第10章 雪音ちゃんと村娘達 137 〜 早く魔剣ディーアを元あった場所に戻しに行こう!⑦〜
「雪音ちゃん、呑気に魔剣さんとお話ししてる場合じゃないのですよー!? ドラゴンゾンビさんの周りに悪魔の槍がまたたくさん出現しちゃってますー!!」
「大丈夫だよ、ラピ! 今ディーアに聞いたんだけど魔剣の黒い炎は聖属性なんだって! とゆーことは、こうすれば、あんなのなんて全く脅威にならないよ!」
そう言って私は黒い炎を発動してる魔剣ディーアを左から右へと横薙いだ!
すると、黒い炎をたなびかせながら魔剣が通過した空間に次々と黒い炎の槍 ( 聖属性 ) が展開されていき、こちらに飛んで来る紫色の悪魔の槍 ( 闇属性 ) を迎撃するべく飛んで行った!
激突する色違いなだけで見た目が同じ円錐型の槍の魔法!
無数の紫色の悪魔の槍は全て私の放った黒い炎の槍によって消滅した! 相殺される形で黒い炎の槍も消えちゃったけどね?
———— おぉ〜!!! 妾に新しい技が追加されたのじゃ〜♪ カッコ良かったのじゃ〜♪ ————
はいはい、良かったね? 私はあなたのせいで超焦ったよ、はぁ〜。
でも、対抗手段があるって分かったから、もう怖くなんてないもんね!
悪魔の槍は効果なしと即座に判断したドラゴンゾンビがこっちに向かって飛んで来ようとした!
「これでも喰らうのですー! 氷の槍乱れ打ちなのですー!!」
「がぅがぅ! あぉ〜〜ん!」これでも、くらえー!
「先程はよくも私をビビらせてくれましたわね! 喰らうが良いですわぁ〜!!」
ヒュンヒュンヒュンヒュン!
ザクザクザクザクッ!! ドガドガドガドガッ!!
ラピとクゥーが大量の氷の槍を、ラスィヴィアが無数の小さい溶岩弾をドラゴンゾンビの翼に当てまくったため、翼を穴だらけにされたドラゴンゾンビは悲鳴を上げながら地面へと落下した!
あんまりはばたかせていない翼を穴だらけにされただけで落ちて来ちゃうってことは翼で空飛ぶ魔法を制御してたってことなのかな?
「んじゃま、トドメでも」
「聖なる破邪の噴火!!」
私が魔剣ディーアでトドメを刺しに行く前に、長い詠唱を終えたソフィーが魔法名を叫んだ!
すると、前方の地面で踠いていたドラゴンゾンビの身体の下から黄金の光の奔流がまるで火山の噴火でマグマが噴き上がったかのように激しく噴き上がってドラゴンゾンビの巨体を呑み込んだ!
ま、またソフィーに先越されちゃった……。がっくし。
「雪音ちゃん、また先越されちゃいましたねー? 慰めて欲しいですかー?」
にこにこしておいでおいでして来るラピをむぅと口を尖らせて睨みつけながらも、ちょっと悲しかったので私は大人しくラピに近付いて抱きついて、大人しく撫で撫でされることにしたのであった……。
「雪音ちゃんは可愛いですねー♪ あの黒い炎の槍を飛ばしたあと、すぐに追い打ち掛ければ良かったんじゃないですかー?」
「もう良いの! せっかくソフィーが長い詠唱終わらせて発動させた魔法なんだもん。使わせてあげなきゃ可哀想じゃない?」
「負け惜しみですかー?」
「ま、負け惜しみなんかじゃないもん!?」
私はラピのお胸をポカポカ叩いて抗議した!
「おおう!? なんと豪快な魔法なのだ!?」
「こいつはすげえ! これならドラゴンゾンビと言えど、ひとたまりもねえな!」
「そんなの、当たり前じゃん! 聖女ちゃんの聖なる魔法に勝てる亡者なんていないっしょ!」
「まさかドラゴンゾンビが出て来るなんて思いもしませんでしたが、これでひと安心ですね。聖女様様です」
フトモモスキー、マッド、チャラ男、ロリコンが感嘆の声を上げた!
地面から激しく噴き出す黄金の光に焼かれ続けているのか、光の中からドラゴンゾンビの悲鳴が聞こえて来る。
襲って来なければ傷付かずに済んだのにと思ったけど、よく考えてみたらディーアが無理やり呼び寄せたんだからドラゴンゾンビに罪はなかったのかもしんないと気付き、ちょっと申し訳ない気持ちになった。
「それにしてもすっごい魔法だね、ソフィー? まだ光が湧き出し続けてるよ」
「聖なる破邪の噴火は最上級の聖なる魔法の1つですから威力も見た目も派手なのです、雪音様」
最上級は見た目が派手なんだ……。神様の趣味かな?
「( 大丈夫、私は雪音様に聖なる魔法が効かない魔法を掛けていただいたのだから、きっと大丈 )」ブルブルブル。
「ラスィヴィアさん、側に近付かなければ大丈夫ですから落ち着きましょうねー?」
「ラスィヴィアさん、聖なる魔法は人間に害を与えませんのでご心配なさらなくても大丈夫です! 安心してください!」
「( 私は吸血鬼で人間なんかではないから全く大丈夫ではないのですわぁ〜! ですが、ここは人間のフリをしないと雪音様とラピ様に怒られてしまうから人間のフリをしませんと……。) ソ、ソウナンデスノ? ソレハヨカッタデスワ〜ン」
ラスィヴィア、それは流石に棒読み過ぎだよ。ソフィーにバレちゃうじゃん……。私はちょっと頭が痛くなった。
「( 予想していた通り、やはりラスィヴィアさんは魔族ですね! 決まりです!)」にこにこ。
「( はぁー、ラスィヴィアさんは大根役者さんですねー? ソフィーさんはなんか勘付いちゃったみたいですし、ちょっと気を付けておいた方が良さそうですねー )」
「雪音様、ラピ様。私、分かってますから大丈夫です! ラスィヴィアさんは雪音様達がお仕置き中の魔、ではなくて大切なお仲間なのですよね! 大丈夫です、分かってますから!」
小声で私達に話し掛け、ウィンクしながらサムズアップするソフィー!
あっ、これ絶対にラスィヴィアが魔族だってバレちゃったよね? はぁ〜、聖なる魔法が効かない魔法をラスィヴィアに掛けてあげてたのにラスィヴィアが怖がるから……。
でも、お仕置き中の魔族って……。ソフィーの中でラスィヴィアは更生中の魔族みたいに思われてるのかな? まっ、ソフィーが「魔族は粛清です!」とか言い出さなくて助かったけどね?
「( とりあえず、ラスィヴィアさんが討伐対象にならなかったってことで良いんですかねー? )」
「あっ、黄金の光が弱まって来たのですわぁ〜ん♪」
「( ラスィヴィアさん、そこで嬉しそうにしないで欲しいのですよー。はぁー )」
能天気なラスィヴィアに頭を悩ませるラピであった……。
地面から噴出している黄金の光の量が徐々に減って行くと、その光の中にいたドラゴンゾンビのシルエットが段々と浮かび上がって来た! それは腐った肉が全て消滅し、骨だけになってしまったドラゴンゾンビの無惨な姿であった!
「聖女ちゃんの聖なる魔法に掛かればドラゴンゾンビもイチコロじゃん!って、な、なんかあの骨、動いてね?」
カタカタ……。カタカタカタ……。カタカタカタカタ! ガタガタガタガタガタ!!
あっ、骨になったドラゴンゾンビが起き上がり始めちゃった……。ん? 骨しか残ってないから骸骨竜って言った方が良いのかな? まっきんきんなお骨で「あんたは黄金バッ◯の親戚か〜い!?」って突っ込みを入れたくなるけど、言っても誰にも分かってもらえないから口には出さなかった。よく見ると肋骨の向こう側におっきな紫色のクリスタル ( 正八面体、ブルーウォー◯ーみたいなの!) が浮かんでるね? あれが弱点かな?
「あ、あれ? あ、あの色は……まさか、そんな!?」
隣を見るとソフィーが顔を青ざめさせて額から汗をダラダラと流していた!
「『あ、あれ?』じゃないよ、聖女ちゃん!? は、早くもう1回、聖なる魔法の詠唱を!?」
「なんということだ!? よもや、聖女殿の聖なる魔法が効かない亡者がいるとは!?」
「マジか!? 腐った系亡者が骸骨系亡者に変わるなんて聞いたことねえぞ!?」
「骸骨系亡者と言っても、あの骸骨竜に聖なる魔法は効くのですか!? 先ほどの魔法は聖なる魔法の中でも最上級攻撃魔法だったんですよね!?」
チャラ男、フトモモスキー、マッド、ロリコンは大いに混乱してる!
「す、すみません! あの骸骨竜に聖なる魔法は効きません!」
「ソフィーさん、それはどうしてなのですかー?」
ラピの質問にソフィーが骸骨竜を指差しながら、こう答えた。
「あの骨の色を見てください! 黄金の色をしていますよね!? あれは聖属性なのです!」
「なんで亡者の癖に聖属性持ってんだよ!? おかしいだろ!?」
———— うむ! びっくりしてもらえて嬉しいのじゃ♪ 相反する属性魔法を行使するそのドラゴンは当ダンジョンの目玉の1つなのじゃ♪ 倒しがいがある分、ご褒美のドロップ品も凄いから頑張って倒すのじゃ〜♪ ————
ご褒美のドロップ品ってディーアの模造品でお引越し先でしょ? どうしてディーアのために私達が苦労しないといけないのよ……。はぁー。あの黄金の骨回収して売ればお金になるかなぁ? 黄金だし、きっとそれなりの値段で売れるよね?
「なら、雪音ちゃん達の氷魔ほ「闇属性以外の属性魔法では効果が激減してしまうので、例えそれが雪音様達の氷魔法であっても聖属性を持ったあの骨にダメージを与えることは厳しいかと思われます!」
ロリコンに最後まで言わせずソフィーが割り込んだ!
「そ、そんな!?」
「ならば撤退するしかないではないか!?」
「急いで扉まで戻るぞ! あの巨体なら扉の向こうまでは追って」
「ギャオオオオオオオオ!!!」
黄金の骸骨竜が雄叫びを上げると、後方の扉へと走って逃げようとしていたマッド達の進路上の地面の下から黄金の大鎌のような形をした骨がニョキニョキッと沢山生えて来た!
かと思ったら今度はあちこちに生えた黄金骨の大鎌達が芽吹いた双子葉類の葉のように左右にペタンと横倒しになり、その間にあった地面がボコッと膨らんで黄金色の何かが地面の下から次々と飛び出し、その姿をあらわにした!
頭は竜の頭蓋骨っぽくて眼窩には紫色の炎が灯ってる。両腕の骨は大鎌状。骨で出来た4本の脚は蟹みたいに先っちょがとんがってて、あっ!? 【く】の字の脚をバネのように縮めてピョンピョンとジャンプし始めたよ!? あ、蠍の尻尾みたいなのが見えた! SA◯のスカルリーパ◯のなっが〜い胴をすっごく短くしたようなって言うか、HZ◯のコラプタ◯に竜の頭蓋骨と大鎌の両腕くっつけたような感じって言えば良いのかな?
「な、なんだ、あの亡者どもは!? 初めて見るぞ!?」
「しかも、黄金色の骨と言うことは!?」
「今、聖女ちゃんが言ってた聖属性ってことになるじゃん!? 俺っち達、ヤバくね!?」
「こ、これでは逃げられないではないか!?」
慌てふためくマッド達!
聖女ソフィーは急いで聖なる盾の詠唱をしている!
ラピとクゥーは試しに氷の槍を、ラスィヴィアは溶岩弾を地面から出て来たコラプタ◯もどき達にぶつけまくってるけど、ソフィーの言った通り、あんまり効いていないようだった。
その様子を後ろから見ている黄金の骸骨竜が顎をカタカタと鳴らして私達をあざ笑っている! すっごくイラッとするんだけどぉお!!
「ちょっとディーア! 貴女の黒い炎でアイツらは倒せないの!?」
私は手に持ってる魔剣に聞いてみた!
———— 主様の期待に応えたいのは山々なのじゃが、生憎妾の黒い炎は聖属性ゆえ ————
「じゃあ、代わりに闇属性の炎を出せたりとかは!?」
———— うむ! 出来ないのじゃ! ————
威張って言うことじゃないでしょ!? この役立たずの厄病神ならぬ厄病魔剣め! 面倒ごとしか引き寄せないんだから! なら、別の方法を取るまでだよ!
「そう! 出せるのね! 出せるんだったら言われたら即、闇属性の炎を発動させなさいよね!」
———— 主様は何を聞いておったのじゃ!? 出せぬものは出せ、にゅおおおおおお!? ————
私はディーアの声を無視して、魔剣の噴き出す炎を黒い炎から紫色の炎へと切り替えた! さっきドラゴンゾンビが使った紫色の悪魔の槍( 闇属性 ) を私が創造魔法でコピって炎へとチェンジして発動させちゃったのである! 闇属性の魔法を私が使うのは微妙だから魔剣ディーアが使ったことにしちゃえば問題なし!
———— ぬ、主様ぁあああ!? 妾の身体が、妾の身体が闇属性に汚染されてしまうのじゃあああ!? ————
『楽して魂の引越し先を手に入れようとした罰だよ? アイツら倒すまでの間ぐらい我慢、我慢! それに黒い剣身から紫色の炎が出るってカッコ良くない?』
私がテレパシーの魔法でそう伝えると、
———— そ、そんなのはイヤなのじゃああああ!? 主様!? 主様ぁあああ!? ————
と魔剣ディーアが絶叫し始めてうるさいから、私はテレパシーの受信を遮断した!
それから、魔剣ディーアを頭上に掲げて紫炎を纏う黒水晶のような剣身から複数の紫色の炎の鳥を解き放ち、クゥーが口に咥えてる氷の剣と両前足の爪、ラスィヴィアの両手の長く伸ばした爪、マッド達の構える剣の元へと向かわせた!
『がぅ♪』ごしゅじんさま、ありがとー♪
『紫色の炎を爪に灯すのも悪くないのですわぁ〜ん♪』うっとり。
『ゆ、雪音ちゃん!? 私には!? 私にはないんですかー!?』
『ラピ、ごめんね? ほら、ラピには武器ないし、ラピがいきなり闇属性の魔法使い出すのも変だよね? だから今回は諦めて氷魔法でみんなのカバーお願いね?』
『そ、そんなー!? うぅー、私だけ仲間外れなのですー』
『ほ、ほら、ソフィーにも属性付与掛けてないし! ラピだけが仲間外れじゃないから元気出して!』
『しくしく、分かったのですよー。今回はみなさんのお守りを頑張るのですー』
『うん、お願いね!』
◇◆◇
一方、マッド達男性陣の反応はと言うと……。
「うお!? 紫色の炎の鳥が俺の剣にぶつかって来やがったと思ったら俺の剣が闇属性になりやがった!?」
「俺の剣もです! 試練の宝剣にはこのような属性付与の魔法もあったのですね! 流石」
「金髪の魔法使い殿だな! 魔剣と意思の疎通が出来るとは実に羨ましい!」
「この闇属性の紫炎が属性付与された剣があれば俺っちでも1撃でアイツらを倒すことが出来るじゃん!」
残念、チャラ男! それは無理!
「その紫色の炎は黒い炎の時と違って1撃で倒せる仕様じゃないそうだから、みんな油断しないでね!」
私は警告を発してから飛行魔法を使って黄金の骸骨竜を倒しに向かった!
「マジかよ!? 使えないじゃん!?」
「使えないマイケルがダメ出しとはチャンチャラおかしいですね? 今回は気絶しないでくださいね!」
「マイケル、1撃で倒せなくとも、これでマトモに戦えるようになるのだ! 馬鹿なことを言うんじゃない!」
「後ろのドラゴンはひとまず金髪の嬢ちゃんに任せて、俺らは目の前の蟷螂だか蠍だかよく分からねえ骸骨どもをぶっ倒すぞ!」
「「「おう!」」」
闇属性の紫炎を属性付与された剣を片手にマッド達は出口である扉への道を塞ぐ黄金骸骨の魔物達の元へと駆け出した!




