第10章 雪音ちゃんと村娘達 124 〜 目覚めると……①〜
「ん……、冷たい……」
頬が感じる冷たい感触に瞼を開けてみると視界に飛び込んで来たのは土の地面とそこに落ちている小石達でした。どうして私は地面の上なんかで寝そべっていたのでしょう? それに鼻に付くこの酷い臭いは……、腐臭? 身体を起こしながら私は思わず顔をしかめました。
「あっ、気が付いたみたいだね? いきなり転移して来たと思ったらゾンビ牙棘背生竜達が突進して来るの見て気絶しちゃったんだよ? 覚えてる?」
声がする方に顔を向けて見れば、こう、つい抱き締めてしまいたくなるような実に可愛らしい少女が前に垂れる金髪をかき上げながら、青く澄んだ円らな瞳で私の顔を心配そうに覗き込んでいました! この素晴らしい出会いを女神様に感謝し、祈りを捧げたいところなのですが、今はそんなことをしている場合ではありません!
この者は今なんと言いましたか? 私がいきなり転移して来た? 転移魔石は村や町が不浄なる者達によって滅びかねないような、よほど切羽詰まった事態が発生した時にしか使わないはずなのに、ここはどう見てもダンジョンです。転移魔石の誤作動? いえ、それ以前に私は司教様からそのような討伐命令を受けた覚えが……。
「その腐った牙棘背生竜達は気絶しちゃった聖女ちゃんの盾になるように俺達が戦って華麗にバッチリ倒しておいたから安心するじゃん! お礼に頬にキッスとかしてもらえるとスッゲー嬉しいんだけど」
「マイケル、おま、聖女さんにそんなことお願いすんじゃねえよ!?」
「はっ!? そ、そうでした!! 助けていただいたお礼の言葉を申し上げることもせず大変失礼いたしました! 私の名は、私の名は……。思い、出せません……。どうして……」
「それって、えっ、もしかして聖女ちゃん記憶喪失なん!?」
「なんと!? もしや転移して来る前に聖女殿の所属する町や村で記憶を失ってしまうほどの何か凄惨な出来事でもあったのでは!?」
そんな!? もし、そうであるならば私は自分の身可愛さに司教様やシスター達を見捨てて逃げて来たことになるではありませんか!?
「おいおい、ピート、そんな言い方しちまったら聖女さんが可哀想じゃねえか? 確かにそういったこともあるかもしれねえがよお?」
「そうですよ。転移魔石に欠陥があって、予定していた場所とは違う場所に転移して来た可能性だってあるはずです。そして、それに附随して記憶障害が発生しているのではないですかね?」
「め、面目ない……」
「そうそう! きっとライトの言う通り転移魔石が壊れてたんだって。だから、聖女ちゃん、そんな青ざめた顔しなくても良いんじゃね? それより、聖女ちゃん、このあとどうすんの? もちろん俺達と一緒に来るよね? ここダンジョンだし、俺達と一緒の方が安心できるっしょ!」
「こらマイケル! そう聖女殿にグイグイと迫るんじゃない!」
「ホント、この男どもと来たら発情期の邪悪な巨猿のようにうるさくてかないませんわぁ〜ん」
「まったくですねー。気絶から目を覚ましたばかりの女性を前にやかまし過ぎですよねー? 女性を不安がらせる発言もマイナスポイントなのですよー」
「がぅがぅ」
ツインテールの女性と銀髪の女性が男性達の視線を遮るように眼前の金髪の美少女の両脇に立ってくださいました! 白銀の狼さん?も私の側にやって来てちょこんと座り尻尾を振っています! か、可愛いです! 思わず、その頭を撫で撫でしてしまいました!
「ラスィヴィアちゃんもラピちゃんも酷くね!?」
「私が正面にいるとは言え、その後ろに知らない男達が4人も立っていたら、それだけで圧迫感を感じると思うんだけど?」
「た、確かに」
「なんだよ、別に取って食おうとしてる訳じゃねえんだから良いじゃねえか?」
「俺は雪音ちゃんの後ろで主に雪音ちゃんの白く美しいうなじや可愛いお尻を堪能していましたので、他の3人と一緒にしないでくださいね?」
「ライトさん、私の雪音ちゃんを変な目で見ていたと自白したということで氷漬けにしても良いですかー? 良いですよねー?」
はっ!? 狼さんを撫で撫でして癒されている場合ではありません! 私は助けていただいたお礼さえ、まだ言っていないではありませんか!? まずは気絶した私のために戦ってくださった方々にお礼を申し上げなくては!
「わ、私なら大丈夫です! この度は私を助けていただき本当にどうもありがとうございました! お礼を……と思ったのですが、どうやら私は今、手持ちのお金を持っていないようですね……。皆様方、何か患っている慢性の持病などはございますでしょうか? それを女神様の祝福でもって癒して差し上げることでお礼とさせていただきたいのですが……」
私が目の前の可愛らしい美少女に目を向けると、「私は自分の魔法で治せるから」と言って断られ、その左右にいる女性それぞれに視線を送っても「私は雪音ちゃんに癒してもらえますから必要ないのですよー」「私も必要ないのですわぁ〜ん」と断られてしまいました!
「ライトは幼女趣味を治してもらえば良いんじゃね?」
「おお、それは良い考えだな!」
「俺が幼女を好きなのは病気ではありませんよ!? でしたら、おふたりは水虫を治してもらえば良いじゃないですか!?」
「かっかっか、ちげえねえ! ライトの言う通りだぜ! そっちは治療可能だもんな!」
「おぉおおおいぃいいいい!? そんなこと、こんな可愛い子ちゃん達の前でバラすなよぉおおおお!?」
「マイケル、諦めろ。既に秘密は暴かれてしまったんだ。潔く一緒に治してもらおうではないか?」
「うふふ、そんなこと恥ずかしがらなくても良いではありませんか? 今、治して差し上げますね」
「聖女ちゃん、マジ、聖女だ……」
「あぁ、女神様が微笑んでいるかのような慈愛に溢れた微笑みだ……」
「それでは詠唱を始めますので、他の方々は魔物の警戒にあたってくださいね?」
「ああ、俺達に任せておきな!」
「亡者どもが出現したとしても雪音ちゃん達の魔法や俺の持つこの試練の宝剣の力で亡者どもを軽くあしらうことが可能ですので、聖女様はどうか安心してピートとマイケルの水虫を癒すのに専念してください! ぷっ」
「おい、ライト!? おま、ほんとふざけんなよな!?」
「先に俺のことを病気扱いしたのはそちらでしょう? 幼女が好きで何が悪いと言うんですか?」
「あー、聖女殿、幼女好きを治す魔法を使えたりは」
「ま、誠に申し訳ありませんが、そのような魔法は習得しておりません。そもそも存在しないかと……」
「それは残念だ……」
実害でもあるのでしょうか? もしかして、先ほどの金髪の可愛らしい少女がキザったらしいライトと呼ばれる男性から性的なイタズラを受けて悩んでいるとか!? そ、それはいけません! 私があの子を教会で保護して変態から守ってあげなくては!! そして、そして、一緒にご飯を食べたり、髪を洗ってあげたり、身体を拭いてあげたり、一緒のベッドに入って聖書の朗読をしてあげたり、はふぅ〜、もうたまりません!
聖女様は小さくて可愛い女の子が大好きなのであった! もちろん性的な意味は含まれて、多分いない!
◇◆◇
青い光の粒子達がユラユラと宙のあちこちで漂っている以外は真っ黒な空間で、ある1人の女が意識を取り戻した!
「ここは一体どこなのかしらぁ〜? 随分ともの寂しい風景ね〜? あら、身体が元に戻っちゃってるじゃな〜い? あのおっきな胸気に入ってたのになぁ〜?」
「ここは魂の間ですわ。それにしても、本来の姿は随分とスレンダーなのですね」
雪音ちゃんに淫乱斬り裂き魔と呼ばれていた女が声のした方に顔を向けると、そこには戦乙女の鎧を身に纏い、右手には雷をバチバチと帯電させている雷神槍を携えた金髪縦ロールの美女がいた!
「あなたも人のこと言えない胸の大きさだと思うんだけど〜?」
「ふっふっふ、私のことを貧乳扱いしましたわね? それも罪状の1つに付け加えておきましょう!」
「罪状? たくさん人を斬りまくって殺して来たから魂の間とやらに召喚されちゃったのかしら〜?」
「いいえ、違いますわ! 私の愛する愛しい愛しい雪音ちゃんの腕を斬り落としたあなたを徹底的にボコ、いえ、断罪するため、ティア様に無断で召喚させていただきました! 覚悟してくださいまし!!」
金髪縦ロール天使のシャルが淫乱斬り裂き魔に雷神槍の槍先を向けた!
「うふ、天使と殺り合える機会なんて一生ないと思ったのに、まさかこ〜んな機会が訪れるなんて、いっぱい人を斬り殺して来て良かったわぁ〜♪ 天使を斬ったら一体どんな声で鳴いてくれるのかしら〜♪」
淫乱斬り裂き魔は右手から妖刀を、左手からは赤い小太刀を出現させ身構えた!
「ティア様にバレる前にカタを付けたいので本気で行かせていただきますわ!」
金髪縦ロール天使のシャルが全身に電撃をバチバチと纏わせ移動を開始した!
「き、消え、がはっ!?」
淫乱斬り裂き魔は後ろから金髪縦ロール天使シャルの雷神槍によって胴体を貫かれた!
「あなたの速度は確かに速い! ですが、私はそれ以上に速く移動できるのですわ! 残念でしたわね? さぁ、お仕置きの時間ですわ! 雷鳴閃・瞬突!!」
金髪縦ロール天使のシャルが高速で繰り出す雷神槍によって淫乱斬り裂き魔は何度も何度も何度もその身体を貫かれた! もちろん、ただ貫かれるだけではなく、電撃による感電効果のオマケ付きだ!
「ぎゃばばバババば!? ご、ごのぉおお!!!」
痛みに耐えながら淫乱斬り裂き魔は強引に後ろに向けて妖刀を振るった!
シュン!
「当たりませんわ、そのような苦し紛れの攻撃など!」
攻撃を雷速ジャンプで躱し、上空から淫乱斬り裂き魔を見下ろしながら叫ぶ金髪縦ロール天使シャル!
そして、即座に真下に向かって雷速で飛翔し、雷神槍を淫乱斬り裂き魔の脳天に叩き付け、その身体を串刺しにした!
「ぎやぁあアアあァあああああ!?」
淫乱斬り裂き魔は今、魂だけの存在になっているため脳天から身体を串刺しにされても死ぬことはない! 死ぬことはないが死ぬほど痛い思いを死ねずに味わい続ける羽目になるのであった!




