第10章 雪音ちゃんと村娘達 135 〜 早く魔剣ディーアを元あった場所に戻しに行こう!⑤〜
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氷の剣の柄を口に咥えた雪狼のクゥーがその場でグルンと1周して3方向から飛び掛かって来たゾンビ黒妖犬達の燃えている身体を上下に切断した!
すると、3匹のゾンビ黒妖犬達の燃えていた身体は氷の剣で斬られた所からピキピキピキと瞬く間に氷漬けにされたあと、地面に落ちて砕けて氷の塵となって消えていった!
「( す、凄いです! モフモフしてるだけで側にいて欲しい存在ベスト1位なのに、珍しい氷魔法をも使えるなんて!? ひょっとしてあの白銀のワンちゃんは雪狼様なのでは!? )」
目の前で起きた光景を見て聖女ソフィーは聖なる破邪の矢の魔法を発動させるための詠唱をしながら、そう思った!
「( ですが、雪狼様は氷の大精霊様の付き人ならぬ付き狼のような存在だったはず……。どうして雪音様達と一緒、はっ!? そう言うことだったのですね!
先ほど、雪音様やラピ様も氷魔法を使っておられました! 察するに雪音様とラピ様は氷の大精霊様で、それで雪狼のクゥー様もここにいると言うことなのですね! 雪音様とラピ様が女性同士でお付き合いをしているのも、きっと私達人間とは違う理で生きている大精霊様だからこそなのでしょう! 納得です!
そして、爪を長く伸ばして戦っているラスィヴィアさんは実は魔族で、種族は……、そうですね、男性の視線を否が応でも集めてしまうあの爆乳をお持ちな所から考えるとサキュバスさんなのではないでしょうか?
そんなラスィヴィアさんが雪音様達と行動を共にしているのは、きっとオイタを働いてしまった結果、雪音様達の保護監察下にあるからなのでしょう! それで、ラスィヴィアさんはオイタをした罰として雪音様達から毎日お尻百叩きの刑を受け続けているうちに被虐趣味に目覚めてしまったに違いありません! )」
所々間違ってはいるものの、聖女ソフィーの逞しい想像力はいくつかの真実に辿りついていた!
もちろん、雪音ちゃんが氷の大精霊様であると言う考えはソフィーの盛大なる勘違いなのであるが、思い込みの激しいソフィーは自分の導き出したその考えに歓喜し、既に聖なる破邪の矢の魔法を発動するのに必要な詠唱が終わっているにもかかわらず喜びに打ち震えながら雪音ちゃんと共にある未来に想いを馳せていた!
なぜなら大精霊様は、女神様が地上に遣わした神の使いであると教えられて育った聖女ソフィーにとって女神様の次に尊い存在であり、敬愛すべき存在だったからである!
「( あぁ〜、なんという僥倖なのでしょう! 私が転移魔石の事故で未来に飛ばされて来たのはきっと雪音様にお仕えせよと言う女神様のお導きだったのですね! 司教様やシスターのみんなともう会えないのは悲しくて仕方ありませんが、これも女神様が私にお与えくださった天命! 見事その御役目果たしてみせましょう! )」
そんなことを考えていたソフィーの耳に二斧流のゾンビ牛頭牛足人胴鬼 ( 身長3m以上!) の相手をしていたフトモモスキーの切羽詰まったような叫び声が聞こえて来た!
「せ、聖女殿ぉおお!? え、詠唱はまだ終わらないのだろうかぁああ!?」
「早いところ頼むぜ、聖女さんよお! そろそろコイツの相手すんのもキツくなって、うおっ!?」
ソフィーの方を見ながら愚痴をこぼそうとしたマッドに向かってゾンビ牛頭牛足人胴鬼 が斧を振り下ろそうとした!
「あぉ〜ん!!」
ヒュンヒュンヒュン! ズガガガン!!
けれど、雪狼のクゥーが横から放った3本の氷の槍の同時着弾によってゾンビ牛頭牛足人胴鬼の斧振り下ろし攻撃は軌道を逸らされ、また、マッド自身も急いで回避行動を取ったこともあってマッドはなんとか難を逃れることが出来た!
「あ、あっぶねえ、あぶねえ。助かったぜ、白いの!」
「がぅがぅ!」よそみしてたらあぶないよー!
「す、すみません! 今、詠唱が終わりました! 射線上から離れてください! 魔法を解き放ちます!」
「了解!」
「おう!」
「がぅがぅ! がぉ〜〜〜!!」まってー! ちょっと目くらまし〜!!
クゥーは口から雪狼の凍結息吹を吐いて二斧流のゾンビ牛頭牛足人胴鬼の視界を遮った!
「ブモ!? ブモォオオオオオオ!!」
ブォン、ブォン、ブォン!!
視界が真っ白になり、身体の表面が徐々に凍って行くのを感じたゾンビ牛頭牛足人胴鬼は凍りついてたまるかと言わんばかりに両手に持つ斧をその場でブンブン振り回し始めた!
「がぅ!」もういいよー!
「聖なる破邪の矢!!」
フトモモスキーとマッドが離脱し、残ったクゥーも射線上から離れたのを確認したソフィーは即座に聖なる魔法を発動させた!
15本の白銀の剣がソフィーの頭上に展開されたあと、黄金の光を纏って猛スピードでゾンビ牛頭牛足人胴鬼の元へと飛んで行った!
ブシュブシュブシュブシュ!!!
「ブ、ブモォオ〜〜〜!?」
ズズーン!
身体中を聖なる破邪の矢で穴だらけにされたゾンビ牛頭牛足人胴鬼は断末魔の叫び声を上げながら仰向けになって地面に倒れ、そのゾンビ活動を停止した!
「ふ〜、一時はどうなるかと思ったが、聖女殿の聖なる魔法が発動さえしてしまえば怖いものなしだな!」
「だな? にしても、詠唱が終わるまでの時間がやけに長く感じたぜ」
タッタッタッタッ!
「ピートさ〜ん、マッドさ〜ん、お怪我はありませんか〜!?」
ソフィーがフトモモスキーとマッドの方に走って来た!
「苦しい時に時間が長く感じるのは、まあ仕方ないことだろう。あ〜、聖女殿、我々は大丈夫だ! 幸い、避けきれなかったゾンビ牛頭牛足人胴鬼の危険な攻撃は、金髪の魔法使い殿が掛けてくれた防御魔法が防いでくれたからな!」
フトモモスキーがマッドの肩をポンと叩いてからソフィーの方に顔を向けて怪我をしていないことを告げる。
「そ、そうですか、それは良かったです! ( 詠唱が終わっていたのに少しばかり考えごとをしていたせいで、おふたりに余計な負担を掛けてしまいました……。申し訳ないこと、この上ないです…… )」ショボーン。
「がぅ? くぅ〜ん、くぅ〜ん?」どうしたのー? せいなるまほう使って、つかれちゃったー?
気落ちしてる自分の足元でクゥーが心配そうに見上げて鳴いて来るので、ソフィーはしゃがんでクゥーに声を掛けた。
「ひょっとして私のこと、心配してくれているのですか? ふふふ、クゥー様はお優しいですね。ありがとうございま」
手を伸ばしてクゥーの頭を撫でようとしたソフィーは撫でる直前に固まった!
「( はっ!? このままクゥー様の頭を撫で撫でするのは不敬に当たるのでは!? で、でも円らな瞳で見つめて来るクゥー様を撫で撫でしたくてたまりません! あぁ、どうしたら良いのでしょう!? )」
「がぅ?」どうしたのー? なでてくれないのー?
首をちょこんと傾げたあと、クゥーは自分からソフィーの手に向かって頭をこすりつけた!
「( クゥー様が自分から私の手にっ!? こ、これはつまり、撫でても不敬には当たらないと言うことですよね! クゥー様、ありがとうございます! だ、抱きついて撫で撫でしても大丈夫ですよね? クゥー様の毛、ふかふかのもふもふで、とても気持ち良いです〜♪ )」
聖女ソフィーはわりと自身の欲望に忠実な、若干自制心の足りない聖女であった……。
◇◆◇
クゥーの活躍に興奮していた私がふと我に返って後ろを向くと、こっち側でもファイヤーゾンビ犬達がいっぱいいてラピ達と戦ってた!
ヤッバ!? みんなが戦ってたのに私ったら呑気に観戦しちゃってたよ!?
あっ、ラピが凍てつく猛吹雪使ってる!? しかも雪の代わりに氷の礫飛ばすヤツ! リアルで3D螺旋弾幕放つとか容赦ないなぁ……。教えたの私だけど……。じゃなくて!
わ、私も戦わないと! ロリコンは魔剣ディーアの黒い炎を発動させてるから大丈夫そうだよね? ラスィヴィアの方も問題なさそうだし、ここはラピの方に火の玉飛ばしまくってるファイヤーゾンビ犬を倒してラピのご機嫌を取っておくことにしよう!
私は飛行魔法を使ってファイヤーゾンビ犬の後方上空から接近しながら龍の杖を氷属性の大鎌にモードチェンジし、ファイヤーゾンビ犬の首を横回転斬りでザクッと斬り飛ばしてあげた!
そして、斬られた所からピキピキピキと全身凍りついたファイヤーゾンビ犬の首無しの身体に向かって振り上げた大鎌を「えぃ♪」っと叩き付けて粉砕し、私は地面に着地した!
ちなみに、斬り飛ばされた頭の方は空中で凍りついたあと、地面に落ちて粉々に砕けたよ!
「雪音ちゃん、ありがとうございますー♪ クゥーちゃんの鑑賞はもう良いんですかー?」にこにこ。
「う、うん、みんなが戦ってるのに私だけ戦わないわけにはいかないでしょ?」
「全く戦っていない人がいるから大丈夫じゃないですかー? あの通り、ソフィーさんに痴漢して殴られたマイケルさんは気絶したままですからー」
顔を横に向けたラピの視線の先を追ってみると、チャラ男がマッドに頬をペチペチと叩かれていた!
「いや、あんなのと一緒にされたくないし……」
◇◆◇
「おい、マイケル! そろそろ目を覚ましやがれ!」
「うっ、ん……。聖女ちゃんの柔らかくておっきなおっぱい、もっと触っていたいっす……。ムニャムニャ」
「ひっ!?」
サッと両腕をクロスさせて胸をガードし、小さく悲鳴を上げるソフィー!
「とっとと起きやがれ!」
ドガッ!
「ぶべっ!?」
マッドが幸せそうな顔してるチャラ男の顔面をぶん殴った!
グッジョブだよ、マッド! 夢の中でまでソフィーにセクハラしてる奴なんか、あともう2、3発殴っちゃえ!
「マ、マッドさん、暴力は良くないと思います! 先ほど胸を鷲掴みされて私もつい殴って気絶させてしまいましたが、あれは不可抗力であってですね!?」オロオロ。
そこで庇っちゃうんだ!? ソフィーは優しいね! でも、
「変態は殴って何がダメなのか身体に覚え込ませないと同じことを繰り返しますから優しさは不要なのですわぁ〜ん」
そうそう、変態は殴って躾けないとね、って、ちょっとラスィヴィア!? それ、あなたが言うと意味が変わっちゃうでしょ!?
「痛っ〜〜。な、何すんだよ、マッド!? 痛いじゃんか!? 俺っちが何したって言うんだよ!?」
「俺らがヒーヒー言いながら戦ってる最中に呑気に気絶してた罰だ! とっとと起き上がって牛野郎の斧拾い集めるの手伝いやがれ!」
「えっ? あの斧も持って帰るの? あんな大きな斧、流石に誰も使えないんじゃ……」
竜人モードになった私なら持てても普通の人じゃ無理だよね? 柄の部分だって巨人仕様でぶっと過ぎると思うんだけど?
「もちろん、そのままは使わないぞ、金髪の魔法使い殿。鋳潰して再利用するのだ」
私の疑問にフトモモスキーが後ろから答えてくれた。振り向くとフトモモスキーはロリコンと一緒にゾンビ牛頭牛足人胴鬼の持ってたおっきな斧を運んで来ていた。
「なるほどー、あんなおっきな牛さんが使ってた武器ですから鋳潰して武器を作り直せば頑丈な武器が出来上がりそうですよねー♪」
「まっ、そう言うことだな」
「雪音様の魔法の袋に空き容量があるか確認もしないで拾い集めようとするなんて馬鹿の極みなのですわぁ〜ん」
「「「っ!?」」」
あっ、ラスィヴィアの言葉にフトモモスキーとマッドとロリコンが固まっちゃった……。まぁ、普通の魔法の袋には限界があるんだもんね? 私のは多分限界なしだと思うけど。
「ききき、金髪の魔法使い殿ぉおお!! 6本の斧をあなたの魔法の袋に入れる余裕はまだあるのだろうか!?」
「四つ足骸骨槍騎兵の落とした雷の槍と腐った牛頭牛足人胴鬼の落とした斧だったら、どっちの方が高く売れるんだ!? やっぱ、雷の方か!?」
「いえ、長期に渡る使用を考えれば、頑丈な武器を作る元になる斧の方が高く売れるのではないでしょうか!?」
「そ、そんな必死にならなくても大丈夫だよ? まだ入るから」
「ほ、本当か、金髪の魔法使い殿!?」
「流石、大貴族の娘さんは持ってる物が違いますね!」
「雪音ちゃん、ついに大貴族出身になっちゃいましたねー♪」
なんか、いつの間にかロリコンに大貴族認定されてるし……。
「んだよ、ツインテールの姉ちゃん。焦らせんじゃねえよ、ったく」
「おーっほっほっほっほ。雪音様の魔法の袋が大容量収納可で良かったですわね? 雪音様に感謝するが良いですわぁ〜♪」
ラスィヴィア、どうしてあなたが偉そうにしてるのよ?
「よし、金髪の魔法使い殿の魔法の袋にまだ空きがあると分かったのだ! 早く残りの斧も集めるぞ! マッド、マイケルと一緒に斧を回収して来い! 俺とライトは今運んで来て疲れたからお前達が戻って来るまでひと休みする!」
「おら、行くぞ、マイケル!」
「あ、ちょ、マッド引っ張るなって!? 今、聖女ちゃんに謝ってる所なのに!? せ、聖女ちゃん、ホント悪気はなかったから俺っちのこと許してよぉ〜!?」
チャラ男はマッドにズルズルと引きずられて行った……。
私が落ちてる斧の所に行って収納しちゃった方が早いんだけどなぁ? 俺達も役に立ってるアピールしたいのかな?
チャラ男達を見送ったあと、クゥーに抱きついているソフィーに視線を向けると、ソフィーがクゥーになにかブツブツ話し掛けてるから何を話してるのかなぁと思って私は耳を澄まして聞いてみた!
「クゥー様、マイケルさんは色魔に取り憑かれていると思いませんか? やはり聖なる鞭で叩いて色魔を追い出してあげた方が良いのでしょうか?」
ブホッ!?
せ、聖なる鞭で叩いて追い出すぅうう!?
「ですが、そのためにはまず聖なる鎖で四肢を拘束して裸にする必要がありますから、ここでそれをすると他の方々に変な勘違いをされそうで」
「く、くぅ〜ん?」
鎖で拘束して裸にして鞭で叩くの!? 何、その危ない儀式!? 十字架なんかを額に押し付けて追い出すとかじゃないんだ!? ってゆーか、クゥーが困った顔してるから、この話は止めさせよう、うん!と思ってたら、ラスィヴィアに先を越された!
「あら、聖女は随分と面白そうな話をしていますのね? 道具さえ貸していただければ私が代わりにあの人間を甚振って差し上げますわぁ〜ん♪」
って、話に乗っからないでよ!? あなたは叩かれる方が好きなんじゃなかったの!?
「色魔を追い出す儀式ですかー? 面白そうですねー♪ 私もやってみたいのですー♪」
「ラピまで乗っからないでよ!?」
どうしてみんなして女王様ごっこしたがるの!?
「うふふ、冗談ですよー?」
「嘘だ!? 絶対本気だったよね!?」
「はわわ!? み、みなさん、聞いていたのですか!? 小声で言っていたのに!?」
「私達、耳が非常に良いのですわぁ〜ん」
私達が吸血鬼だからってこともあるけど、ここ結構響くんだよね?
「おいライト、聞こえたか今の!? 色魔に取り憑かれたフリをすると聖女殿に鞭で叩いてもらえるらしいぞ!?」
「ピート、人のこと幼女好きの変態扱いしておいて、あなたの方こそ真の変態ではありませんか!? 俺には鞭で叩かれて喜ぶ趣味なんてありませんよ!?」
後ろの方で変態達がお互いのことを変態だと罵り合い出した! もうイヤ! 早くおうちに帰りたいよぉ〜! どうして私の周りには変態ばっかり集まって来るの!?




