第10章 雪音ちゃんと村娘達 147 〜 雪音ちゃん、お店の下見に幽霊物件に行く!①〜
「ここが幽霊が出るって噂がある建物ね!」
「キュッキュウ〜♪」
ゾンビはこないだ本物見たけど幽霊はまだ見たことないから、ちょっと楽しみだったりするんだよね!
私の頭の上で鳴いてるのはチビドラゴン形態になったスカーレットちゃんだよ。先日、転移可能先を増やすために私の血を飲ませて派遣した社会奉仕活動中の罪人達から村に着いたって連絡が来たから1回向こうに転移してすぐ館に帰る予定だったのに、別の冒険者達の尻拭いでゾンビとか骸骨の魔物が徘徊しているダンジョンに行くはめになって数日館に帰れないことがあったんだけど、その時、館に置いていかれたのがショックだったらしく、ここ数日私にべったりなのである。
ちなみに、スカーレットちゃんのママであるプラーミャにはダンジョンにお肉を調達しに行ってもらっているのでここにはいない。なにせ私が奴隷商人の館で保護してる、各地の村から攫われて来た村のお姉さん達が40人以上もいるから食費代が馬鹿にならず、安く済ませるために食材の一部を自己調達することにしたのである。プラーミャに頼んでるから自己調達って言ったら語弊があるけどね?
「ご主人様、なんか楽しそうだね〜♪」
「メ、メリッサちんは幽霊怖くないの? 私、幽霊はちょっと苦手なんだけどぉ」ブルブル。
私をご主人様呼びしてるのは巨乳エルフ娘のメリッサで、彼女に震えながら腕に抱きついてるのは褐色肌で八重歯がチャーミングな普通の村娘キアラである。
キアラ、幽霊が苦手ならついて来なければ良かったのに。そんなにメリッサと一緒に行動したかったの? それとも怖いのを理由にメリッサに抱きつきたかったのかな?
「ゆ、雪音ちゃん、本当にここにするんですかー? ここって幽霊が出るって話だったじゃないですかー? やっぱり他の物件にしましょーよー?」
「くぅーん、くぅーん」
私達は今、“貴族の御婦人や御令嬢が愛用していると言うあのレアなスライムが貴女のお肌を綺麗にしてくれるお店 (マッサージ付き!)” を開店すべく、そのお店の候補地の1つに足を運んでみたんだけど、ラピもクゥーも幽霊が怖くて仕方ないみたいだね?
「幽霊が出るからこんなに綺麗な建物なのに家賃がお安いんだよ? それに、ソフィーが一緒について来てるんだから怖がらなくても良いと思うんだけどなぁ?」
ソフィーって言うのはさっき話に出て来たゾンビとか骸骨の魔物が徘徊しているダンジョンで私が助けてあげた聖女様だよ!
「で、でもですねー、雪音ちゃん?」
「くぅーん」
「ラピ様、クゥー様、怖がる必要なんてありません! 雪音様の言う通り私にお任せください! 迷える魂は全て私が浄化してみせましょう!」
「キュッキュ〜♪ キュッキュ〜♪」じょーか、じょーか♪ 燃っやしちゃえ〜♪
ソフィーの浄化と言う言葉に反応したスカーレットちゃんが私の頭の上で楽しそうに歌いながら火を吐いている!
「ス、スカーレットちゃん、おうちの中に入ったら火は吐かないでね? 火事になっちゃうと弁償しないといけなくなっちゃうから、お願いね?」
「キュー」
私が頭の上にいるスカーレットちゃんにお願いすると、スカーレットちゃんの残念そうな鳴き声が返って来た。
「スカーレットちゃん、可愛いですね♪ それでは雪音様、行って参ります!」
私とスカーレットちゃんのやり取りをデレ〜っと頬を緩ませて眺めたあと、聖女ソフィーは幽霊を浄化するため、不動産屋から借りた鍵を使って入り口の扉を開け、ひとり建物の中へと入っていった! ちなみに不動産屋の人達は幽霊が怖くて誰も私達と一緒について来ていなかったりする。職務怠慢だよね?
「会話することなく問答無用で浄化してしまうなんて野蛮極まりないのですわぁ〜ん」
と、吸血鬼のラスィヴィアが建物の中へと入っていく聖女ソフィーを見ながらボソッと呟いた。
「ラスィヴィアさん、幽霊なんて百害あって一利なしなのですよー! 私は会いたくないので問答無用で浄化しちゃうのは大賛成なのですー!」
「がぅがぅ!」
ラピの言葉にうんうんと頷くクゥー!
「まあ、良い幽霊って奴も世の中にはいるんだろうが、この建物の中にいるのは入って来た人間や家を取り壊そうとする人間を例外なく大怪我させて来たってえ話だから問答無用で浄化しても問題ねえと思うがな?」
私達の自称保護者でナンパ避け係を務めるロウバストのおっちゃんがラピの意見を擁護した!
「まっ、死んじゃってからも恨みに囚われ続けてるよりは、ラピやロウのおっちゃんの言う通り無理やり昇天させちゃって来世で新しい生を受けさせた方が良いんじゃないかな? その方が今より楽しい人生送れると思うし?」
「雪音ちゃんの言う通りなのですー! 往生際の悪い幽霊さんにはとっとと昇天してもらって次の人生か虫生か動物生か魔物生か分かりませんが、その方がきっと良いのですよー!」
ラピ……、来世が虫生とか魔物生はないんじゃないかなぁ?って思ってたらキアラが私の気持ちを代弁してくれた。
「可愛い動物とかに生まれ変わるならまだ良いけどさぁ〜、虫とか魔物に生まれ変わるのはヤダよね〜? メリッサちんもそう思わない?」
キアラが頭の後ろで両手を組みながらそんなことを言うと、メリッサが人差し指を唇に当て首を傾げながら、
「あれ、キアラ知らないの? 悪いことして死んだ二足歩行種って生まれ変わると魔物にされちゃうってお話、エルフの世界だと割と有名なんだけど?」と言った。
へー、魔物って悪いことした奴が生まれ変わった存在って説があるんだ? 面白いね! 人間や魔族が魔物と戦うのを見るのが大好きなあの神様ならやりそうな仕組みだし、これからは可哀想とか考えないで遠慮なく魔物が倒せそうだよ。
「ところで、さっきラスィヴィアにしては珍しく慈悲深いこと言ってた気がするんだけど、ひょっとして魅了でも使って幽霊を支配下に置こうとか考えたの?」
「ラスィヴィアさん、私が幽霊が大っ嫌いだって知っててそんなことしちゃうんですかー? そんなことしたら一生お尻グリグリしてあげませんからねー?」
ラピ、それはラスィヴィアに対する死刑宣告だから止めてあげて!?
「ち、違いますわ!? 雪音様の言い掛かりなのですわ、濡れ衣なのですわぁ〜ん!? 諜報活動に便利な駒に出来そうとはちょっと思ったり致しましたけれど、ラピ様の不興を買うような真似は決して致しませんわぁ〜ん!?」
「あー、確かに悪霊をそんなふうに使役出来るなら便利そうだな? 悪霊なら問答無用でこき使っても心なんか痛まねえし」
ロウのおっちゃんが自分の顎をさすりながらラスィヴィアの幽霊諜報活動案を肯定した!
「うわぁ〜、見て見て、メリッサちん! ラスィヴィアっちがラピ様の腰に抱きついて泣きながら懇願してるよ〜!」
「あはは、ラスィヴィア様、ラピ様のことが大好きだからね〜?」
メリッサの腕に抱きついてるキアラが、ラスィヴィアを指差しながら笑ってる。楽しそうで良いね?
私はそんな2人を横目にしながらロウのおっちゃんの発言に同意する。
「そうだね。幽霊なら姿消せるし、会話を盗み聞きした後、壁をすり抜けてその場から逃げることも可能だもんね?」
「ちょっと雪音様と大男!? 私がラピ様に言われなき罪で謝罪していると言うのに、どうして私の立場をさらに危うくするような会話をしているんですの!?」
「あー、すまん」
「ご、ごめんね? ラスィヴィアの言う通り、問答無用で浄化させちゃうのはもったいなかったかなぁって思ったから、つい、ね?」
ロウのおっちゃんは頭をかきながら、私は顔の前で両手を合わせてラスィヴィアに謝った!
「雪音ちゃーん? まさか幽霊さんを下僕にしようとか考えていませんよねー?」
「考えてない、考えてないよ!? だから、そんなに怖い顔しないで!?」
「キュー!?」ラピお姉ちゃん、お顔こわいよー!?
その頃、幽霊が住まう建物の中へと入っていった聖女ソフィーの聖なる魔法の詠唱が終わろうとしていた。
「……不浄なる者達をこの世から消滅させたまえ! 聖なる破邪の噴火!」
聖女ソフィーの詠唱が終わると共に、地面から噴き出した黄金の光が建物を包み込んだ!
「「「「「ギャアアアアアアアアアア!?」」」」」
「ほ、ほら、あの光を見て、ラピ! すんごい悲鳴が聞こえて来たじゃない!? きっと、ソフィーが幽霊を根こそぎやっつけてくれたよ!?」
「キュウキュウ!」私の言葉に私の頭の上でうんうん頷くスカーレットちゃん。
「そうみたいですねー♪ これで安心して中に入っていけるのですよー♪」
「んじゃま、俺らも中に入るとするか」
「ねぇ、ご主人様ぁ? 借りる契約する前に幽霊がいなくなったなら家賃って上がっちゃうんじゃないかなぁ?」
建物に入ろうとしたとき、エルフのメリッサがそんなことを私に言ってきた。
「うーん、今ソフィーって聖女の格好してるわけじゃないし、聖なる魔法で浄化してから借りるなんて話も不動産屋の人達の前でしてないから大丈夫じゃないかな?」
「幽霊さんが出るからって不動産屋さん怖がってここに来ていませんし、多分大丈夫じゃないですかねー?」
「気になるなら、とっとと中見て借りるかどうか決めて、借りるならサッサと戻ってバレる前に契約しちまえば良いだけだ」
ロウのおっちゃん、その言い方だとなんか私達が悪いことしてるみたいなんだけど……。
「でも、借りないってなったらソフィーっちの頑張りが無駄になっちゃうよ〜? 浄化料とか貰っちゃう?」
「キアラぁ〜、ソフィーが聖女って言うのは一応内緒だってご主人様言ってたの忘れちゃったの?」
「そんなこと言ってたっけ?」
「もう、キアラったら忘れんぼさんなんだから〜!」
「まー、聖属性を剣身に属性付与できる古代の武器を持ってることにしときゃあ、そこら辺は適当に誤魔化せるんじゃねえか?」
「とりあえず中に入ってみようよ? いい感じなら、おっちゃんの言う通り、すぐ契約しちゃえば良いんだから!」
ガチャ。
そう言って私達は玄関の扉を開けて中に入ってみた。
「うん、結構いい感じじゃないかな?」
「ですねー。人が長い間住んでいなかった割にホコリっぽくありませんしー」
「幽霊が掃除でもしていたのかしらぁ〜ん?」
「ラスィヴィアさーん?」
「ひぃいい!? ラ、ラピ様、おお、お赦しくださいまし!? ちょっとした冗談なのですわぁ〜ん!?」
ラスィヴィアはどうしてそう迂闊な発言しちゃうのかな?
ガチャ。
「あっ、雪音様方、もう入って来てしまったのですか? まだ安全の確認が取れておりませんでしたのに……」
2階の1室から出てきたソフィーが階段上から声を掛けて来た。
「黄金の光が地面の下から建物を包み込むように吹き出してたから幽霊は全滅してると思ったんだよ。ソフィー、まだ何かいそうな気配でもあるの?」
「えっ!? そうなんですかー!? ゆゆゆ、雪音ちゃん、ソフィーさんの安全確認が終わるまで外で待つことにしませんかー!?」
「がぅがぅ! がぅがぅ!」
ラピとクゥーが私を引っ張って外へ連れ出そうとし始めた。
「ぷぷぷ♪ ラピっちとクゥー坊がめっちゃ怖がっててウケる〜♪」
「もうキアラったら笑っちゃダメでしょ! 誰にだって怖いものがあるんだから!」
ラピとクゥーの怖がりっぷりを見て楽しそうに笑ってるキアラにメリッサが説教し始めた。
ん? キアラってさっき幽霊のこと、怖がってなかったっけ? ひょっとしてメリッサにさり気なく抱きつくための演技だったのかな?
そんなことを頭の片隅で考えながら私は視線をソフィーに戻すと、ソフィーがさっきの私の質問に答えてくれた。
「いえ、幽霊の気配は感じないのですが、先程の聖なる魔法で浄化できるなら、この町に派遣されている聖女に頼めば長期に渡ってこの物件を放置することもなかったのではないかと不思議に思いまして」
「ソフィーほどの力がなかっただけなんじゃねえか?」
「大男の言う通り、その可能性はありますわね。ソフィーは通常の聖女より遥かに強い力をお持ちのようですから。あとは、そうですわね。この建物のどこかに幽霊を引き寄せる魔導具でも設置されているとかかしらぁ〜ん?」
「ラスィヴィアっち、それってもしかして、この建物に住もうって人間に誰かが恨みとか持ってて復讐しようとか考えちゃってるってこと!?」
「だったら、その魔導具をみんなで探して壊しちゃえば問題解決ってことだよね、ご主人様!」
エルフのメリッサが目を輝かせながら私に同意を求めて来た!
「メリッサ、幽霊を呼び寄せちゃう魔導具なんだから宝探し感覚で手分けして探そうとするのは危ないんじゃないかな?」
「そうなの? ソフィーが浄化したばっかりだから大丈夫かなぁって思ったんだけど、ご主人様がそう言うなら諦めるよ……」
エルフ耳が垂れ下がり、メリッサはしょんぼりと元気をなくしてしまった!
うっ、ちょっと罪悪感が……。
「雪音様、メリッサさんの言う通り、そんなにすぐには集まって来ないと思いますので手分けして探してみるのも良いのではないでしょうか?」
「ソフィー、それホント!? ご主人様、ご主人様! 魔導具探しして来ても良い!?」
ソフィーの言葉を聞いてエルフ耳がピーンと張って元気になったメリッサが私に許可を求めて来た! 生えてないけどメリッサのお尻に生えた尻尾がブンブン振られてる幻が見える。
「ソフィーと一緒なら魔導具探しして来ても良いよ」
「やったー♪ ご主人様、ありがと〜♪ ソフィー、ソフィー、2階って、もう全部のお部屋探したの?」
「ちょ、メリッサちん、私を置いてくなんて酷いよ!?」
階段を駆け上がっていく巨乳エルフ娘のあとを褐色肌のキアラが慌てて追いかけていった。2階ではソフィーが生暖かい眼差しをメリッサ達に向けながらクスクス笑ってる。
「じゃ、私達は1階の部屋の内装を確認しがてら、ついでに魔導具探ししよっか?」
「おーい、雪音。この建物、地下もあるみたいだぞ?」
地下への階段を見つけたロウのおっちゃんが私に声を掛けて来た。
「地下なんて、いかにも幽霊とかが隠れてそうじゃないですかー!? 私は絶対に行かないのですよー!」
「誰もラピに行けなんて言ってないじゃん……。じゃあ、おっちゃんに魔剣ディーア渡しておくから、もし幽霊が出て来ちゃったらディーアに魔力込めて。そうすれば聖なる槍が発動して勝手に幽霊に向かって飛んで行くから」
「魔力を込めるだけで良いんだな?」
「うん。ディーア、今の話、聞いてたよね? おっちゃんが魔力込めたら、ちゃんと発動してあげてね?」
———— あい、分かったのじゃ! ただ、主様や? 此奴の魔力が不味かったら、妾は口直しに主様の魔力を要求したいのじゃが? ————
黄金造りの柄には5つの大きなエメラルドの魔石が埋め込まれ、剣身は黒水晶のようでいて黒水晶のように脆くない謎鉱石で出来ている意思ある魔剣、ディーアは私の言うことを素直に聞いてくれなかった……。
「どうせ不味くなくても不味かったとか言って私の魔力欲しがるような気がするんだけど?」
———— そそ、そんなことはないのじゃ!? 妾は主様を謀ろうなんて、こ、これっぽっちも思っていないのじゃ!? ————
「おい、雪音。この魔剣大丈夫なんだろうな? いざって時に役に立たない可能性があるなら、俺のナイフに聖属性を属性付与してもらった方がありがたいんだが?」
「がぅがぅ!」
クゥーもロウのおっちゃんに同意見らしく、氷のナイフを口に咥えて『ボクにもエンチャントしてー!』って私に言って来た。うーん、魔剣ディーアの声を私の魔法でみんなにも聞こえるようにしたのが裏目に出ちゃったね。
———— 妾は役立たずなんかじゃないのじゃ!? 使ってもいないのに、そのような評価を下されるのは納得がいかないのじゃ! ————
「先の発言だけ聞けば、大男と雪狼が不安に思うのも仕方ないのではないかしらぁ〜ん?」
「一応、聖属性と闇属性の攻撃魔法が使える魔剣さんですから性能は優れているんですけどねー」
ラスィヴィアとラピが追い討ちを掛けた!
———— 『性能は』とはなんじゃ『性能は』とは!? それでは中の妾がダメみたいではないか!? ————
「そもそもディーアが味わってもいないおっちゃんの魔力にケチつけたのがきっかけなんだから悪いのはディーアでしょ? 欲をかくようなこと言わなければ残念魔剣扱いされなかったのに……」
———— ざ、残念魔剣!? ガーーーン、ガーーン、ガーン…… ————
あっ、ショック受けちゃった?
「ディ、ディーア? おーい」
「返事が返って来ませんねー?」
「この程度の口撃で放心してしまうなんて弱っちい精神なのですわぁ〜ん」
「あー、とりあえず俺のナイフに属性付与頼む」
「がぅがぅ! がぅがぅ!」ボクのにもかけてー!
ロウのおっちゃんとクゥーがそれぞれナイフを差し出して来たから私はナイフに聖属性を付与してあげた。
クゥーには今度、氷魔法を使ったら氷魔法に聖属性の効果を付ける首輪とか足輪を作ってあげようかな。クゥーだって、足の指先に魔法で出現させる長〜い氷の鉤爪に聖属性の効果が付いてる方が口に咥えた氷のナイフより戦い易いだろうし。氷の鉤爪生やしたまんまじゃ移動できないもんねー。
「雪音ちゃん、私にもお願いするのですよー」
ラピが両手に氷の短剣を作り出して私に差し出して来たから私は苦笑しながら聖属性を付与してあげた。
「ところで雪音様? 魔導具探しと言っても見た目だけでは魔導具と判断できないような物も多々あるのですけれど、雪音様の魔法で探知するのかしらぁ〜ん?」
「あ〜、魔法で簡単に探知することも多分できると思うんだけど、簡単に見つけちゃうと張り切って魔導具探ししてるメリッサの楽しみを奪っちゃうことになるから、みんなでそれらしい物見つけてここに集まってもらうことにしようかな?」
「それから探知魔法を使って誰が呪いの魔導具を見つけたか答え合わせをするんですねー? 面白そうなのですよー♪」
「がぅがぅ♪」
「探知魔法で見つけちまった方が面倒臭くなくて助かるんだがなあ……」
ロウのおっちゃんが1人ボヤいてる。
「ボヤかない、ボヤかない。じゃあ、おっちゃんはクゥーと一緒に地下をお願いね!」
「分かったよ。しょうがねえなぁ。行くぞ、クゥー?」
「がぅ! がぅがぅ♪」はーい! ごしゅじんさま、いってくるねー♪
「行ってらっしゃ〜い♪」
「キュ〜! キュッキュ〜♪」スカーエットも行く〜! 地下のほうがおもしろそ〜♪
私の頭の上にいたスカーレットちゃんがドラゴンの翼をパタパタはためかせて飛んで行ってしまった!
「スカーレットちゃん、お願いだから火は吐かないでね〜!?」
「キュ〜♪」だいじょうぶ〜♪
「本当に大丈夫かなぁ?」
「大男がいるから大丈夫だと思いますわぁ〜ん」
スカーレットちゃん、おっちゃんの肩に乗るのも好きだもんね。
「それじゃー、私達は1階で魔導具探しですねー、雪音ちゃん?」
「だね。にしても、賃貸物件なのに家具とか調度品が置きっぱだね?」
「資料によりますと、この物件の持ち主であったアンラキと言う人物が町の外に何かの材料を取りに行っている最中に魔物に襲われて殺されてしまったようですわね。アンラキに親類縁者がいなかったため、物件はアヴァリード領が接収したは良いものの、中に入ろうとすると幽霊達に襲われてしまうため、中の家具や調度品などは処分することが出来ず、そのまま放置してある旨が書いてありますわぁ〜ん」
ラスィヴィアが不動産屋から渡された資料を読み上げてくれた。
「不謹慎だとは思いますけど、殺された場所がこの建物内じゃなくて良かったのですよー」
「ラピ、さすがに建物内で人が死んでたら借りないって! あれ? でもそうすると、なんでこの建物にいた幽霊達は人間を襲ってたんだろう?」
「単に近隣で彷徨っていた幽霊達が空き家になっていたこの建物を住処にして侵入者を排除しようとしたか、魔物に殺されたと資料に書かれている建物の持ち主が、実は魔物にではなく、この建物もしくは建物内の何かを欲した何者かの手によって殺されていたとかで、その恨みを晴らそうとしているのかもしれませんわぁ〜」
「もし後者だとしたら幽霊を排除しても安心できそうにないですねー、雪音ちゃん?」
「そんなこと言ってるけど、ラピ全然怖がってないよね?」
「後者なら神出鬼没の幽霊さんが相手じゃありませんからねー♪」
「まぁ、相手が人間なら、どうとでもなるもんね。もし、ここの持ち主が本当に誰かに狙われていたんだとしたら日記とかに何か書いてあると思うから部屋のチェックしながら日記も探してみよっか?」
「ですねー。それにしても変わった物が色々と展示されてありますよねー? あっ、このお人形さん可愛いのですー♪」
ラピが人形を手に取って顔をほころばせ、キャッキャしながら私に見せて来た。市松人形とかフランス人形みたいに怖いやつだったらどうしようって思ったけど、SDとかBJDのお人形さんみたいにちゃんと可愛いかった!
「ほんとだ! すっごく可愛いね♪ 他にもあるのかな?」
「雪音様、残念ながら人型の人形はその1体だけのようですわぁ〜ん。ですが、ここに襟巻き蜥蜴を模した人形があったのですわぁ〜♪」
ラスィヴィアが両手の上に乗せた襟巻き蜥蜴のフィギュアを嬉しそうに私に見せて来た。ラスィヴィアってなんだかんだ言いながらリザードのオズとメズのこと気に入ってるよね? 夜中に部屋抜け出して時々会いに行ってるの、知ってるんだよ?
「その2体、欲しいなら天上界の倉庫に収納しておこっか? とりあえず、この家を借りることにすれば中の物は自由にして良いって不動産屋の人言ってたよね?」
「べべべ、別に欲しいと言うわけではありませんわぁ〜ん。ただ、メズとオズに似ていたから雪音様が気にいると思っただけなのですわぁ〜」
恥ずかしがらなくても良いと思うんだけどなぁ?
「ありがと♪ じゃ、持って帰って宿屋の私達のお部屋に飾ることにするね!」
そう言って私はメズとオズに似た襟巻き蜥蜴のフィギュアを天上界の倉庫に収納してあげた。
「ど、どういたしましてなのですわぁ〜ん♪」
ラスィヴィアはとっても嬉しそうだった!
「雪音ちゃん、まだ全部のお部屋を見て回っていないのに借りることに決めちゃったんですかー?」
「うん。このお部屋の内装、趣味も悪くないし、壁に酷い汚れがあるわけでもないし、ここら辺の商品貰っちゃって良いならお買い得だと思うんだ」
「で、では、雪音様! このプラーミャ様に似た赤いドラゴンの人形も宿に持ち帰ってもよろしいですわよね!?」
ラスィヴィアが今度はドラゴンのフィギュアを私に見せて来た! ラスィヴィアってひょっとして爬虫類が好きなのかな?
「はいはい、じゃ、これも収納っと」
「雪音ちゃん、このお人形さんもよろしくお願いしますー♪」
ラピがさっきの可愛いお人形さんを私に差し出して来た。
「了解。2人とも、他に持ち帰りたい物はある?」
「他は特に興味を引かれませんので大丈夫なのですわぁ〜ん♪」
「私もないのですよー。そこの大きな振り子時計さんは気になりますけど、ここでお仕事するなら持ち帰る必要ありませんからねー♪」
「じゃ、一応ほかのお部屋も見に、って幽霊呼び寄せる魔導具らしき物を探すの忘れてたよ。なんかそれらしい物ってこの部屋にある?」
「剣と盾を構えた骸骨のお人形さんがあるので私はこれに賭けることにするのですよー♪」
「なら、私はこの水晶で作られた人間の頭蓋骨に致しますわぁ〜ん♪」
うっわ。マヤ文明の水晶髑髏みたいなのも展示されてたんだ!? 水晶髑髏って言ったらマヤ文明以外の所からも出土してて、中には呪いの水晶髑髏って言われてるのもあったっけ? 確かに呪いの魔導具っぽいね! なのに、それを平気で手に持っちゃうラスィヴィアの神経が私にはよく分からないよ……。
とりあえず私は2人に内緒でラスィヴィアとラピが手に持ってる水晶髑髏と骸骨兵士のフィギュアを鑑定魔法を作って鑑定してみた。どっちもただの作り物だったから、私はホッと胸をなでおろした。
「雪音ちゃんは何か持っていかないんですかー?」
「私は他の部屋にある物にするよ。じゃ、次の部屋行くよ〜」
そう言って私達は他の部屋を見て回ったあと、入り口のフロアへと戻って来て魔法で作り出したテーブルの上に呪いの魔導具だと各々が思った品を展示した。
ちなみに私は鬱蒼とした木々に囲まれた廃墟のような家の窓の中から薄気味悪い老婆がこちらを見て何かを訴えているような絵 (額入り) を持って来た。他にも額入りの絵が部屋に飾ってあったんだけど、これだけなんか異質だったから気になったんだよね。ただ、まぁ残念?なことに絵画の中から幽霊達が飛び出して来るような代物じゃなかったけどね。
入り口でみんなの戻りを待ってると「がぅがぅ♪」って鳴きながらクゥーが走って戻って来た。
「クゥーちゃん、地下に魔導具っぽい物はありましたかー?」
「がぅ♪」
「あったんだ? クゥーが収納して持って来たの? それとも、おっちゃんが運んでる最中かな?」
「キュッキュウ〜♪」
って言ってる間に廊下の向こうからスカーレットちゃんを肩に乗せたロウのおっちゃんが大きな壺を両手に抱えてこっちにやって来た。
「おっちゃん、なんでわざわざそんな重そうな壺運んでるの? クゥーに収納してもらえば良かったのに」
「俺もそうしてもらいたかったんだが、この壺ん中に生きた蟲が入ってるみたいで収納できなかったんだよ」
「がぅがぅ」
そっか、生き物は天上界の倉庫にしまえないもんねー。なら、仕方ないね。
「壺に随分と土が付いていますねー?」
「床下の土の中にでも埋められていたのかしらぁ〜ん?」
「まあな。クゥーの奴がしきりに石造りの床の下を気にしてたもんだから魔剣で石床をぶっ壊して土の中ぁ調べてみたら大当たりってやつだ」
「クゥー、大手柄だね♪」
「がぅ♪」
私はクゥーの頭を撫で撫でしてあげた!
———— 主様、普通の剣なら剣身に罅や鬆が入ってもおかしくない使われ方をされた妾のことも褒めるのじゃ! 妾の頑丈な体のおかげで石床を破壊できたのじゃぞ! ————
そんなに大袈裟に言わないでも良くない? ディーアは古代の武器なんだから滅多なことじゃ壊れないでしょ?とは思ったけど、拗ねられても面倒だから、ディーアのこともちゃんと労ってあげた。
「はい、じゃあこれ、ご褒美ね?」
そう言って私はおっちゃんから返してもらった魔剣ディーアの黄金造りの柄を握ってそこに埋め込まれてるエメラルドの魔石に魔力をいっぱい流し込んであげた。
———— んぅう〜♡ 主様の魔力は最高なのじゃ〜♡ ————
もう、ディーアはホント現金なんだから。
私が魔剣ディーアに魔力を注いでいると2階からソフィー達が降りて来た。
「雪音様、その壺から微弱ですが邪悪な波動を感じます」
「え〜、そうなのソフィー!? じゃあ、あたしの見つけたこの“普通の人間だと音が聞こえない笛”が呪いの魔導具じゃなかったんだ!?」
「メリッサちん、だから私が言ったじゃん。吹く人がいないのにその笛でどうやって幽霊呼び寄せるのってさ〜!」
キアラが両手を頭の後ろで組みながらケラケラ笑ってる。メリッサはエルフで人間の耳には聞こえない音も拾えるから、その笛が怪しいと思ったんだろうけど、キアラの言う通り吹く人がいないんだから幽霊は呼べないよねー。
私は呪いの解除の専門家である聖女のソフィーに質問してみた。
「じゃあソフィー。この蟲が入ってるおっきな壺は中の蟲ごと燃やして消し炭にしちゃえば良いのかな?」
これって多分、蠱毒とか言う人を呪う呪術だよね? 1つの壺の中に大量の蟲を入れて共喰いさせて、残った最後の1匹を使って人を呪っちゃうってヤツ!
「はい、その壺の処置はそれで大丈夫だと思います。ただ、邪悪な波動がそこまで強くありませんので、私がこの建物に入った時にいた無数の悪霊を呼べるほどの物でないことが気になります……」
「それっぽいのに違うのかよ? 運んで来て損したぜ」
「くぅーん」
ロウのおっちゃんとクゥーが、がっかりしている。
「この壺が原因ではなかったんですねー」
「そこの聖女? ちなみに私達が持って来たこれらの品々から何か感じ取れないのかしらぁ〜ん? 特に私の選んだ水晶髑髏からとか?」
ラスィヴィア、すっごく自信満々なところ悪いけど、私の鑑定魔法だと、ここにあるのは全部外れだったよ?
「全部関係ないと思われます」
「絶対これだと思いましたのに!? なら、こんなもの壊して差し上げますわぁ〜ん!」
そう言ってラスィヴィアがテーブルの上にあった水晶髑髏を持ち上げて地面に叩きつけようとするから私はヒョイっとそれを奪い取った!
「もう、ラスィヴィア? せっかくの美術品を壊そうとしちゃダメでしょ?」
「その水晶髑髏が私を騙したからいけないのですわぁ〜ん」
私が注意するとラスィヴィアはぷいっとそっぽを向いてしまった。
『騙した』って自分がそう思い込んだだけなのに……。
「ラスィヴィアさん、物に当たるのは良くないのですよー? それに雪音ちゃんの所有物になる物なんですから大切に扱わないとー」
よし、ふてくされたラスィヴィアの相手はラピに任せることにしよう! にしても、じゃあ幽霊を呼び寄せる魔導具は一体どこにあるのかな?
「雪音っち、はい、これ。2階の書斎にあった机の引き出しの中に入ってた日記なんだけど、興味深いことが書いてあったから読んでみてよ」
「キアラ、ありがと♪ でも、興味深いって一体何が書いてあったの?」
「いいから読んでみてって! それ読めば、なんでこの建物に幽霊が出るか分かるからさ!」
なんか、ろくでもないことが書かれてそうなんだけど……。
とりあえず私は魔法で椅子を作ってそこに座り、日記を口に出して読んでみた。




