第10章 雪音ちゃんと村娘達 133 〜 早く魔剣ディーアを元あった場所に戻しに行こう!③〜
ラスィヴィアが私達の奴隷なのでは?と疑いを持っちゃったソフィーの誤解をなんとか解いた私はソフィーと一緒に、向こうでマッド達が四つ足骸骨槍騎兵達の落とした≪雷をバチバチとスパークさせている槍≫を拾って1箇所に集めてる場所へと移動し、槍を地面に降ろしてるマッドに後ろから声を掛けた。
「それ集めてどうするの?」
「あん? おう、金髪の嬢ちゃんと聖女さんか? んなの、もちろん持って帰るに決まってんじゃねえか? ライトの持ってる試練の宝剣は呪われてるから手放さなくちゃあいけねえんだぞ? 売れそうなもんは持って帰らねえとな!」
振り向いて立ち上がったマッドが実に嬉しそうな顔をしている!
「売れるの、それ? 雷を纏ってるけど、それって、一時的な属性付与だから時間が経てば消えちゃうと思うんだけど……」
「なんだ、嬢ちゃん、知らねえのか? ダンジョンの魔物が落とした属性武器ってえのは時間経過じゃなくて攻撃回数によって残り使用回数が減っていくんだぞ? 魔物が自分で使ってるときゃあ、嬢ちゃんの言う通り時間経過で属性付与の効果が消えるっぽいんだがな」
「へぇ〜、そうなんだ? じゃあ、町に持って帰る途中で雷が消えちゃうってことはないんだね! でも、マイケルとライトが今運んでるのも合わせると12本も槍あるよ? 持ち帰るの大変そうだね?」
四つ足骸骨槍騎兵達は15体いたけど、雷をバチバチとスパークさせてる槍は12本しか残っていない。
周りの地面を見渡すと残りの3本は、ソフィーの飛ばした黄金の光を放ちながら白銀の剣が飛んでいく聖なる破邪の矢って魔法 ( 私が創った魔法じゃないから、剣が飛んでくのになんでアローって名前なの?って突っ込みは入れないでね?) が四つ足骸骨槍騎兵達のうち、肘付近の骨に制御と再生を司る魔石を隠していた個体を撃破する時に一緒に破壊されちゃったみたいだった。
「あー、そのことなのだがな、金髪の魔法使い殿。あなたの持っている魔法の袋に収納してはもらえないだろうか? 4本なら我々が1本ずつ運べば済むのだが12本もあると流石に厳しいので金髪の魔法使い殿に預かっていただけると非常にありがたいのだが、お願いできないだろうか?」
フトモモスキーが申し訳なさそうな顔をして私に頼んで来た。それを聞いたソフィーが不思議そうな顔をしてフトモモスキーに質問をする。
「あの、ピートさん達は雪音様とパーティーを組んでいるのですよね? 仲間である雪音様が魔法の袋をお持ちなのでしたら魔物のドロップ品を一時的に預かってもらうのにどうしてそのように他人行儀なのでしょう?」
「そういえば、ソフィーにはまだ詳しく説明してなかったよね? 女性陣と男性陣は元々別パーティーなんだよ、ソフィー」
「何を話しているのかと思えば、その話ですか? 聖女様、雪音ちゃん達は亡者を引き寄せるこの試練の宝剣のせいで困っていた俺達に護衛役を申し出てくれたんですよ」
槍を運んで来たロリコンが会話に加わった!
「流石、雪音様です! 雪音様はお優しいですね!」
ソフィーが私に尊敬の眼差しを向けて来た!
「護衛料1人銀貨15枚だったけどな? なぁ、ピート。本当に金髪の嬢ちゃんに頼むのか? 次はいくら取られるか分かったもんじゃねえと俺は思うんだが……」
「えっ!? 銀貨15枚ですか!? しかも1人分で!?」
マッドの言葉にソフィーがびっくりして私とマッドの顔を交互に見始めた!
ちなみに、銀貨1枚は日本円に換算すると約1万円ぐらいだから約15万円で護衛をしてあげてることになるんだけど、最初は銀貨20枚だったのを半額にして、そこに深夜手当を加えて ( 夜更かしは美容の大敵だからね! ) 銀貨15枚にしてあげたのにマッドはまだ根に持ってるの? いつ終わるか分かんない護衛に銀貨15枚は安いと思うんだけどなぁ?
護衛の私達がいなかったらマッド達って大量の亡者達になぶり殺しにされちゃってたか、人斬り妖刀に身体を乗っ取られてたソフィーにエンカウントしちゃって死んじゃってたわけだし?
あっ、なんか、ソフィーの顔から私に対するさっきの尊敬の眼差しが消えてがっかりしちゃってる気が!? こ、これはマズい! なんとかして心証を改善しなきゃ!? ここは1つ太っ腹な所を見せて私ががめつい子って印象を拭うことにしよう!
それに、マッド達は人斬り妖刀に操られたソフィーに怪我させられちゃってるから、そのお詫びって考えれば損した気分にもならないし! まぁ、でも、護衛契約は亡者達から守ってあげるって内容だったから、ホントはお詫びする必要ないんだけどね? そもそも、あの戦いの記憶はマッド達から消えちゃってるわけだし?
だからここで無料で12本の槍を魔法の袋に収納してあげれば、ソフィーはもちろんのこと、マッド達の心証も良くなること間違いなしだよね!
「おい、マッド!? そんなこと言ったら金髪の魔法使い殿に高い金を吹っ掛けられてしまうではないか!? は、早く謝るんだ!」
ふーん、フトモモスキーさんも私のこと、そんなふうに思ってたんだぁ? やっぱりお金取ろ ↙︎
「雪音様?」
ソフィーが私のことをジーっと見つめて来る!
↗︎ うかなぁ〜って思ったけど、ソフィーのこともあるから無料にしておいてあげるよ! ソフィーに感謝しなさいよね、あんた達? でも、イラッと来たから、ちょっとからかってあげるね?
「そんなこと言って良いの? 今回はタダで預かってあげようと思ったんだけど、やっぱり止め」
「タダで! タダでお願いします、雪音ちゃん! このままですと俺達、大赤字なんです!」
「本当か、金髪の魔法使い殿!? それは非常に助かる! ほら、マッド! さっきの発言を謝るんだ!」
「しまうのはタダで、引き出す時に金取るって腹じゃあ」
マッドは疑り深かった!
「しないわよ、そんなこと!? マッドは私のこと、極悪商人かなんかだと思ってるわけ!?」
「いやな? 嬢ちゃんがまさかタダで預かってくれるとは思ってもみなかったもんだからよお?」
「その点は俺っちもマッドに賛成じゃん?」
いつの間にか槍拾いから戻って来ていたチャラ男がマッドの発言にウンウンと同意していた!
「なら、あんた達2人からは保管料取っても良いんだけど?」
「そ、それはないっしょ!?」
「お、俺らが悪かった、この通りだ! それは勘弁してくれ!」
ペコペコ謝る2人を見て気が晴れた私は寛大な言葉を述べてあげた!
「仕方ないわね♪ 今回は見逃してあげるけど、次疑ったらお金取っちゃうからね?」
2人にそう声を掛けてから私は電撃をバチバチと迸らせている槍を1本1本手に取って魔法の袋にしまっていく。もちろん、転移魔法を使えばまとめて天上界の倉庫に収納できるんだけど、そんなことしたら多分みんなびっくりしちゃうから自重しておいた!
「あら、雪音ちゃん、せっかくの儲ける機会をフイにしちゃうのですかー?」
大岩の後ろに移動してラスィヴィアに説教?していたラピがいつの間にかやって来て後ろから私に声を掛けて来た。
「ラピ様、そもそも、その電撃を帯びた槍は聖女の戦利品であって、あの者達に所有権などないのですから、お金を巻き上げることはできないと思うのですわぁ〜ん」
その姿はラピの身体に隠れてて、槍を拾うためにしゃがんでる私には見えてないんだけど、ラピの後ろからラスィヴィアの声が聞こえて来た!
「「「「ぎくぅううう!?」」」」
ラスィヴィアの言葉に慌てるマッド達!
「あ〜、言われてみればそうだよね? マッド達がせっせと運んでたから、うっかり騙されるところだったよ。今しまってる槍は全部ソフィーの物だよね! 気付かなくてごめんね、ソフィー?」
私は白い目をマッド達に向けたあと、ソフィーの方に向き直って謝った!
「あ、あの雪音様? 私は元々非力な女性ですから、そんなに沢山の槍を持ち帰ろうとは思ってもいなかったのですけれど……」
「それはあなたが、雪音様が魔法の袋を持っていることを知らなかったからではないのかしらぁ〜ん? 転移魔石の事故で過去からその身1つで未来にやって来てしまったのですから、それらを売って少しでも生活費の足しにした方がよろしいのではなくて?」
ラスィヴィアがラピの後ろからヒョコっと顔だけ出してソフィーにそんなことを言った!
聖女に苦手意識を持ってるはずのラスィヴィア ( 吸血鬼 ) がソフィーに親切に振る舞ってるよ!? もしかして、町に帰ったらソフィーにギルドでお金を手に入れさせて独り立ちさせようとか考えてるんじゃないよね!? あと、気になったんだけど、なんでラピの後ろに隠れてるの? そんなに恥ずかしい服、ラピに着させられちゃったの?
「そ、そうですね、お金は確かに必要です……。ですが、その、良いんでしょうか?」チラッチラッ。
ソフィーは申し訳なさそうにマッド達のことをチラ見している!
「良くないよ、聖女ちゃん!? 俺っち達が前に出てたじゃん!?」
「せ、聖女殿が詠唱している間、俺達が時間稼ぎを ( ほんの少しだけではあるが ) していたではないか!? せめて、せめて1人1本だけでも槍を分けてはもらえないだろうか!?」
「こちらの人数が多かったから四つ足骸骨槍騎兵達も雷の属性付与を使ったのだと思われます! それはつまり、俺達にもその槍を売り払った時に得るお金の一部を貰う権利が少しはあるのではないかとですね!?」
「聖女さんが金が必要なのは俺も分かるぜ? でもよ、俺らも手ぶらで帰るわけにはいかねえんだよ? ツケが、ツケが溜まっててヤベぇんだ……。頼む、数本で良いから俺らにも分け前を」
うわぁ〜、なんか必死過ぎて引いちゃうネ……。
「みなさん、必死ですねー♪」
「ラピ、可哀想だから楽しそうにするの止めてあげて?」
「物語の悪女だったら、ここで『願いを叶えて欲しかったら私の足をお舐めなさい!』とか言っちゃうんですかねー♪」
「靴じゃなくて足なの!? じゃなくて! ラピの読んでる本って変なの多くない?」
「えー、そんなことないですよー? お隣のテッサちゃんのお家にもありましたしー」
私とラピがおバカな話をしている間にラスィヴィアがソフィーのフォローに入った!
「どうせこのあともワラワラと湧いて来るのですから、1人1本あげてしまえば良いのですわぁ〜ん。そうすれば、その鬱陶しい状況から解放されるのではないかしらぁ〜ん?」
「は、はい、そうですね、ラスィヴィアさん! みなさんも、それでよろしいでしょうか?」
「ラスィヴィアちゃん、君は俺っち達の救世主だよぉ〜!」ウルウル。
ラスィヴィアに鬱陶しいとか言われたのにチャラ男喜んじゃうんだ……。
「もちろんだ! 聖女殿、感謝する! ありがとう、本当にありがとう!」
「マジか!? これで酒場のツケが少しは返せるぜ!」
マッド、酒場にいくらツケ溜まってるのよ……。
「もちろんです、聖女様! ありがとうございます! ラスィヴィアさんもありがとうございます! おかげで命拾いしました!」
「見苦しいものをこれ以上見ていたくなかっただけなのですわぁ〜ん」
命拾いとか、ロリコンちょっと大袈裟じゃない? でも、これでロリコン達が落ち着いてくれて良かったよ! ラスィヴィアには感謝しないとね!
「ところでラスィヴィア、どうしてさっきっからラピの後ろに隠れてるの?」
「そ、それは!?」
「ほら、ラスィヴィアさん? いつまでも私の後ろに隠れていないで前に出ましょうねー♪」
ラピが楽しそうにラスィヴィアを私達の前へと差し出した!
「うぅ〜、どうして私が人前で肌をこんなに晒すことにぃ〜」シクシク。
「ラスィヴィアさん、その格好は露出が多過ぎではありませんか!? どうして亡者達が巣くうダンジョンでそのような格好を!? 亡者達がヨダレを垂らして寄って来てしまいますよ!?」
ソフィーがラスィヴィアの服装にビックリしてるけど、でも、今ラスィヴィアが着てる服って妖刀に操られてた時のソフィーが着てたヤツだよ? 覚えてないだろうけど。
( ちなみにどんな服かって言うと、上はセクシー系のレースアップクロックトップキャミみたいな服で、下はマイクロミニデニムのダメージ付きショートパンツだよ!)
ソレを自分が長いこと着てたって教えたら、ソフィー、顔を真っ赤にして悶絶しちゃうんじゃないかな? もちろん、言わないけどね?
「それはですねー、ソフィーさん。まさに今ソフィーさんが言った通りの目的のために、なのですよー♪ ソフィーさんの方に亡者達が行かないようにするためにラスィヴィアさんに撒き餌になってもらったのですー♪」
「そ、そんな!? 私のためにそのような恥ずかしい格好をしてくださったと言うのですか!? そんな自己犠牲をなさらなくても私は大丈夫ですのに!?」
「ラ、ラピ様ぁ? 聖女もこのように言っておりますし、元の服に着替えても」
両腕を拘束されるような感じでラピに後ろから抱き締められているラスィヴィアが羞恥で顔を赤く染めながらお願いするも、
「ダメですよー、ラスィヴィアさん? 聖女様に何かあっては大変じゃないですかー♪」
とラピに笑顔で却下されたラスィヴィアは恥ずかしくて泣きそうな顔になっている!
ラピ、絶対にそんなこと思ってないよね? 『ちょうど良い理由があって良かったですー♪』とか思ってるでしょ? ラスィヴィアにお仕置きするのは良いけど、そこにソフィーを巻き込んだらダメだと思うな? ソフィーが困ってるじゃない?
「なにあのラスィヴィアちゃんのエッロい格好!? ヤバくね!? 爆乳が、爆乳が服で強調されてるから余計に目が爆乳に行っちゃうじゃん!? うっ、鼻血がまた!?」
「あの胸の所で服を繋ぎ留めてる正面の紐、戦闘で切れたりしねえかな?」
「太ももがぁああ、太ももが俺を呼んでいるぅううう!!!」
「亡者達に襲われる前に、うちの連中に襲われそうですね? ほら、マイケルもマッドもピートも落ち着いてください。聖女様にまた白い目で見られていますよ?」
「雪音様! この方達とのパーティーは早急に解消された方が良いと思います! 雪音様が危険です!」
「あー、うん、心配してくれるのは嬉しいんだけど、危険なのは私じゃなくてソフィー達かな? あの3人は私に興味ないと思うから」
「大丈夫ですよ、ソフィーさん。このケダモノ達とのパーティーは今回だけで、依頼を果たしたら永久にお別れする予定ですからー♪」
「ラピ様ぁ〜、もう十分恥ずかしい思いはしましたから、そろそろお赦しくださいましぃ〜! コイツらが襲って来たら八つ当たりで殺ってしまいそうですわぁ〜ん!」
◇◆◇
えーっと、色々とあったけど私達は魔剣ディーアを元の場所へ戻すべく移動を再開した!
ちなみに、あのあとラスィヴィアはソフィーの取り成しもあってラピからお赦しが出たのでゴスロリ服に戻ったよ!
っで、今、私達は下層目指して歩いてるんだけど、三つ叉に道が分かれてる場所に辿り着いた! すると、真ん中の道の奥の方からドシーン、ドシーンと言う音と共に大きな影が近付いて来る!
「な、なんかヤバい奴来たんじゃね?」
「マイケル、ビビり過ぎです。雪音ちゃん達や聖女様がついているのですから何も問題はありません!」キリッ!
「ライトの言う通りだぞ、マイケル。それに、聖女殿だって凄い魔法を使えることが分かったんだ。落ち着いて行動すれば問題ないだろう」
「問題があるとすれば俺達の方が女性陣より足手まといってことだよな……。情けねえ……」
マッド、テンション低いなぁ? 私にギャンギャン噛み付いてた頃の元気なマッドはどこに行っちゃったんだろうね? あっ、頭と足が牛さんで、その他が人間のミノタウロスさんの登場だ!!
「みなさん、腐った牛頭牛足人胴鬼が現れました! その豪腕から繰り出される攻撃は脅威です! 極力回避してください!」
ロリコンが緊張を孕んだ声で私達に警告を発しながら手持ちの剣を腰に差してる魔剣ディーアと交換してチャキっと構え ( あっ、ホントは音出てなくて、ただの表現上の演出だよ?)、黒い炎を発動させる言葉を唱え始めた!
———— ふっふっふー、妾の出番なのじゃあ〜♪ 主様やぁ〜、主様が妾に授けてくれた黒い炎の鳥なる遠距離魔法攻撃は使っても構わぬかのう? 主様? 主様ぁ〜!? ————
魔剣ディーアの声は残念ながら雪音ちゃんの所まで届かなかった!
うん、身長が3mくらいあるもんね! あんな巨体 ( しかもムキムキ!) からバカでかい斧の1撃なんか喰らったらひとたまりもないよね! 両手にそれぞれ斧持ってて危険極まりないから私の魔法でサクッと倒しちゃおう!
「こおr」
「聖なる破邪の矢!!」
私が龍の杖を振りかぶって氷の槍を発動させようとしたら、ソフィーの凛とした声と共に私の背後から何本もの黄金の光を放つ白銀の剣が、その光を後方にたなびかせながらムキムキのゾンビ牛頭牛足人胴鬼に向かって飛んで行き、その身体のあちこちを貫いて穴だらけにしてしまった!
ズズーンと音を立てて地面に倒れるゾンビ牛頭牛足人胴鬼!
「わ、私が倒そうと思ったのに……」ちょっとしょんぼり。
「あらあら、ソフィーさんに先越されちゃいましたねー♪ 雪音ちゃん、よしよしなのですよー♪」
「す、すみません。雪音様に良い所を見せようと、つい張り切ってしまいました……」
「( 怖くない、怖くない、あ、あんな魔法、怖くなんてありませんわぁ〜ん。雪音様に聖なる魔法が効かない魔法を掛けていただいたのですから、きっとだだだ、だいじょう、やっぱり怖いのですわぁ〜ん!!!)」ブルブルブル。
「がぉー」
「ぴぃぴぃ」
ラピは後ろから私の頭を嬉しそうに撫で始め、ソフィーは私の正面にわざわざ回って申し訳なさそうに謝って来た。吸血鬼のラスィヴィアはソフィーの聖なる魔法を見て震え、雪狼のクゥーと私の腕輪に擬態しているスライムのピーちゃんは、そんなラスィヴィアを見て呆れている。
「あっ、うーうん、気にしなくても良いよ、ソフィー! 聖なる破邪の矢は黄金の光をたなびかせながら飛んでく姿がとっても綺麗だから何度見ても飽きないし!」
でも、さっき四つ足骸骨槍騎兵が15体現れた時は1本の飛剣で1体倒してたのに、今回は1体の魔物に15本の剣が全部飛んで行っちゃったのはなんでだろう? 1体しか魔物がいなかったから? 事前詠唱でストックした魔法は1度に使い切らないといけないんだったら、ちょっと燃費が悪い魔法だよね? 今のはどう見てもオーバーキルだったし……。
「多分大丈夫だと思いますけれど、念のため燃やしておくのですわぁ〜ん」
ラスィヴィアが身体中穴だらけになって倒れてるゾンビ牛頭牛足人胴鬼を魔法で燃やした! すると、ゾンビ牛頭牛足人胴鬼の身体は脂身が多いのか派手に燃え出し、高さ2mほどの炎の壁が出来上がってしまった!
「ラスィヴィア、この道通れなくなっちゃったじゃない?」
「ロ、腐った牛頭牛足人胴鬼は生命力が高いから用心に越したことはないのですわぁ〜ん!?」アセアセ。
ゾンビって死んでるんだから生命力が高いって言い方おかしくない?
「がぅがぅ!」また、まもの来るよー!
ドシーン、ドシーン。
「おいおい、右の道からも腐った牛頭牛足人胴鬼が来たぞ!?」
ドシーン、ドシーン。
「左からもじゃん!? さっきの奴もそうだけど、俺っち達が苦労して倒したのより遥かにデカいとかありえないっしょ!? せ、聖女ちゃん、聖女ちゃん!? は、早く詠唱を」
チャラ男がゾンビ牛頭牛足人胴鬼の方に顔を向けながらソフィーに後ろから抱きついて詠唱を促した!
「きゃあ!? マ、マイケルさん、落ち着いてください!? 今、詠唱しますから抱きつくのは止めてください!」
「マイケル!? なんて羨ま、じゃない! 聖女殿の詠唱の邪魔をするなんて、お前は一体何を考えているんだ!? 早く離れるんだ!」
チャラ男を叱りながら自分も抱きつきたいと思っているムッツリすけべのピートであった!
「ドサクサに紛れて女性に抱きつく最低男さんにお仕置きなのですー!」
ラピはチャラ男のお尻目掛けて3本の小さいつららを飛ばした!
プスプスプス!
「ぎゃあ!?」
「きゃあ!? ど、どこを触っているのですか!? この変態!!」
ドゴォーン!
お尻につららが突き刺さった反動で手が滑ってソフィーのお胸をガシッと掴んでしまったチャラ男の顔面にソフィーが振り向きざまに放ったコークスクリュー・ブローが炸裂した!
「ぶべらっ!?」
吹っ飛ぶチャラ男!
わぁー、腰の入った良いパンチだったネー? 今、ソフィーの右腕から黄金の光が螺旋を描くように溢れ出てたんだけど、なに、アレ? 煩悩とか消し飛ばしちゃったりする効果でもあったりして?
おっと、余所見してたら右側の通路にいた二斧流のゾンビ牛頭牛足人胴鬼が右腕に持ってた斧をぶん投げて来たよ!?
「氷の盾よ!!」
ドガッ!
私は龍の杖を振って眼前に分厚い氷の盾を作り出し、グルグル回転しながら飛んで来た斧を防いだ!
今度は私のターンだよ!
「絡みつく氷の茨!」
私が魔法名を言いながら地面を足でタンと軽く踏んづけると、私の足元から無数の氷で出来た茨が物凄いスピードで地を這って行く!
そして、こっちに突進して来るゾンビ牛頭牛足人胴鬼の足に絡み付いてその足を即座に凍らせた!
「ガア゛!?」
移動を封じられたゾンビ牛頭牛足人胴鬼が斧をこっちに投げようと左腕を振り上げたが、その腕は振り下ろされる前にラスィヴィアの放ったラーヴァボールによって吹き飛ばされた!
「とどめです!」
雪音ちゃんに格好良い所を見せる好機だと思ったロリコンが魔剣ディーアを片手にゾンビ牛頭牛足人胴鬼の元へと駆けて行く!
ゾンビ牛頭牛足人胴鬼は武器を持たない残った右腕を振り下ろして懐に飛び込んで来たロリコンを叩き潰そうとするも、ロリコンはそれを華麗に右ステップで躱しながら黒い炎を発動した魔剣ディーアで横薙いでゾンビ牛頭牛足人胴鬼の胴を斬り裂いた!
ゾンビ牛頭牛足人胴鬼は斬られた部分から全身へとまるで浄化されるように次々と光の粒子へと姿を変え消えていった!
「ふっ、決まりましたね! 雪音ちゃん、どうですか、俺の勇姿! 見てもらえましたか?」
前髪をファサッとかき上げて私にカッコつけるロリコン!
いや、亡者を1撃で倒しちゃうチート武器使って、そんなドヤ顔されても……。
「ほら、まだもう1体残ってるんだから気を抜いちゃダメだよ!」
私はそう言って身体を左側の通路の方に向けた!
そちら側ではマッドとフトモモスキーがクゥーと一緒にゾンビ牛頭牛足人胴鬼と戦って……、あっ、燃えてる黒いワンちゃん達もいるね? 所々腐ってるワンちゃん達だけど……。




