第10章 雪音ちゃんと村娘達 131 〜 早く魔剣ディーアを元あった場所に戻しに行こう!①〜
とりあえず色々あったけど、今、私達一行は亡者達を引き寄せちゃう試練の宝剣をダンジョンの元あった場所に戻すため移動を再開していた。
「あっ、そういえば、誰か今、神聖帝国歴が何年か知ってる人っている?」
「あん? 金髪の嬢ちゃん、藪から棒にどうしたんだ?」
「今は確か神聖帝国歴5019年か5020年だったと思いますよ、雪音ちゃん」
「っ!?」
私の隣で歩いていた聖女さん改めソフィー ( 私が命名した! ) の息を呑む音が聞こえた! これはひょっとして、ひょっとするのかな?
「正確には5019年だな。この国と15年違いだったはずだ」
「ピート、細か過ぎじゃね? 隣の国の建国年数とか覚えててもしょーがなくね?」
「い、今の話は本当なのですか、ピートさん!? 神聖帝国歴が5019年だなんて、そんな!?」
聖女さん改めソフィーがフトモモスキーの両腕にしがみついて慌てた感じで質問している!
「ソフィーさん、慌てていますけど、建国年数に何か問題でもあったのですかー?」
とラピがソフィーに尋ねると、
「わ、私の記憶では神聖帝国歴は4501年なのです! それなのに今が5019年なんて、とても信じがたくて……。あぁ、女神様、これは何かの試練なのでしょうか? 司教様やシスター達にもう2度と会えないだなんて……」
と言うソフィーの悲痛な言葉が返って来た!
うわ、ソフィーが妖刀に身体乗っ取られてた期間ってそんなに長かったんだ!? さっきソフィーが息を呑んだ時ひょっとしてとは思ったけど、まさか500年以上も妖刀に身体を操られてたなんて……。
えっ、でも待って? どうしてソフィーは若い姿のままなの? もしかして妖刀に呪われて不老不死の身体になっちゃった?
それとも、宿主が歳とってお爺ちゃん・お婆ちゃんになっちゃうと妖刀がその身体を操る時に思うように動かせないから、そうならないように血を吸収したり返り血を浴びたりすると宿主を若返らせることができる特殊能力なんかを妖刀が持ってたからとか?
でもそうすると、妖刀の呪縛から解放された今、ソフィーが急激に歳を取ってお婆ちゃんになっちゃったりとかは……って、私の血をあげたんだからそれは大丈夫かな? 吸血鬼は長寿だし、私の眷属になったんだからソフィーにもその恩恵はあるはずだもんね!
ソフィーの体内に流れてる私の血が薄いのがちょっと不安だけど、今ソフィーが急速にお婆ちゃんになってくような様子もないし、私の血をいっぱいソフィーにあげて、ソフィーの中の私の血の濃度を上げれば、きっとそういった心配をする必要もなくなるよね?
でも、ソフィーは自分が吸血鬼になったって知らないんだから、どうやって私の血をあげよう? 私の血で作った飴でも渡す? でも、それじゃあ量が少な過ぎるよね? 果実を搾って出来た飲み物だよって嘘ついて飲ませちゃえば良いかな? 眷属はみんな美味しいって言って私の血飲んでくれるから、きっとソフィーも喜んで飲んでくれるよね! 移動中にコッソリと用意して次に休憩する時にでも飲んでもらおうっと!
◇◆◇
「わ、私の記憶では神聖帝国歴は4501年なのです! それなのに今が5019年なんて、とても信じがたくて……。あぁ、女神様、これは何かの試練なのでしょうか? 司教様やシスター達にもう2度と会えないだなんて……」
「聖女ちゃん、マジなん、その話!?」
「それも転移魔石の事故の影響ってヤツか? とんでもねえな?」
「ええ、きっと転移魔石の暴走か何かで時空を超えてしまったのではないかと」
「お、おい、聖女殿!? 大丈夫か!? 気をしっかり持つんだ!」
崩れ落ちそうになるソフィーの身体をフトモモスキーが支えた!
「あっ!? ピート、おま、ズルくね!?」
「はいはい、チャラ男さん邪魔ですから、そこどいてくださいねー? ピートさん、私が代わりますからソフィーさんをこちらに」
「あ、ああ。ラピさん、お願いする ( くっ、もっと聖女殿の柔らかい感触を堪能したかった…… )」シクシク。
ラピはソフィーを地面に寝かせ、その頭を自分の膝の上に乗せてあげた! クゥーがソフィーの顔をぺろぺろ舐めて慰めている! ちなみに、その後ろではラスィヴィアがハンカチを噛んで悔しそうにしていた!
「ってこたあ、聖女さんの知り合いは誰1人この世に残ってねえってことか。つれえな?」
「そうですね。過去に戻る魔法など聞いたことがありませんし、元の時代に戻るのは絶望的かと……。雪音ちゃんでも流石に無理ですよね?」
「うん、可哀想だけど流石にそんな魔法は使えないよ」
「そのような所業、女神様にしかできまい。聖女殿に女神様が救いの手を差し伸べてくれれば良いのだがな……」
「500年も経ってたら知り合いにエルフでもいなきゃ、聖女ちゃん、ひとりぼっちじゃんかよ……。マジ可哀想じゃん……」
場の空気が暗くなっちゃった……。でも、今がソフィーの暮らしていた時代と大幅にズレてて良かったのかも。
名前や場所の記憶を私に消されたソフィーが故郷へ帰りたいって言って神聖帝国をあちこち探し回っていつかは見つけることになるであろう故郷で、ソフィーの関係者が妖刀に身体を操られたソフィー自身の手で殺されちゃってるなんて言う悲し過ぎる事実より、
転移魔石の事故のせいで彼女が生きてた時代の500年以上も未来の世界にやって来ちゃったから司教様やシスターさん達にもう会えないって言う嘘の事実の方がまだ傷が浅くて済むよね?
それに、過ぎ去った年月があまりにも長過ぎるからソフィーが急いで神聖帝国へ帰ろうとすることもないだろうし、ソフィー一文無しさんだし、ソフィーには悪いと思うけど……。
そんなことを思いながら私はラピがソフィーを介抱する様子を眺めていた。
◇◆◇
ソフィーがショックで倒れてからしばらくして……。
「はっ!? す、すみません、私としたことが……」
意識を回復したソフィーが膝枕をしてくれていたラピに謝ると、
「いえいえ、気にしなくても大丈夫なのですよー? 親しい方々が既に亡くなっていると知って心が耐えられず気を失ってしまった方を邪険にしたりする人はいないのですー」
とラピは聖母のような優しい微笑みをソフィーに向けながら言った。
ラピは私が絡まなければ普通に良い子なんだけどなぁ〜。人をからかうのが好きな所は玉に瑕だけど……。
「そうそう、聖女ちゃん気にすることないって!」
「まぁ、倒れるのも2回目だしな? もう慣れたぜ」
「マッド、そう言うことを言うんじゃない! 聖女殿の悲しみの深さがお前には分からないのか!?」
「ですが、今後も何かの拍子にダンジョン内で気絶されると困ってしまいますね」
ロリコン、幼女以外の人に冷たくない?
「ライト、心配すんなって! 次、聖女ちゃんが気絶したら俺っちが背負って移動す」
「却下ーーー!」
チャラ男の発言に私は思わず叫んでしまった!
「な、何でだよ、おちびちゃん!?」
「マイケルはなんか下心ありそうだからに決まってるでしょ!」
「そそそ、そんなことねーし!?」
うろたえるチャラ男!
「マイケルだしなぁ?」
「ですね。どうせ背負った時に胸が背中に当たるとか、そんなしょーもないことを考えているのでしょう。あんな脂肪の塊のどこが良いのか俺には分かりませんが」
「マイケル、日頃の行いをもう少し改めたらどうだ?」
私の下心発言に続いてマッド、ロリコン、フトモモスキーがチャラ男をおとしめる発言をした! それを聞いたソフィーは軽く引きながらもなんとか作り笑顔を作って、やんわりとチャラ男に断りを入れようとする!
「マ、マイケルさん、私、大丈夫ですから! もう気絶なんてしませんから背負っていただかなくてもだい」
「待ってよ、聖女ちゃん!? 誤解だって! そんなこと、ホントこれっぽっちも考えてないんだって! 本当に善意100%から出た言葉なんだよ!?」
ソフィーの言葉を途中で遮って自己弁護するチャラ男!
善意100%とか絶対嘘だよね? 下心80%ぐらいあったに決まってるよ!
「ソイツの言うことを鵜呑みにするのはおススメしないのですわぁ〜。 私、いきなり肩に腕を回されたと思いましたら胸を、私の胸を〜〜!! あぁ〜、思い出しただけで腹が立つのですわぁ〜ん!!」ギロリッ!
「だ、だから、ラスィヴィアちゃん、それはワザとじゃないって言ったじゃん!? どうして今その話蒸し返しちゃうの!? 聖女ちゃんの俺っちに対する印象が、ガタ落ちになっちゃうっしょ!?」
「がるるるるぅ!!」
「ラスィヴィアが狂犬みたいに唸り出しちゃった……。ラピ、どうにかしてくれる?」
「お任せくださいなのですよー♪ はいはーい、ラスィヴィアさん、落ち着いてくださいねー? ドードーなのですよー? あっ、ちなみにですねー、マイケルさん。ソフィーさんのあなたに対する印象は元から高くないと思いますから気にしなくても大丈夫だと思いますよー?」
ラピが後ろからラスィヴィアを抱き締めて宥めながらチャラ男に顔を向けて毒を吐いた!
「ラピちゃん、酷くね!?」
「あ、あの、私、本当にもう大丈夫です! もう気絶なんて致しません! みなさんにご迷惑を掛けてしまったことはこれからの頑張りで挽回させてください!」
ソフィーが私の背後に立って私の両肩に手を置きながらそんなことを言った!
ねぇ、ソフィー? さり気なく私のこと盾にしてない? と思いながら私は後ろを向いてソフィーに質問をする。
「これからの頑張りって、ソフィー、何ができるの?」
「金髪の嬢ちゃん、そりゃあ、その姉ちゃんは聖女なんだから聖なる魔法で亡者どもをぶっ殺してくれるんじゃねえか?」
「はい、マッドさん。言い方はアレですが、私は聖女ですので亡者を滅する聖なる魔法が使えます! ですから、みなさんのお役に立てるはずです! 足を引っ張るようなことは今後ないと思いますので、どうかご安心ください!」
「亡者どもの巻き添いで一緒に灰にされたくありませんわぁ〜ん」
最後にボソッとラスィヴィアが呟いた!
あぁ〜、ラスィヴィアの周りを亡者達が囲んだ時にソフィーが聖なる魔法で範囲攻撃しちゃったら、吸血鬼のラスィヴィアも亡者達と一緒に消されることになっちゃうのか……。なら、聖なる魔法を受けても効かない魔法を創ってあげないとね! ソフィーの美味しい血は既に摂取済みだからソフィーの使える魔法を無効化する魔法を創るのも、お茶の子さいさいだよ!
「ラスィヴィアさん、余計なこと言っちゃダメなのですよー?」
ラピがラスィヴィアの耳元で囁いた!
「ラピ様も他人事ではないのですわぁ〜ん」
とラスィヴィアがラピに囁き返すと、ラピが私にテレパシーを飛ばして来た!
『とゆーことで雪音ちゃん、聖なる魔法が効かない魔法を創って私達に掛けてくださいなのですよー♪』
『聞こえてたから、もう魔法は創ってあるよ! ラスィヴィア、ラスィヴィア? 今、あなたに聖なる魔法が効かない魔法を掛けてあげるから心配しないでも大丈夫だよ!』
私はテレパシーの魔法でラスィヴィアにそう伝えた後、聖なる魔法が効かない魔法を掛けてあげた! ついでに、ラピとクゥー、あと、私の腕輪に擬態しているスライムのピーちゃんごと自分に同じ魔法を掛けておいた!
『雪音様、感謝いたしますわぁ〜ん♪』
『雪音ちゃん、ありがとうなのですよー♪』
『がぅがぅ♪』ご主人様、ありがとー♪
『ぴぃぴぃ♪』
みんなから感謝の言葉をもらった! えへへ♪
「雪音様、今の魔法は?」
「えっ、防御魔法だよ、防御・ま・ほ・う! ソフィーにも掛けてあげるね!」
私は青い宝玉を口に咥えている龍の杖を振ってソフィーに防御魔法を掛けてあげた!
「無詠唱で魔法を!? 雪音様、その杖は古代の武器なのですか!?」
「そうだよ!」
ホントは私の血で作った杖なんだけどね?
「聖女殿、驚くのはまだ早い。その杖は今の魔法以外に別の属性魔法、しかも珍」
「珍しい氷の攻撃魔法も無詠唱で行使できるんだよ、聖女ちゃん!」
「あの精霊や魔物にしか使うことが出来ないと言われている氷魔法ですか!?」
ソフィーがめっちゃ驚いて私の持ってる龍の杖をマジマジと見始めた!
「マイケル、俺が言おうとしていた言葉を奪うんじゃない!」
「他にも無詠唱で斬れ味抜群の氷の剣を作り出したり、普通の剣に氷属性を付与させることもできるんだぜ? 信じられるか?」
「ふっ、みなさん、雪音ちゃんは氷だけでなく雷の魔法も使っていたのをお忘れですか?」
ロリコンさん、髪をファサッとかき上げながら俺は雪音ちゃんのことならなんでも覚えています的な態度で鼻で笑うの止めて!
「いや、覚えてるけど、雷の魔法までその古代の武器から出てるって言うのは違うんじゃね? 1つの古代の武器で、そんなに沢山の魔法とか使えないっしょ?」
「金髪の嬢ちゃんも1つじゃねえって言ってたしな?」
「なら、金髪の魔法使い殿がしている腕輪が雷の魔法を無詠唱で放てる古代の武器だったりするのか?」
「がぅがぅ! がぅがぅ!」まもの、くるよー!
「みなさーん、亡者の団体さんがやって来るそうなので、お話はそこまでにしてくださいねー」
「ソフィーは私達の後ろにいてね?」
「そんな、雪音様を盾にするなんて!? 雪音様、私も戦えます!」
「戦えると言っても聖女は詠唱に時間が掛かるのですから大人しく雪音様の後ろで詠唱してるが良いですわぁ〜ん」
「ですが!?」
「ラスィヴィアの言う通りだよ、ソフィー? それに私にはコレがあるから無詠唱で即攻撃できるし、心配はいらないよ?」
私は無詠唱でいくつかの魔法を使うことができる古代の武器だとみんなに思い込ませている龍の杖をソフィーに向かってヒラヒラと振って見せた!
「そうそう、そのおちびちゃんもそうだけど、ラスィヴィアちゃんもラピちゃんも古代の武器持ってるから俺っち達より強いし心配なんていらないって!」
「がぅがぅ! がぅがぅ!」ボクもつよいよー! ひどーい!
クゥーが仲間外れにされてチャラ男に抗議してる! クゥー、ガブッとやっちゃってもOKだよ? 私が許す! 別に私だけレディー扱いされてないからとか、そんな理由じゃないよ? ホントだよ?
「マイケル、情けないことを大声で言うのは止めるんだ!」
「そうですよ。そこは俺達が雪音ちゃん達を守るから後方から援護をお願いしますと言っておけば良かったところですね」
「金髪の嬢ちゃん達がバケモンみてえに強ぇことはどうせすぐに分かることなんだから気にしなくても良くねえか?」
ちょっとマッド、私達のこと化け物扱いしないでよ!? 乙女に向かってなんてこと言うのよ!?
「わ、分かりました! それでは雪音様の後ろで詠唱を開始します!」
「おっと、んなこと言ってる場合じゃねえな? 亡者どもが来やがったぞ! 正面からだ!」
マッドの声に全員が前方を見た! するとそこには、下半身が四つ足で上半身が人間、でもって頭が巻き角を生やした山羊っていう変わったタイプの骸骨亡者達が15体ほど現れた! 手には槍を持っている!




