第10章 雪音ちゃんと村娘達 126 〜 淫乱斬り裂き魔は淫乱斬り裂き魔じゃなくて聖女様!?③〜
< 時は雪音ちゃんが聖女の血を吸いながら聖女を氷漬けにした直後に遡る…… >
私は聖女さんの希望通り、その身体を氷漬けにしてあげた! 妖刀に身体を乗っ取られて親しい人達や罪のない人達を殺してしまった聖女さんの辛くて悲しい気持ちとか自分を赦せない気持ちなんかを汲んで今の聖女さんの記憶を安らかに逝かせてあげたのだ!
それじゃあ聖女さん、約束通り貴女の身体、私の好きにさせてもらうね? 世のため人のために良いことして来た ( と思われる ) 聖女さんがこんな酷い結末を迎えるとか私的に許せないから、私の魔法で聖女さんの記憶を色々といじって次に聖女さんの目が覚めた時には妖刀と出会う前の頃に戻してあげるよ! 私の好きにして良いって言ったんだからクレームは受け付けないからね?
とりあえず魔法で聖女さんの頭の中にある妖刀に関わる一連の出来事は全部消しちゃって、自分の名前とか住んでた街の名前とかも覚えてると色々と面倒なことになりそうだから、そこは記憶喪失ってことで思い出せないようにしちゃえば良いかな?
でも、思い出が全部消えちゃうのは可哀想だから、司教様やシスター達なんかと楽しく過ごした日々は思い出せるようにしてあげた方が良いよね! じゃあ早速、取りかかるとしよう!
私は氷をすり抜けて、抱きしめていた聖女さんの身体から離れ、私は私のやりたいことをやることにした!
いや、しようと思ったら銀髪の日焼け巨乳美少女ラピが私の背後で仁王立ちしてお怒りだった!
「ゆ・き・ね・ちゃーーーん? 氷漬けにするんだったら私に殺らせてくれても良かったじゃないですかーー!!!」
「ちょ、ヤルのヤルが殺るなんだけど!? さっきのあれ、演技じゃなくて本気だったの!?」
「がぅ!?」えー!?
「ぴぃ!?」
雪狼のクゥーも私の腕輪に擬態しているスライムのピーちゃんもびっくりしている!
「それはもちろん本気なのですよー! 雪音ちゃんの腕を斬り落としたんですから、当然の報いなのですー!」
「そのあとにラピが言った聖女さんに対する優しい言葉は!?」
「あれは建前なのですー!」
「私はラピが聖女さんの罪悪感を少しでも減らすために敢えてあーゆー役を演じてるんだと思ったのに!?」
「がぉー」
「ぴー」
クゥーとピーちゃんはラピに呆れている!
「雪音ちゃんを傷つけられた私のこの怒りの気持ちは一体どこにぶつければ良いんですかー!?」
ラピはフンガー!とお怒りだ!
「あーもう、そんなに怒らないでよ〜? 回復魔法と吸血鬼の再生能力で斬り落とされた腕はこの通り綺麗にくっついたし、傷跡だった残ってないんだから」
「雪音様ぁ? 吸血鬼の再生能力ですけれど戦闘中にそこまでの回復力はございませんわぁ〜ん」
ラスィヴィアが呆れた顔をしながら私に言って来た!
「そうなの?」
「そうなのですわぁ〜ん」
吸血鬼のラスィヴィアが言うんだから私の再生能力が凄いのは、地球の吸血鬼に持ってる私の吸血鬼像が無意識に創造魔法で反映されて底上げされてるからなのかもしれないね? でも、だからってそんな規格外の人見るような目で見ないで欲しいな? 私が化け物みたいじゃない?
「ゆ・き・ね・ちゃーん?」
ラピを放置してラスィヴィアの話を聞いてしまったため、ラピが両手を腰に当て前屈みになりながら、こめかみをピクピクさせた笑顔を私の顔に近付けて来た!
むぅ、仕方ない。肉を斬らせて骨を断つか……。
「じゃ、じゃあ、今度私の身体でラピの身体洗ってあげるからそれで怒りを収めてよ?」
「っ!? ほほ、本当ですかー!? うう、嘘だったら大暴れしちゃうのですよー!?」
ラピの頬が一瞬でめっちゃ緩んだ! 超嬉しそうだ!
「ほんと、ほんと。だからもう怒らないで欲しいな?」
「し、仕方ないですねー? こ、今回だけなのですよー♪ うふふ♪ 泡だらけになった雪音ちゃんがスポンジになって私の身体に♪ ぐへ、ぐへへへ♪」
ラピは妄想の世界にトリップしてしまった!
ラピさん、チョロいよ! チョロ過ぎだよ! あと、顔がヤバいことになってるけど、それ、乙女の顔じゃないからね!?
はぁ〜、自分で言っといてなんだけど、やるの恥ずかしいなぁ……。
「それで、雪音様? この後はどうなさるおつもりなのかしらぁ〜ん?」
「がぅがぅ」
「ぴぃぴぃ」
ラスィヴィアの言葉にウンウンと頷くクゥーとピーちゃん。
「んー? 所有者の身体を乗っ取る妖刀は天上界の倉庫に収納しちゃったから問題はもう起きないし、まずは聖女さんの記憶を弄って妖刀関連の記憶を消しちゃうつもりだよ?」
「妖刀に身体を操られていた記憶を消してしまわれるのは良いお考えだと思いますけれど、そこの聖女がここにいる理由はどうなさるおつもりなのかしらぁ〜ん? 目覚めたら、なぜかダンジョンにいて記憶を失っていることになりますわよね?」
「あぁ〜、うん、確かにそうだよネー。ここにいる理由かぁ〜。うーん」
「がぅ?」どうするのー?
「ぴ〜ぃ?」
ラスィヴィアに言われたことを考えながら、とりあえず私は聖女さんに掛けた氷の彫像化を解除してその身体を地面に寝かせ ( 意識の凍結はまだそのままだよ! )、額に手を置いて聖女さんの過去の記憶を読み取り、記憶の中の聖女さんが着てた服を魔法で作って、すっぽんぽんの聖女さんに着せてあげた! いつまでも裸のままだと風邪引いちゃうからね!
「今、ちょっと考えてみたんだけど、転移魔法とか転移魔石を使った際の事故でダンジョンに転移して来ちゃったって言うのはどうかな?」
「転移魔法を使える存在なんて雪音様以外いないと思いますから転移魔石の事故の方がよろしいかと。また、聖女は有事の際に転移魔石を使って亡者や悪霊などに襲われた村や町へ移動すると聞いたことがありますので、転移魔石の事故でダンジョンに転移して来てしまったと言う理由ならば聖女に不審がられることもないと思いますわ」
「そ、そうなんだ? じゃ、問題かいけ」
「それでは次の問題なのですけれど、もし、このダンジョン内にその聖女が妖刀に操られていた時に殺し損ねた人間が残っていて偶然出会ってしまった場合はどうなさるおつもりなのかしらぁ〜ん?」
「っ!? がぅがぅ」
「っ!? ぴぃぴぃ」
ラスィヴィアの言葉にウンウンと頷くクゥーとピーちゃん!
うっ、解決してなかったよ!?
「そ、その時はその人の記憶を弄って」
「雪音ちゃん、魔法で聖女の顔を変えちゃえば良いんですよー♪ そうすれば、そこの聖女を斬り裂き魔だと思っている被害者の方達に遭遇しても、その度にその方達の記憶を弄る必要なんてなくなるのですー♪」
妄想の世界から戻って来たラピが得意顔で私に言って来た!
「やー、親御さんから授かったお顔を勝手に魔法で変えちゃうのはちょっと抵抗が……」
「少し言葉が足りなかったみたいですねー? 元のお顔はそのままでー、私達以外の人が見ると違ったお顔に見えるようにする魔法、変装魔法とでも言えば良いんですかねー?」
「ラピ様、素晴らしい思いつきなのですわぁ〜ん♪」
「がぅがぅ♪」ラピ様、すごーい!
「ぴぃぴぃ♪」
「あっ、それ良いね! てっきりラピの怒りがまだ収まってなくて聖女さんの今の顔を見たくないから顔を変えちゃえとか言い出したのかと思っちゃったよ!」
「さっき雪音ちゃんはお風呂で私のスポンジさんになってくれるって約束してくれたじゃないですかー? そこの聖女が雪音ちゃんの腕を斬り落としたことは赦しがたいことですけどー、雪音ちゃんが自ら進んで私に毎日恥ずかしいことをしてくれるって約束してくれたから怒りを収めることにしたのに、そんな酷いこと言うわけないじゃないですかー?」
「う、うん、そうだよね、疑ってごめ……。えっ、毎日? ラピ、私毎日なんて言ってないんだけど?」
「あれー、そうでしたっけー? それは ( 言質が取れなくて ) 残念さんなのですよー」
ラピは私から顔を逸らし、とぼけている!
今の絶対、確信犯だよね!? 危なく毎日恥ずかしいことする羽目になるところだったよ!
「ラ、ラピ様! そ、それでしたら私が雪音様の代わりにスポンジになってラピ様のお身体を〜」
ラスィヴィアがモジモジしながらラピにアタックした!
「あっ、ラスィヴィアさんはそんなことしなくて良いですからねー?」
「うぅ〜、ラピ様、あんまりなのですわぁ〜ん」
けれど、ラピに素っ気なく断られ、ラスィヴィアはヨヨヨと地面に泣き崩れた!
「がぉー」ラスィヴィアかわいそー。
「ぴぃー」ねー。
「えっと、とりあえずお風呂の話はまた今度にしてね? っで、話を戻して聖女さんが転移魔石の事故でこのダンジョンに転移して来たことにするわけなんだけど、転移事故が起きた時ってどういう状態で転移して来るのが普通なのかな? ラスィヴィア知ってる?」
「ぐすん。転移先が違うだけで意識がある場合もあれば、気絶した状態で転移して来ることもございますわぁ〜ん」
「意識があってもなくても良いんだ? じゃあ、意識があったまま転移して来たところにゾンビ牙棘背生竜達がいるのを見てビックリして気絶しちゃって、その様子を目撃したチャラ男達が聖女さんを助けに行くように仕向ければ聖女さんを私達のパーティーに違和感なく合流させることができるかな?」
「雪音ちゃん、なら、その聖女さんは天上界の倉庫にしまっておきますかー? 転移して来たように見せかけるなら、ここに寝かせておかない方が良いですよねー?」
「雪音様、ひょっとしてゾンビ牙棘背生竜達を調達して来ないといけないのかしらぁ〜ん? ( 面倒なのですわぁ〜 )」
ラピは人差し指を唇に当てながら首を可愛く傾げ、ラスィヴィアはめんどくさそうな顔をしながらそんなことを言って来た!
「あっ、転移して来る聖女さんは私が魔法で作り出す幻影だから本物は地面に寝かせたままで大丈夫だよ! あとで透明化の魔法を掛けるから! ゾンビ牙棘背生竜はチャラ男達に戦ってもらわないといけないから幻影ってわけにはいかないけど」
「ラスィヴィアさん、出番なのですよー♪ 魅了を使ってゾンビ牙棘背生竜さん達を連れて来てくださいねー♪」にっこり。
「はい、ラピ様! 私にお任せくださいまし!!」
———— 話は聞かせてもらったのじゃ! 特定の亡者を呼び寄せることなど造作もないこと 妾に任せるのじゃ! ————
魔剣ディーアの声が突然私の頭の中で響いたかと思ったら遠くからドッドッドッドッドッ!と言うたくさんの足音が聞こえて来た!
「がぅがぅ! がぅがぅ!」まもの、いっぱい来たー!
「ぴぃぴぃ! ぴぃぴぃ!」
「雪音ちゃん、大量のゾンビ牙棘背生竜さん達がやって来ちゃいましたー!」
「探しに行く手間が省けましたわぁ〜ん」
「ちょっとディーア!? 呼び寄せてくれるのは良いんだけど、数が多過ぎだよ!? 2、3頭で良かったのに!?」
私はチャラ男の腰に差してあった魔剣ディーアを手に取り、苦情を言った!
———— 先ほどの戦いで妾は何もできなかったから、そのお詫びにと思ったのに主様に怒られたのじゃ!? しょんぼりなのじゃ…… ————
しょんぼりとかワザワザ口に出して言わないでよ!? 心が痛むじゃない!? ひょっとしてディーアって誰かが手にしてないと力発揮できないの!?
「ごめんって! じゃあ、ディーアに活躍させてあげるから黒い炎出してくれる? みんなは気絶してる人達を守ってね!」
———— お安い御用なのじゃ♪ ————
「はーいなのですよー♪」
「がぅがぅ!」
「ラピ様は私がお守り致しますわ!」
私は黒水晶のような刀身から亡者を1撃で消滅させる黒い炎を発動した状態の魔剣ディーアを片手に飛行魔法を使ってあちこちの通路から次々とやって来る大量のゾンビ牙棘背生竜達を屠る羽目になってしまうのであった!




