第10章 雪音ちゃんと村娘達 132 〜 早く魔剣ディーアを元あった場所に戻しに行こう!②〜
下半身が四つ足の魔物って言うと半人半馬のケンタウロスとか思い浮かべると思うけど、下半身は馬みたいにほっそりスラっとした感じじゃなくて、F◯14のアルテ◯ウェポンとか討鬼◯のトコヨノオ◯とかグラブ◯のコキュート◯の下半身みたいに横幅があってドッシリとした感じの骸骨の魔物だった! まぁ、お肉ついてなくて骨だけだからドッシリって言うのは変かな? 安定感がある?
「四つ足骸骨槍騎兵じゃん!?」
「頭が黒 山 羊の四つ足骸骨槍騎兵は初めて見ますね!」
「しかも、巻き角の奴な! きっと電撃攻撃を使って来るに違いねえ! 金髪の嬢ちゃん、吸雷の杭の準備を頼むぜ!!」
「はいはい、マッドに言われなくても今作ってるよ!」
「なのですよー♪」
私とラピは青い宝珠を咥えた龍の杖を左から右に振って、眼前の空中に雷や電撃を吸い寄せる杭を魔法でいっぱい作った!
遠くでは、15体の四つ足骸骨槍騎兵達が骸骨の山羊頭に生えてる巻き角をバチバチと帯電させている!
「槍を頭上に掲げたぞ!? 突進攻撃の予備動作だ! 一箇所に固まってるのはマズいから、俺らは広がりながら前に出て奴らの攻撃対象を分散させるんだ!」
「おう!」
「了解です!」
「分かってるって! 聖女ちゃんは俺っちが守る!」キリッ!
フトモモスキーが指示を出すと、4人の冒険者達は私達を後方に置いて扇状に広がって行き、盾を構えて防御態勢を取った!
私とラピは四つ足骸骨槍騎兵達が突進しながら電撃を骸骨山羊頭に生えてる巻き角から飛ばして来ても大丈夫なように、龍の杖を振り下ろして宙に作り出した沢山の吸雷の杭を4人の冒険者達の前方の地面へと撃ち込んだ!
あとはマッドやロリコン達が苦戦しないように注意しながら魔法で援護攻撃してれば良いかな〜って思ってたらラスィヴィアが私に声を掛けて来た!
「雪音様ぁ? その魔法は飛んで来る電撃や落ちて来る雷を吸い寄せるものだったかと思うのですけれど〜」
「そうだけど、それがどうかしたの?」
横を向いてラスィヴィアにそう聞いてみると、
「でしたら、あの亡者のは吸い寄せられないと思うのですわぁ〜ん」
って返事が返って来た!
「えっ、なんで!?」
「ゆ、雪音ちゃん、アレを見てくださいなのですー!」
「がぅがぅ!」
ラピが指差す方向を見てみると、四つ足骸骨槍騎兵達が頭上に掲げた槍に向かって洞窟の天井付近から雷が何度も落ちていた! 雷に打たれた槍はバチバチと激しくスパークしている!
「なにあれ、まさか!?」
そして、雷が何度も落ちたことによって一時的に雷属性になった槍を腰に構えた四つ足骸骨槍騎兵達が私達に向かって突進を開始した!
「武器に雷を纏わせちゃったの!? それは吸い寄せる対象外だよ!? こうなったら」
「……を撃ち砕け! 聖なる破邪の矢!!」
ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン! ヒュン!
「えっ!?」
私が魔法を使って一掃しようと思ったら、聖女ソフィーの凛とした勇ましい声と共に後ろから黄金の光を放つ白銀の剣が何本も凄い勢いで四つ足骸骨槍騎兵達に向かって飛んでいった!
なんでアロー!? 矢のように飛んで行ったけど、どう見ても剣だよね、アレ!?
黄金の光を後方にたなびかせながら飛んで行った白銀の剣達は次々と四つ足骸骨槍騎兵達の山羊頭の額や背骨、肩や膝などに命中し、着弾 ( 着剣?) した部位を木っ端微塵に吹き飛ばしてしまった!
しかも、破壊された骨の内部には骸骨亡者達にとっての弱点である魔石が隠されていたため、それも同時に破壊されてしまった四つ足骸骨槍騎兵達は身体の状態を維持することができなくなり、宙に浮いていた骨は全て地面へと落下し、物言わぬただの小さな骨の山と化したのであった!
「聖女ちゃん、すっげー!? 何、あの魔法!? マジぱないじゃん!?」
「雪音ちゃんの魔法も凄かったですが、聖女様の魔法も凄いですね!?」
「これが聖女殿の魔法か!? 骨の中に隠された制御と再生を司る魔石を物の見事に撃ち砕くとは!?」
「な、なんで隠された魔石の場所に正確に飛んで行くんだ!? 女神様のお導きってヤツか!?」
私達の前方でチャラ男達がソフィーの使った聖なる魔法に興奮している!
「わぁ〜、綺麗な魔法でしたねー、雪音ちゃん♪」
「がぅがぅ♪」
「ぴぃぴぃ♪」
「な、なかなかの魔法なのですわぁ〜ん」ブルブル。
ラピ、クゥー、ピーちゃんはソフィーの聖なる魔法の綺麗さに感動し、ラスィヴィアはその威力に慄きラピに抱きついて震えている!
「うん、とっても綺麗だったね♪ それに、あんなにいっぱいいた骸骨亡者達を1度に全滅させちゃうなんてソフィーの魔法って凄いんだね!」
ラピに同意したあと、私は振り返りながら後ろにいるソフィーを絶賛した!
「雪音様に褒めてもらえて嬉しいです! ただ、今のはあくまで女神様にお祈りし、女神様から不浄なる者達を討ち滅ぼす力をお借りしているだけですので、その、私の魔法が凄いと言うわけではなく、凄いのは女神様のお力であって」
ソフィーは謙遜しながらも私に褒められて照れている! その姿は実に可愛らしい♪
でも、女神様に祈れば、みんながみんな聖なる魔法を使えるって訳でもないんだから別に謙遜なんてしなくても良いと思うんだけどなぁ?
あと、ソフィーがさっきみたいに強くて派手な魔法使えるんだったら私ももう少し派手な魔法を人前で使っても大丈夫そうだよね?
思わず頬が緩む私!
「( 雪音様がニコニコしています! 天使のような微笑みです! きっと私が頼りになるとお思いになって喜んでくださっているのでしょう! あぁ、女神様、お力を貸してくださりありがとうございます! ) 雪音様、亡者の大群が出たら私にお任せくださいね? 私が一網打尽にしてみせます! 亡者や悪霊が相手でしたら私に怖いモノはありませんので!」
ソフィーが目をキラキラさせながら私に顔を近付け自信満々に言って来た!
「う、うん、お願いね?」
ソフィーの勢いに思わずたじろぐ私!
「はい、お任せください! 雪音様を脅かす不浄の存在は全て天に還してみせましょう!」
おぉ〜、なんかソフィーがやる気に満ち溢れてるよぉ!?
「息巻くのは結構ですけれど、詠唱している間は無防備で誰かに守ってもらう必要があるのですから、あまり大きな口は叩かないで頂きたいですわぁ〜ん」ブルブル。
…………。ラスィヴィア、震えながらマウント取りに掛かるのは恥ずかしいから止めようね? 大きなワンちゃんに向かって怖くてキャンキャン吠えてる仔犬さんみたいだよ?
「1つ確認したいことがあるんですけどー、ソフィーさんは動ける魔法使いさんなのですかー? もしそうなら、ラスィヴィアさんの発言は的外れなものになるので、その時はあとできつーく叱っておこうかと思うんですけどー?」
あぁ〜、そういえば、妖刀に身体を操られてた時のソフィーって私と同じぐらいの速さで動けてたし、腕力とか脚力も凄かったもんねー。もし、あれが妖刀にブースト掛けられたものじゃなかったら詠唱中でも守ってもらう必要なんてない、って、ちょっとラスィヴィア!? あなた、なんで嬉しそうな顔してるのよ!? ラピに叱ってもらえる!とか思って、こんな所で四つん這いになってお尻をラピに差し出さないでよね!?
とりあえず、私はソフィーと話してるラピの代わりにラスィヴィアのお尻を『この変態! こんな所で発情しないでよね! さっさっと立ってちょうだい!』とテレパシーをラスィヴィアに飛ばしながら踏んづけて電撃を流してあげた! もちろん、ご褒美をあげたつもりはない。この時、私は同時に《電撃を喰らうと立ち上がる魔法》を創って足からその魔法を使っていたりする!
私の足から《電撃の魔法》と《電撃を喰らうと立ち上がる魔法》をお尻に掛けられたラスィヴィアは「はぅ♪」と歓喜に満ち溢れた声を上げたあと、即座にスクッと立ち上がった!
「ゆ、雪音様ぁ♡ もう1度、もう1度私のお尻を踏みつけて電撃を流してくださいましぃ〜♡ 一瞬で終わってしまって物足りないンゴッ!? フガー!? フガー!? ( く、口が凍ってしまいましたわぁ〜ん!? )」
「あ〜もう!? 私なら踏んづけても反応しないと思ったのになんで反応しちゃうのよ!? 踏んづけてくれるなら誰でも良いの!? とりあえず、それ以上、変態発言はさせないんだから!」
私の魔法でラスィヴィアが四つん這いモードから直立モードに移行してくれたのは良かったんだけど、一緒に変態モードのスイッチも入っちゃって興奮して私に掴み掛かって来たラスィヴィアを黙らせるべく私はラスィヴィアのお口を氷漬けにしてあげた!
「雪音ちゃんもラスィヴィアさんも楽しそうですねー♪」
ギクリ!
私はギギギッと人形のようにぎこちない動きで振り返って見ると、そこには笑顔なんだけど、こめかみをピクピクとさせているラピの姿があった! しかも、その背後には水色の冷気で作られた夜叉のような姿が宙にユラユラと浮かんでいる! フリーズする私!
「ラスィヴィアさーん? 私と一緒にちょーっとそこの大岩の後ろまでついて来てくださいねー?」
「ンー!? ンー! ンー! ( ラ、ラピ様、今のは違うのですわぁ〜ん!? 少しばかり我を忘れてしまっただけなのですわぁ〜ん! それに、雪音様の踏みつけは捻りと押し込む強さがラピ様のグリグリには程遠く、やはり私にはラピ様の踏みつけがいちば )」
ラピが私の横を素通りしてラスィヴィアの腕をむんずと捕まえ連行して行った……。
ふぅ〜、セーフだよぉ〜。ラピの標的はラスィヴィアだけだったみたいで良かった、良かったと思ってたらラピが急に振り向いて、
「あっ、雪音ちゃんは館に帰ってから先ほどの件でお話がありますので覚悟しておいてくださいねー?」
と私に告げてからラスィヴィアと一緒に大岩の後ろへと消えて行ったのであった……。
私、悪くないもん。ラスィヴィアが変態を発動させちゃったのが悪いんだもん。くすん。
「あ、あの、雪音様? ラスィヴィアさんは、その、変態さんなのでしょうか? お尻を踏まれたり電撃をその身に浴びることに悦びを感じているように見受けられましたが……」
後ろからソフィーが戸惑うような声で、けれど内容は濁さずに核心を突いて来た!
一難去ってまた一難。私の顔から冷や汗がダラダラと垂れて来るけど、ソフィーにバッチリ目撃されちゃってたみたいだから隠しててもしょーがない。一緒に行動してれば、いつかバレる内容だし、ソフィーにも早めに知っておいてもらった方が良いだろうと思い、私は開き直ることにした!
「聞かなくても分かるでしょ、ソフィー? 今見たことが全てだよ?」
「で、では、雪音様は女性を足蹴にしたり鞭で叩いたりするのが実はお好きだったり」
ふぇっ!? ななな、ラスィヴィアだけじゃなくて私まで変態扱いされちゃったよ!?
「す、好きなわけないじゃない!? さっきのはラスィヴィアがお尻突き出してるからイラッと来て踏んづけただけだし、そもそも鞭なんて私使ってないよね!? どこから鞭出て来たのよ!?」
「えっ、それはその、貴族のお屋敷では粗相を働いた使用人を鞭で叩くことが往々にしてあるそうですので、ラスィヴィアさんは鞭でお尻を叩かれている内に、その、目覚めてしまったのかと……」ぽっ。
両手を頬に当てて恥ずかしがるソフィー!
ぽっ、じゃないよソフィー! なんでそこで恥ずかしがるの!? 実はソフィー、鞭で叩かれてみたいなんてゆー願望があったりしないよね!? それとも叩きたい方だったりするのかな!? 聖女なのに、そーゆーのに興味津々なのは問題あるんじゃないの!? ひょっとして聖女だから禁欲生活で鬱憤が溜まってたりしちゃって、逆にそーゆー危ないことに興味持っちゃったの!? って、待って!
「ソフィー。ラスィヴィアは使用人じゃないよ? ( 私の下僕ではあるけれど今はもう自由行動許してるし? ) どうしてラスィヴィアのこと、使用人だと思ったの?」
「それは雪音様やラピさんのことを様付けで呼んでいますし、メイド服っぽいものを着ておりますから、雪音様かラピさんの使用人なのかと」
あー、ラスィヴィアの着てる白黒のゴスロリっぽい服がメイド服に見えちゃったわけね?
「ソフィー。ラスィヴィアが着てる服は残念ながらメイド服じゃないから、あなたの推理は間違ってるよ!」
「あれはメイド服ではなかったのですね」
「うん、だからラスィヴィアは使用人じゃないんだよ? あっ、もちろん奴隷とかでもないからね?」
「お、お願いでございます、ラピ様ぁ〜。私はラピ様の ( 愛の ) 奴隷なのでございますぅ〜。先ほどは雪音様からの思わぬご褒美に、つい、はしゃいでしまいましたけど、あれは気の迷いなのでございますぅ〜。ですから、ですから、どうかその服を着ろとお命じになるのはお止めくださいましぃ〜」
向こうの大岩の後ろの方からラスィヴィアがラピに懇願する声が聞こえて来た!
私がラスィヴィアは奴隷じゃないよって言ったそばから、ラスィヴィアは何言ってくれちゃってるのかなぁ!? あと、ラピはラスィヴィアに一体どんな服を着させようとしてるのよ!?
「あ、あの、雪音様? 今、『ラピ様の奴隷』って発言が聞こえて来たのですが?」
ソフィーが疑いの眼差しで私のことを見て来る!
「うっ!? ち、違うってソフィー! ラスィヴィアはラピの愛の奴隷って意味で言ったんだよ! 言葉の綾なの! ソフィー、私の目を見て? 私が嘘言ってるように見える?」
私はソフィーの両手を取って上目遣いをしながら言ってみた! ちなみに、ちょっと涙がたまってたりするけど、これは水魔法を使った演技じゃないからね? 苦労が絶えない自分が悲しいからだよ?
「( きゃー♪ 綺麗な青い瞳を潤ませている雪音様、すごく良いです! なんて庇護欲をそそられるお姿なのでしょう! )」
捨てられそうな仔犬が捨てないで〜と訴え掛けるかのように目をうるうるさせている雪音ちゃんの姿にソフィーの心は歓喜に震えていた!
「( はぁ〜♡ いつまでもこうして雪音様の可愛らしいお姿を見ていた、いえいえいえ、雪音様をこれ以上困らせてはいけません! 雪音様がおっしゃるようにラスィヴィアさんが雪音様やラピさんの奴隷でないのであれば、先ほどのラスィヴィアさんの変態的言動から察するに、ラスィヴィアさんは以前、どこかの変態貴族に調教されてしまった奴隷だったのでしょう! なんてお可哀想に!
そして、雪音様達の手によって変態貴族から救われはしたものの、身体に刻み込まれた奴隷根性と開花してしまった性癖を所構わず披露してしまうのかもしれません! きっと雪音様達はそのことで日々悩まされているのでしょう! それでつい足が出てしまったのですよね? )」
ソフィーは雪音ちゃんの上目遣いに魅了されてしまい、雪音ちゃんに都合が良いように脳内でストーリーを作り上げてしまった! もちろんそんなことをソフィーが思ってるとは知る由もない雪音ちゃんは慌てていた!
うぅ〜、ソフィーから返事が返って来ないよぉおおお!! どど、どうしよう!?
私は焦った! けれど、しばらくするとソフィーが全ての罪を赦す聖母様のような、慈悲深く慈愛に満ちた微笑みを私に向けて、こう言ってくれた!
「大丈夫です、雪音様。私は雪音様を信じます。ラスィヴィアさんにはきっとお辛い過去があったのですよね? 良いんです、言わなくて分かります」
ソフィーは私に向かってにっこりと微笑んだあと、目を閉じてウンウンと頷いている!
あ、あれ? なんか変な勘違いされちゃった? ソフィーの中でラスィヴィアの扱いがどうなっちゃったのかちょっと気になる所ではあるんだけど、ソフィーが私のこと信じてくれるって言うなら、もうそれで良いや!
「ありがと〜、ソフィー! 信じてくれて♪」
「はい! ラスィヴィアさんは雪音様やラピさんの奴隷ではない。ただ、過去に色々あったせいで被虐趣味をお持ちになってしまった可哀想な人と思っておけばよろしいのですよね?」
「えっ、う、うん、そんな感じ、かな? あは、あはははは〜」
私は苦笑いをしながら心の中でラスィヴィアに謝った!
ごめん、ラスィヴィア! ソフィーに変な勘違いされちゃったけど、これでソフィーに嫌われないで済みそうだから私のこと許してね! 今度、あなたが欲しがってた伸縮自在の鉤爪型武器作る時に私の血をかなり多めに使って作ってあげるから!
私はラスィヴィアを物で釣って許してもらうことにしたのであった!




