第3章 雪狼 005 〜覚醒〜
グロ注意です。血に弱い方、ごめんなさい。
地面に叩きつけられた雪音は気絶した。体には氷の槍が4本刺さっており、地面には雪音の血が流れ出している。かなりの出血量だ。
クールビューティーが雪音の側に近づき状態を確認する。
「ふむ。こやつ、どうするかの〜。結局こやつからの攻撃はなかったのじゃ。ヤンチャな狼達に使っていた雷は、かなりの威力じゃったというのに……」
「クゥ〜ン、クゥ〜ン」
雪音の側に雪狼が近づき、雪音の顔をペロペロなめる。
「なんじゃ、お主、こやつのことが気になるのか? まあ、確かにお主がこやつに助けられたのは事実なのじゃが……」
雪狼はクールビューティーに構わず雪音を気遣い、ぺろぺろと雪音の顔をなめる。
「んっ……」
雪音はうっすら目を開ける。
視界が…ぼやけ……る…。体中が…痛い……。な…んで……痛いん…だろ………?
雪音は目を閉じて考える。
そう…だっ! あの…女…に攻撃……されたん…だ…。こっ…ちは…攻撃……し…なかった……のにっ!
痛みをこらえながら手を動かすと液体に触れる。ぴちゃ。手の平を見ると真っ赤である。
何…これ? ……血? …誰の…血? ……私? せっ…かく……転生…したのに………もう……死んじゃうの?死ぬ……。誰が…? 私が? 私は…私は…ただ、あの子を…助けてあげようと思っただけなのに!!
ゆらりと起き上がった私は、虚ろげな瞳を地面に向ける。まるで血の水たまりだ。もったいない。
ここは…剣と魔法……ファンタジーの世界…。私には…想像を現実化する魔法がある。なら! なんでもできるはず! 私の血なんだから私の思い通りに動いたっていいじゃない?
——— 雪音の青い目が、ルビーのように赤く、そして怪しく輝く瞳へと変わる ———
私は私の血へと手をかざし、
「集まれ、そして死神の鎌になれ!」
そう命じると、血が空中の1箇所に集まって大きく赤く光った。光が消えた後には、赤黒く淡く光る鎌が空中に浮いていた。
雪音はそれを手に取り、
「うん、吸血鬼って言ったら、やっぱり鎌だよね! 鎌が出せるんだから私は吸血鬼、吸血鬼は不死だから私は死なない。うん、ハッピーだね? あはっ♪」
私は鎌をクルクル回してみる。鎌だけでなく、鎌の軌跡も怪しく赤黒く光って尾を引いてる。うん、なんかゲームっぽいね?
「な、何なのじゃ、お主は?」
クールビューティーは、雪音が起き上がった時に雪音から距離を取っていた。雪音を心配していた雪狼も、雪音の異様さに怯えて離れた所から様子を窺っている。
雪音は、その赤く変わった瞳を怪しく光らせながら、声のする方へと体を向け、
「なんなのじゃ?って言われても。あなた、私に会った時、吸血鬼っぽい羽が生えてるって言ってたんだから、吸血鬼なんじゃないかな?」
とクールビューティーに言った後、雪音は自分の体に刺さった4本の氷の槍を燃やして溶かし、ハイヒールを唱える。オレンジ色の暖かい光が傷口を再生させる。
「そんな禍々しそうな武器を自分の血から生み出す吸血鬼などおらん。お主のような、けったいな吸血鬼がおってたまるかっ!」
へー、この世界の吸血鬼って自分の血から武器作れないんだー。じゃあ、私は特別な吸血鬼ってことだね。うんうん。特別って良いね♪




