第10章 雪音ちゃんと村娘達 149 〜 雪音ちゃん、お店の下見に幽霊物件に行く!③〜
私は幽霊物件の所有者だったアンラキさんの日記の上に手を置いて日記に残ってる残留思念から情報を得ようと思ったのに、なぜかこの部屋で起きた事件の出来事が私の脳内で立体映像で再生されちゃった……。これ、サイコメトリーじゃなくて過去視じゃん。私の想像魔法、ちゃんと仕事してよって思ったけど、これはこれで襲撃者達の顔は拝めたし、アルの正体も分かったから良しとしておこう。ちょっと、いや、かなり気分悪いけど……。
なんで気分が悪いかって? ムカついた襲撃者達に魔法ぶっ放したけど、あくまで過去の出来事が脳内で再生されてるだけだから私の魔法は襲撃者達の体をすり抜けちゃって、アンラキさんがやられてる所をただ見ていることしか出来なかったからだよ! アイツら、私が営業してる店に乗り込んで来たらタダじゃおかないんだから!!
「雪音ちゃんがプンプン怒っているのですー。きっと日記に書いてあった以上に酷い過去を魔法で日記から読み取っちゃったんですねー。これでも舐めて機嫌を直してくださいねー♪」
そう言ってラピが収納魔法で取り出した赤い飴を私の唇に押し当てて来た。
「はむ。もう、ラピ? 私、ちっちゃい子供じゃないんだから飴なんか舐めたぐらいで……。( あっ!? これ、ラピの血で作った飴じゃん!? んぅ〜、美味しい〜♪)」
「うふふ♪ 機嫌が直ったみたいで良かったのですよー♪ ぱく♪」
ラピはそう言ったあと、もう1つ赤い飴玉 ( こっちは雪音ちゃんの血で作った物 ) を手元に召喚して自分の口に放り込んで舐め始めた。
「飴玉1つで機嫌を直してしまう雪音様、実にお可愛いです♪」
「ご主人様、かっわい〜♪」
「( 雪音様が飴玉1つであんなに幸せそうなお顔を……。はっ!? もしや、あの飴玉はラピ様の血から出来ているのでは!?) ラピ様、私も雪音様と同じ物が欲しいのですわぁ〜ん!」
「ラスィヴィアさんはさっきロウバストさんに失礼なことを言ったので罰としてお預けなのですー」
「そ、そんなぁ〜!?」
「ぷぷぷ。ラスィヴィアっち、たかが飴玉1つ貰えなかったくらいで、そんなにがっかりしなくても良いじゃん!」
爆乳ゴスロリツインテール吸血鬼ラスィヴィアの肩をバンバン叩きながら、褐色肌で八重歯がチャーミングなキアラがそんなことを言うと、
「たかが飴玉1つですってぇ〜!?」
振り向いたラスィヴィアがキアラをギロリと睨みつけた。
「ちょっ!? 飴玉1つでそんなにキレないでよ!? メ、メリッサちん、助けて〜!?」
「キアラ、あたしを盾にしないでよぉ!?」
キアラは金髪巨乳エルフのメリッサの後ろへと逃げてメリッサの両肩に手を置き、メリッサの体をラスィヴィアの方へと向けた。
「おい、お前ら、こんな狭い所で暴れてんじゃねえぞ? っで、雪音は魔法で日記から何を読み取ったんだ?」
ロウバストのおっちゃんが私に聞いて来た。私は飴玉を舐めながらロウのおっちゃんの質問に答えてあげる。
「日記からって言うより、この部屋からかな? 書斎で当時何があったか分かったよ。日記の書き殴った2行はピッグマン商会の人間が1階の窓を壊して侵入して来たからアンラキさんが慌てて書いた物で、アルの正体も分かったよ」
「お前の魔法は相変わらずデタラメだな……」
「雪音様はそのような魔法もお使いになることが出来るのですね! 素晴らしいです!」
「雪音っち、それでアルの正体は!? アルはアンラキの妻で復讐に燃えた果ての犯行が今回の幽霊騒動だったんでしょ!?」
「キアラ、私を盾にするのやめてよぉ〜!? 目が回っちゃうよぉ〜!?」
キアラはメリッサを盾にして右に左にと回転させながらラスィヴィアから逃げ回っている!
「えっと、アルはアンラキさんの奥さんじゃなくて人間でもなかったよ」
「嘘ー!? 絶対、通い妻の復讐による犯行だと思ったのに!?」
「ふっふっふ。捕まえましたわぁ〜ん!」
「あっ!?」
私の話を聞いて自分の推理が外れてショックを受けていたキアラは逃げ回る足を止めてしまったのでラスィヴィアに捕まってしまった!
「さぁ〜て、どうしてくれましょうかしらぁ〜ん? ぺろり♪」
「ちょ、待って!? なんで舌舐めずりしてるの!? メ、メリッサちん助け」
「きゅ〜」
巨乳エルフのメリッサはキアラにコマのように回転させられて目を回していた!
「ラスィヴィアさ〜ん? 吸っちゃったりしたらダメですからねー?」
「吸う!? 吸うって何を!? ( ディープキスして舌を吸うってこと!?) そ、そんなことさせないから!? 私のファーストキスはメリッサちん用に取っておくんだから〜!」
「誰もお前の唇を奪うだなんて言っておりませんわぁ〜ん。でも、良いこと聞きましたわぁ〜ん♪ お前はそこのエルフ娘とキスが」
「わぁあああああ!? いい、今のナシ、今のナシだからぁああああ!? 聞かなかったことにしてぇええええええ!!!」
「私のお願いごとを1つ聞いてくださるのでしたら、考えてあげてもよろしいですわぁ〜ん♪」
吸血鬼のラスィヴィアが、うっかり自分の願望を口にしちゃってパニックになってるキアラを脅してキアラの血をゲットしようとすると、
「てい♪」
とラピがラスィヴィアの脳天にチョップを入れてラスィヴィアを一瞬で氷漬けにしたことで、ラスィヴィアの“キアラの厚意から血を分けてもらおう作戦”は失敗に終わってしまうのであった……。
「こんなことになるなら、さっきラスィヴィアさんに飴玉をあげておけば良かったですねー。キアラさんの想いはメリッサさんに内緒にしておいてあげますから、心配しないでくださいねー♪」
「うぅ〜、ラピっち、ありがと〜。でも、ラスィヴィアっちが……」
「それは私の魔法で今の記憶消しておくから心配しないでも良いよ。はい、記憶消去しゅうりょー♪」
「雪音っち、ありがと〜。あと……」
キアラがロウのおっちゃんを見て心配そうにしてるから、私はキアラを安心させる言葉を掛けてあげた。
「おっちゃんなら口が堅いから大丈夫だよ?」
「でも、『メリッサに黙ってて欲しかったら、分かるよな?』とか言って迫って来たら」
「誰が、んなことするか!? 俺はニア一筋だ! 大体、普段あれだけメリッサにベタベタしてる癖に何をそんなに恥ずかしがってるんだか」
「あう!? だ、だって〜」
キアラが顔を真っ赤にして恥ずかしがっている! 褐色肌だから、そこまで目立たないけど。
「おい、雪音。とりあえず話が進まんから俺からさっきの記憶消しといてくれ。変な疑い持たれてちゃ敵わんからな」
「お、おっさん。あ、ありが、と」
「気にすんな。俺にとっちゃ、どうでも良いことだからな」
「あはは。じゃ、消しとくね? えぃっと♪」
私はロウのおっちゃんからキアラのキス発言の記憶を消しておいた。
「あー、なんの話をしてたんだったか?」
「アルが人間じゃなかったって話だよ」
「雪音様、人間でなかったなら動物だと思うのですが、この建物内で動物の姿は見当たりませんでした。アンラキさんが外に逃がしたのでしょうか?」
「がぅがぅ」ちかにもいなかったよー。
「キュッキュウ」うん、いなかったのー。
「鼻が利く雪狼ちゃんとちびっ子赤竜ちゃんが言うんですから、きっとソフィーさんの言う通り、アルちゃんは外に逃がされたんでしょうねー」
「建物の外と言えば外なんだけど、多分すぐ近くにいると思うよ。ちょっと会いに行ってみようか?」
「って、雪音ちゃん、そっちは地下へ行く階段がある方ですよー?」
「良いの良いの。地下に行ってからのお楽しみだよ♪」
◇◆◇
氷漬けから解放された吸血鬼ラスィヴィアと気絶から復活したエルフのメリッサを伴い、私達は階段を降りて地下室へと足を踏み入れた。
「うわぁ〜、あちこち物がいっぱい積んであるね!」
「げっ!? 天井に蜘蛛の巣張ってるじゃん!? うぅ〜、行きたくないよぉ〜」
「だ、大丈夫だってキアラ! もし、蜘蛛がキアラの服とかに入っちゃったら、あたしが取ってあげるよ!」
「えっ、ホント、メリッサちん!? …………。な、なら頑張って我慢しようかな?」
「あん? さっき俺が魔剣でぶっ壊した石床がなくなっていやがる……。どういうことだ?」
「がぅ!?」あな、なくなってるー!?
「キュッキュウ!」びっくりなのー!
「きっとどこかに隠れてるアルが魔法を使って元通りにでもしたんじゃないかな?」
「アルちゃんは魔法が使えるんですねー♪ あっ、じゃあ人が長い間住んでいなかったわりにおうちが綺麗なのはアルちゃんが魔法で掃除していたからだったりするんですかねー?」
「雪音様、アルちゃんが魔法を使えるのでしたら、私達を襲って来る可能性があるのでは?」
聖女ソフィーが心配そうに私に言って来る。そんなソフィーにロウのおっちゃんが、
「いや、それはねえと思うぞ。もし襲って来るなら、さっき俺達が来た時に襲って来てるはずだ。さっきは俺と雪狼とちびっ子赤竜の3人しかいなかったんだからな」
とソフィーの不安を取り除く発言をした。すると私の腰に差さってる魔剣ディーアが、
———— 妾もおったのじゃ!? 妾を仲間外れにするなんて酷いのじゃ!? ————
と文句を言い始めた。
「あー、わりぃ、わりぃ。そう言えば、お前もいたよな?」
———— 妾のおかげで石床を破壊できたと言うのに、その妾をいなかった扱いするとは ————
プチッ。
私は“魔剣ディーアの声がみんなにも聞こえるようにする魔法”を解除した。
「あっ、ディーアちゃんの声が聞こえなくなりましたねー」
「あの子、文句言い出すと長いから魔法を解除したんだよ。所有者の私にはまだ聞こえるけどね」
「とばっちりを押し付けちまったみたいで悪いな? それで結局そのアンラキのペットはどこにいるんだ? 探知魔法を使って領主の屋敷にあったような隠し部屋でも探すのか?」
「おっちゃん、私さっき建物の外にいるって言ったでしょ? アルが隠し部屋に隠れているんだったら外になんないじゃん」
「雪音ちゃん、見たところ地下室の壁は全部レンガで出来ているみたいなんですけど、ひょっとしてどこかの壁が幻惑の壁で、その向こう側に外と繋がっている通路でもあったりするんですかー?」
「なるほど、隠し通路ですか! 流石、ラピ様! 素晴らしい推理です!」
「ちょっとそこの聖女!? 私のセリフ取らないでくださいまし!?」
ラピを褒めようと思ってた吸血鬼ラスィヴィアが聖女ソフィーに先を越されて怒り出した。
「もー、そんなことでケンカしないでよ……」
「まったくラスィヴィアさんは仕方ないですねー。飴ちゃんあげますから大人しくしててくださいねー?」
「ラピ様、本当ですの!?」
「はい、お口開けてくださいねー?」
「あーん♪」
ラピは自分の血で出来た飴玉をラスィヴィアが開けた口の中の舌の上に乗せてあげた。
「私、大人しくしておりますわぁ〜ん♪」
爆乳ゴスロリツインテール吸血鬼ラスィヴィアは嬉しそうにそう言ったあと、舌の上で飴玉を転がし、溶け出て来るラピの血を恍惚とした表情を浮かべながら味わい始めた。
「ラピ様がお持ちの飴玉はまるで魔法の飴玉みたいですね、ロウバスト様」
「( どうせラピの血で出来てるってオチなんだろうが、聖女のソフィーに、んなこと言えねえからなあ? ) 鎮静効果のある魔法でも掛けてあるんじゃねえか? っで、話を戻すんだが雪音、ラピの言ったような幻惑の壁と隠し通路があんのか?」
「残念だけど幻惑の壁も隠し通路もないよ」
「ねえのかよ!?」
「そうなんですかー? それは残念さんなのですよー」
「えっ、違うのですか、雪音様? それではアルちゃんはどうやってここに出入りをしているのでしょう?」
「ご主人様ぁ、じゃあ、アルちゃんて幽霊なの? 幽霊なら壁抜けとか出来るだろうし」
「そうなの、雪音っち? アルが幽霊なら、メリッサちんの予想的中ってことか〜。くぅ〜、なんか悔しー! でも、流石、私のメリッサちん! 幽霊のペットがいたら教会に逃げ込むのは確かに無理だよね!」
「壁抜け能力はあるみたいだけどアンラキさんに抱きついてたから幽霊じゃないんじゃないかな? とりあえず呼んでみるね? アル〜、アンラキさんの仇討ち手伝ってあげるから出て来てくれる〜?」
私は言葉を発すると同時に、口に出した言葉と同じ内容の思念を込めた魔力波を周囲に飛ばしてみた!
シーン……。
「反応ありませんねー?」
「がぅがぅ」
「キュウキュウ」
「ソフィーっちが建物内の幽霊浄化しちゃったから、アルがもし幽霊だったら浄化されると思って警戒してるのかもね!」
「わ、私のせいですか!?」ガーン!
「あー、確かにキアラの言う通り、その可能性もあるな」
「ご主人様、どうするのぉ?」
「うーん。じゃあ、これでどうかな?」
私は魔法を使って地下室の記憶にアクセスし、階段を降りて地下室に入って来るアンラキさんの過去の映像を再生してみた!
「キュルルーーーー!!!」
すると、レンガの壁の向こう側からアルが壁をすり抜けて地下室に飛び込んで来た!
「きゃあ!?」
「ひゃあ!?」
「うおっ!? ホントに壁をすり抜けて入って来やがったぞ!?」
「幽霊!? ではないですね、実体があります!」
「あら、アルマジロドラゴンなのですわぁ〜ん。なんて珍しい」
「前もって聞いていたとは言え、これはびっくりなのですよー」
「がぅがぅ」
「キュウキュウ」
レンガの壁をすり抜けて地下室に入って来たアルはみんなを驚かせながらアンラキの胸へと飛び込んだ! っが、アンラキは映像なので当然アルが抱きつくことは出来ず、すり抜けてしまう!
「キュー!? キュルルー!? キュルルー!?」
宙に浮いているアルは、すぐ側にいるのになぜか抱きつけないアンラキに向かって何度も飛び込んで行く!
「おい、雪音! 死んじまった飼い主を幻惑魔法で作り出すなんて、お前は鬼か!?」
「いや、その、もう会えない人にひと目でも会えたら喜ぶかなぁ〜と思って……」
「な、なんか見てて可哀想だよ、ご主人様ぁ」
「雪音っち、なんか他に方法なかったの?」
「雪音様、あの悲しそうな鳴き声を聞くのがつらいです」
「がぅがぅ」
「キュウキュウ」
みんなから非難轟々だった……。うぅ、私が悪かったから、そんな目で私を見ないで……。
「雪音ちゃん、とりあえずアルちゃんを魔法で眠らせて、アンラキさんと楽しく過ごしてた時の出来事を夢で見させてあげましょうねー?」
ラピはにっこりと微笑みながら、けれど有無を言わせぬ口調で私に言って来た。
「う、うん、もちろん、そうするよ! えぃ!」
私は飛行魔法を使って宙に浮かび、自分の姿をアンラキさんに見えるように幻惑魔法を使ってから、映像のアンラキさんを消した。
「キュー!? キュルルー!? キュルルー!?」
いきなり目の前のアンラキさん ( 映像 ) が消えてしまったので、空中に浮かんでるアルがキョロキョロしてアンラキさんを探し始める。そして、幻惑魔法でアンラキさんの姿になってる私を見つけたアルが私の胸に飛び込んで来た!
「キュルルー!!! キュルル! キュルル!」
私は胸に飛び込んで来たアルを軽く抱きしめ ( ギュッと抱きしめるとトゲトゲが痛いんだよ。アルはアルマジロトカゲをおっきくしたような魔物だからね!) 、幸せな夢が見れるスリーピングの魔法を掛けて眠らせた。
「キュル……」スヤァ。
「安心したような顔で眠ってるね、ご主人様ぁ!」
「でもさ、目が覚めたらアンラキがいないことに気づいて余計ショック受けちゃうんじゃない? 雪音っち、どうするの?」
「そのまま雪音がアンラキの姿をしてれば良いんじゃねえか?」
キアラとロウのおっちゃんの言葉のナイフが私の心をえぐって来るよぉ……。アルの心のケアはあとでしっかりするから、もうゆるして……。しくしく。
「ロウバストさん、さっきはあまりにも突然のことだったからアルちゃんも気が動転して気づかなかっただけで、落ち着いた時に抱きつけば匂いとか抱きつき具合の違いとかでアンラキさんじゃないって気づいちゃうと思いますよー?」
「がぅがぅ」きづくきづくー!
「キュウキュウ」スカーエットもそう思うー!
「雪音様、重たくはありませんか? 私が代わりにお持ち致しますよ?」
「聖女はただアルマジロドラゴンを抱っこしたいだけではありませんの?」
「そそ、そんなことないですよ!? ラスィヴィアさん、い、言い掛かりはやめてください!」
「ごめんね、ソフィー。持たせてあげたいのは山々なんだけど、この子しっかりと私に抱きついちゃってるから無理っぽい」
「そう、ですか。それは残念です」しょぼーん。
「きっとアルちゃんはアンラキさんと2度と離れたくないって思ってるから、ご主人様にしっかり抱きついて……。ぐすん。ご主人様ぁ、今すぐピッグマン商会に殴り込みに行って来ても良いかなぁ?」
「メリッサちん、証拠もないのに殴り込みに行ったら、こっちが捕まっちゃうって!」
「メリッサ、キアラの言う通りだから今は我慢してくれるかな?」
「こちらから手を出さなくても、どうせ向こうから手を出して来ると思いますから、それまでの我慢なのですよー」
「我慢しなきゃダメ、ご主人様ぁ?」
「私だって我慢してるんだからメリッサも我慢してね?」
「うぅ、分かったよ、ご主人様……」しょんぼり。
「( しょんぼりしてエルフ耳垂らしてるメリッサちん可愛いなぁ♡ ) メリッサちん、メリッサちん、ピッグマン商会の奴らを捕まえたあとの拷問方法でも一緒に考えよ! お店に侵入して来た時の罠を考えるのでも良いよ!」
「うん、キアラ、ありがとぉ〜♪ じゃあ、ご主人様のお店を守るための罠を一緒に考えてくれるかなぁ?」
「もちろんだよ!」
お店の中に罠とか作んないで欲しいなと思ったけど、沈んじゃったメリッサの気分転換になるなら考えるぐらい別にいっかと思い、私は2人を放置した。
「それでこれからどうすんだ、雪音?」
「私の年齢だと家とか借りられないから、おっちゃん、不動産屋に行って契約して来てくれる? お金はおっちゃんに渡してある魔法の袋から出しておいてね」
「分かった。じゃあ行って来る」
「がぅがぅ♪」ボクもいくー♪
「キュッキュウ♪」スカーエットも行くの〜♪
「あはは。じゃ、みんなお願いね♪」
ロウのおっちゃんと雪狼のクゥーと (透明化の魔法が掛かってる) ちびっ子赤竜のスカーレットちゃんが地下室の階段を上がっていった。
◇◆◇
「それでは私はラスィヴィアさん連れて家具屋さんに行ってベッドを調達して来ますねー♪ いくつぐらい必要ですかねー?」
「スライムのピーちゃん、こないだ5匹に分裂してたから施術用にまず5台でしょ、お店に住み込んで働いてくれるゾーイお姉ちゃん達の分が7台で、私達用は大きいのが1台あれば良いよね?」
「あ! 雪音っち、それなら私とメリッサちんのベッドも少し大きいの1台で良いよ! 2人で一緒に寝るから!」
「ちょ、ちょっとキアラ、何言ってるのぉ!?」あせあせ。
「だって1部屋に2台もベッド入れたら狭くなっちゃうじゃん? メリッサちんは私と一緒に寝るの、その、イヤなの?」
「そ、そんなことないよ!? ただ、ちょっと恥ずかしいなって思っただけで」もじもじ、照れ照れ。
「じゃあ決まり! 雪音っち、そうゆーことだから私達のは少し大きいの1台で!」
「だってさ、ラピ」
「了解なのですよー♪ 他に何か必要な物はありますか、雪音ちゃん?」
「他かぁ〜? お店開くんだから壁に絵画とか飾ってあると、おしゃれだよね? じゃあラピ、絵の具も買って来てくれる?」
「絵画じゃなくて絵の具を買って来るんですかー、雪音ちゃん?」
「うん。私が前に見たオーロラの景色とか、魔剣ディーアが地面に刺さってた洞窟の天井の土ボタル、じゃなくてこっちではグローワームって言うんだっけ? グローワーム達が青く輝いて洞窟内なのにまるで満点の星空の下にいるような幻想的な光景なんかを絵画にしようと思ってね♪」
「ラピ様と一緒に見たあの神秘的な光景を絵画にできるんですの!?」
「それは良いですねー♪」
「ご主人様、絵が描けるの!? すっご〜い!」
「雪音っち、魔法だけじゃなくて絵の才能もあったんだ!?」
興奮するみんなに向かって手をヒラヒラさせながら私は否定する。
「あはは、違う違う。私に絵を描く才能なんてないって。絵の具を魔法で操って過去に見た景色を絵画にするんだよ」
「そんなことも出来ちゃうんだ!? ご主人様は凄いね!」
「な〜んだ、魔法か〜。あれ? 雪音っち、こないだ何もない所から服を作ってたよね? 絵画も同じように作れないの?」
「キアラさんの言う通り、雪音ちゃんだったら魔法で簡単に作れちゃいますよねー? どうしてわざわざ絵の具を使おうとするんですかー?」
「ふふーん、よくぞ聞いてくれました! 魔力で作った物は時間が経てば消えちゃうでしょ?」
「消えちゃってもまた魔法で作れば良いんじゃないの?」
「ちっちっち、違うんだなぁ、キアラ」
「うっざ!? 雪音っち、めっちゃ、うっざ!?」
「もー、キアラ! ご主人様にそんな言い方しちゃダメだよぉ!」
「ひょっとして雪音ちゃんは壁に飾った絵画を売り物にしようと考えているのですかー?」
「ピンポーン! 大正解だよ、ラピ! 絵の具で描かれた絵画なら時間が経っても消えないからね! スライムのピーちゃんの毛穴ケア&マッサージの順番待ちしてる時に壁に絵画とか飾ってあったらちょっとした暇つぶしになると思うし、気に入った絵画があって、もしそれをお手頃な値段で買えるとしたら喜んで買ってくれると思うんだよね♪ 良い考えだと思わない?」
「大きさにもよると思いますけど、雪音ちゃんは1枚いくらぐらいで売ろうと思っているんですかー?」
「これぐらいの大きさの絵を大銅貨3枚 ( 約3千円 ) ぐらいで売ろうと思ってるんだけど、どうかな?」
私はメニュー画面を縦455mm×横606mmくらいの大きさに開いて“洞窟の天井で無数のグローワーム達が青く輝いてる幻想的な光景”をみんなに見せてみた。
「うわぁ〜、うわぁ〜♪ すっごく綺麗だね、ご主人様ぁ♪」
「雪音っち、すっごく綺麗なんだけどさ、これを大銅貨3枚で売るの? 安過ぎない?」
「そ、そうかな?」
「雪音様は絵の具が高級品だと言うことをご存知なさそうなのですわぁ〜ん。色の元になる鉱石が採取しにくい物だったりしますと他の色と比べてお値段が100倍近く変わってしまう物もあるのですわぁ〜ん」
絵の具が高級品!? 色によって値段が変わる!? しかも、100倍って変わり過ぎでしょ!? あっ、でもそう言えば、フェルメール・ブルーとも呼ばれるウルトラマリンブルーの色を作る鉱石のラピスラズリって当時貴重な代物で、他の青の絵の具の100倍の値段だったってテレビで言ってた覚えがあるよ!?
「さらに言わせてもらいますと、その大きさの絵画に使う絵の具を用意するだけで大銅貨3枚以上は掛かってしまうと思いますわぁ〜ん」
「雪音ちゃんの手間賃を考えなかったとしても、そこにキャンバス代や仕上げに塗るワニス代なんかも掛かってしまうわけですから大銅貨3枚だと大赤字になっちゃいますねー」
「うぅ、魔法で絵の具操ってサクッと絵画作って簡単にお金儲け出来ると思ったんだけどなぁ……」しょんぼり。
「ま、雪音っちがどうしても売りたいなら値段をもっと高めに設定すれば良いんじゃない? これがそのまま絵画になるなら高くても買ってくれる人はいると思うよ?」
「そうだよ、ご主人様! 元気出して!」
「お客さんがスライムのピーちゃんの毛穴ケア&マッサージに来たついでに気軽に手を出せるお値段で売ろうと思ってたから、高い値段設定にして売り出すのは私のコンセプトから外れちゃうんだよね。残念だけど売るのは止めて魔法で絵画そのものを作って飾るだけにするよ」
「絵の具が安く買えれば良かったんですけどねー」
「ギルドの受付嬢の確かクレーレと言ったかしらぁ〜ん? あの娘に絵の具の原料の各種鉱石がどこで採掘できるか聞いて、地下の拷問部屋にいる薄汚いゴミ共に今度取りに行かせれば良いのですわぁ〜ん」
「ラスィヴィア、ナイスアイディア! 各地の村から攫われて来たお姉ちゃん達がみんな自分達の村に帰れたら、犯罪者共へのお仕置きを鉱山での鉱石採掘に変更することにするよ!」
「ご主人様ぁ、クソ領主へのお仕置きはまだしたりないから、クソ領主は鉱山に行かせないで欲しいなぁ?」
「メリッサちん、まだしたりないの?」
「あ、あはは。こ、鉱山送りはまだ当分先の話だから心配しなくても大丈夫だよ、メリッサ」
「それにしても、ソフィーさんはさっきから静かですよねー」
「雪音様が抱きかかえているアルマジロドラゴンに夢中なのですわぁ〜ん。聖女が死霊使いにご執心とか笑えるのですわぁ〜ん♪」
「えっ!? ララ、ラスィヴィアさん、今なんて言ったのですか!? 私の聞き間違いでなければ、この可愛い子が、ネ、死霊使いとか意味不明なことをおっしゃいませんでしたか!?」
ソフィーがラスィヴィアの両肩を掴んでグラグラ揺らし始めた!
あっ、ソフィーがめっちゃ動揺してる……。ソフィーは聖女だからアルが死霊使いとか受け入れがたいんだろうなぁ……。私もびっくりだけど……。
「意味不明なことではなく事実なのですわぁ〜ん」
「そんな!? あ、あのあどけない顔で眠っている子が死霊使いだなんて……」
ソフィーは私が抱っこしてるアルマジロドラゴンのアルを茫然と見つめている。
「ってことはやっぱ私の予想通り、この家の幽霊騒動はアルの復讐だったってことじゃん! 通い妻じゃなかったけど!」
「でも、アルちゃんが死霊使いなら、どうしてアンラキさんが殺されちゃう前に幽霊を使役してピッグマン商会のヤツらを襲わせなかったのかなぁ?」
「そう言えば、私が過去視で見た書斎の映像の中でもアルは幽霊を召喚してなかったわね」
「となると、飼い主のアンラキさんの死をきっかけに死霊使いとしての力が目覚めてしまったとか、そう言うことなんじゃないですかー?」
「流石ラピ様、その推測で間違っておりませんわぁ〜ん。アルマジロドラゴンは臆病で敵と遭遇するとすぐ土の中や壁の中に逃げてしまうのですけれど、仲間が殺られると攻撃的になって幽霊を召喚し始めるようになるのですわぁ〜ん」
「ラスィヴィアさんが物知りで助かるのですよー」
「ラピ様のお役に立てて光栄なのですわぁ〜ん♪」
「えっ!? アル坊って、そんなゴツゴツトゲトゲした見た目なのに臆病なの!?」
「キアラ、さっきまでアルのこと通い妻とか言ってたのに、アル坊って……」
「だって、雪音っち、その見た目で女の子ってしっくりこなくない?」
「いや、そうかもしれないけど……」
「アンラキさんが殺される前に幽霊を使役する力に目覚めていれば良かったのに……」
「仕方ありませんわ、エルフ娘。アルマジロドラゴンが死霊使いとしての力に目覚めるのは仲間の死が絶対条件なのですから」
「でもでも、アルちゃんだってきっと自分が死霊使いの力をもっと早く使えてたらって自責の念に駆られてるんじゃないかな!?」ぐすんぐすん。
「どうしてエルフ娘が泣くんですの!? 貴女、感情移入が強過ぎではなくて!? まったく仕方ありませんわね!」
そう言ってラスィヴィアは泣いてるメリッサの頭を掴んで自分の爆乳に押し付け、あやし始めた!
「あらあら、ラスィヴィアさんにも優しい所があったんですねー♪」
「あー!? ラスィヴィアっち、何してんの!? メリッサちんを慰めるのは私の役目なのに!?」
キアラ、それ役目じゃなくて単にキアラがしたいことだよね?
「ラスィヴィアさんが雪音様やラピ様以外の方に優しくしているところ、私初めて見ました! 驚きです!」
「ソフィー、ショックから立ち直ったんだ?」
「あっ、はい。アルちゃんが死霊使いとして幽霊を使役し始めたのはアンラキさんが殺されてしまってからのようですし、アンラキさんとの思い出が詰まっているこの場所を守りたいと言う気持ちから死者の魂を冒涜するような行為に及んでしまったアルちゃんには同情の余地があると思うのです! ピッグマン商会の件が片付けばアルちゃんはきっと穢らわしい死霊使いの力を使わなくなると思うのです!」
なんかソフィーが力説し始めちゃったよ。そんなにアルのことが気に入っちゃったんだね?
私は苦笑しながらソフィーがアルマジロドラゴン・死霊使いのアルを受け入れ易くなるようなことを言ってあげることにした。
「ソフィー、死霊使いの力って使い方によっては良いことにも使えるから、そんなに忌避しなくても良いと思うよ?」
「良い使い方、ですか? それは一体どのような使い方なのでしょう?」
「例えば、どこかで殺人事件が起きたとするでしょ?」
「雪音っち、話がいきなり物騒なんだけど……」
「キアラさん? 茶々入れないで大人しく聞いていましょうねー?」
「殺害現場に殺された人の魂が漂っていれば死霊使いの力を使って死者の魂と会話できて犯人が誰か聞き出せるんじゃないかな?」
「迷宮入りになってる殺人事件を死霊使いの力で解決できちゃいそうですねー♪」
「た、確かに死霊使いの力を使えば、そのようなことも可能ですね! 今まで穢らわしい力だとばかり思っていましたが、そんなことはなかったのですね……。アルちゃん、穢れた死霊使いの力なんかを持って生まれてしまって可哀想にと思ってしまった私を赦してくださいね?」
そう言って聖女ソフィーが、私が抱っこしている眠っているアルマジロドラゴンのアルの頭をなで始めた。
「ソフィーっち、死霊使いって言ったら普通は幽霊とか死体を操って攻撃して来る存在なんだから、ソフィーっちがそう思っても仕方ないんじゃない? 雪音っちの考え方が特殊なだけだと思うけどな〜?」
特殊な考え方ってキアラ酷くない!?
「ぐすん。ご主人様ぁ、アルちゃんが死者の魂と会話できるなら、アルちゃんをアンラキさんが殺されちゃった場所に連れて行ってアンラキさんの魂と会話させてあげたいな?」
「うーん、アンラキさんが殺されちゃったのって1ヶ月以上も前の話みたいだから、とっくに自分で会いに行ってるんじゃないかなぁ?」
「雪音ちゃん、アルちゃんはここを守るのに必死で会いに行けてない可能性もあるんじゃないですかー?」
「殺されたアンラキがアル坊のことが心配で幽霊になってここに来てる場合も、あっ、でもその場合、さっきのソフィーっちの聖なる魔法で昇天しちゃってるんじゃ……」
「っ!? 先程の幽霊達の中にアンラキさんの幽霊が!? あぁ、私はなんと言うことを!? アルちゃん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
絶望した表情を浮かべた後、壊れた人形のように何度も同じセリフを言い続けるソフィー。
「ソ、ソフィー、落ち着いて? さっき私が魔法で作り出したアンラキさんの幻影にアルが何度も抱きつこうと飛び掛かってたでしょ? もし、アンラキさんの幽霊がここに来てたら抱きつこうとはしないんじゃないかな?」
「私達がここに来る前にアルちゃんがアンラキさんの幽霊に会っていたら抱きつくことができないって分かっているはずですもんねー」
「ソフィーっち、ごめんね? でも、アンラキの幽霊がここに来てなくてよかったね!」
「アンラキさんの幽霊はここに来ていなかった? 私はアルちゃんの大切な人を奪ってしまっていなかったのですか?」
「多分ね?」
「そ、それを聞いて安心しました」
ホッと胸をなでおろすソフィー。
「じゃ、とりあえずこれからアンラキさんが殺されちゃった場所に行ってみよっか? アンラキさんの幽霊がいるかは分からないけど」
「ありがとう、ご主人様ぁ!」
「でもさ〜、雪音っち。場所はどうやって調べるの?」
「正門の詰め所にいる衛兵に聞けば分かるんじゃないかな?」
「あ〜、私達を攫った山賊達や奴隷商人とグルになって私達がこの町に入る手引きしたアイツらか〜」
「雪音様、アルマジロドラゴンを連れて行ってしまうと、ここの守りがなくなってしまうのですわぁ〜ん」
「あっ、そうだね。家を出る前にピッグマン商会の奴らが悪さ出来ないように魔法で誰にも入れないようにしておくよ。教えてくれてありがとね、ラスィヴィア」
「どういたしましてなのですわぁ〜ん」
「雪音ちゃん、私達が全員出掛けてしまうとロウバストさん達が不動産屋から戻って来た時、困ってしまうのではありませんかー?」
「ご主人様ぁ、あたしはアルちゃんとアンラキさんの幽霊の感動のご対面が見たいから居残りはやだよ?」
「私はメリッサちんといつも一緒だから当然残らないよ?」
「雪音様、私も行きます! アルちゃんの喜ぶ姿が見たいのです!」
「それでは、私とラピ様で留守番をしているのですわぁ〜ん♪ ( ラピ様とふたりっきりの時間なのですわぁ〜ん♪)」
「えっ、この家の鍵を私の天上界の倉庫にしまっておけば、おっちゃんに渡してある魔法の袋から取り出せるから全員で出掛けても問題ないよ? おっちゃんにはテレパシーの魔法で伝えておくし」
「あっ、その手がありましたねー♪」
「そ、そんな!? せっかくの私とラピ様のふたりだけの時間がぁ〜〜〜!?」
「ラスィヴィアさんは仕方がないですねー。じゃあ、雪音ちゃん。私とラスィヴィアさんはお留守番してますねー」
「ラピ様、本当ですの!? ( やりましたわ! ラピ様とふたりっきりになれますわぁ〜♡)」
「ラピ、一緒に行かないの?」
「この幽霊物件に入った人間が怪我することなく外に出て行ったら、ピッグマン商会の輩がこの家の様子を見に来ると思うんですよねー。なので、ちょっと顔を拝んでおこうかなーと思いましてー」
「そう? なら、家に魔法は掛けておかない方が良いかな?」
「はい、中に入ろうとして来たら幽霊を装って撃退しておきますねー♪ うふ、うふふふふ♪」
「ラ、ラピ様が悪い顔してるよ、ご主人様ぁ」
「ラピっち、撃退って何するつもりなの?」
「それはですねー、例えば窓を開けたら振り子ギロチンがブォーンと目の前を横切ったり矢がバシュっと飛び出したりですねー、無事に窓から中に入れても床に着地したら床から針山が飛び出してグサグサッと」
「ラピ様、素晴らしい発想ですわぁ〜ん♪」
「ラピっち、えぐい……」
「ラピ、それ、幽霊装ってないじゃん……」
「ラピ様ぁ、お客さん商売を始めようとしてるのに、お部屋で血が飛び散っちゃうようなことするのは、あたしどうかと思うんだぁ」
「ラピ様、メリッサさんの言う通りだと思います。アルちゃんの家に無断で入ろうとする輩には相応しい処罰のような気もしないではないのですが」
「心配ご無用なのですー♪ 魔剣ディーアちゃんの闇魔法をお借りしようと思っていますので体に傷を負わすことは一切ないのですよー♪ とゆーことで雪音ちゃん、魔剣をお貸しくださいなー♪」
( 闇魔法って言うのは、物理ダメージを与えることなく、物理攻撃を受けたのと同等の痛みだけを相手に与える魔法だよ!)
「あー、そう言うことね。はい、どうぞ。ディーア、今の聞いてたでしょ? ラピ達に力を貸してあげてね?」
———— や、やっと声を掛けてもらえたのじゃ!? うむ、妾にお任せなのじゃ! じゃが、主様に放置されて妾はプンプンなのじゃ! お手伝いしたら主様が魔力をくれると約束してくれないと妾はお手伝いしたくないのじゃ! ————
十分ご飯あげてるはずなんだけどなぁ……。
「はいはい、ちゃんとお手伝いできたらね?」
———— この建物に無断で入って来る不埒な輩を闇魔法で懲らしめれば良いのであろう? 余裕なのじゃ! ————
「ディーアとの交渉は終わったけど、ディーアの闇魔法だけじゃ幽霊の仕業に思われないから魔法で幽霊作ってあげるね!」
私はラピとラスィヴィアの指示通りに動くアンラキさんの姿をした幻影をいっぱい用意した!
「うわ!? ご主人様、アンラキさんがいっぱいだよぉ!?」
「雪音っち、おんなじ顔の人10人以上に囲まれると流石に怖いんだけど?」
「あはは、ごめんね? ピッグマン商会の奴らを懲らしめるなら、これが一番効果的かなって思ったから。ラピ、ラスィヴィア。このアンラキさんの幻影達はラピ達の指示通り動くから、幻影達にディーアの闇魔法で作られた闇包丁持たせるなり闇ナイフ持たせるなりして窓とか勝手口に配置しておいてくれる? あー、あと、幻影が側にいれば闇ギロチンを窓に設置しても良いからね?」
「雪音ちゃん、ありがとうございますー♪ では早速罠を設置しに行って来ますねー♪ ラスィヴィアさん、幻影さん達、行きますよー?」
「はい、ラピ様♪」
「「「「「「…………」」」」」」
ラピ達が軽快な足取りで階段を上がっていった。
「じゃ、私達も行こっか?」
「ご主人様ぁ? この家から普通に出て行ったらピッグマン商会の奴らにあとつけられちゃうんじゃないかなぁ?」
「雪音っちの転移魔法で奴隷商人の館に飛んでから行った方が安全じゃない?」
「雪音様、私もキアラさんの意見に賛成です」
「うーん、私達がここから出て行くところを見せないとピッグマン商会の奴ら、家に入ろうとしないと思うんだよネー。中に残ってるのが2人だけになれば警告とか脅しをするために押し入り易いだろうし」
「そう言うことなら致し方ありませんね」
「私はちょっと怖いかも」
「大丈夫だよ、キアラ! キアラはあたしが風魔法で守ってあげるからぁ!」
メリッサが後ろからキアラに抱きついてキアラの不安を取り除く言葉を掛けた。
「う、うん、メリッサちん、ありがと♪ あ、あのね、メリッサちん?」
「なぁ〜に、キアラぁ?」
「怖いから外行く時そのまま抱きついてもらってても良い?」
「えっ、それはちょっと恥ずかしいなぁ?」
「あの〜、おふたりさん? 忘れてるかもしれないけど、ふたりには私が防御魔法が自動で発動するイヤリング渡してあるよね? だから、そんなに心配しなくても大丈夫だよ?」
「あっ、そう言えばそうだったね、ご主人様! あたし、すっかり忘れてたよ!」
「ちっ!」
キアラ、隠れて舌打ちしな〜い!
「じーーー」
「な、なに、ソフィー?」
「い、いえ、メリッサさんとキアラさんが防御魔法が自動発動するイヤリングを雪音様から貰えて羨ましいとか思っていませんよ? 私、聖女ですから他人の物を羨ましがるようなそんなはしたないことはですねって、雪音様、どうしてお笑いになるのですか!?」
ソフィーがあたふたしながら言い訳し始めたのがおかしくて私はつい笑っちゃった。
「ごめんごめん。笑ったお詫びにソフィーにも、あとでイヤリング作って渡してあげるね♪」
「本当ですか、雪音様!? あ、ありがとうございます! 私、嬉しいです!」
「イヤリングはどんな形が良い? 星とか三日月とかハートとか、あっ、ソフィーは聖女だから十字架とかの方が良いのかな? あと、色は何色が良い?」
「あぅあぅ、そ、それはですね、えーっと、えーっとですね……。す、すみません、雪音様。考えるお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」
あー、そう言えばソフィーって優柔不断さんだったの、忘れてたよ。
「うん、ゆっくり考えてね? じゃ、とりあえず外へ行くよ〜!」
「「「はーい!」」」




