第3章 雪狼 006 〜反撃開始だよ♪〜
グロ注意。欠損表現や血を飲む表現があります。気分を悪くされる方がいたら、ごめんなさい。
「さあ第2ラウンドを始めましょう? さっきは私が負けちゃったから、今度は私が勝つ番だよね? えへへ♪」
そう言って、雪音はクールビューティーに向かって滑空する。赤い瞳から溢れる赤く怪しい光を空中にたなびかせながら。
クールビューティーは両手を頭上から振り下ろし、地面に何かを叩きつける。
クールビューティーに接近した瞬間、地面からトゲトゲの氷の塊がクールビューティーの周り一面に吹き出した。
私は急上昇して氷のトゲトゲを回避しながら、赤黒く淡く光る鎌でクールビューティーの左腕を肩から切り取る。切った瞬間、切り口が燃え上がる。
「ぎゃぁあああーー!! 痛いのじゃ、熱いのじゃあ、なぜ燃えるのじゃぁああーーーー!!!」
苦痛に耐えながらクールビューティーは切られて燃えている部分に右手を当て、凍らせることによって火を消した。
「私もさっきすっごく痛かったよ? 悪いこと何にもしてないし、嘘も言ってないのに。酷いよね? なんで燃えるのかって? だって赤い武器で切ったんだから、燃えるのが普通だよね?」
私は切り取ったクールビューティーの腕を持っている。切り口から大量の青い血が流れている。じゅるり。もったいない。私はさっき大量に血を失っているから、補充しないと。
でも、さすがに、ここに直接口をつけるのは嫌なので、氷の魔法で氷のコップを作って、そこに青い血を注ぐ。氷属性の人だから血の色が青いのかな?
「お、お主は何を言っておるのじゃ! 赤い武器で切ったところで燃える訳ないではないか!!」
「なんでって言われても、赤い武器って言ったら火の属性だよね? あっ!」
青い血がコップに1杯分注がれたので、私は腕をクールビューティーに返してあげることにした。
「はい、腕は返してあげるね♪ 私って優しいよね?」
私は風の魔法で腕をクールビューティーの所まで運んであげる。
クールビューティーは腕を受け取り、「なんなのじゃ、なんなのじゃ!? あやつは一体何者なのじゃ!?」と言いながら、先程の凍らせた部分を解除して、腕をくっつけている。
多分あれでくっつくのかな? そう思いながら、私は氷のコップの青い血を目を閉じて恐る恐るひとなめしてみる。
「うん、神様の言った通り、味付きってホントだったんだね。なんかのジュースみたいな味がするよ。」
私は残りを一気に飲み干す。体に力が溢れてくる感じがする。これでクールビューティーの固有技が使えるようになるのかな? 固有技っていくつあるんだろう?
「ねえねえ、この勝負、私の勝ちだよね♪まだやるの? さっきは、ちょーっとカッとなっちゃって腕切っちゃったけど、ちゃんと返してあげたし、あなた不死なんだから死なないんでしょ? ここら辺で止めておいた方がお互いのためになると思うんだけど……」
「ここまでコケにされて止めるはずなかろう!!」
キレたクールビューティーに停戦交渉はすげなく却下された。
彼女が、また辺り一帯にブリザードを発生させる。でも、残念ながら私にそれはもう効かない。
なぜなら、さっきは真っ白になったはずの視界も、彼女の血を飲んだ今の私にはとてもクリアに見える。つまり、ブリザードを発生させる前と同じ景色なのだ。
ブリザードは彼女の固有技。彼女が自分で使った時に自分の技で自分の視界が悪くなることがないのと同じで、彼女と同じ固有技を手に入れた私にもブリザードの目くらましは効かないのだ。
そこで私は悪戯を思いついてしまった。さっきと同じことをして、クールビューティーを引っ掛けて意趣返しをしてあげようと!
「あはっ♪ そーれっと!」
私は急上昇してブリザードを抜け、空中で静止する。そして、鎌を振るスペースを開けて、その下方に盾を展開することをイメージし、
「下方に盾を2重で展開!」
とクールビューティーに聞こえるように大声で叫ぶ。
それを聞いたクールビューティーは、
「また空中に逃げるとは、あやつはアホなのか? 学習せんのか? これだから魔族は……。」
そう言って両手を空に掲げ、6本の氷の槍を大きく横一列に並べる。
「終わりなのじゃあーーーーー!!」
クールビューティーは勝利を確信して投擲した。
6本の氷の槍が私に向かって飛んでくる! しかし、今の私にその位置は丸わかりだ!!
「氷の槍をロックオーーーン!!」
と叫びながら、私は右手で持つ赤黒く淡く光る鎌で、横並びの6つの点に見える氷の槍を左から右へとなぞるように横薙ぎにする。鎌の軌跡が赤く怪しく光ってて綺麗だね。
さあ、やっちゃうよ〜♪
頭上に持っていった鎌を両手でクルクル回転させ、最後に鎌を両手で真下に向かって振り下ろしつつ叫ぶ。
「サンダーボルト6連撃ーーーーー!!!」
ズガン! ズガン! ズガン! ズガン! ズガン! ズガン!
なぜか赤い電撃が6本の氷の槍をあやまたず迎撃する。迎撃され、砕かれて落ちていく氷の槍の欠片は赤く燃えて途中で消えた。
それを見て驚愕するクールビューティー。
「ば、ばかな!? ありえないのじゃ!? なんじゃ、あの赤い雷は!! っは!?」
クールビューティーの首元に、赤黒く怪しく光る鎌の刃の部分が引っ掛けられている。
後ろに引けば首、落ちちゃうのかな? あはっ♪ えっ? そんなこと、もちろんやらないよ?
「い、いつの間に……」
「あなたが氷の槍を撃破されて惚けてる間にだよ? あはっ♪一度上手くいくと、次も上手くいくと思って、ついやっちゃうよね〜。私も経験あるよ〜(ゲームでの話だけど)」
私は今とても愉快な気分だ。ふとした出来心で始めた悪戯が成功して、クールビューティーに意趣返しができたからだ。
「ねえねえ、もう止めにしよーよー? さっき、この鎌で腕切れたし、このまま鎌を後ろに引くと、首、落ちちゃうんじゃないかな〜? 私、生まれ変わった初日に精霊殺しとかしたくないんだけど……」
「くっ! 魔族に雪狼は渡さん。こんな危険なヤツじゃったとは!」
うーん。酷い言われようだ。
「それで、どうするの? 退いてくれるなら…「こうするのじゃぁあああーーーー!! 氷の柩アイスコフィーーーーン!!!」
クールビューティーがそう言うと私達の足元から体が急速に凍っていく。
「なっ!? あなた、自爆して私を道連れにするつもりなの!?」
私はクールビューティーの両肩を掴んでグラグラ揺らす!!
「き、貴様のような危険なヤツは、わらわが命にも変えて、ここで封印してくれるわーーー!!!」
私、そんな酷いことしたっ!? 腕切り落としただけだよ? その腕も返したし! 逆に私なんて串刺しにされたんだよ、串刺し!! 死んじゃうかと思ったんだよ!? ちょっとくらい、やり返したって良いじゃない!?
あっ! そんなこと考えてるうちに首まで凍ってきた……。
「いーーやぁあああーーーーーーーーー!!!」
「みなのもの、すまんのじゃ。あとのことは任せたのじゃ」
そうして私達は頭まで凍ってしまった。




