第10章 雪音ちゃんと村娘達 146 〜 絶滅危惧種ビリビリスパイダー親子、冒険者3人組に狙われる!〜
ギーコ、ギーコ♪
「きゃはは♪」
「楽しいね〜♪」
「頬を撫でる風が気っ持ち良い〜♪」
「速い速〜い♪」
「ねぇ、そろそろ私と変わってよぉ〜!」
「あともう少ぉ〜し♪」
ギーコ、ギーコ♪
子供達が楽しそうにブランコで遊んでいるここは、雪音ちゃん達の活躍によって山賊に攫われそうになっていたところを助けられた村娘のニアとその妹のミアちゃんが暮らしている、コッコの卵で有名なガッセルドの村の入り口から少し離れた所にあり、
トレントの森で巨大蟷螂の大群に襲われていたところをやはり雪音ちゃん達によって助けられた電撃蜘蛛親子が巣を張って暮らしているポム ( リンゴに良く似た果実 ) の木が何本も雪音ちゃんの手によって植林された場所である。
なぜにブランコが村の外側に置いてあり、子供達の遊び場になっているのか?
それは電撃蜘蛛親子が巣を張るのに必要なポムの木を雪音ちゃんがトレントの森から大量に転移させて植林した後に、ミアちゃんとその幼馴染のティム君が電撃蜘蛛にお願いして出してもらった強靭で柔軟性のあるぶっとい糸を使ってポムの木にブランコを作ったからであった。
以来、この場所は子供達の遊び場となっており、子供達が危険な目に遭うことのないように雪音ちゃんの下僕である電撃蜘蛛親子が目を光らせる日々が続いていたのであるが、今日、その平穏を崩そうとする者達が現れた!
◇◆◇
「へ〜え? 電撃蜘蛛がこの村にいるって噂、ガセじゃなかったんだな?」
「なっ! 俺が言った通り来てみて良かっただろ!」
「まあな? 昔はトレントの森に沢山いたんだが乱獲し過ぎちまったせいであの森に電撃蜘蛛はいなくなっちまったからな。まさかこんな近くの村で生き残りが人間と暮らしてるなんてビックリだぜ!」
ブランコで遊んでる子供達を見守るように側で控えている電撃蜘蛛親子を遠くから覗き見ていた3人の冒険者達の会話である。
「この辺りじゃ希少で貴重な魔物になってるから、アイツ捕まえてギルドに持ち帰れば俺達もついに大金持ちの仲間入りよお!」
「電撃蜘蛛の白銀の体躯と宝石のような青い瞳は貴族達に人気があるから剥製にすれば高く売れるし、口やケツから出される糸は電撃を引き寄せる性質や電撃に耐性があるから俺ら冒険者にとっても有益だしな! 今なら1体いくらぐらいで売れるんだろうな?」
「なぁなぁ、デカいのを連れて帰るのは無理だから倒してバラして持ち帰って金に換えるとして、ちっこい方は生け捕りにして糸を吐かせ続ければ、俺達ひょっとして一生金に困らないんじゃないか!?」
「おおう、その通りだな!? お前、今日は頭冴えてるじゃねえか!?」
「にしてもガキどもが邪魔だな? 追っ払うか?」
「下手に大人連れて来られてもマズいだろ? 夕方か夜になってからにしないか?」
「それもそうだな? ならここの名物でも食って時間でも潰すか?」
「そりゃあ良いな! ここで取れる卵は質が良いって話だから旨い卵料理が食えるかもな!」
「そう言えば、その卵料理の中にアイスクリームって言う、冷えてて旨い食いもんがあるらしいぞ?」
「はぁ? 冷えてて旨いだぁ? 冷えてたら普通マズいだろうが? 何言ってんだ、お前?」
「嘘じゃねえって! 電撃蜘蛛の話だってガセじゃなかったんだから俺のこと信じろよ!?」
「じゃあ、もしそのアイスクリームとやらがマズかったら、今日の昼飯はお前の奢りだかんな?」
「あー良いぜ! その代わり旨かったら、俺の分はお前らが払えよ!」
「旨かったらな!」
「つーかよぉ? 俺ら、もうすぐ大金持ちになれるんだから誰が払うとか考えなくても良くねえか?」
「それもそうだな?」
「「「ぎゃははははは」」」
3人の冒険者達は馬鹿笑いをしながらガッセルドの村の中へと入って行ったのであった……。
◇◆◇
そして、夕方。3人の冒険者達が村の外に戻って来るとブランコで遊んでいた子供達は全員いなくなっていたので、3人はほくそ笑んだ。
「へへ、邪魔なガキどもは村へ帰ったようだな?」
「子供に残酷な場面は見せちゃあマズいもんなあ、おい?」
「よく言うぜ? 顔が笑ってんぞ?」
「おじちゃん達、こんな所で剣なんか抜いて何するつもりなのぉ〜?」
高所にある木の枝から蜘蛛の糸を垂らしてもらって地面にシューッと降り立ったミアちゃんが3人の冒険者達の後ろから声を掛けた!
ちなみに、蜘蛛の糸はミアちゃんが地面に降りてすぐにちっちゃい方の電撃蜘蛛によって回収されている。
「うお!? なんだ、このガキ!? どこから湧いて出やがった!?」
「お、お嬢ちゃん? お・に・い・さん達はこれから魔物を狩りに行くから剣を抜いただけだぜ?」
「ほら、もう日が暮れるんだからガキはとっとと村へ帰るんだな! さもねえと、こわ〜い魔物にとって喰われちまうぞ?」
「魔物を狩りに行くのぉ? ここのポムの木に住んでる電撃蜘蛛さん親子はミア達のお友達だから狩っちゃダメだよぉ?」
「そうか、そうか、嬢ちゃんのお友達なのか! 分かった分かった! なら、その魔物は狩らないから、嬢ちゃんは安心して帰るんだな!」
「そろそろ夕飯の時間だろう? おうちの人も心配してるだろうから早く帰るんだ! ( 邪魔だから早く帰れ、このクソガキ! )」
「俺らが山賊だったら、どうすんだ? 帰らねえんだったら攫っちまうぞ?」
「電撃蜘蛛さん親子にその剣向けたら、ミア許さないからね? じゃーね、おじちゃん達」
そう言い残してミアちゃんはトテトテと村の入り口に向かって走って行った!
「なんか気味のわりいガキだったな?」
「そうか? 普通に可愛かったと思うが?」
「おいおい、さっきの『攫っちまうぞ?』って言葉、実は本気だったのかよ?」
「ばーか、んなわけあるか? ガキも村の中に入ったみてえだし、とっとと金のなる木を探すぞ!」
「だな!」
「あのガキ、衛兵とか呼びに行ったりしてねえだろうな?」
ミアちゃんの姿が村の入り口の向こう側に消えたのを確認してから3人の冒険者達は沢山あるポムの木を見上げ、電撃蜘蛛探しを開始した!
「いたぞ! 電撃蜘蛛だ!」
「ギギッ?」
「随分と高い所にいるな? どうやって引きずり降ろす?」
「お前の持ってる古代の武器の斧で木を切り倒せば良いんじゃねえか?」
「切ってるうちに逃げられるんじゃないか?」
「それもそうだな? なら、木を全部燃やしちまうか? そうすりゃ降りて来るだろ?」
「馬鹿か、お前は!? んなことしたら衛兵がやって来ちまうだろう!?」
「来ると思うか? 村の外だぞ? 村で大事に飼ってるんだったら村の中で飼うだろ?」
「もし、衛兵がやって来たら、どうすんだ?」
「村の側で危険な魔物が巣を張ってるのを見つけたから討伐してやろうと思ったって言えば良いんじゃねえか? 実際、電撃蜘蛛は危険な魔物なんだしよお?」
「分かった。んじゃま、そう言うことにして燃やすとするかって、おいおい、電撃蜘蛛の奴、地面に降りて来やがったぞ!?」
「住処を燃やされる前に俺らを倒そうってか? ありがてえ! 燃やす手間が省けたぜ!」
「コイツをブッ殺して、ちっこいのを生け捕りにすりゃあ、俺達ぁ、大金持ちよ! お前ら、抜かるなよ!」
「「おう!」」
チャキッと剣を構える3人の冒険者達!
地面に降り立った大きい電撃蜘蛛さんママがシャー!と両前脚を上げて3人の冒険者達を威嚇する!
すっごく大きい電撃蜘蛛さんママの頭の上にちょこんと乗っかってる手乗りサイズの小さい電撃蜘蛛さんも両前脚を上げて3人の冒険者達を威嚇する!
「へっ、人間に見つかるような所で暮らしてるお前らが悪いんだぜ? 覚悟すビャビャビャビャビャビャビャ!?」
「お、おい、どうしジャジャジャジャジャジャ!?」
「なっ!? で、電撃攻撃だとぉおおおお!? コイツらは口からまだ糸を吐き出していないのにどうして電撃が!? しかも、空から雷のように落ちて来るっておかしいだろ!?」
「おかしくないよぉ? だってソレ、雷だもん。雷はお空から落ちるんだよぉ? おじちゃん達、そんなことも知らないのぉ?」
「なっ!? お、お前はさっきのクソガキ!? まさかこんなガキが魔法をヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォヴォ!?」
「むぅ、ミア、クソガキじゃないもん!!」
怒ったミアちゃんが腕輪をした方の手の平を1人残った冒険者へと向けると空から青い雷が落ちて来て冒険者に感電地獄を与え続けた!
しばらくして感電地獄が終わると、3人の冒険者達は全員地面に倒れ伏した!
「ミア、さっき電撃蜘蛛さん親子にその剣向けたら許さないからね?って言ったのに、おじちゃん達、剣向けたよね? だから、これはそのお仕置きなの!」
ミアちゃんが自分のことをクソガキ呼ばわりした冒険者の顔の前にしゃがみ込んで木の棒で顔をツンツンしながら、そんなことを言うと、
「くっ、こ、こんなことしてただで済むと思ってんのか、このクソガキ!? 身体が動くようになったら、その可愛いおべべを引き千切って犯してやるから覚悟しろや!」
と、雷に耐性がある防具を着ていたからか1人だけ未だに喋る元気のある冒険者が暴言を吐いた!
「お仕置きが足りないようなの! おっきい電撃蜘蛛さん、あとお願いなのぉ!」
「ギギッ♪」
シュルシュルシュルシュル!
ミアちゃんにお願いされた電撃蜘蛛さんママは感電して動けなくなった冒険者の仲間の身体を2本の前脚で器用に回転させながら口から吐き出したぶっとい糸でグルグル巻きにし始めた!
「お、おい、俺の仲間に何してやがる!? や、やめろ!? まさか俺達を喰うつもりなのか!?」
「ちっちゃい電撃蜘蛛さん、この人うるさいから黙らせて欲しいの!」
「キキッ♪」
シュルシュルシュルシュル!
「や、やめ、ングッ!? ンー!? ンー!?」
「うん、少し静かになったの♪ ちっちゃい電撃蜘蛛さん、ありがとうなの♪」
「キキッ♪」
ちっちゃい電撃蜘蛛さんは両前脚を頭上に持ち上げて歓喜のダンスを踊り始めた!
「ンー!? ンー!? ( お、俺達が悪かった! もう2度とこんなことはしないから許してくれぇえええ!? )」
「ンー、ンー、うるさいのぉ……」
「キキッ!」
ミアちゃんがボソッと呟いた言葉をしっかりと聞いていたちっちゃい電撃蜘蛛さんは口から糸を飛ばして冒険者に着弾させ、その糸に電撃を走らせた!
「( アババババババババ!? )」
冒険者は電撃を浴びながら思った。
「( く、くそぉおおお!? 数日後には電撃蜘蛛どもを売った金で薔薇色の人生が待っている、はずだった、の、に…… )」
ガクッ。
冒険者は気絶した!
すると、ちっちゃい電撃蜘蛛さんが冒険者の頭の上に乗っかり、両前脚を頭上に持ち上げて勝利のダンスを踊り始めた!
「じゃあ、ミアはそろそろ、おうち帰るね? 早く帰らないとニアお姉ちゃんに怒られちゃうの!」
「ギギッ!」( ̄^ ̄)ゞシュタッ!
「キキッ!」( ̄^ ̄)ゞシュタッ!
電撃蜘蛛さん親子はタッタッタッと走って帰って行くミアちゃんを右前脚で敬礼して見送ったあと、糸でグルグル巻きにした3人の冒険者達をポムの木の枝に吊るし始めた!
◇◆◇
<ミアちゃんのおうちである宿屋 “渡り鳥の憩いの木” での一幕 >
「ミア? 夕飯には間に合うように帰って来なさいってお姉ちゃんいつも言ってるでしょ? 今日は何してたら遅くなっちゃったの?」
「んぅ? 電撃蜘蛛さん親子を狙う不届き者達を成敗して来たのぉ!」
「ブフォー!?」
ミアちゃんとニアのお父さんであるロッジさんが今しがた口に含んだおつゆを噴射した!
「お父さん、汚い!」
「お父さん、汚いのぉ」
「もう、あんた、汚いじゃないか!? 私の胸にあんたの吹き出したおつゆが掛かっちまったじゃないのさ!?」
ミアちゃんとニアのお母さんであるフィーナさんがおつゆで汚れた豊満な胸を布巾で拭いていく。
「す、すまない、フィーナ。そ、それよりもミア! 危ないことはするんじゃないってお父さん、いつも言っているだろう!?」
「お父さんの言う通りよ、ミア! どうして1人で危ないことするの!」
「危なくないよぉ? 雪音お姉ちゃんに貰った防御魔法が自動で発動する首飾りと雷落とせる腕輪、ちゃあんと身に着けてたし、電撃蜘蛛さん親子もいたんだよぉ?」
「あー、ミア? リザードのオズとメズはどうした? いつもは一緒にいるだろう?」
ニアの旦那様であるロウバストが額を押さえながらミアちゃんに質問をした!
「んとねー、ミアが木の上のハンモックでお昼寝するから呼ぶまで自由に遊んでて良いよって言ったから起きた時は側にいなかったの! でね、起きた時に木の下に不審な冒険者達がいたから、それ見てミア、ビビッと来たの! きっと電撃蜘蛛さん親子を狙ってると思って」
「思って、どうしたんだい、ミア?」
布巾で胸に付いたおつゆの汚れを落としたフィーナさんが娘に冷静に質問をした。
「電撃蜘蛛さん親子はミアのお友達だから狩っちゃダメだよぉって注意してから村まで走ったの!」
「声を掛けずに村まで走って逃げてくれた方が良かったんだけど、まぁ、良いさね。それで、ミアは衛兵を呼びに行ったのかい?」
「違うよぉ? 不届き者達が悪事を働く瞬間に後ろからお仕置きしようと思ってすぐに戻ったの!」
「ミア、どうしてそこで戻るんだ!?」
「ミア、どうしてそこで戻るんだい!?」
お父さんのロッジさんとお母さんのフィーナさんがすかさず突っ込んだ!
「雪音お姉ちゃんに貰った首飾りと腕輪があるからミアは無敵なの!」
「ミア、あなたって子は……。うぅ〜、ロウバスト様ぁ、ミアに何か言ってやってくださいよぉ〜」
お姉ちゃんのニアがロウバストの腕に抱きつき泣きついた!
「そうは言ってもだなぁ? ミアのことが大好きな雪音が渡した首飾りと腕輪があるなら魔力切れでも起こさない限り危険の可能性はまずないからなぁ?」
雪音ちゃんがミアちゃんを守るために渡した装飾品のとんでもない防御力と攻撃力の高さを知っているからニア達の心配は杞憂に過ぎないと思っているロウバストであったが、もちろんそんなことを口にすることはできないので頭をかいて反応に困ってしまうのであった。
「ほぼ毎日、雪音お姉ちゃんに魔力を補充してもらってるから大丈夫なの!」
「だ、そうだ」
「なら、腕輪を取り上げてしまいしょう! そうすればミアも危険なことに首を突っ込もうとしなくなるはずです!」
「そんなの絶対にイヤなの! これは雪音お姉ちゃんがミアにくれた物だから誰にもあげないの!」
「ニアもミアも落ち着きなさい」
フィーナさんがヒートアップする娘達の仲裁に入った。
「お母さん、だってミアが」
「お母さん、だってニアお姉ちゃんがぁ」
「雪音様がミアにあげた物なんだから、それを取り上げる案は却下だよ。良いね、ニア?」
「そんな!? そしたらミアがまた暴走しちゃうじゃない!?」
「お母さん、ありがとうなのぉ♪」
「もちろん、今日のようなことがあったら次は没収だからね、ミア?」
「えぅ!? じゃ、じゃあ、また電撃蜘蛛さん達が悪い人達に狙われちゃったら、ミアどうすれば良いのぉ!?」
「衛兵を呼べば良いじゃないかい? そうすればミアが危険なことをしなくても済むだろう?」
「フィーナの言う通りだぞ、ミア? お父さん達はミアのことが心配なんだ」
「ミアの方が衛兵さんより強いのに……」しょぼーん。
「ミアは衛兵より強くても、か弱い女の子なんだから危険なことはしない方が良い。それにだ、雪音はミアが危ない目に遭わないようにするためにそれらの装飾品を渡したのに、ミアが自分から進んで危険な所に行くようになってしまったと知ったら雪音が悲しむんじゃないか?」
「そうです、ロウバスト様! もっと言ってやってください! この子は最近ちょっと調子に乗り過、んぅー!? んー! んー!」
ロウバストが後ろから回した手でニアの口をふさいで自分の方に抱き寄せながら「ニアは少し黙っていような?」と言ってニアを黙らせ会話を続けた。
「ミアはみんなを心配させて困らせたいのか?」
「うぅ、困らせたいわけじゃないのぉ……。ミア、雪音お姉ちゃんみたいに強くてカッコ良い女の子になりたかったのぉ……」
「雪音の周りには魔法が使える強ーい仲間がいっぱいいるだろう? 雪音は1人でなんでもかんでもやろうとしないで頼るべき所は頼っているぞ? ( 1人で暴走することもよくあるが、これは黙っておこう )」
「1人でやらなかったら悪い人達を成敗しても良いのぉ?」
「ミア、あんたって子は……。自分でやらないと気が済まないのかい?」
お母さんのフィーナさんは呆れている。
「よし、こうなったら雪音様に頼んでもっと強力な装飾品をミアに渡してもらおう!」
お父さんのロッジさんは親バカだった。
「ロッジ、それだと話が振り出しに戻っちまうだろう? ミア、とりあえず1人でなんとかしようとするのは止めるんだ。せめて、あの電撃蜘蛛親子とリザードのオズとメズの4匹が側にいる時にしような? いない時は村長の息子のグラッジが仲間のルードやガリーと一緒に村の外周の見回りをしているはずだから」
「ロウバスト、グラッジ達が外周の反対側にいてミアが探している間に襲われたらどうするんだ!?」
「オズやメズの背中に乗って移動してれば、まず追いつかれないと思うんだが……。じゃあ、雪音に頼んでミアとよく一緒にいるティムの分の装飾品でも作ってもらうか?」
「そうだねぇ。臆病で慎重なティムなら攻撃手段を手に入れてもミアみたいに無茶しないだろうし、それで良いんじゃないかい?」
「たしかにティムなら大丈夫だろうが、ティムだけだと少し不安だな……。そうだ! ついでに他の子供達の分も雪音様に作ってもらえば」
「ぷはっ。お父さん! 子供達がみんなして攻撃魔法を使えるようになったら、それこそ、子供達が悪者退治ごっこ始めちゃうでしょ!? ばっかじゃないの!?」
自分の口をふさいでいるロウバストの手を両手で退けたニアが、お父さんのロッジさんに食ってかかった!
「親に向かってバカとはなんだ!? バカとは!?」
「バカなんだから仕方ないさね。危険から遠ざけようとしてたはずなのに自分から子供達に危険なことをさせそうになってるんだからねぇ?」
「フィ、フィーナぁ〜」
お父さんのロッジさんが情けない声を出している。
「あぅあぅ、みんなケンカしないで欲しいのぉ。ミアが悪かったの。本当に困った時には雪音お姉ちゃん呼んで来てもらうから、きっと大丈夫なのぉ」
「だが、今日みたいに雪音がダンジョンに行ってる時だと、呼んでも向こうが大変でこっちに来られない可能性だってあるだろう?」
「そうよ、ミア。雪音様にだって都合が悪い時だってあるんだから」
「じゃ、じゃあその時はスカーレットちゃんに助けてもらうのぉ! スカーレットちゃんならドラゴンだし問題ないよね?」
「いや、問題大有りだろ? スカーレットを呼んだら」
「当然お母さんのプラーミャさんも付いてくると思いますから別の意味で大変なことになってしまうと思います」
「ああ。不埒な冒険者の焼死体がものの数秒で出来上がる姿が目に浮かぶぜ」
「首を掴んで持ち上げた拍子にポキッと折ってしまうかも……。どちらにせよ、他の子供達の情操教育上よろしくありません。ロウバスト様、どうしましょう?」
「ニアお姉ちゃんも、ロウバストお義兄ちゃんも、何コショコショお話ししてるのぉ?」
「ミア、この歳にもなって、おにいちゃんと呼ばれるのは恥ずかしいから、おじちゃんにしてくれないか?」
「うにゅ? ニアお姉ちゃんの夫だから、お義兄ちゃんで間違ってないとミアは思うのぉ」
「いや、間違ってはいないんだが」
「ロウバスト様、話そらされてます! ミア、危険な時にスカーレットちゃんを呼ぶと大変なことになってしまうからスカーレットちゃんを呼んじゃダメよ! 子供達が怖い思いをすることになってしまうわ!」
「えー? スカーレットちゃん達がドラゴンになって口から火を吐けば、みんな喜んでくれると思うけどなぁ?」
「良いじゃないか、ニア! ドラゴン結構! うちのミアを狙う不届き者なぞ、ドラゴンに焼かれて喰われてしまえば良いのだ! はっはっ、いでっ!?」
阿呆なことを言うロッジさんの後頭部をパコーン!とフィーナさんが側に置いてあったトレイではたいた!
「あんたは子供達の遊び場を殺害現場に変えるつもりかい!」
「そうよ、お父さん! そんなことしたらプラーミャさんが子供達に怖がられちゃうじゃない!」
「フィーナぁ、トレイで叩かなくても良いじゃないかぁ〜?」
ロッジさんが叩かれた後頭部をさすりながらフィーナさんに涙目を向けた。
「あんたが阿呆なこと言うからだよ。まったく」
「結局、ミアはどうすれば良いのぉ?」
「雪音様に頼んで空飛ぶ魔法が使えるようになる装飾品でも作ってもらいますか?」
「安全っちゃあ安全だが、そしたら今度はそっちの方が有名になって電撃蜘蛛じゃなくミアが狙われるようになるんじゃねえか?」
「あ!? そ、そうですよね。空に飛んで逃げてしまえば良いと思ったのに……」
「ブランコには子供達が怪我しないようにする魔法が色々と掛けられているんだろう? なら、ついでに防御結界の魔法が発動するようにもしてもらえば良いんじゃないかい? そうすればミアだけでなく他の子供達の安全も図れるだろうしねぇ?」
「お母さん、あったま良いのぉ♪」
「あー、そいつは良いかもな。欲にくらんだ冒険者の目がミアじゃなくブランコに向かうだろうし。あとは防御結界が発動したブランコ内から上空に打ち上げ花火の魔法でも飛ばせば、村の外周の見回りをしてるグラッジ達や雪音親衛隊のクロップ達も駆けつけるだろうからな。もちろん、俺も村にいれば駆けつけるぞ?」
「それは良い考えですね、ロウバスト様♪」
「お、お父さんも似たようなことは思いついてたんだぞ? ただ、雪音様の手をわずらわせるのも悪いと思って言わなかっただけだからな! 本当だぞ!」
「あんた……」
「お父さん……」
「すっごく嘘っぽいのぉ」
「ロッジ、下がった評価を上げようとしたんだろうが、それは逆効果だろ……」
フィーナさん、ニア、ミアちゃん、ロウバストはロッジさんにジト目を向けたのであった。
◇◆◇
一方、村の外にあるブランコの付近では、植林されたポムの木々の枝に蜘蛛の糸でグルグル巻きにされて逆さに吊るされた3人の冒険者達が喚いていた。
「クソがぁああああ!? 降ろせ! ここから降ろしやがれぇえええ!!」
「バラして売ろうだなんて2度と思わないから助けてくれよぉおおおお!?」
「だぁあああ!? 揺らして遊んでんじゃねえよ、この蜘蛛野郎が!? あぁああああああ!? 嘘、嘘ですぅううううう!? ちょ、高い、高いって!? ぎゃあああああ!? だ、大回転は止めてくれぇええええ!?」
「キキッ♪」
1人の冒険者は、ちっちゃい電撃蜘蛛のオモチャにされていた!
「クギャ?」
「グギャ?」
雪音ちゃんの下僕である巨大エリマキトカゲのメズとオズが帰って来た!
「なっ!? フ、襟巻き蜥蜴!? なんで村の近くにこんな凶暴な奴らが!?」
「嘘だろ、おい!? コイツら肉食で有名じゃねえか!? おおお、おい、蜘蛛野郎!! 今すぐこの糸を解きやがれ!!」
「ギギッ。ギギッ。ギギギギ、ギギッ!」
「クギャ!?」
「グギャ!?」
おっきい電撃蜘蛛は今日あった出来事を襟巻き蜥蜴のメズとオズに伝達した!
「クギャ♪」
「グギャ♪」
伝達を聞いたメズとオズは嬉しそうな鳴き声をあげたあと、木の枝に逆さに吊るされた3人の冒険者達へと近づいていく!
「こ、こっちに来んじゃねえ!? おおお、俺は食っても旨くねえぞ!?」
叫びまくる冒険者の顔を長い舌でベロンと舐めるオズ!
「ぎゃあああああああ!? お、俺は旨くねえって言ってんだろが!? だから舐めんじゃ、あぁああああああああああ!?」
襟巻き蜥蜴のオズは気にせずベロンベロン舐めまくったあと、冒険者の頭をパクッと口に咥えたりして冒険者の反応を楽しんだ!
「おおおおおい!? どど、どうして2匹してこっちに来るんだよぉおおおおお!? ちょ、リザード野郎!? なんでそんなに豪快に揺らすだよ!?」
襟巻き蜥蜴のメズは、蜘蛛の糸でグルグル巻きにされて逆さに吊るされた冒険者をブランコのように何度も大きく揺らし、冒険者の体が高い位置に勢いよく上がっていった所に三日月状の風の斬撃魔法を飛ばして蜘蛛の糸を切断した!
ブチッ!
「ブチって、ちょっ、糸が切れ!? ぎゃあああああああ!? 高い高い高いいいいいいい!? あっ!? おおお、落ち、落ちるぅうう!? ら、落下死は嫌だぁあああああああ!?」
空高く舞い上がったあと、地面へと落下していく冒険者!
「ギギッ♪」
木の枝の上へと移動していた大きい電撃蜘蛛が口から糸を吐き出して落ちて来る冒険者の体に巻き付けてキャッチし、地面へピョンと飛び降りて冒険者を再び木の枝に逆さ吊りにした!
「た、助かった? えっ? ちょ、なんでまた揺らし始めんだよ!? 嘘だろ、おい!? また俺を空に飛ばすつもりなのか!?」
「クギャ♪」
「ギギッ♪」
襟巻き蜥蜴のメズは大きく頷き、おっきい電撃蜘蛛は両前脚で丸のポーズを取った!
「嬉しそうな声で鳴くんじゃねえよ!? 今みたいに次も上手くいくとは限らないだろ!? 聞けよ!? いや、聞いてください、お願いしま、 <ブチッ!> ぎゃあああああああああああ!?」
冒険者の体が再び空へと舞い上がった!
「クギャ♪」
「ギギッ♪」
それを見て楽しそうに鳴き声をあげる襟巻き蜥蜴のメズと、おっきい電撃蜘蛛!
「キキッ! キキッ!」
その光景を見ていたちっちゃい電撃蜘蛛が襟巻き蜥蜴のオズに自分もやってみたいとおねだりし始めた!
「グギャ!」
襟巻き蜥蜴のオズが了解と言わんばかりに顔中よだれだらけになった冒険者を豪快に揺らし始めた!
「ふ、ふざけんじゃねえぞ!? あのでけえ電撃蜘蛛ならともかく、てめえのそのちっせえ体で俺を支えられるわけねえだろうが!? 死んだらどうしてくれるんだ!?」
「キキッ? キキッ? …………。キキッ♪」
ちっちゃい電撃蜘蛛は両前脚で丸のポーズを作った!
「はあっ!? 大丈夫じゃねえよ、この野郎!? <ブチッ> うぉおおおおおおおお!? 死ぬ、死んじまうよ、お母ちゃあああああああああん!?」
電撃蜘蛛親子やミアちゃんに酷いことをしようとした顔中よだれ塗れの冒険者は空高く放り投げられて恥も外聞もなく絶叫した!
木の枝の上に登ったちっちゃい電撃蜘蛛は落ちて来る冒険者に蜘蛛の糸を飛ばしてその体に巻き付け、地面へピョンと飛び降りた!
が、手の平サイズの電撃蜘蛛では冒険者の体を支えることは出来ず、冒険者の体は頭からズボッと音を立てて泥沼と化した地面に落下した!
「キキ……」
ちっちゃい電撃蜘蛛はお母さん電撃蜘蛛のように上手く出来なくてちょっと悲しかった。
「グギャ」
襟巻き蜥蜴のオズが、どんまいって感じでちっちゃい電撃蜘蛛に鳴き声を掛けた。
「な、なんで地面が泥沼化してんだ?」
「クギャクギャ♪ クギャクギャ♪」
襟巻き蜥蜴のメズが自分を指差しながら嬉しそうな声で鳴いている!
「そ、そんなこと今どうでも良いだろ!? 早くアイツを泥沼から引っ張りだしてやらねえとアイツ死んじまうって!?」
「んなこと言ったって逆さ吊りにされてる俺らに何ができるって言うんだよ!?」
逆さ吊り状態の冒険者2人が言い合いを始めると、
「グギャッ!」
ズボッ!
襟巻き蜥蜴のオズが泥沼に突き刺さった冒険者を引っ張り上げた!
ジャー!
そして、襟巻き蜥蜴のメズが泥だらけになった冒険者の顔目掛けて水魔法を放水すると、「ごほっ、ごほっ」と咳込んだあと、冒険者は意識を取り戻した!
「し、死ぬかと思った……」
「アイツを助けてくれてありがとよ! 殺すつもりはなかったってことなんだよな? なっ? 俺ら十分反省したから、そろそろ解放してくれないかって、おいおい嘘だろ!? なんでまた揺らし始め、っ!? おい、ちび助!? なんで、お前が枝の上に登ってんだよ!?」
「キキッ♪」
悪巧みした冒険者3人組の長い夜が今始まろうとしていたのであった……。
.
※ ヤマシログモ科の蜘蛛を除くと地球の蜘蛛はお尻からしか糸を出しませんが、異世界の蜘蛛はお尻からだけでなく口からも糸を出すことが可能です。あと、地球の蜘蛛は鳴きませんが、異世界の蜘蛛は鳴きます。




