第10章 雪音ちゃんと村娘達 122 〜 淫乱斬り裂き魔は淫乱斬り裂き魔じゃなくて聖女様!?①〜
よし、今、何が起きたか3文で説明してみよう!
① 私、淫乱斬り裂き魔の両腕を斬り落とす!
② 淫乱斬り裂き魔が神様に癒しの祝福を願った!
③ そしたら、切断面がピカーッと光って両腕が復活しちゃった!
「って、はぃいいいいいい!? えっ、なんで!? どうしてこんな淫乱斬り裂き魔なんかに神様が救いの手を差し伸べるのよぉおお!?」
それとも、なに!? 信者であるとかそーゆーのは関係なく決まったフレーズを詠唱すれば誰にでも回復魔法が使えるってこと!? でも、だからって戦闘中に回復魔法唱えて無くなった腕が一から再生しちゃうのはおかしくない!? 回復魔法は戦闘中効果が弱いってこの世界の理どこ行っちゃったの!?
私は大鎌で斬り飛ばした両腕が落ちているはずの地面に目を向けてみた! けれど、そこには赤い刀身の妖刀と2つの破損した籠手が落ちているだけで、私の斬り飛ばした淫乱斬り裂き魔の両腕やその腕の切断面から流れ出た血は消え失せていた!
あっ、一から再生したわけじゃなくて、落ちてる両腕を転移させてくっつけたんだ!? なら、そこまでおかしいってこともないのかも!?
そんな思いを頭の中で高速で駆け巡らせながら私は淫乱斬り裂き魔に視線を戻した! 淫乱斬り裂き魔は両手をグーパー、グーパーさせてくっついた両腕の具合を確かめている!
落ちてる妖刀をすぐに拾おうとしないのはどうして? 腕はくっついたけど握力がまだ戻ってないから? とか思ってたら、淫乱斬り裂き魔が立ち上がろうとするから私はバックステップして距離を取った!
けれど、立ち上がった淫乱斬り裂き魔が私を攻撃して来ることはなく、片手を胸に当てながら、
「私は神聖帝国第7教会の聖女です! 敬虔なる信徒に女神様が癒しの祝福をお与えくださるのは当然のこと!」
などと誇らし気に語り出した!
えー……。私に勝てないと思って妖刀に身体乗っ取られてた聖女さんのフリとかし始めちゃった? でも、淫乱切り裂き魔の顔からは狂気に満ちた怪しい目付きとか恍惚とした表情が消えていて、サファイアのような青い瞳からは力強い意志みたいなの感じるし、顔つきも凛としたものに変わってるんだよねー? 纏っている雰囲気もなんか違うし……。
でも、まず1つ、これだけは言わせてもらおうかな?
「いや、そんな格好して聖女とか言われても……」
だって、上はセクシー系のレースアップクロックトップキャミみたいな服で、そこそこおっきなお胸が半分ずつ見えてるようなものだし、ヘソ出しルックだし、下はマイクロミニデニムのダメージ付きショートパンツみたいなの穿いてるから白く健康的で少しふっくらとした太ももとか出ちゃってるし? そんな格好で聖女とか言われても性女の間違いじゃあ?って思っちゃうよね?
「あなたは何を言って……。っ!?」
性女さんは視線を下ろし私が指差してる部分を自分の目で見てフリーズした! 数秒後、我に返った性女さんは地面にしゃがみ込んで絶叫し始める!
「きゃあああああああ!? なななな、何ですか、この格好は!? ああ、あなたが私にこのようなハレンチな服を着させたのですか!?」
「あっ、それが神聖帝国の聖女の正装って訳じゃないんだ?」
「そんなことあるはずないでしょう!? あぁ、一体どうして私がこのような目に!? これも女神様の試練なのでしょうか!? 殿方の視線に晒されても動じない心を養えということなのでしょうか!?」
「あの神様がそんなこと試練にするとは思えないけどネー」
魔物と人間or魔族が戦うのを見るのが大好きな神様だからネー。露出高いと魔物が襲って来やすいって効果はあるかもしれないけど……。
「これが女神様の試練と言うのであれば、それがどんなに恥ずかしいことであろうと私は乗り切って見せます! 私は創造神ティア様の敬虔なる信徒ですので!!」
身に降りかかった苦難を全部試練だと思っちゃうなんて妄信って怖いネー。って、冗談はさておき。
「淫乱斬り裂き魔さん、そろそろ茶番は終わりにしてもらっても良い?」
「私は淫乱ではありませんし、斬り裂き魔でもありません! 失礼なこと言わないでください!!」
「これ、証拠映像なんだけど?」
私は聖女を騙る淫乱斬り裂き魔の前の空間にメニュー画面を開いて私の記憶映像を流してあげた!
淫乱斬り裂き魔が赤い刀身の妖刀で私の腕を斬り落としたシーンが流れると、
「な、な、な、なんですか、これは!? わ、私が刀を握ってあなたの腕を!? う、嘘です!? こんなことをした覚えは私にはありません!!」
と言って否定し、
『あら、すっご〜い♪ もうくっついちゃったの〜? 回復魔法って戦闘中は効果薄いはずなのに〜。ふふふ♪ あなた、面白い子ね〜? これなら何度でも腕を斬り落とすことが出来そうで、お姉さん大興奮よ〜♪』
と淫乱斬り裂き魔が変態発言をするシーンが流れると、
「な、なんて卑猥な!? で、ですが、姿も声も私そのもの……。そんな、今見ているのは本当に私がしたことなのですか……。嘘です、これは何かの陰謀です……」
と言って自分の身体を抱きしめ、わなわな震え始めた!
「残念なことに嘘でもなんでもないよ? 単なる事実だから。向こうで倒れてる2人もあなたの能力か妖刀の力を使った結果だし」
そう言って、私はリーダーとロリコンが淫乱斬り裂き魔の召喚した黒い吸血蝶や吸血薔薇にヤられちゃったシーンを再生して見せてあげた!
「………………。今、目の前の私が握っているあの赤い刀ですが、見覚えがあります……。だんだん思い出して来ました……。そうです、私は司教様にあの赤い刀の浄化を頼まれ……」
「浄化? ってことは呪われた妖刀ってこと?」
とりあえず話の流れに乗ってみる私。
「はい、呪われた妖刀です……。私は赤く美しく光る刀身に目を奪われ、誘われるように妖刀を手に取ってしまったのです……。触ってはいけないと言われていたのに……。そして、そして、あぁ、私はこの手で司教様やシスター達を次々とこの手にかけ、あぁああああああああああ!!!」
淫乱斬り裂き魔は地面に崩れ落ち号泣し始めてしまった! その泣いてる様子は嘘泣きには見えない!
えー、淫乱斬り裂き魔が聖女さんのフリしてるとかじゃなくて、冗談抜きに聖女さんが妖刀に身体乗っ取られてたって落ちなの? でも、これが演技だったら怖いから念のため魔法で確認しておこうかな?
私は嘘かどうか判断する天使の羽根を聖女さんの頭上から舞い降らせた!
もし今聖女さんが言ったことが嘘だったら、天使の羽根が聖女さんに触れた時、その身体が氷漬けになるんだけど、天使の羽根が何枚も聖女さんの身体に舞い落ちてもその身体が氷漬けになることはなかった!
妖刀の身体乗っ取り確定だね……。はぁ〜。淫乱斬り裂き魔が私から逃げるために嘘ついてる方が良かったんだけどなぁ〜? 話が重過ぎて雪音ちゃん、憂鬱だよぉ……。
聖女さんになんて声を掛けたら良いか分からなかった私は、とりあえず泣き続ける聖女さんの側に座って背中をさすってあげた! そしたら、聖女さんがガバッと私に抱きついて来た!
うっ、動けない……。
さっき聖女さんを死体蹴りするように聖女さんの黒歴史映像見せちゃったし、両腕斬り落としてすっごく痛い思いさせちゃった罪悪感もあった私は聖女さんが泣き止むまで大人しく抱き枕になることにしたのだった……。
しばらくして……。
「少しは落ち着いたかな?」
「ひっく、ひっく、お、落ち着ける訳ないではありませんか、ひっく。聖女の私が妖刀に操られて斬り裂き魔になっていただなんて、ひっく。一体どれだけの時間、私は自我を失って、ひっく、今、神聖帝国歴何年なのでしょう?」
「あー、私、田舎の出身だから、そーゆーのはちょっと分からないなぁ? あと、ここ、神聖帝国じゃないし。向こうで倒れてる人達だったら知ってるかもしれないけど……」
「妖刀に、ひっく、操られた私が重傷を負わせてしまった方々ですね。ひっく、でしたら、せめてもの罪滅ぼしに私に治療をさせてください」
「ええ、それであなたの気が安まるならね」
「ひっく。ありがとう、ございます」
聖女さんは倒れている4人の冒険者達の中央に移動し、呼吸を整えてから大きく息を吸って詠唱を開始した!
「万物を生み出せし創造の女神よ、我に力を貸し与え給え! 御身のその寛大なる慈悲の心で、我が周囲に横たわる者達の傷を癒し給え! エリア・ハイヒール!!」
聖女さんの足元に大きな魔法陣が展開され、その上にいた4人の冒険者達の身体が淡いオレンジ色の光に包まれた! 戦闘終了後の回復魔法だから効果は絶大で、気絶していた冒険者達が次々と目を覚ました!
「うっ……。なんで俺っち地面で寝て……。確か、助けたおっぱいちゃんに熱々のキスをしてもらえると思ったところで……。そうじゃん!! 俺っち、腹刺されたんじゃん!?」
チャラ男はキョロキョロし出して聖女さんを見つけ「ひっ!?」と悲鳴を上げながら尻餅をつき、仰向け四つん這いの状態のまま両手両足をバタバタと動かして後ろに下がって行った!
「はっ!? 黒い蝶は!? あの時、俺は炎に包まれて!?」
リーダーは自分の身体が無事かどうか確認している!
「うぅ、巻き付いた蔓から飛び出した茨で身体中穴だらけにされたと思ったら火炙りにされるという酷い夢を見ました……。いえ、どうやら、先ほど見たのは夢ではなかったようですね!」
ロリコンは立ち上がって聖女さんに向かって身構えた!
「うっ、た、玉の痛みが消えた!?」
マッドは立ち上がって私に蹴られた股間を揉み揉みしている!
「す、すみません、私、殿方の大事な所を斬ってしまったのでしょうか?」
おずおずと聖女さんがマッドに近付き申し訳なさそうに声を掛けた!
「あぁ〜ん!? コイツは金髪の嬢ちゃんに蹴られたって、おお、お前ぇええええ!!!」
マッドは聖女さんに指を突きつけつつ大きく後退った!
「聖女さん、妖刀に身体を乗っ取られてたあなたが怪我させたのは、その人以外の冒険者達だから、その変態に謝る必要はないよ!」
私は地面に落ちてる刀身が赤い妖刀を手に取りながら、聖女さんにそう声を掛けた!
呪われた妖刀を手に取っても大丈夫なのかって? 身体を乗っ取られないようにする魔法を作って自分に掛けたし、妖刀の体内 ( 刀内? ) に取り込まれた私の血が妖刀を屈服させようと頑張ってる最中だと思うから、妖刀に私を乗っ取ろうとする余裕なんてないんじゃないかな? って、あっ! 今、刀身がキランと赤く光ったね! 私の下僕化完了っと! 妖刀の支配権ゲットだよ!
「そうだ、てめえ! さっきはよくも俺の大事な所を蹴ってくれたな!? って違う、そうじゃねえ!! 金髪の嬢ちゃん、何ソイツと仲良くくっちゃべってんだ!? ソイツは敵だろう!?」
「そうだそうだ! キスするフリして俺っちの腹をブスッと刺したんだぞ!?」
「金髪の魔法使い、今の言葉はどう言うことだ!? その女が妖刀に身体を乗っ取られていたと言うのか!? しかも、聖女と言うのは本当なのか!?」
「その無駄な脂肪でマイケルを悩殺した女性が妖刀に操られって、雪音ちゃん!? どうしてそんな妖刀を手に持っているんですか!?」
あーもう!? 1度に話し掛けないでよ!?
「の、悩殺ぅうう!? はっ!? ち、違います!! こ、こんなハレンチな格好、したくてしている訳ではありません!!」
聖女さんは自分の格好を思い出して顔を真っ赤にし、恥ずかしさのあまり両腕で身体を抱きしめ地面にしゃがみ込んでしまった!
「恥ずかしがってる彼女を見れば分かると思うけど、さっきまでのこの人は妖刀に身体を乗っ取られて操られていただけで、今は身体の本来の持ち主である聖女様なんだって。あと、私は魅了とか支配系の効果を無効化する古代の遺物を身に付けてるから、こうやって妖刀を手に取っても影響を受けないのよ、って、ちょっと!? 人が説明してるのにライトしか聞いてないってどーゆーことよ!!」
ロリコン以外の男どもは、しゃがみ込んで羞恥で半泣きになっている聖女さんの艶かしい身体を視姦してた!
「雪音ちゃん、君は一体いくつの古代の遺物を、いえ、そんなことより雪音ちゃんが妖刀に操られることなく無事で何よりです!」
「あんっ? いやだってよ、目の前で胸がデカくて露出の多い服着た姉ちゃんが顔赤らめて恥じらってる姿見たら魅入っちまっても仕方ねえだろ?」
「いやぁ〜、雪音っちが聖女様って言ってたじゃん? 聖女様がこーんなエッロい格好で恥ずかしがってたら見るっきゃないっしょ!」
こんの男どもは〜〜!? ほんの数秒前まで敵意むき出しだった癖に、もう襲われることはないって分かった途端、欲望に忠実になっちゃうとか、ホント最低!!!
「あ〜、コホン。あなたが言うのであるから俺達を襲ったこの女が今はもう身体を妖刀に乗っ取られていないと言うのは本当なのだろう! ただ、なんだ。その、何かの間違いがあってはマズいと思うから俺は監視をしているだけでだな? 決してその、疚しい気持ちで見ている訳では」
リーダーまでそーゆーこと言っちゃうんだ!? 今度からあんたのアダ名はムッツリに決定ね!!
「あぁ〜、何ということでしょう! 鼻息を荒くした男達が私の身体を舐めるようにして眺めて来ます! これは私が罪もない人々を殺めて来てしまった報いなのでしょうか!? これが女神様のお与えになった私への罰だと言うのなら私は甘んじて」
聖女さんは聖女さんで何言ってるのかな!? そんなのが罰になる訳ないじゃない!?
「あ〜もう!! とりあえず変態どもは死ね!!!」
バチバチバチバチ!!!
私の身体から黄色い電撃が迸った! そして、私の身体から3匹の雷蛇が ( 手加減してるから雷龍じゃないよ! ) 洞窟の天井へと舞い上がって弧を描くように、短気のマッド、チャラ男のマイケル、むっつりスケベのピートの元へと飛んで行った!




