、ドラゴンの化身だったのか!?」
ピッグマンが、寝そべってこちらをだるそうに見ているレッドドラゴンの顔に向かって叫んだ!
「どこ見てるのよ!? こっちよ、こっち!!!」
「ピ、ピッグマン様! ドラゴンの背中に人が乗っています!」
「あーっ!? あの小娘の頭の上にちょこんと乗っているのは私に恥をかかせた大男が連れていたレッドドラゴンの幼体ではありませんか!?」
「あの小娘はダニエル達に追っ掛けさせた……。ダニエル達が殺られちまったのも当然か、クソッ!」
「小娘! お前が俺達をこのクソったれなダンジョンに強制転移させたのか!?」
ピッグマンがレッドドラゴンの背中に乗っている雪音ちゃんに向かって叫んだ!
「その通りだよ! 私のお店に火炎瓶沢山投げつけて燃やしてくれたお礼をしてあげるから覚悟しなさい!」
「キュッキュ〜♪」かくごしなさいなのー♪
左手を腰に当てた雪音ちゃんがピッグマン達に向かって右手を振り下ろし、人差し指をビシーっと突き付けた! 雪音ちゃんの頭に乗っかっているチビドラ形態のスカーレットちゃんもドラゴン指をビシーッと突き付けている!
「だから、あれ俺の店……」
「はいはい、アンラキさん、それはもう良いですから諦めてくださいねー?」
ボソッとつぶやくアンラキさんの肩にポンと手を置きながらラピが無慈悲なことを言う。
「キュルル〜? キュルル〜?」
しょんぼりしてるアンラキさんの顔をアルマジロドラゴンのアルがぺろぺろ舐めて慰め始めた。
ラピ達はスカーレットちゃんのママさんであるレッドドラゴンのプラーミャの後ろで出番を待っていた! 特に猫ちゃんザルガーニは、
「フハハハハハ!!! 我輩、久方ぶりに元の逞しい体に戻れて感動なのであ〜る! メトゥス・デ・ザルガーニの力を矮小な人間どもに思い知らせてくれるわ!」
とテンションMAXで早く暴れたくて暴れたくて仕方がない様子だった!
それもそのはず。普段は青いお目目のキジトラ柄の猫ちゃんの姿にされてしまっているザルガーニであるが、本来の姿は雷を操る黒山羊の頭と炎を操るライオンの頭、毒の牙を持った大蛇の尻尾が生えている双頭のキマイラなので、元の姿に戻れて興奮しまくりなのである。
「ザルガーニぃ〜? 勢い余って殺してしまってはダメだと分かっておりまして?」
そんな興奮しまくりのザルガーニにゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼のラスィヴィアが声を掛けた。
「なぜだ、ラスィヴィア? 我輩、うっかり殺してしまっても今回に限っては構わないと雪音様から聞いているのであるが?」
「雪音様は死んだ人間の魂を人形に込めて採石人形をお作りになりたいようですけれど、人形の体では疲労や痛みを感じないと私思うのですわぁ〜ん。雪音様のお店を燃やした不届き者達にそんなお仕置きは生ぬるいとザルガーニは思わないのかしらぁ〜ん?」
「ふむ、それもそうであるな。ならば、心臓と頭は狙わないようにするのであ〜る」
「ええ、それが良いと思いますわぁ〜ん。( 人形にされてしまっては吸血できなくてもったいないのですわぁ〜ん♪ 雪音様に不敬を働いた罪人の血だからラピ様も『好きなだけ吸っちゃって良いのですよー♪』と許可してくださいましたし、不味い血が多そうですから当たりの人間の血を味わう前にザルガーニに殺されてしまってはたまらないのですわぁ〜ん♪)」
ラスィヴィアは単にピッグマン商会の人間の血が吸いたいだけだった! ラスィヴィアは吸血鬼モード全開で、ゴスロリ服の大きく開いた背中の肌の部分からは吸血鬼の羽を生やし、指先の爪をシャキンと長く伸ばしてヤる気満々だった! 戦いを前にして興奮していたのはザルガーニだけではなかったのであった!
◇◆◇
「その通りだよ! 私のお店に火炎瓶沢山投げつけて燃やしてくれたお礼をしてあげるから覚悟しなさい!」
「キュッキュ〜♪」かくごしなさいなのー♪
「はあぁああああああ!? たかが家を燃やされたぐらいでここまでするのかよ!? 命は助けてやるって言ったじゃねえか!? 俺の仲間が何人殺られたと思ってんだ、この殺人鬼め!!!」
ピッグマンが自分勝手なことを叫んでいる!
「放火するような人間のクズ達がどうなろうと私の知ったことじゃないわ! さあ、お前達! 自分の富と快楽のために放火や人殺しをする人間のクズどもを蹂躙して来るのよ!」
私は指をパチンと鳴らして背後に控えていた双頭のキマイラのザルガーニ、ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィア、私の魔力で体が出来ているアンラキさんとそのペットであるアルマジロドラゴン・死霊使いのアル、ラピ&クゥーをピッグマン商会のクズどもを取り囲むように転移させた!
(ちなみに、ロウバストのおっちゃんやソフィー達は私のお店でお留守番だよ。ピッグマン商会の残党がやって来るかもしれないからね!)
◇◆◇
「う、うわぁああああ!? キ、キマイラだぁあああああ!?」
「さあ、我輩に掛かって来るのであ〜る!」
「に、逃げろぉーーー!?」
「ば、馬鹿野郎!? 魔物から視線を逸らすんじゃねぇええええ!」
ピッグマンは逃げ出した手下に向かって叫んだ!
「敵前逃亡するとは情けない奴なのであ〜る。逃げた者がどうなるか他の者達への見せしめにしてくれるわ!」
雷を操る黒山羊の頭と炎を操るライオンの頭を持つ双頭のキマイラ・ザルガーニはその巨躯に見合わぬ俊敏さで逃げゆくピッグマンの手下を走って追いかけ、その前方へと回り込んだ!
「ひぃいいいい!? 逃げて来たのにどうして俺の前に!?」
「逃げることは許さないのである!」
ザルガーニはライオンの頭を傾けてピッグマンの手下の体にガブっと噛み付いた!
「ぎゃあああああ!? 喰われる!? 喰われちまうぅうううう!?」
「さあ、元の場所へと戻るのであ〜る!」
ザルガーニはライオンの頭を横に振りかぶった後、口に咥えたピッグマンの手下をピッグマン達がいる方へと放り投げ、自分もそのあとを追った!
放り投げられた男は運良く仲間の体に当たって地面への直撃を免れた! 下敷きになった男にとっては運悪くではあるが……。
その様子を見て逃げられないと悟ったピッグマンの手下達はヤケクソ気味になって次々とザルガーニに向かって行く!
「ク、クソがぁああああ!? 殺れるもんなら殺ってみやがれぇええ!」
ピッグマンの手下がザルガーニのライオンの顔目掛けて剣を振り下ろした!
「遅いのである!」
「ぐあっ!? し、しまった!? 剣が!?」
ザルガーニは左前足を横に振って振り下ろされて来た剣を弾き飛ばした後、黒山羊の金眼をピカーンと光らせ、頭の左右に生えている巻き角から電撃を飛ばした!
「ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
「こ、こんちくしょー!」
「せめてその尻尾ぐらいは斬り落としてやるぜー!」
ピッグマンのまた別の手下達がザルガーニの背後からお尻に生えてる大蛇に向かって剣を掲げながら走って行く!
「シャーーーー!!!」
ザルガーニの尻尾に生えている大蛇が鎌首をもたげ口から酸を噴射しながら頭を左から右へと動かした!
「ぎゃああああ!? 目が、目がぁああああ!?」
「ぐぉおお!? 目が痛くて開けられ、ぎゃあ!?」
酸を顔に浴びて剣を地面に落とし両目を手で押さえていたピッグマンの手下達の肩や首に、ガブッ、ガブッとザルガーニのお尻に生えている大蛇が噛み付いてその牙から傷口に出血が止まらなくなる毒を流し込んだ!
そのため、ピッグマンの手下達の肩や首に開いた2つの穴からは血がピューピューと飛び出している!
「ちょっと、ザルガーニ!? 目をやっちゃったら、そこで選手退場になっちゃうでしょ!? 目だけハイヒール!」
雪音ちゃんがピッグマンの手下達の酸でダメージを負った目を治してあげた!
「め、目が痛くなくなった!? でも顔中が酸で爛れて痛ぇえええ!?」
「おお!? 目が見えるようになった!? ぎゃー!? 俺の首から血がピューピュー飛び出てるぅううううう!?」
「むぅ、雪音様がそのようにハイヒールで治せば問題などないではないか!?」
ザルガーニが自分の左右と前方にいるピッグマンとその手下達に向かって黒山羊の巻き角から電撃を飛ばして感電させたり、ライオンの口から炎を飛ばして牽制したりしながら雪音ちゃんに文句を言った!
「あっ、言われてみれば確かにそうかも? でも、もっとこー、絶望させるような感じで痛めつけて欲しいんだけどなぁ?」
「手足を噛みちぎったりするのが雪音様のご希望であるなら、そうするのであ〜る! グワァアーーー!!!」
ザルガーニはライオンの口から炎を吐くのをやめ、炎のブレス範囲外に逃れていたピッグマンの手下達の元へと右前足を振り上げながら大ジャンプして飛び掛かって1人の肩を太く硬い爪で斬り飛ばし、着地してすぐさま右前足を右後ろに引いてその勢いで左前足を左から右へと薙ぎ払って片腕を斬り飛ばされた男の体に叩きつけ、その隣にいた別の男共々、横に吹き飛ばした!
「ハンスー!? バルドー!? くそぉおおおおお!!」
タッタッタッタ! ブオン! カーン!
「ま、魔法の防御壁!? そんなの反則じゃ、ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?」
仲間をやられて怒りに任せて特攻し横からザルガーニの体に剣を振り下ろしたピッグマンの手下の攻撃は、雪音ちゃんがザルガーニに掛けた防御魔法によって防がれてしまった! そして、剣を弾かれ体勢が崩れているところにザルガーニの双頭の1つである黒山羊の巻き角から放たれた電撃攻撃を浴びて感電してしまう! しかし、男に襲いかかる攻撃はそれで終わらなかった!
「ガァアアアアアア!!!」
「がはっ!?」
ドゴーン!
ザルガーニが振り向きざまに放った右前足の叩きつけ攻撃を胸に受けた後、男は背中から地面に叩きつけられてしまった!
「クソッ!!! こんなことになるって分かっていたら、もっとしっかりとした武装をさせて来るんだった!! まともな装備さえあれば、もっとマシに戦えたはずなんだ!! ちょっと女どもを脅してアンラキの家と女どもと見世物にして金儲けするための雪狼とレッドドラゴンの幼体を手に入れる予定だったのに、なんだってこんなことに!?」
手下達に先に攻撃をさせてちょっと様子を見ようと思っていたピッグマンは手下達が双頭のキマイラになす術もなく次々とやられて行く様を見て混乱しテンパっていた!
◇◆◇
「おーーーーっほっほっほっほ! 遅い遅い遅いですわぁ〜ん!」
「ぎゃあ!?」
「ぐえっ!?」
「ぶはっ!?」
ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアは背中に生やした蝙蝠の羽を使った高速低空飛行でピッグマンの手下達を翻弄しながら指先から長く伸ばした爪で男達の皮膚を切り裂き、宙に鮮血を撒き散らしていた! そして、宙に飛び散った血の匂いを嗅ぎ分けて、これはと思う者の背後へと回り首筋にカプっと噛み付いた!
チュー。
「あぁあああ!? 血がぁああ、俺の血が吸われてるぅううう!? でも、背中にムニュウっと押し付けられた大きくて柔らかい感触が凄くて逃げたくても逃げられねぇえええええ!? あっ、なんか急にめまいが」
「ひいぃいいい!? きゅ、吸血鬼ぃいいいいい!?」
「お前、あの羽見て気付かなかったのかよ!? 今さらだろ!?」
「アイツ爆乳を背中に押し付けられてて良いなぁ〜」
「馬鹿か!? アイツ今、血を吸われてるんだぞ!?」
「そうだぜ、干からびる前に早く助けてやらねえと!」
ピッグマンの手下達はラスィヴィアに血を吸われている仲間を助けるべく、剣を振り上げてラスィヴィアの元へと駆けていく!
「ぷは〜♪ 匂いは良さそうな感じでしたのに味はいまいちだったのですわぁ〜ん。これはあなた達にお返しするのですわぁ〜」
ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアは自分に向かって剣を振り上げて迫って来る男達に向かって用済みになった男を蹴飛ばした!
「うわっとっと!?」
「うおっ!? だ、大丈夫か、サック!? 生きてるか!?」
「ヤバい」
「くっ!? 分かった、お前はそこで休んでろ!」
「あの爆乳マジヤバい。あれを押し付けてもらえるなら、また血を吸われても、ぐほっ!?」
「俺の心配を返しやがれ、クソが!」
血を吸われた男の鳩尾に1撃を加えると男は他の仲間同様、ラスィヴィアに向かって行った!
「先ほどの男にうっかり抱きついて血を吸ってしまったのが不味かったようなのですわぁ〜ん。はぁはぁと興奮しながらイヤらしい視線を私の胸に向けながら攻撃してくるなんて、これでは雪音様の『アイツらを痛い目に遭わせて絶望させて来るのよ!』と言うご命令を果たせないのですわぁ〜ん」
ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアは男達の攻撃をヒラリヒラリと躱しながらそう思い、また、今戦っている男達の血は匂いからして魅力を感じなかったこともあって、とっととここを切り上げて他の場所へと移ることにした!
「うぉおおおお! 俺にもそのデケぇ乳触らせろぉおおおお!!」
「誰がお前なんかに触らせるものですか!? これでも喰らうが良いですわ!!!」
ラスィヴィアは自分の胸へと伸ばされて来た腕を横にサッと避けて躱し、横を通り過ぎて行った腕を両手の指先から長く伸びている鋭利な爪で八つ裂きにした!
「ぎゃあああああああああ!? 俺の腕がぁああ、俺の腕がぁあああ!?」
「私の胸に下卑た視線を送って来た奴ら全員同じ目に遭わせて差し上げますわぁ〜ん!!」
ラスィヴィアは血で赤く染まった長い爪の1本を端から端までぺろりと舐めながら、周囲で絶句している男達に向けて宣告した!
「う、嘘だろ!?」
「そんな胸元が大きく開いてる服着て爆乳見せびらかしておいて、それはないんじゃないか!?」
「マジかよ、くそ!? なら、腕を斬り落とされる前にせめてその爆乳の生乳を拝んでやろうじゃねえか、なあ、お前ら!?」
「だな! 誰でも良いからあそこにしがみついて、爆乳の生乳をポロリさせるんだ! ポロリさせれば俺達の勝ちだ! 行くぞ、お前ら!」
「「「「おう!!!」」」」
「ポロリさせれば勝ちとか意味が分かりませんわぁああああああ!?」
ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアは左右前後から剣を捨てた男達が両手をゾンビのように前に伸ばして突撃して来るのを見て絶叫しながら蝙蝠の羽をバサッと大きく力強く動かして上空へと逃げた!
「クソッ!? 空を飛ぶなんてズルいだろう!?」
「そうだそうだ! 降りて来やがれ!」
「正々堂々と地上で勝負しろやー!!」
「つーか、スカート履いてるのになんでスカートの中にまで短いズボン?履いてんだよ!? 詐欺じゃねえか!?」
「ホントだぜ! 俺達の期待を裏切りやがって!」
地上からピッグマンの手下達が飛ばして来る野次を聞いてラスィヴィアはキレた!
「剣を捨てて私の胸をポロリさせようとした癖に何を正々堂々勝負するつもりなのかしらぁ〜ん!? 変態どもは死ねば良いのですわぁ〜ん!!」
ゴスロリ爆乳ツインテール吸血鬼ラスィヴィアは右手を掲げて洞窟の天井付近に小さい溶岩弾を無数に展開させた!
「おいおい、なんだよ、あれ!?」
「岩が燃えながら宙に浮いてんぞ!?」
「あ、あの数はやべえぞ!?」
「に、逃げろー!?」
「うわぁあああ!?」
「ま、待ってくれー!?」
「おーーーーっほっほっほっほ! 逃がしませんわぁ〜ん!! 溶岩弾雨!!!」
そう言ってラスィヴィアが掲げた右手を振り下ろすと洞窟の天井付近に無数に展開されていた小さい溶岩弾が逃げゆくピッグマンの手下達の肩や腕、背中やふくらはぎなどに降り注いだ!
「ぎゃあ!?」
「いでっ!? いででででで!?」
「がはっ!?」
「熱っ!? 痛っ!?」
「ぐあっ!?」
「あ、あっぢぃいいい!?」
「おーーーーっほっほっほっほ。私の胸やスカートの中をイヤらしい目で見ていた罰なのですわぁ〜ん♪ さあ、もっと泣きなさい! 叫びなさい! ちゃんと私が命じられたお仕事をしているとラピ様と雪音様に聞こえるように大きな声で!」
◇◆◇
「お、お前はアンラキ!? どうして生きている!? お前は俺とダニエルが確かに殺したはず!?」
アンラキを殺したトレバーが、雪音ちゃんが魔力で体を作ってあげたアンラキの姿 (アンラキの魂入り) を見て驚きの声をあげた!
「ああ、殺されちまったから、こうして化けて出て来てやったんだよ? 恨みを晴らしにな?」
「キュルルー!」
アンラキの隣で宙に浮いているアルマジロドラゴン・死霊使いのアルは、目の前にいる男がご主人様を殺したんだと分かってプンプン怒り出した!
「はっ! なら、もう一度殺してやるよ! お前ら、殺っちまえ!!」
「「「「「「へい!」」」」」」
タッタッタッタ。
「これでも喰らいな!」
トレバーの手下の1人がアンラキに向かって剣を振り下ろして来た!
「うおっ!?」
アンラキはその攻撃にビビりながらも剣に向かって右腕を掲げた!
ザクッ! ズブブブブブ!
剣はアンラキの右腕を左右真っ二つに斬り裂いて肘近くまで食い込んだ!
ブスッ! ブスッ!
アンラキに襲い掛かったのは1人ではなかった! 背後に回り込んだトレバーの手下達が左右斜め後ろからアンラキの体を剣で串刺しにしてしまった!
そして、まずアンラキの右腕を肘の部分まで剣で左右真っ二つにした男が勝ち誇るように口を開いた。
「馬鹿め! 素手で剣を防げるはずないだ、ろう……。ひぃいいい!? 血が出ないどころじゃねえ!? なんだよ、その腕の中身ぃいい!?」
アンラキの腕の切断面は黒色のゼリーみたいになっていた!
「(あ〜、びっくらこいた!? 腕がこんなになっちまったってぇのにまったく痛くねえぜ! じゃあ、恐怖を煽っていくとするか!) あん? この腕がどうしたって? 俺は化けて出て来たって言ったじゃねえか? 人間じゃなくなったから、こんなことも出来るようになったんだぜ?」
アンラキはそう言って肘まで左右真っ二つに斬られた腕を2匹の蛇に変え、自分の腕を斬り裂いた男の両目を蛇に襲わせた!
カランカラン!
「ぎゃあああああ!? 目が、目がぁあああああ!?」
男は剣を地面に落として両手で目を押さえて苦しみ出した! 2匹の蛇は棒立ち状態の男の体のあちこちにドンドン噛み付いていく!
「スティング!? くそ!? コイツなんで体を串刺しにされてんのに普通に動けるんだよ!? うわっ!? な、なんだこの髪!?」
「か、髪が体にまとわりついて!? 離せ、離しやがれぇえええ!?」
アンラキの左右斜め後ろから剣をアンラキの体に深々と突き刺した2人の男達の体にアンラキが長く伸ばした大量の髪の毛が絡みつき、2人を空中へと持ち上げながらその体を締め上げていく!
「ぐぁあああああああ!?」
「ぎゃー!? 首が絞まる、首が絞まるぅうううう!?」
男達は首に巻き付いたアンラキの髪の毛をなんとかしようと両手で首を引っ掻き始めた!
「スティングから離れろ、この蛇どもが!!」
アンラキの右肘からスティングに向かって伸びて攻撃を加えている2匹の蛇に向かって横から接近したトレバーの手下が剣を振り下ろし、2匹の蛇を切断した!
「キュルルルルルルウ!!!」
アルマジロドラゴン・死霊使いのアルがダンジョン内で死んだ人間の悪霊を召喚して地面に落ちた2匹の蛇に憑依させた! 地面に斬って落とされた2匹の蛇はアンラキから制御権が離れ、悪霊達のものとなった!
「キュルルルルルルウ!!!」
アルマジロドラゴン・死霊使いのアルが悪霊達に命令を下して、2匹の蛇をアンラキの腕から斬り落とした男を襲わせた!
「クソッ!? コイツら体から切り離したのにまだ動けるのかよ!? この!? この!?」
男は自分に飛び掛かって来た2匹の蛇に向かって剣を縦に横にと振って真っ二つに斬り裂いた! すると、体を2つにされた2匹の蛇達は、コマ切れにされてもそれぞれが別個体として自己修復して生きていけるプラナリアのように4匹になって復活した!
「キュルルルルルルウ!!!」
アルマジロドラゴン・死霊使いのアルが即座に悪霊を召喚し、増えた2匹の蛇に憑依させて男を襲うように命令した!
「クソ!? こんなんどうすれば良いんだよ!?」
男は剣をブンブン振り回して慌て始めた!
「ジョージ落ち着け! 分裂すればするほど体が小さくなっているだろう!? 小さければ、それほど脅威にならないはずだ! アレックス! エイデン! なにボサッとしてる!? アンラキを攻撃してアイツらを助け出せ!」
「「へ、へい!」」
トレバーが手下のジョージの元に駆け付け、一緒になって蛇達に攻撃を仕掛けながらアレックスとエイデンに指示を出し、アンラキの大量の髪の毛によって宙で体を締め上げられている仲間の救出に向かわせた!
混乱し恐怖に慄いているトレバー達の手下達とは打って変わって、アンラキは雪音ちゃんが与えてくれた魔法の力の凄さに感動し、また、自分の手で直接ピッグマン商会の連中に復讐することが出来て超良い笑顔を浮かべていた!
「いやぁ〜、この力ほんと凄えわ! 俺の店を奪おうとして俺を散々苦しめて来たアイツらの慌てふためく様が見れて嬉しいぜ! なっ、アル? お前もそう思うだろ?」
「キュルル〜♪ キュルッ!? キュルルー! キュルルー!」
アンラキと一緒になって喜んでいたアルマジロドラゴン・死霊使いのアルがトレバーの手下達が接近して来たのを見てアンラキに警告を発した!
「アル、ちゃんと気付いてるから大丈夫だって!」
「キュル〜?」ほんとう〜?って感じで首を可愛く傾げるアル!
「ア、アレッークス! は、早く助けてくれぇえええ!? ぐぇええ!?」
「エイデーン! このくそったれな髪を早く切っ、うぎゃー!? く、首がまた絞まるぅううう!?」
「リ、リッキー!? くそ、今助けてやるから待ってろよ!?」
「この野郎! ジムを離しやがれぇえええ!!」
「良いねぇ〜、その焦った顔! 散々嫌な思いをさせられたから、たまんないね! じゃあお次はお前達のその顔を苦痛に歪めてやるよ! 穿て闇の極光! ダークレイ!」
アンラキは左腕と再生された右腕の手の平をアレックスとエイデンと呼ばれた男達の太ももへと向けて紫色の光線を放った!
「なっ!? ぐぁああああ!?」
「ま、魔法だと!? ぎゃああ!?」
闇魔法の痛みだけを与える紫色の光線によってアレックスとエイデンは太ももを貫かれ、その激痛で立ち止まってしまった!
「今度のはもっと痛いぞ〜? 光線と違ってサイズが大きいからな! 幽霊の嘆きと苦しみをその身で味わってみろ! 闇の火の球!」
そう言ってアンラキが右手を左から右へと薙ぎ払うと、右手の通った軌跡からボッ、ボッ、ボッと紫色の火の玉が6つ出現し、その中心では大きな髑髏がケタケタと顎を鳴らして笑っていた!
「な、なんだよ、それ!? なんだよ、それー!?」
「呪いの炎なのか!? それに触れると呪われちまうのか!?」
アンラキが作り出した6つの闇の火の球を見て慌てまくるトレバーの手下達!
「キュルルルルルルウ!!!」
アルマジロドラゴン・死霊使いのアルが6体の悪霊を召喚してアンラキの作り出した6つの闇の火の球に憑依させた!
悪霊が憑依した6つの髑髏型の紫色の炎がケタケタ笑いながら弧を描いてアレックスとエイデンの元へと迫って来る!
「く、くそー!? 殺られてたまるかよ!? おっらぁあああ!!!」
ブオン! スカッ!
「あ、当たらない!? ぎゃあああああああ!? 焼ける!? 焼けるぅううううう!?」
当然、アレックスの剣による攻撃が闇の火の球に効くわけもなく、紫色の炎は剣の攻撃をすり抜けアレックスの顔に着弾した!
ちなみに、アレックスは顔に発生した痛みをやけどだと勘違いして痛がっているが、闇魔法は物理的ダメージを一切与えず痛みだけを与える魔法なので紫色の炎が当たっている限り痛みが引くことはなかったりする。
「ぐぁああああああ!? 熱い、熱いぃいいいいい!?」
アレックスの隣にいたエイデンもアレックス同様、闇の火の球が顔に着弾し絶叫していた! そして、6つあった闇の火の球は3つずつアレックスとエイデンの体へとまとわりついて、2人の体に苦痛を与え続けている!
「いや、もう最高だぜ! 毎日恐怖に怯えて暮らしていた俺の恨みがどれだけこもってるか分かったか!? 分かったよな!? お前らのせいで俺は寝不足にもなったんだぞ!」
「キュルルルル!!!」そうだよ、そうだよ!とアルもプンプン怒っている!
「アレックス、エイデン! 今助けてやるぞ! これでも喰らいやがれ!」
ジョージと一緒になって蛇を斬って斬って斬りまくって蛇を小さく分裂させてから粘着性のスライム爆弾で蛇達を地面にベチャっと張り付けにして無力化したトレバーが、アレックスとエイデンにまとわりついている髑髏型の紫色の炎を消すべく、何かにぶつかるとそこに大量の水を落とすアイテムを2個放り投げた!
コン! コン!
アイテムがアレックスとエイデンにぶつかると大量の水がバシャーンと2人の体に降り注いだ!
「やったか!?」
「ト、トレバーの兄貴、火が消えてないですぜ!?」
「んなの、見れば分かる!! クソッ、アイツらは後回しだ! 先にアンラキを殺るぞ!」
「で、ですが、奴の体を切ったら、また蛇になっちまうんじゃ!?」
「じゃあ、隣で浮いてるドラゴンを殺るぞ!」
「キュルルー!?」ブルブルブル。
「あん? 驚いて震えてんな? あっちのドラゴンは不死身じゃないのか? アンラキの野郎への嫌がらせだ! あのドラゴンだけはなんとしても殺るぞ!」
「へい!」
「アルを殺らせるかよ! 穿て闇の極光! ダークレイ!」
アンラキは左右の手の平をトレバーとジョージに向けて紫色の光線を放った! っが、それはあっさりと2人に避けられてしまった!
「あ、当たらない!? くそっ、避けんなよ!? ダークレイ! ダークレイ! ダークレイ!」
ビュン! ビュン! ビュン!
ヒョイッ、ヒョイッ、ヒョイッ!
「はっ! 撃つ方向に手を向けてりゃあ、どこに飛んで来るかなんざ丸分かりなんだよ!」
「そうやって右に左にと顔動かしてたら狙いなんて定まらないぜ? ケケケケケケ!」
トレバーとジョージが二手に分かれて左右から回り込むようにして迫って来たのでアンラキは焦りに焦った!
「ア、アル! 急いで地面の下に逃げるんだ!」
「キュルルー!?」ブルブルと首を横に振ってアンラキの提案を拒否するアル!
「俺の体はさっき見てたから知ってるだろ!? 不死身だから俺のことは気にすんな! 早く地面に潜ってくれ!」
「キュー」アルは残念そうな声を出して鳴いたあと、アンラキの指示に従ってトレバーが接近する前に地面をすり抜けて地面の中へと消えていった!
「クソがっ!? 地面の中に逃げやがった!? ちいっ、なら、アンラキ! てめえをもう1度ぶっ殺してやる! アンラキぃ〜? 体がさっきと比べて小さくなってるよなあ? 斬り落とされた右腕を再生したせいだろう? さっきの蛇と一緒でコマ切れにしてやるよ!」
「コマ切れにされてたまるかよ!? とりあえず、お前ら邪魔だ!」
アンラキは大量の髪の毛で宙に浮かせて締め上げていた2人を側まで迫って来ていたジョージに向かって放り投げた!
「く、くそ!? 避けられ、ぐはっ!?」
「ぎゃ!?」「ぐえっ!?」
アンラキは追い討ちを掛けるように左手を右から左へと薙ぎ払って6つの闇の火の球をジョージ達に向かって飛ばした後、すぐさま右手を左から右へと薙ぎ払って近付いて来ていたトレバーに飛ばした!
「クソッ!? 放物線を描いて飛んで来やがる奴か!?」
ヒョイ、ヒョイ、ボフ!
「ぐぁああああ!?」
ボフボフボフ!!!
「ぐぉおおおおおおおおおおお!?」
トレバーは飛んで来た始めの2つの闇の火の球を避けることに成功したが、3つ目の闇の火の球を頭にもろに喰らって足をとめてしまい、その後に飛んで来た3つの闇の火の球を立て続けにその身に喰らって絶叫を上げた!
「よっしゃー! 大当たりだぜい!!」
「ハァー、ハァー。ク、クソがぁあああああ!? アンラキの癖に俺に舐めた真似しくさってぇえええ!!!」
トレバーはまだ倒れていなかった!
「アレ喰らって、どうしてまだそんなに元気なんだよ!? 大人しく悶絶して倒れろよ!?」
「ぶっ殺す!!」
目が据わって怒り狂って突進して来るトレバーを見てアンラキは「ひいっ!?」と悲鳴を上げながら左右の手を薙ぎ払って無数の闇の火の球を飛ばした!
トレバーは顔面の前でクロスさせた両腕で闇の火の球をいくつも受けながら痛みを無視して走って来る!
アンラキは自分が痛みを感じることはないと分かっていても迫り来るトレバーに恐怖を感じていた! そして、間近に接近したトレバーが剣を振りかぶってアンラキに斬りかかった!
「死ね、アンラキ!」
「ひっ!?」
「キュルルルルルル!!!」
地面の中に逃げていたアルマジロドラゴン・死霊使いのアルがアンラキのピンチに我慢出来ず、地面から回転しながら物凄い勢いで飛び出した!
「うっぎゃあああああああああ!?」
トゲトゲボールと化したアルの回転攻撃がトレバーの股間に直撃し、トレバーは口から泡を吹いて背中から地面に倒れていった!
「キュルルルゥ♪ キュルル〜♪ キュルル〜♪」
アルマジロドラゴン・死霊使いのアルはエッヘンと胸を張った後、アンラキに褒めて褒めて〜と甘え出した!
「アルゥ〜、お前は俺の最高の相棒だぜ〜! ありがとうな、アル! もう絶対に1人にしないからな! いつまでも一緒だからな!」
「キュルルルゥ♪」
アンラキはアルを両手で掴んでグルグル回って喜んだ後、アルを抱きしめながら頬ずりをしたのであった!
◇◆◇
「それでは、あなた方のお相手は私とクゥーちゃんがしてあげるのですよー♪」
「がぅがぅ!」してあげるー!
ラピと雪狼のクゥーがシルクハット&片眼鏡男スネイルとその手下達に向かって挨拶の言葉を言うと、
「それはどうもご丁寧にありがとうございます、はい。ですが、油断は大敵なのでございます! はっ!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!!!
シルクハット&片眼鏡男スネイルがラピとクゥーの影に向かって無数の影ナイフを飛ばし、ラピ達の足の動きを影縫いで封じてしまった!
「あらあら聞いていた通り足が動かなくなってしまったのですよー」
「くぅーん、くぅーん」またやられちゃったー。くやしいよー。
「流石スネイル様!」
「スネイル様、すげー! 汚い手口を使ったらピカイチだぜ!」
「身動きを封じさせて頂きました。貴女様の綺麗なお肌に傷をつけたくはありませんので出来ましたら降参して私達をアヴァリードの町へ戻して頂けると助かります、はい」
シルクハット&片眼鏡男スネイルが喋っている間にスネイルの手下達はラピとクゥーの周囲を取り囲み始めた!
「残念ですけど、それは無理な相談ですねー♪」
ラピは影縫いで足を封じられても、ならず者達に周囲を取り囲まれても、うろたえることなく、にっこりと笑いながらシルクハット&片眼鏡男スネイルの提案を拒否した!
「魔法が使えるから動けなくても問題ないと?」
「いえいえ、動けないのは困りますからコレを使わせてもらいますねー♪」
そう言ってラピがおっきい胸の谷間に手を突っ込んだ!
スネイルとその手下達はラピにその行動をさせるべきではないはずだったのだが、つい鼻の下を伸ばしてラピの行動を許してしまった!
ラピは胸元から2つのサングラスを取り出し (正確に言えば胸の谷間に手を突っ込んで手元に天上界の倉庫から召喚したものをあたかも胸に挟んでいたものを取り出したかのように見せかけたのであるが)、その1つをクゥーに、もう1つを自分にスチャっと装着させた!
「それは色付きの、眼鏡? ふむ、なかなか趣味の良い眼鏡ですね、はい。是非どちらで仕入れたのかお聞きしたいところなのですが、今は後回しに致しましょう。こちらは私を入れて7人、そちらは1人と1匹」
「キュッキュウ♪」
雪音ちゃんの頭の上に乗っていたチビドラ形態のスカーレットちゃんがパタパタと飛んで来てラピの頭の上に乗っかった!
「ド、ドラゴンの幼体が加わったところで、そちらは1人と2匹! ドラゴンの幼体は自由に動けても貴女と雪狼は動けないはず! 私達が四方から襲えば7人のうち誰か1人くらいは貴女の命を奪うことだって可能なのですよ!?」
スネイルが口早にそう言うと、ラピは胸元から新たに取り出したサングラスをスカーレットちゃんに掛けてあげながらスネイルにこう答えた。
「確かに今は動けませんけどー、こうすれば動けちゃうんですよねー♪」
ラピは手に持っている龍の杖に魔力を込めて杖の龍の口が咥えている青い宝珠を強く光らせ、それを影ナイフが刺さっている自身の影の部分へと近付けた!
宝珠のまばゆい光によって影が消えるとラピの足は自由を取り戻し、影ナイフは影が消えたことで消滅した!
「なっ!? 光魔法が使えるのですか!? 貴女が聖女だったのですね!?」
驚くスネイルにラピは「私は聖女じゃないですよー?」と言いながら龍の杖の光る宝珠の部分を雪狼のクゥーの影ナイフが刺さっている影の部分へと近付け、クゥーの足の自由を取り戻してあげた。
「がぅがぅ♪」ラピさま、ありがとー♪
クゥーはラピにお礼を言いながらラピの足に頭をこすりつけた。
「どういたしましてなのですよー♪ ところで、みなさん、かかって来ないんですかー? かかって来ないなら、こちらから」
「い、一斉に突撃ー! 誰でも良いから、その女の首に剣を突きつけるのですー!」
「「「「「「はい!」」」」」」
シルクハット&片眼鏡男スネイルの掛け声によってラピ達を取り囲んでいたスネイルの手下達が一斉に距離を詰めて来た!
「キュッ!? ガォー!」
ラピの頭に乗っかっていたチビドラのスカーレットちゃんが宙に浮いてグルリと回転しながら口から炎のブレスを吐いた!
「ひゃー!?」
「あ、あちちちちち!?」
「こ、これじゃあ近付けないっす!?」
「グルグル回ってるから向こう向いた時に行けば良いんじゃね!?」
「お前、頭良いな!」
「よし、今だー!」
スカーレットちゃんが背を見せている時にスネイルの左右にいた2人の手下がラピへと近付こうとした!
「がぅ! がぉー!」そんなことさせないよー!
雪狼のクゥーが口から氷のブレスを吐いて2人を氷漬けにした!
「ひぃいいいい!? ガドとベルナルドが凍っちまった!?」
「ス、スネイル様、どうすれば!?」
「その威力!? 裏路地の時は手加減していたと言うのですか!?」
「がぅ!」
スネイルの言葉に『そうだよー!』と答えるクゥー!
「キュー!? キュッキュウ!」クゥーちゃんだけ活躍ずるーい! スカーエットも本気だすのー!
「あっ、ダメですよー、スカーレットちゃん! スカーレットちゃんが本気で火を吐いちゃったら、やけどで済みませんから本気を出すのはやめてくださいねー?」
そう言ってラピが本気を出そうとするスカーレットちゃんをヒョイと捕まえ胸の前で抱きかかえてしまった!
「キュー!? キュッキュウ! キュッキュウ!」ラピお姉ちゃん離してー! スカーエットも活躍したいのー!
スカーレットちゃんはラピの腕の中でジタバタ暴れている!
「じゃ、じゃあ火を吐く代わりに人化して蹴ったり殴ったりドロップキックをお見舞いしたりして活躍するのはどうですかー?」
ラピは冷や汗を垂らしながらスカーレットちゃんにそう提案してみた!
「キュー。キュッキュウ!」じゃー、そえで我慢するのー!
そう言ってスカーレットちゃんがチビドラ形態から人型形態へと姿を変えた! (ちなみに雪音ちゃんの魔法が掛かっているのでスカーレットちゃんは素っ裸ではなく服を着ているように周りからは見えている!)
「キュ〜〜〜、キュッ♪」
スカーレットちゃんはラピに地面に降ろしてもらった後、周囲を見渡して敵の数が多いラピの後方へと走り出した!
「なっ!?」
「ドド、ドラゴンが人間に変わった!?」
「すっげー!? ドラゴンの人化とか俺初めて見たっす!」
「ヤバい、ちっちゃくてモロ俺好みだ!?」
「馬鹿!? 見とれてる場合じゃ」
タッタッタッタッタ!
「てりゃー!」
「ぐえっ!?」
ヒューーン、ドガッ! ドスン! パラパラパラ……。
人化したスカーレットちゃんに見とれていたスネイルの手下の1人が猛ダッシュして来たスカーレットちゃんのドロップキックをお腹に受けて吹っ飛ばされ、壁に激突して落下した!
「キュウ♪ まず1匹倒したのー!」
「ち、ちっちゃいのに、なんて力だ!?」
「元が幼体とは言えドラゴンなんだから力が見た目通りな訳ないだろう!?」
「ちょ、どうするっすか!? どうすれば良いんすかスネイル様ー!?」
「と、とにかく突撃です! 突撃! 突撃ー!」
シルクハット&片眼鏡男スネイルはラピの左右斜め後方にいる3人の手下に向かって号令を掛けながら右手に持った4本のナイフをクゥーに向かって投げつけ、左手に持ったナイフをラピに向かって投げつけた! そして、それを追うようにスネイル自身もラピの元へと走っていく!
「クゥーちゃんは後ろの敵をお願いなのですー!」
ラピはクゥーにそう言いながら龍の杖を左から右へと薙ぎ払って4本の氷の槍を展開、それを飛ばして自分に向かって飛んで来た4本のナイフを迎撃した!
「がぅ!」まかせてー!
クゥーは自分に向かって飛んで来た4本のナイフを同数の氷の槍で即座に迎撃、すぐさま後ろを向いてスカーレットちゃんが向かった先とは逆側の敵に向かって駆け出した!
「雪狼抜きで私と対等に戦えると思っているのですか!? 舐められたものですね!」
両手にナイフを持ったスネイルがラピに襲い掛かって来た!
「魔法使いだから接近戦に弱いとでも思っているんですかー? 私、魔法使いになる前は生け贄の巫女だったんですよねー♪」
ラピは龍の杖を天上界の倉庫に収納して軽口を叩きながらスネイルのナイフ攻撃を舞を踊るようにヒラヒラと躱していく!
「くっ!? あ、当たらない!? 魔法使いの前が巫女だったと言う与太話はまったく意味が分かりませんが、そこは百歩譲ったとしても巫女なのにどうしてそんなに動けるのですか!?」
「あー、生け贄の巫女って言っても他の村や町の人には分からないですよねー? あなたにも分かるように言い直せば、私は踊り子さんで村の守り神様に捧げるための割と激しい踊りの練習を毎日していましたから、こういった身のこなしはお手のものなんですよねー♪」
ラピはスネイルの両手から繰り出されるナイフ攻撃を右に左に躱しながら手の掌外沿(空手チョップをする部分) から肘に向かって伸ばした氷の刃でスネイルの左右の腕の表皮を切りつけ、スネイルの右手のナイフの横薙ぎ攻撃が来たら上体を反らして躱し、そこから後方倒立回転片足立ちへと移行する際に振り上げた足の裏側に生やした氷の刃でスネイルの左もも、お腹、胸と順に切り裂き、最後には右腕の肘から先を斬り飛ばした!
シルクハット&片眼鏡男スネイルの、右腕を斬り落とされた部分からブシャー!と激しく血が噴き出した!
氷の刃の斬れ味が鋭すぎたため、一瞬遅れてからスネイルが絶叫し始める!
「ぎやああああああああ!? わ、私の腕がぁああああ!? うぉおおおおおお!?」
「あらあら、痛がってる場合じゃないと思いますよー? 次はその足を貰っちゃいますねー♪」
残った右腕の部分を掴んで絶叫している棒立ちのスネイルの両足を刈り取るようにラピは手元に魔法で作り出した紫色の大鎌を振り回した!
ブオン! ザシュ!
「ぎゃあああああああ!? 足が、足がぁあああああ!? あ、あれ? き、斬れてない?」
大鎌が自分の両足を切断したような痛みを感じたのに一向に両足がズルっとズレて地面に無様に倒れ伏すことがないことを不思議に思うスネイル!
スチャ!
そんなスネイルの隙をついてスネイルの背後に回ったラピが氷の大鎌の刃の部分をスネイルの首へと引っ掛けた!
「さ、もう良いですよねー? 降参してくれませんかー? 降参してくれませんと今度は右腕のように首を斬り落としちゃいますよー?」
「ひいっ!? わ、分かりましたです、はい! 降参致します! で、ですから、命だけは」
「えー? そんなあっさりと降参しちゃうんですかー? それはつまらないのですー」
「あなたは鬼ですか!? 降参すると言っているではありませんか!?」
「逆ギレですかー? 逆ギレは良くないと思うんですよねー? ってなことで首刈り決定なのですー♪」
「そんな滅茶苦茶な!?」
「それでは、さようならなのですよー♪」
「ま、待っ」
ザシュ!
ラピは容赦なく紫色の大鎌を後ろに引いた!
「ぎゃあ〜〜〜!?」
キュー、バタン!
シルクハット&片眼鏡男スネイルは闇魔法の紫色の大鎌が首を通過した際に生じた痛みによって首を切断されたと思って泡を吹いて気絶し地面に倒れてしまった!
「あらあら、ちゃんと氷の大鎌から物理的ダメージのない闇魔法の大鎌にチェンジしてあげたのに気付かなかったんですねー♪」
「がぅがぅ!」ラピさま、おわったよー!
「キュッキュウ♪ スカーエットも終わったのー! でも、弱っちくて、つまんなかったのー」しょんぼり。
「スカーレットちゃん、ここのダンジョンに出て来る魔物と人間の雑魚を比べてはダメだと思いますよー? でも、頑張ってくれたご褒美にアイスクリームをあげるのですよー♪ 今日はストロベリー味なのですー♪」
そう言ってラピは天上界の倉庫に保存しておいたストロベリーアイスクリームを召喚してスカーレットちゃんに差し出した!
「ストロベリー味!? うん、食べる食べるー♪」
「がぅ!? がぅがぅ!」ボクもたべたーい!
「心配しなくても、ちゃーんとクゥーちゃんにもあげますからねー?」
「がぅ♪」わーい♪
ラピはクゥーの分のストロベリーアイスクリームを召喚して地面に置いてあげ、最後に自分の分も召喚して3人で仲良く食べ始めた!
「グルルルルルゥ、のう、雪音よ? スカーレット達がアイスクリームを食べ始めたから、我もあそこに行ってスカーレットと一緒にアイスクリームを食べたいのだが?」
私を背中に乗せて地面で寝そべっているレッドドラゴンのプラーミャ (スカーレットちゃんのママさん) がボソっと呟いた。
「プラーミャはドラゴンの姿でアイツらをビビらせるってお仕事の最中でしょ? 全部終わってからね! そしたら、あとでいっぱいアイスクリームを食べさせてあげるから、あともう少しだけ我慢してくれるかな?」
「むぅ、我が火を吐いて終わらせてしまってはダメなのか? 見ててもつまらぬし、我だけアレもコレも我慢させられてストレスが溜まって仕方ないのだが……。そうだ雪音! あとで我と戦ってくれたら、もう少しだけ我慢してやっても良いぞ!」
「プラーミャ、私最近、闇魔法って言う透過効果があって痛みだけを相手に与えることが出来る魔法を覚えたんだけど、プラーミャは闇魔法に対抗する手段って持ってるの? それでも良いなら戦ってあげても」
「アイタタタタタタ。け、今朝方、雪音に頼まれたここの魔物のお肉集めの仕事の疲れが今頃になって出て来てしまったようなのだ! うむ、雪音とはまた是非とも戦いたいのであるが今日はやめておくことにするのだ! あー、雪音と戦えなくて残念だなー」
プラーミャは私から顔を逸らしてそんなことを言って来た!
まっ、ドラゴンの皮膚は硬くて普段痛みを感じる機会なんてまずないから痛みにすっごく弱いプラーミャが前言を翻すのも無理ないんだけどね?
「そうなんだ? 私もプラーミャと戦えなくて残念だよ。前にプラーミャにはひどく慌てさせられたから、お返ししてあげようと思ったのに」くすくす♪
「むぅ。雪音、我をからかっているであろう?」
プラーミャがドラゴンほっぺを膨らませて怒っている!
「そんなことないよ? あっ、全部終わったみたい」
私はザルガーニのライオン足に踏み付けられているピッグマンにプラーミャの背中の上から声を掛けることにした!




