第10章 雪音ちゃんと村娘達 151 〜 雪音ちゃん、お店の下見に幽霊物件に行く!⑤〜
「ロウバスト様。最終確認ですが、本当にあの幽霊物件を借りると言うことでよろしいんですね? お家賃が相場の5分の1になっているのは、それなりの理由があるんですよ?」
「ああ、問題ない。仮に明日契約を解除したいと申し出たとしても払った1ヶ月分の家賃は返って来ないってんだろ? もう聞き飽きたぜ……」
「いや〜、そう言って契約した翌日に『やっぱり契約をなかったことにしてくれ!』と返金を求めて飛び込んで来るお客様がこれまで何人もいたものですから念には念をと思いまして」
「だから、返金しないで済むようにしつこく確認を入れるってか?」
「いえ、返金は1度たりともしていないんで、ぼろ儲けなんですけどね? ウッシッシッシ」
「なら、良いだろうが! とっとと俺にサインさせやがれ!」
「では、こちらにサインを」
「ったく」
領営の不動産屋職員が渡して来た羽根ペンを受け取ったロウバストは、先程目を通した契約書にサラサラサラと自分の名前を書き込んだ後、腰に下げた魔法の袋から大銀貨1枚と銀貨2枚 (合計約12万円) を取り出し、テーブルの上に置いた。
「ご契約ありがとうございます、ロウバスト様。では、今月分のお家賃、確かに頂戴致しました。ウッシッシッシ」
「笑うのはせめて客が帰ってからにしろよ。じゃあ、契約書は貰ってくぞ? 待たせたな、クゥー? 帰るぞ」
「がぅ!」
大剣使いの大男ロウバストは契約書を丸めて魔法の袋に収納した後、側で控えていた雪狼のクゥーと一緒に不動産屋の外に出る。
「キューー! キュッキュウ! キュッキュウ!」スカーエットのこと、さっき呼んでくえなかった〜〜〜! クゥーちゃんだけ呼んでズル〜い!
雪音ちゃんの魔法で透明になってロウバストの頭にしがみついていたちびっ子赤竜のスカーレットちゃんがロウバストの頭をペチペチと叩き始めた!
「こら、スカーレット! 俺の頭を叩くんじゃねえ! お前は透明になってて他の奴らには見えねえんだから仕方ねえだろうが!」
「キューーー」ぶーーー。
スカーレットちゃんはドラゴンほっぺを膨らませてご機嫌斜めになっている。
「ちっ、仕方ねえな。帰りにクレープ買ってやるから、それで機嫌直してくれ……」
「キュウ!? キュッキュ〜♪」クエープ買ってくえるのー!? わーい♪
「がぅ!? がぅがぅ! がぅがぅ!」ボクもクレープほしー!
「あー、分かった分かった。クゥーにも買ってやるから」
「がぅ♪」やったー♪
「キュウ!? キュッキュウ! キュッキュウ!」えー!? クゥーちゃんだけズルいズルいズルーい!
スカーレットちゃんがロウバストの頭を再びペチペチと叩き始めた!
「だー!? スカーレットには2個買ってやるから、大人しくしててくれ!?」
「キュウ♪」なら、ゆるしてあげるのー♪
「がぅがぅ?」ボクのはー?
「1個で我慢してくれ……」
「くぅーん」しょんぼり。
それからロウバストは屋台で買ったクレープを雪狼のクゥーとちびっ子赤竜のスカーレットちゃんに渡し、イスにドカッと座って大ジョッキになみなみと注がれたエールをかっ食らった。クゥーは地面で、スカーレットちゃんはパタパタと翼を動かしながら空中で美味しそうにクレープを食べている。
ちなみに、透明になっているスカーレットちゃんが手に取った飲食物は透明になるように雪音ちゃんが魔法を掛けてあるので、空中にクレープが浮かんでいるのを見て誰かが叫ぶようなことは起きていない。
「ぷは〜。真っ昼間からエールを飲むのも悪かねえな。ゴクゴク。あん?」
妙な視線を感じたロウバストは視線だけでそれとなく周囲を探りながら愚痴をこぼす。
「ったく。もうピッグマン商会の奴らのお出ましかよ。ゴクゴク。( 幽霊騒動が数日経っても発生しないのを確認してから、ちょっかい出して来ると思ってたんだがなあ。) ゴクゴク、ぷはぁ〜。じゃあ、そろそろ行くぞ〜」
「がぅ♪」クレープおいしかった〜♪
「キュウ!?」スカーエット、まだ1個しか食べてないよー!?
1つ目のクレープを食べ終わったばかりのスカーレットちゃんが驚きの声を上げてロウバストに抗議した。
「空飛びながらでも食えるだろ? 置いてくぞ?」
「キュ〜〜〜!」おいてっちゃ、やだー!
スカーレットちゃんはテーブルの上のクレープを急いで手に取り、翼をパタパタと動かしながらロウバストのあとを追い掛け始めた。
◇◆◇
ロウバスト達が人通りのまったくない裏路地へ入っていくと、人相の悪い男達もまた裏路地へと入って来た。
「クゥー、何人ついて来てる?」
「がぅがぅ」うしろからは3人だよー。
「っ!? ムシャムシャ。ゴクン。キュッキュウ!」どうしてスカーエットに聞いてくれないのー!
「クレープを旨そうに食ってるから聞かなかったんだよ。こないだ食ってる時に話しかけたら俺に向かって火を吐いて来たの忘れたのか?」
「キュウ!? キュ〜、キュキュ〜」そ、そんなこと覚えてないも〜ん。
「がぉー」
そんな会話をしていると後ろからロウバスト達を尾行していた男達が声を掛けて来た!
「そこのおっさん、ちょいと待ちな!」
ロウバスト達が後ろに振り返ると、そこには3人の人相の悪い男達が横1列になって立っていた。中央の男がナイフでお手玉をしながらロウバストに話し掛けて来る。
「あんた、幽霊物件を格安で買ったんだろう? 痛い目に遭いたくなきゃあ、俺達に土地の権利書を寄越すんだな」
「へっへっへ。俺たちゃあ、泣く子も黙るピッグマン商会だぜ?」
「そうそう、素直に出すもん出した方が身のためだぜ?」
両端に立っている2人の男は相手をビビらせようと手に持ったナイフに舌を這わせている。
男達の発言を聞いたロウバストは、ピッグマン商会ってそこまで幅利かせてる商会だったかあ?と疑問に思いながら、チンピラどもの質問に答えてやることにした。
「あー、残念だが買ったんじゃなくて借りたんだ。幽霊騒動のせいで販売物件から賃貸物件に変わっちまったそうでな。まあ、買ってたとしても土地の権利書をお前さん達にくれてやるつもりは毛頭ないんだが」
「な、なんだって!?」
「おい、どうすんだよ!?」
「き、きっとアイツが嘘言ってるに違いねえ! ボコって権利書奪い取るぞ!」
ピッグマン商会の男達がナイフを片手に襲い掛かって来た!
「嘘じゃないんだがなあ?」
「キュッキュ〜? キュッキュ〜?」燃やして良〜い? 燃やして良〜い?
ちびっ子赤竜のスカーレットちゃんがうずうずしながらロウバストに火を吐いて良いか聞いて来る。
「加減できんのか? 一瞬で炭化させるのはナシだぞ?」
「キュウ♪」分かってるも〜ん♪
スカーレットちゃんは襲い掛かって来る3人の男達に向かって口から赤竜の灼熱息吹を吐いた!
「なっ!? いきなり空中から炎が!? ぎゃあああああ!?」
「熱い熱い熱い〜〜!? 誰か水、水を掛けてくれぇええ!?」
「うぉおおお!? 死ぬぅうう、焼け死んじまうぅううう!?」
3人の男達は頭髪を燃やされ絶叫しながら走り回っている!
( ちなみに、透明な魔物が人を襲うのは神様的にオッケーなため、また、ドラゴン形態時のスカーレットちゃんは魔物扱いなため、現在ドラゴン形態になっているスカーレットちゃんが火を吐いても透明化が解除されることはないのである。)
「キュ〜♪」上手に燃やせたの〜♪
「がぅがぅ?」火、けすー?
「クゥー、頼めるか?」
「がぅ♪」まかせてー♪
クゥーが口から雪狼の凍結息吹を吐いてチンピラ達の燃えてる頭髪の炎を消火した!
「火、火が消えた!?」
「た、助かった〜」へなへな。
「俺の髪が、俺の髪がアフロヘアーになっちまったぁああああ!? ぐべっ!?」
「ぎゃあ!?」
「がはっ!?」
頭髪を燃やしている火が消えたことに安心して気が抜けている3人の男達の隙を突いて、ロウバストは次々と男達の首に手刀を放ち、気絶させることに成功した!
「さて、コイツらの始末だが、どうしたもんかな?」
パチパチパチパチ。
「いやぁ〜、そのような大剣を背負っていて無詠唱で炎の魔法をお使いになるとは興味深いですねぇ〜。実に興味深い。古代の装飾品をお持ちのようだ。そして、そちらの狼は雪狼ですかな? いやぁ〜、どちらもピッグマン様への良い土産になりそうです、はい」
後方から聞こえる拍手と声に驚愕し、ガバッと慌てて後ろを振り返るロウバスト達! するとそこには、シルクハットを被り片眼鏡を掛けた痩身の男が立っていた!
「なっ!? さっきまで気配はしなかったはず!? どこから湧いて出やがった、てめえ!?」
「がぅがぅ!」
「キュッキュウ!」
「どこからと言われたら」
そう言うや否や、シルクハット&片眼鏡男がズブズブ土の中へと沈み込んで消えてしまった!
「なん、だと!?」
「がぅ!?」
「キュウ!?」
「影の中からとお答えさせていただきます、はい」
そして、今度はロウバスト達の背後の地面の影からシルクハット&片眼鏡男がぬうっと姿を現し、右手を胸に当ててお辞儀をしながらロウバストに声を掛けて来た!
「キュ〜〜〜!?」
スカーレットちゃんはびっくりして急上昇して上空へと逃げてしまった!
「くっ!?」
「がぅ!?」
ロウバストとクゥーは振り返りながら跳び退き、不可思議な技を使うシルクハット&片眼鏡男から距離を取ろうとすると、男は左右の手の指と指の間にナイフを手品のように出現させ、まずは右手の4本のナイフを、続いて左手の4本のナイフをロウバスト達に投げつけて来た!
ヒュンヒュンヒュンヒュン! ヒュンヒュンヒュンヒュン!
カカカカン! カン、カン、カン、カン!
飛んで来たナイフをロウバストは大剣でガードして防ぎ、クゥーは氷のつららで撃墜した!
「いきなり不意打ちしてくるたあ、いい度胸してんじゃ、っ!? あ、足が動かねえ!?」
「くぅーん、くぅーん」ボクも、うごけなーい。
「足元をよくご覧ください。影ナイフが地面に刺さっているでしょう?」
シルクハット&片眼鏡男の言葉を受けてロウバストとクゥーが地面を見てみると、自分達の影の足の部分に紫色のナイフが突き刺さっていた!
「ちっ。さっきのナイフは影縫いを仕込む隠れ蓑ってことか」
「いぐざくとりぃ〜でございます。前方のナイフに気を取られている間に上空から落とさせて頂きました。あぁ〜、ただ貴方と話がしたいだけですので炎の魔法を放つような真似はしないでくださいね? そちらの雪狼も氷のブレスは御法度ですよ? もし、そのような素振りが見られましたら」
そう言ってシルクハット&片眼鏡男が人差し指を1本立てて頭上を指差し、顔を上に向けたので、それに釣られるようにロウバストとクゥーが頭上を見上げると、屋根の上には4人の男がいて弓を構えてロウバストに狙いを定めていた!
「私の手下達が貴方に麻痺矢を放つことになるでしょう! さぁ〜、ビジネスの話をしようじゃあないですかぁ〜!」
実に愉快そうな笑顔を浮かべたシルクハット&片眼鏡男が両手を広げて、そんなことを言って来た。
「はん、脅しながら話がしたいだって? 馬鹿も休み休み言いやがれ!」
ロウバストは即座にしゃがんで、さっき雪音ちゃんに聖属性を付与してもらったナイフを、足元の地面に刺さっている自分とクゥーの足の動きを封じている2本の影属性のナイフに叩きつけて破壊した!
「くっ!? まさか聖属性のナイフを持っているとは!? お前達、やっておしまいなさい!」
シルクハット&片眼鏡男が手を振って号令をかけると、通りの両側にある建物の屋根の上に2人ずついた男達が一斉に弓を引いて麻痺矢を放とうとする!
しかしその前に、先ほど透明状態のまま上空に逃げていたちびっ子赤竜のスカーレットちゃんが、実は4人の男達の中心で火を吐く出番を今か今かと待ちわびていて、4人の男達を驚かせるため透明化を解除し、その姿を現した!
「なっ!?」
「ドド、ドラゴンの幼体!?」
「嘘だろ!?」
「ひ、ひぃいいいいいい!?」
いきなり現れたスカーレットちゃんの姿を目にして驚いている4人の男達に向かって、スカーレットちゃんはグルリと回転しながら赤竜の灼熱息吹を放った!
「ギャオーーー♪」燃えちゃえーーー♪
「「「「ぎゃあああああああああ!?」」」」
赤竜の灼熱息吹を浴びた4人の男達は屋根の上で転げ回って悲鳴をあげている!
「そ、そんな馬鹿なことが!?」
シルクハット&片眼鏡男は上空で起きている出来事を見てうろたえ、ヨロヨロと後ろに下がっていく。
「余所見してて良いのかよ!」
「くっ!?」
ロウバストは両手に持った2本のナイフで混乱状態のシルクハット&片眼鏡男に攻撃を仕掛けていく! シルクハット&片眼鏡男はロウバストの初撃を薄皮1枚切られながらも身を捻って何とか躱し、自身も両手にナイフを装備して応戦していった! っが、シルクハット&片眼鏡男は痩身、対するロウバストはがたいの良い大男。シルクハット&片眼鏡男はロウバストの膂力に勝てないため、ドンドン裏路地の奥へと追い詰められていく!
カンカン! キンキン! カッキン! カッキン!
「こ、この馬鹿力め!?」
「はん、こちとら普段は大剣使ってんだ。ナイフ使いの貧弱な筋肉とは違うんだよ! そろそろあとがないぞ? お得意の影魔法は使わないのか?」
カン! キン! カッキン!
「あれはそう使い勝手が良いものではないのですよ! 先程の影縫いで片がつくはずでしたのに一体どうしてこんなことに……。くっ!?」
「んだよ、アレでネタ切れだったのか? ったく、警戒して損したぜ。とっとと降参したらどうだ?」
カンカン! カッキン!
「このスネイル様に降参しろと!? 誰が降参などするものですか!」
自身をスネイルと名乗ったシルクハット&片眼鏡男はロウバストに背を向け、後方の壁へとダッシュした!
「逃がすかよ!?」
追いかけるロウバスト!
「とうっ!」
シルクハット&片眼鏡男スネイルは壁に向かって三角跳びをして宙でクルンと回転しながらロウバストを跳び越えた!
スタッ!
「今回の所は見逃して差し上げます! 次に会うときは容赦致しませんので覚悟し、いっ!?」
スネイルは地面に華麗に着地を決めた後、後ろを向いて走りながら捨て台詞を吐いてロウバストから逃げようとしていたのだが、突然足を掴まれたかのように地面に足を固定されてしまい、ビターン!と地面に勢いよく頭から倒れそうになっていた!
かと思えば、次の瞬間には前傾姿勢になっているスネイルの足元から氷の岩がドドーン!と噴出し、スネイルの体の足側を打ち上げてしまった!
「う、うわぁあ〜〜〜!?」
結果、シルクハット&片眼鏡男スネイルは、競泳選手がプールに飛び込むような感じで地面に頭から飛び込んだ! (と言うか落下した!)
「ぎゃあああああああああ!?」
スネイルは地面に顔面スライディングを決めてしまい、落ちてる石ころなどで傷ついた顔を両手で押さえ絶叫しながら地面でのたうち回っている!
「がう♪」しかえし、せいこー♪
その光景を見て雪狼のクゥーはえっへんと胸を張っている!
なぜなら、シルクハット&片眼鏡男スネイルの足に氷で作ったU字型の巨大又釘を撃ち込んで足を地面に縫い付け、その後、氷の岩を足元の地面から噴出させたのはクゥーの仕業だったからである!
ちなみに、ロウバストがスネイルと戦っている時、クゥーが何をしていたのかと言うと、
2人の戦いを見てロウバスト優勢だと思ったクゥーは屋根上に他の伏兵がいないかどうか確認するため、宙に氷の足場を作って屋根上へと移動して周囲を見渡し、先程の弓兵達以外の伏兵がいないのを確認してから、スカーレットちゃんに頭髪を燃やされて悲鳴をあげている弓兵達の火を氷のブレスで消火し、火傷を治癒魔法で治してあげていたりする。( もちろん、人命救助のためなんかではなく、無償労働力ゲットのためである。)
そして、弓兵達の監視をスカーレットちゃんに任せて再び地上へと舞い戻ると、シルクハット&片眼鏡男が後ろを向いて自分の方に向かって走って来ているから、クゥーはさっき動きを封じられた仕返しをしようと思ってシルクハット&片眼鏡男の足に氷で作ったU字型の巨大又釘を撃ち込んで足を地面に縫い付けると言う行動に出たのであった!
◇◆◇
「キュッキュー」うわぁ、痛そうなのー。
4人の弓兵達を逃がさないように屋根上に残っていたスカーレットちゃんは地上で顔面スライディングをしているシルクハット&片眼鏡男スネイルを見て顔を引きつらせていた。
「すいません。すいません。命令だったんです。仕方なかったんです」
「殺さないで殺さないで殺さないで」ガクガクぶるぶる。
「いや、俺、ホント不味いから!? 食ったら絶対にお腹壊すから食べないでくれぇええ!?」
「全部、下にいる偉そうなカマ野郎のせいなんだって! ほんとマジで! だから」
「キューーーーーーー」ピーピー、すっごくうるさいのー。クゥーちゃん、なんで氷漬けにしちゃわなかったのー?
弓兵達の命乞いを耳障りに思ったスカーレットちゃんは口から赤竜の灼熱息吹を軽く吐いて威嚇することにした!
「ぎゃおー!」
「「「「ひぃいいいいい!?」」」」
すると、弓兵達は頭を抱え込んで丸くなり、静かになった!
「キュ〜♪」静かになったのー♪
◇◆◇
「ぎゃあああああああああ!?」
シルクハット&片眼鏡男スネイルは地面に顔面スライディングを決めてしまい、落ちてる石ころなどで傷ついた顔を両手で押さえ絶叫しながら地面でのたうち回っている!
「がぅ♪」しかえし、せいこー♪
「よくやった、クゥー! 今のうちにブレス吐いて凍らせちまえ!」
「がぅ! がぉ〜〜〜!!」はーい!
ロウバストの指示に従ってクゥーが口から雪狼の凍結息吹を吐き続けると、地面でのたうち回っているシルクハット&片眼鏡男スネイルの体が徐々に凍っていく!
「ぬぅおおおおお!? こ、このままでは氷漬けにされてしまいます!? かくなる上は!」
スネイルは体の4分の1ほどを氷漬けにされながらも影魔法を行使して地面に出来た自身の影の中へと大の字になって沈み込んで行った!
「逃がすかよ!?」
ロウバストが両手にそれぞれ持ったナイフを沈みゆくスネイルの体目掛けて投擲した!
ガッ! ガッ!
けれど、大の字状態だったスネイルの体はナイフがその体に届く前に地面の中へと消えてしまい、投擲されたナイフは地面にただ突き刺さっただけに終わってしまった!
「ちっ、まだ影魔法を使う魔力が残ってたんじゃねえか!? だが、詠唱も唱えず発動できたってこたあ、アイツも古代の装備品持ちってことか? 影魔法を使えるようになるってえのは厄介だが、使用可能回数が少なくて助かったぜ」
「くぅーん」にげられちゃったー……。
クゥーは尻尾をだらんと垂らし、しょんぼりしている。そんなクゥーを元気づけるように、ロウバストがクゥーの頭の上に手を置いて撫でながら励ましの言葉を掛ける。
「まあ気にすんな、クゥー。アイツには逃げられちまったが、アイツの手下どもを7人も片付けたんだ。全体で見りゃあ、こっちの勝ちだと思わねえか?」
「くぅーん」にげられちゃったー……。
「下っ端には興味ないって感じだな……。まあ、ピッグマン商会の奴らはアンラキの家をどうしても手に入れたいようだから、アンラキの家で待ってりゃあ、また戦えるんじゃねえか?」
「がぅがぅ!」つぎはにがさないように、やっつけるー!
「キュッキュ〜〜〜!」スカーエット、もう飽きた〜! いつまで見てえば良いの〜〜!
「ひぇ〜〜〜!? 火をこっちに向けて吐かないでくれぇ〜!?」
「ぎゃー!? 熱い、熱いぃいいい!?」
「馬鹿、こっち来んじゃねえよ!? 俺まで燃やされちまうじゃねえか!?」
「おい、そこのおっさん!? このドラゴンなんとかしてくれよ!? あんたが飼い主なんだろう!?」
屋根の上ではスカーレットちゃんがスネイルの手下達の監視に飽きて荒ぶっていた!
「ったく仕方ねえなあ。スカーレット! 帰りにもう1個クレープ買ってやるからブレス吐くのは止めてやれ!」
「キュウ!? キュッキュ〜♪」本当!? わーい♪
「「「た、助かった〜」」」
「熱い、熱い、早く火を消してくれ〜〜〜!?」
「あー、クゥー? とりあえずアイツら全員氷漬けにして天上界の倉庫とやらに収納して来てくれるか?」
「くぅーん」
とクゥーは悲しそうに鳴いたあと、ロウバストの目をジーっと見つめ、「ボクにはクレープないのー?」と目で訴えている。
「ちゃんとお前の分も買ってやるから、そんな目で俺のことを見ないでくれ……」
「がぅ!」わーい♪ じゃー、いってくるー!
「ああ、頼んだぞ? 降りて来たら、下で気絶してる奴らの収納もよろしくな?」
「がぅ!」まかせてー!
クゥーが宙に氷の足場を作り出して屋根上へと駆け上がって行くと、代わりに屋根上からスカーレットちゃんが降りて来てロウバストの頭に後ろから抱きついた!
「キュッキュウ〜♪」早くクエープ買いに行こ〜♪ クエープ、クエープ〜♪
「クゥーが戻って来てからな?」
「キュー」えー?
スカーレットちゃんが不満の鳴き声をあげていると、屋根上からスネイルの手下達の慌てふためく声が聞こえて来た!
「お、おい!? さっきみたいに火を消しに来てくれたんじゃないのかよ!? どうしてケビンを氷漬けにしちまうんだよぉおお!?」
「ひょっとして氷漬けにして俺達をあとで食べる気なんじゃ!?」
「マ、マジかよ!? に、逃げろー!」
「がぅ!?」どうしてにげるのー!? ボク、たべないよー!?
クゥーは逃げてく3人を追い掛けた! 3人のうち1人は足を滑らせてコケてくれたから、クゥーはコケた弓兵の両手両足と首の上に氷で作ったU字型の巨大又釘を撃ち込んで屋根に縫い止め、残りの弓兵達の追跡を続行した!
◇◆◇
一方、下で弓兵達のセリフを聞いていたロウバストはちびっ子赤竜のスカーレットちゃんにクゥーの援護に向かうよう指示を出していた。
「おい、スカーレット!? お前が上で睨みを利かせてなかったから、アイツら逃げ出しちまったみたいだぞ!? 早くお前も行ってクゥーを助けて来い! 全員捕まえられなかったらクレープは無しだ!」
「キュー!? キューーー!」そんなー!? 行って来るーーー!
ロウバストのクレープ無し発言にスカーレットちゃんは超慌てて猛スピードで上空へと飛翔し、逃げゆく弓兵達を追い掛けた!
そして、1分も経たないうちに残りの2人の弓兵もクゥーとスカーレットちゃんによって確保され、クゥーによってシルクハット&片眼鏡男スネイルの手下7人は全員氷漬けにされて天上界の倉庫へと収納されることになり、クゥーとスカーレットちゃんは無事、ロウバストから活躍したご褒美としてクレープを2個ずつ買ってもらうことができたのでした。
「キュッキュ〜♪」クゥーちゃん、クエープ美味しいね〜♪
「がぅ♪」うん、おいし〜♪




